「家族の写真や動画をまとめて保存できて便利」
「クラウド代わりに使えるって聞いた」
そんな理由で家庭用NAS(ナス)を使っている、または検討している方も多いと思います。
ですが実は、家庭用NASは設定を間違えると“とても危険な機器”になります。
この記事では、なぜNASが狙われるのか、何が危険なのか、どう守ればいいのかを、できるだけわかりやすく解説します。

- 家庭用NASとは?便利さの裏にある“落とし穴”
- 家庭用NASが狙われる理由【実際に起きている脅威】
- 実際に起きている家庭用NASの被害事例
- 危険度が一気に上がるNG設定・使い方
- 最低限やるべき家庭用NASセキュリティ対策【初心者向け】
- セキュリティ設定のチェックリスト
- メーカー別に注意すべきポイント(Synology / QNAP など)
- NASとクラウド、どちらが安全?正しい使い分け
- 小学生でもわかる!NASを安全に使う3つの約束
- RAIDシステムの搭載により冗長化を実現する仕組み
- 重要:RAIDは「バックアップ」ではない
- NAS内データのウイルス感染防止も重要
- 暗号化前の正常なデータを残せるバックアップ方式を選ぶ
- クラウドバックアップという選択肢
- NASからNASへのバックアップ(テラステーション同士など)
- 最も安全な構成まとめ(家庭〜小規模向け)
- まとめ|家庭用NASは「便利」だが「放置」が一番危険
家庭用NASとは?便利さの裏にある“落とし穴”
NASとは、簡単に言うと
「家の中に置く、みんなで使えるデータ保管庫」です。
- 写真・動画の保存
- パソコンやスマホのバックアップ
- 外出先からのデータアクセス
とても便利ですが、ここで大事なポイントがあります。
NASは小さな“サーバー”
インターネットにつながることが多い
つまり、正しく守らないと
「家の金庫を玄関先に置いて、鍵をかけ忘れている」
ような状態になることがあるのです。
家庭用NASが狙われる理由【実際に起きている脅威】
攻撃者(ハッカー)は、次のような理由で家庭用NASを狙います。
24時間電源が入っている
パソコンと違い、NASは常に動いています。
これは攻撃者にとって好都合です。
セキュリティ設定が甘い家庭が多い
- 初期パスワードのまま
- 更新していない
- よくわからないまま外部公開
「守られていない機器」が大量に存在する
個人データの宝庫
家族写真、動画、仕事の資料など
攻撃者にとって価値のあるデータが詰まっているからです。
実際に起きている家庭用NASの被害事例
「自分は大丈夫」と思っている人ほど要注意です。
写真・動画の流出
NASが不正アクセスされ、
家族写真や動画が外部に漏れたケースがあります。
ランサムウェア被害
ある日突然、
「データを元に戻したければお金を払え」
と表示され、中身がすべて暗号化される被害。
犯罪の踏み台にされる
自分のNASが知らないうちに
他人を攻撃するための中継点として使われることもあります。
危険度が一気に上がるNG設定・使い方
次のうち、1つでも当てはまったら要注意です。
- 初期パスワードのまま使っている
- インターネットから直接アクセスできる設定にしている
- 更新(アップデート)を何年もしていない
- 管理画面に誰でも入れる状態
- 「よくわからないけどそのまま使っている」
「便利そうだから」で設定したまま放置
これが一番危険です。
見落とされがちな最大の罠:UPnP
UPnP(ユニバーサルプラグアンドプレイとは、
ルーターが自動で通信設定を行う仕組みです。
これが有効だと、
自分では設定していないのに
NASが自動的にインターネット公開される
という事態が起こります。
「何もしていないのに危険な状態」
これがUPnPの怖さです。
最低限やるべき家庭用NASセキュリティ対策【初心者向け】
ここからは「これだけはやってほしい」対策です。
強いパスワードを設定する
- 12文字以上
- 英大文字・小文字・数字・記号を混ぜる
- 他のサービスと使い回さない
2段階認証を有効にする
ログイン時に
パスワード+スマホ確認
を求める仕組みです。
パスワードが漏れても突破されにくくなります。
外部公開はしない(またはVPNを使う)
「外からNASに直接アクセス」は非常に危険。
- どうしても必要 → VPNを利用
- 使わない → 完全にオフ
自動アップデートを有効にする
更新は「面倒」ではなく
穴を塞ぐ大事な作業です。
初期ユーザー名「admin」を使わない【重要】
多くのNASは、管理者ユーザー名が admin です。
これは攻撃者にとって「最初から分かっている入口」。
adminを無効化
自分専用の管理者アカウントを新規作成
これだけで、攻撃成功率は大きく下がります。
物理的な盗難対策も忘れない
ケンジントンスロットによる盗難防止
NASは盗まれたら終わりです。
- 本体背面のケンジントンスロットを利用
- ワイヤーロックで固定
- 物理盗難によるデータ流出を防止
NAS標準のセキュリティアプリを導入・設定確認
まず確認すべきポイント:
- NAS標準のセキュリティアプリを導入しているか
- 定義ファイル・スキャン設定が適切に有効化されているか
「入れて安心」ではなく、設定が正しいかが重要です。
外部からの侵入を防ぐネットワーク防御
ファイアウォール設定
- NAS内蔵ファイアウォールを有効化
- 必要な通信のみ許可
NASが不必要に外部公開されていないか
- 使っていないポートが開いていないか
- インターネットに直接晒していないか
自動ブロックとアカウント保護(ブルートフォース対策)
自動ブロックの有効化
一定回数ログイン失敗すると、
攻撃元IPアドレスを自動でブロックできます。
対象サービス例:
- SSH / FTP / WebDAV
- DSM / File Station
- Synologyモバイルアプリ など
アカウント保護の有効化
ブルートフォース攻撃から
ユーザーアカウント自体を保護します。
対応サービス:
DSM、File Station、Audio / Video Station、Cloud Station など
通信を守る:暗号化された接続(HTTPS / SSL)
HTTPSを必ず使用
- DSM管理画面(Synology)
- Synology Drive / Photos / Chat など
設定例:
- HTTP → HTTPS 自動リダイレクト
- HSTS(※同時有効はNG)
SSL証明書は必ず有効なものを設定してください。
その他の暗号化ポイント
共有フォルダ同期 → SSH暗号化
FTP → FTPS / SFTP
Hyper Backup → 転送暗号化を有効
ルーター側のポート開放は「最小限」に
NASは便利ですが、
公開ポートが多い=攻撃対象が増える ということ。
対策:
- 必要なサービスのポートのみ開放
- 不要なポートは即閉鎖
DoS(サービス拒否)攻撃への備え/DoS保護を有効化
効果:
- 異常なPing・大量通信を自動制限
- NASのダウンを防止
デフォルト管理ポートの変更
攻撃者はデフォルトポートを最初に狙います。
代表的な初期値:
- HTTP:5000
- HTTPS:5001
- SSH:22
特定の国からのアクセスを遮断(ジオブロック)
- 業務上アクセス不要な国をブロック
- 海外IP経由の攻撃を大幅に削減
ログイン失敗時の自動ブロック
- 連続失敗 → IP自動遮断
- パスワード総当たり攻撃を防止

ここまでで、セキュリティ設定にうんざりしていないですか。
これを設定しない、できないなら「クラウドサービス」を使うことをお勧めする。

大変だから、ぎゅっとまとめて、チェックリスト型にしといたにゃ
セキュリティ設定のチェックリスト
① アカウント・パスワード編(最重要)
□ 強いパスワードを設定している
(12文字以上・英大文字/小文字/数字/記号を混在)
□ 使い回しパスワードを使っていない
□ 初期ユーザー名「admin」を使っていない【重要】
□ 2段階認証(2FA)を有効にしている
② 外部アクセスの基本ルール
□ NASを直接インターネットに公開していない
□ 外部から使う場合はVPN経由にしている
□ 使っていないリモートアクセス機能を無効化している
③ アップデート・基本防御
□ NASのOS(DSMなど)が自動アップデート設定になっている
□ NAS標準のセキュリティアプリを導入している
□ セキュリティアプリの設定・定義更新を確認した
④ ネットワーク防御(侵入対策)
□ NAS内蔵ファイアウォールを有効にしている
□ 必要な通信だけ許可するルールになっている
□ NASが不必要に外部ネットワークへ公開されていない
⑤ ブルートフォース(総当たり)攻撃対策
□ ログイン失敗時の自動ブロックを有効にしている
□ アカウント保護機能を有効にしている
□ 管理画面への不正ログイン対策が有効
⑥ 通信の暗号化(盗聴対策)
□ DSM管理画面はHTTPS接続のみ使用している
□ HTTP→HTTPS自動リダイレクトを有効にしている
□ 有効なSSL証明書を設定している
□ FTPではなくFTPS / SFTPを使用している(該当者)
⑦ ルーター・ポート設定
□ ルーターで開放しているポートは最小限
□ 使っていないポートはすべて閉じている
□ デフォルト管理ポートを変更している
⑧ 攻撃トラフィック対策
□ DoS(サービス拒否)保護を有効にしている
□ 異常な通信が来た場合に制限される設定になっている
⑨ 国別・地域別アクセス制限
□ 特定の国からのアクセスを遮断(ジオブロック)している
□ 海外アクセスが不要な構成になっている
⑩ 物理的な盗難対策
□ NAS本体を簡単に持ち去れない場所に設置している
□ ケンジントンスロットでワイヤーロックしている
⑪最終チェック
□ 「もし今ランサムウェアに感染しても、復旧できる自信がある」
メーカー別に注意すべきポイント(Synology / QNAP など)
有名メーカーでも過去に大きな被害が起きています。
- 脆弱性(セキュリティの穴)は必ず出る
- 「有名だから安全」は間違い
- 重要なのは使い方と管理
メーカー任せにせず、利用者が守る意識を持つことが重要です。
NASとクラウド、どちらが安全?正しい使い分け
NASが向いている人
- 家族内でデータ共有したい
- 月額費用をかけたくない
- 自分で管理できる
クラウドが向いている人
- 管理が苦手
- セキュリティは任せたい
- 外出先からよく使う
NAS+クラウド併用が最も安全なケースも多いです。
小学生でもわかる!NASを安全に使う3つの約束
- 知らない人に見せない
- 鍵(パスワード)を強くする
- 壊れても困らないようにコピーを取る
これだけ覚えておけばOKです。

次は、データの保存方法について説明するよ。
RAIDシステムの搭載により冗長化を実現する仕組み
多くのNASには、RAID(レイド)と呼ばれる仕組みが搭載されています。
RAIDとは Redundant Arrays of Inexpensive Disks の略で、
複数のHDD(またはSSD)を組み合わせてデータを保存する技術です。
RAIDの役割は「故障対策」
RAIDの最大の目的は、HDDの故障に備えることです。
たとえば、
- HDDが1台壊れても
- すぐにデータが消えない
- 交換すれば復旧できる
という「冗長化(じょうちょうか)」を実現します。
家庭用NASでよく使われるRAIDレベル
家庭・小規模用途のNASでは、主に次のRAIDが使われます。
- RAID1
→ 同じデータを2台のHDDに同時保存(ミラーリング) - RAID5
→ 3台以上のHDDでデータを分散保存し、1台故障まで耐えられる
RAIDのレベルによって、
が異なります。
重要:RAIDは「バックアップ」ではない
ここは非常に重要なポイントです。
RAIDは
❌ ウイルス感染
❌ ランサムウェア
❌ 誤操作による削除
❌ 不正侵入
には 無力 です。
たとえば、ランサムウェアに感染すると、
暗号化されたデータが、すべてのHDDに同時に書き込まれる
つまり、
RAIDを組んでいても一瞬で全滅します。
RAIDは
「HDD故障対策」
「データ保全対策」ではない
この誤解が、被害を大きくします。
NAS内データのウイルス感染防止も重要
NASはパソコンほど頻繁に操作しないため、
感染に気づきにくいという特徴があります。
NASがウイルスに感染する主な経路
- パソコン経由で感染したファイルを保存
- 外部公開設定の悪用
- 脆弱性を突かれた侵入
対策として有効なポイント
- NAS対応のウイルス対策機能を有効化
- ファームウェアを常に最新に保つ
- 不要なサービス・共有を停止
- adminアカウントの無効化
NASは「置いたら終わり」ではなく、守る機器です。
暗号化前の正常なデータを残せるバックアップ方式を選ぶ
ランサムウェア対策で最も重要なのは、
「感染前の状態に戻せること」
です。
世代管理(バージョン管理)ができるバックアップ
- 昨日
- 先週
- 先月
といった 過去の状態を残せる方式 を選ぶことで、
暗号化前の正常なデータを復元できます。
クラウドバックアップという選択肢
クラウドバックアップは、
- 災害
- 盗難
- 全損
にも強いのが特徴です。
メリット
- NASが壊れてもデータは残る
- 物理的被害に強い
- 自動化しやすい
注意点
- 月額費用がかかる
- アップロードに時間がかかる
- 重要データだけを選別すると現実的
「全部クラウド」ではなく、重要データのみが現実解です。
NASからNASへのバックアップ(テラステーション同士など)
もう一つ、非常に強力なのが
NAS → NAS のバックアップです。
たとえば、
- メインNAS(普段使い)
- バックアップNAS(電源OFF・別室)
という構成です。
NAS間バックアップの強み
- ランサムウェア感染時、切り離せば被害を防げる
- 大容量データでも高速
- クラウドよりコストを抑えられる
特に テラステーション同士 など、
同一メーカー製NASでは管理も容易です。
最も安全な構成まとめ(家庭〜小規模向け)
おすすめの考え方は次の通りです。
- NAS内:RAIDでHDD故障に備える
- NAS外:
- 外付けHDD
- クラウド
- もう1台のNAS
「1か所にしか存在しないデータは、存在しないのと同じ」
引用元:Synologyナレッジセンター https://kb.synology.com/ja-jp/DSM/tutorial/How_to_add_extra_security_to_your_Synology_NAS

まとめ|家庭用NASは「便利」だが「放置」が一番危険
家庭用NASは、正しく使えばとても便利な機器です。
しかし、
- 何もしない
- よくわからないまま使う
- 初期設定のまま放置する
これが最大のリスクになります。
「知らなかった」では済まされない時代です。
家庭のデータは、家庭で守る
その第一歩として、ぜひ見直してみてください。


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