結論:詐欺が多いのは「お年寄りが多い県」ではなく、「都会の県」でした
「被害に遭う人にお年寄りが多い」ことと、「お年寄りが多い県で被害が多い」ことは、別の話です。
都道府県名を入れると、その県の数字が出ます。下の2つのグラフでも、その県の点が大きく表示されます。ひらがなでも探せます。
特殊詐欺は、電話などで相手を信じ込ませ、現金やキャッシュカードをだまし取る詐欺です(オレオレ詐欺、還付金詐欺など)。この記事では、SNS型投資詐欺やロマンス詐欺は含めずに数えています。
グラフの読み方:点の1つが1つの都道府県です。点にマウスを合わせると(スマホではタップすると)、県名と数字が出ます。点をクリックすると、その県を選べます。
件数は「認知件数」、つまり警察が把握した件数で、人口10万人あたりにそろえています。人口の多い東京と少ない鳥取を同じ条件で比べるためです。
タイトルの r は、2つの数字がどれくらい一緒に動くかを表す値です。−1から+1の間をとり、0に近いほど関係が薄く、マイナスは「片方が大きいほど、もう片方は小さい」関係を表します。
高齢化率 × 特殊詐欺 認知件数(人口10万人あたり) r = −0.43
点は、右に行くほど(高齢化率が高いほど)下がっています。左上に集まっているのは大阪・兵庫・東京など、都会の県です。
点の色は「DID人口比率」、つまり人口が密集した地区に住む人の割合で、都会度の目安です。濃い青ほど都会です。高齢化が進んだ県は、ほぼそのまま都会ではない県です(この2つの r は −0.73)。
そこで、お年寄りを狙う手口に絞りました。預貯金詐欺・キャッシュカード詐欺盗・還付金詐欺の3つで、2025年の被害者に占める65歳以上の割合は、それぞれ98.8%・98.9%・81.1%です。
| お年寄り1万人あたりの件数(高齢化率が低い10都府県の平均) | 2.2件 |
| 同(高齢化率が高い10県の平均) | 0.3件 |
高齢化率が低い10都府県:東京・沖縄・愛知・神奈川・滋賀・埼玉・大阪・千葉・福岡・宮城 / 高い10県:秋田・高知・徳島・青森・山形・山口・岩手・島根・長崎・愛媛
差は6.8倍です。ところが、「都会かどうか」の影響を取り除いて計算し直すと、この3手口と高齢化率の関係はほぼ消えました。効いていたのは高齢化ではなく、都会かどうかでした。
なぜ都会に多いのかは、このデータだけでは分かりません。預貯金詐欺とキャッシュカード詐欺盗は、犯人がお年寄りの家を訪ねてカードを受け取ったり、すり替えたりする手口です。人が多く移動しやすい都会のほうが犯人に都合がよい、とは考えられます。
いちばん多かった香川(41.3件)は、人口が約92万人と少ないため、数十件の増減で順位が大きく動きます。1年分のデータなので、毎年そうだとは限りません。
フィッシングは、本物の会社を装ったメールやSMSで偽のサイトに誘い込み、IDやパスワード、カード番号を盗む手口です。都道府県別のフィッシング被害件数は公表されていないため、総務省の2025年の調査で「フィッシングに遭った」と答えた人の割合を使いました(過去1年にネットを使った人が対象)。グラフの「単独世帯率」は、一人暮らしの世帯の割合です。
単独世帯率 × フィッシング経験率(自己申告) r = +0.32 → 東京を除くと +0.08
出典:警察庁SOS47(2025年)、総務省 人口推計2024年・国勢調査2020年・2025年通信利用動向調査
右上に1つだけ離れているのが東京です(一人暮らし世帯50.2%、フィッシング13.8%)。47都道府県全体では r = +0.32 ですが、東京を除くと +0.08 で、関係はほぼありません。
そもそもこの調査は1県あたりの回答者が377〜989人なので、±2ポイント前後の誤差があります。県どうしの1〜2ポイントの差には意味がありません。
ところが、同じ調査を「人」の単位で見ると、はっきり差が出ます。
| 65歳未満の一人暮らし | 15.5% |
| 全体 | 9.3% |
| 65歳以上の人だけの世帯 | 6.5% |
65歳未満の一人暮らしの15.5%は、年代別でいちばん高い40代(12.2%)よりも高い値です。ただ、年齢と暮らし方を掛け合わせた数字は公表されていないので、一人暮らしそのものが原因かどうかまでは分かりません。
県で比べると関係なし、人で比べると関係あり。同じテーマでも、どの単位で比べるかで答えが変わります。
見出しを押すと並べ替えられます。行を押すと、その県を選べます。件数は人口10万人あたり。