はじめに(小学生でもわかるお話)
「悪い人は外国から来るんだから、海外のIPアドレスを全部ブロックすれば安全だよね?」
実は、これはもう通用しない考え方です。
理由はとてもシンプル。
◆ 悪い人は、日本人のフリをすることができるからです。
この記事では、
- IPアドレスってなに?
- なぜ海外IPを止めても意味がないの?
- 今どんな抜け道が使われているの?
を、専門用語をできるだけ使わずに解説します。
IPアドレスってなに?
IPアドレスは、
◆ インターネット上の住所
のようなものです。
- 日本の住所 → 日本のIP
- アメリカの住所 → アメリカのIP
昔は、
「外国の住所から来たら怪しい!」
が成り立っていました。
でも今は違います。
なぜ海外IPを止めても意味がないの?
理由① VPNを使えば日本人になれる
VPN(ブイピーエヌ)は、
◆ネット上で変装できる道具
です。
- 本当は海外にいる
- でもVPNを使う
- 見た目は「日本のIP」
サイト側から見ると「日本からのアクセス」に見えます。
しかも、
- 日本の会社
- 日本のクラウド
が提供しているVPNも普通にあります。
理由② レジデンシャルプロキシという裏ワザ
最近とても問題になっているのが、
🏠レジデンシャルプロキシ
です。
これは、
- 一般の家庭の回線
- 普通のスマホや光回線
を経由して攻撃する方法です。
📌 特徴
- IPは「普通の日本の家」
- 企業・銀行・役所も使う回線と区別がつかない
企業のサイトがブロックすると一般の人まで巻き添えになります。
理由③ 自分の回線を貸す人がいる
もっとやっかいなのが、
◆回線貸し
です。
- 自宅にサーバを置く
- 光回線を何本も引く
- それを他人に使わせる
しかも、
- 無届(電気通信事業法)
- 違法スレスレ
なケースもあります。
IPだけ見ても
「攻撃者」か「普通の日本人」か判断できません。
さらに知っておきたい「プラスアルファ」の現実
ここからは、もう一歩だけ踏み込んだお話です。
知ると少し怖いですが、今のネット社会の本当の姿でもあります。
① 知らないうちに「加害者」になっている人たち(ボットネット)
理由③の「回線を貸す人」とよく似た問題に、
◆ボットネット
があります。
これは、
- ウイルスに感染したスマホ
- セキュリティ設定が甘いWebカメラ
- 安価なスマート家電(IoT機器)
が、持ち主に内緒で操作されてしまう状態です。
📌 ポイント
- 持ち主は被害者
- でも通信は「日本の家庭」から出る
その結果、
実は、悪い人に回線を貸している自覚がない人もいます。ウイルスに感染した家電やスマホが、持ち主に内緒で「日本からの攻撃の踏み台」にされているケースが非常に多いのです。
企業側から見ると、
完全に普通の日本人からのアクセスに見えてしまいます。


② 日本国内のクラウドサーバーからの攻撃
「悪い人は日本のフリをする」方法は、VPNだけではありません。
◆日本のクラウドサービスの悪用
も、非常に多い手口です。
たとえば、
- AWS(東京リージョン)
- 国内クラウド事業者
など、
📌 特徴
- IPアドレスは日本
- 有名で信頼されている企業のサービス
つまり、
「信頼されている日本の大手企業のサービスの中から攻撃が来る」
という状況になります。
これをIPアドレスだけで止めると、
- 正規の企業利用
- 正常なクラウド通信
まで止めてしまう危険があります。
③ やりすぎると「普通のお客さん」も排除してしまう
「怪しいものは全部ブロックすればいい」
そう思われがちですが、現実はそう簡単ではありません。
◆誤検知(False Positive)
という問題があります。
これは、
- 本当は安全
- 本当は普通のお客さん
なのに、
間違って攻撃者だと判断してしまうことです。
たとえば、
- 海外旅行中の日本人
- 海外出張中の社員
- 格安SIMや共有回線を使っている一般の方
が、
「サイトが見られない」「ログインできない」
という被害を受けることがあります。
企業にとっては、
セキュリティを強くすると、使いやすさが下がる
という、とても難しいバランス問題なのです。
じゃあ、企業は何もできないの?
いいえ、そんなことはありません。
ただし、
❌ IPアドレスだけに頼る防御
は、もう限界です。
いま企業がやっている本当の対策
① 行動を見る(ふるまい検知)
- 短時間で大量アクセス
- 人間ではありえない速さ
- 同じ操作のくり返し
IPではなく動きで判断します。
② WAF(ウェブの防犯カメラ)
WAFは、
怪しい攻撃専用の見張り番
- 攻撃の型を知っている
- 世界中の情報を共有
IPが日本でも、
攻撃の中身で止めます。
③ 多層防御(いくつも壁を作る)
- ログイン回数制限
- CAPTCHA(私はロボットではありません)
- 二段階認証
1つ破られても、次で止める仕組みです。
根拠(信頼できる情報)
以下は、実際に問題として指摘されている事実です。
- VPN・プロキシを使った攻撃は世界的に増加
- レジデンシャルIPは正規通信と区別が困難
- IPAや各国CERTも「IP制限だけでは不十分」と注意喚起
◆公的・専門機関の見解
- IPA(情報処理推進機構)セキュリティ対策資料
- NISC(内閣サイバーセキュリティセンター)
- 海外セキュリティベンダー(Cloudflare / Akamai 等)の脅威レポート
まとめ
結論
海外IPを止めれば安全、という時代はもう終わっています。
理由は、
- 日本のフリが簡単にできる
- 一般家庭のIPが攻撃に使われる
- IPだけでは善悪が判断できない
だからこそ、
IPではなく「行動」と「仕組み」で守る
これが、
いまの企業セキュリティの常識です。
※ セキュリティは「一発で完璧」はありません。
正しく知ることが、いちばんの防御です。

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