「ログはちゃんと取っています」
多くの企業がそう答えます。しかし、不正アクセスやランサムウェア被害が発生した際、
「何が起きたのか分からない」「証拠が足りない」という声が後を絶ちません。
実は最新の調査結果から、日本企業のログ管理は
“入口対策に偏り、活用されないまま眠っている”実態が浮かび上がっています。
この記事では、調査データをもとに
- 現状のログ取得レベル
- なぜ実効性が出ないのか
- いま現実的に取るべき改善策
を、専門知識がなくても理解できる形で解説します。
引用元:https://www.npa.go.jp/bureau/cyber/pdf/R6countermeasures.pdf
ログ取得の現状|「入口」は強いが「中」が見えていない
結論:ネットワークの入口(境界防御)に集中している
日本企業のログ管理は、ネットワークの入口(境界防御)に集中している一方で、内部の可視性が不足しています。
理由
調査では、以下のような取得状況が示されています。
主なログの取得率(抜粋)
| ログの種類 | 取得率 |
|---|---|
| ファイアウォール・IDS/IPSログ | 53.1% |
| メールサーバログ | 51.4% |
| クライアントPCログ | 45.3% |
| Webサーバアクセスログ | 44.9% |
| 認証ログ(業務システム等) | 43.2% |
解説(例え話)
これは例えるなら、
「玄関の防犯カメラはあるが、家の中の動きは記録していない家」です。
侵入された“後”に
- 誰が
- どこへ移動し
- 何をしたのか
を追えないため、被害全体像が見えません。
業種差が示す「守れる企業」と「守れない企業」の差
結論:業種によって大きく異なります
ログ管理は業種によって“成熟度”が大きく異なります。
根拠
- 金融・運輸業では
- ファイアウォール
- メールサーバ
のログ取得率が8割前後と非常に高水準。
一方で、
- 11.5%が「外部委託しているため分からない」と回答。

問題点
これは
「防犯カメラを管理会社に任せていて、映像が見られるか分からない」
状態と同じです。
責任は自社にあるのに、可視性がないという危険な構造です。
ログ管理が機能しない4つの構造的問題
① 取得率が5割止まり|“点”で終わる対策
- 重要ログでも取得率は概ね5割
- 部分最適で、全体像がつながらない
➡取得率は概ね5割程度に留まっており、組織全体で網羅的にログを管理できていない実態。攻撃の流れを時系列で追えない
② 専門人材不足|「取ったけど見られない」
- 「どこまで取るべきか分からない」
- 「分析できる人がいない」
➡ 有事でも宝の山(ログ)が活かされない
③ コストと手間の増大
- ログ増加=ストレージ費用増
- クラウド移行で想定外の課金
➡ “取れば取るほど苦しくなる”逆転現象
④ パッチ適用のジレンマ
- 適用したい
- でも業務停止が怖い
➡ 古いシステムが温存され、リスクが蓄積
実効性を高める現実的な改善策
結論:使えるログに集中する
「全部取る」ではなく「使えるログに集中する」ことが鍵です。


なんの目的でログを取っているのか、そして、そのログの取得方法、保管方法、保管期限で目的を達成しているか再検討してみよう。
① ガイドラインに沿った取得範囲の明確化
- IPAなど公的ガイドラインを基準に
- 自社の規模・業態に合った範囲を定義
最優先ログ
- 認証ログ(ID・パスワード・MFA)
- メール関連ログ
- ネットワーク境界ログ
➡ ランサムウェア・なりすまし対策に直結
② SOC / MSSの活用(人を増やさない選択)
- 51.6%が「指導できる人材不在」
- 外部SOCで
- 監視
- 相関分析
- インシデント初動
を補完
➡ 人を雇うより現実的
③ ログ保管の“賢い節約”
- クラウド標準ログ機能を最大活用
- 重要度で保存先を分ける(ティアリング)
| 重要度 | 保存先 |
|---|---|
| 直近・重要 | 高速ストレージ |
| 長期保管 | 低コストストレージ |
④ 事案発生時マニュアルの整備
- 「どのログを見るか」を事前に決める
- 現状、整備済みは51.4%
➡ 初動遅れ=被害拡大を防ぐ
⑤ 教育で“ログは保険”と理解させる
- ITリテラシー教育(68.3%実施)に
- 証拠保全
- 早期検知
の視点を追加
まとめとアクションプラン
重要ポイントまとめ
- ログは「取るだけ」では意味がない
- 境界防御偏重では攻撃後が見えない
- 人・コスト・運用を前提に設計すべき
今日からできる3ステップ
- 最優先ログ(認証・メール・境界)を定義
- 自社で無理ならSOCを検討
- 「見る手順」をマニュアル化

①【令和6年版・警察庁調査の徹底考察】“不正アクセスの現実”──なぜ対策していても被害は減らないのか? | やさしいサイバーセキュリティ
②【令和6年版・警察庁調査の徹底考察】セキュリティ対策費用確保と経営層の理解不足について | やさしいサイバーセキュリティ
③なぜセキュリティ対策は進まない?組織が抱える不安と現実的な解決策 | やさしいサイバーセキュリティ
④【令和6年版・警察庁調査の徹底考察】「メール対策は“やっているつもり”が一番危ない|最新調査で見えた不正中継・なりすまし被害の盲点」 | やさしいサイバーセキュリティ
⑥【令和6年版・警察庁調査の徹底考察】テレワーク×個人端末は本当に危険?警察庁データが示す「見過ごされがちな落とし穴」と現実的な対策 | やさしいサイバーセキュリティ
⑦【令和6年版・警察庁調査の徹底考察】①~⑥調査結果を分析して判明したことをまとめてみた。 | やさしいサイバーセキュリティ


コメント