詐欺が増えている県はどこか
香川県は2年前から兆候が出ていた ― 公的統計で「これから危ない県」は見抜けるのか
結論:詐欺の県別ランキングは「今どこが多いか」より「どこで増えているか」を見たほうがいい。増えていた県は、2年後に本当に詐欺の多い県になっていた。
- 香川県は2019年に18位だった詐欺系の犯罪が、2023年に全国1位へ跳ね上がった(4.0倍)。その2年後、警察庁の特殊詐欺の統計でも香川は1位。SNSを使った投資・恋愛の詐欺でも1位だった。数字は2年前から警告を出していた。
- 増え方の激しい県は、地方に集中している。上位は香川・鹿児島・佐賀・長崎・青森・島根。増加率の上位10県に、大都市圏は1つも入っていない。「詐欺は都会のもの」という感覚は、もう古い。
- 逆に、東京・神奈川・埼玉はほとんど増えていない。ただし少ないわけではなく、もともと高い水準で止まっているだけ。首都圏は「高止まり」、地方は「急上昇」と、危なさの質が違う。
- 唯一減った県は栃木県だけ(0.88倍)。その栃木は、2年後の特殊詐欺でも47都道府県中46位と少なかった。減っている県は、本当に減っている。
- あなたが見るべきなのは「自分の県の順位」ではなく「自分の県が増えているかどうか」。増加中の県に住んでいるなら、これまで来なかった手口が今年から回ってくる。まずは離れて暮らす親に、SNSの投資話と警察を名乗る電話の件を伝えてほしい。
今の順位は過去の結果でしかない。増え方こそが、これから起きることを教えてくれる。
📋 目次
前回の記事との違いは「時間」です
この連載の①では、令和7年の1年分のデータで「今どの県が危ないか」を出しました。今回はそこに時間軸を足します。5年分をさかのぼって「どの県で増えているか」を見ると、順位表とはまったく違う地図が現れました。そして驚いたことに、その地図は2年後の現実を言い当てていました。
🧠 そもそも「知能犯」って何のこと?
聞き慣れない言葉ですが、中身のほとんどは詐欺です。
今回の主役は「知能犯認知件数」という統計です。役所の言葉なので固いのですが、意味はそれほど難しくありません。
警察が扱う犯罪は、大きくグループ分けされています。人を傷つける「凶悪犯」、殴る・脅すの「粗暴犯」、盗みの「窃盗犯」、そしてだます・偽る・ごまかすのグループが「知能犯」です。中身は詐欺・横領・偽造・背任・汚職。数のうえでは詐欺が圧倒的に多いので、ざっくり「詐欺とその仲間の件数」と思ってもらって構いません。
📐 図1:犯罪の分類のなかで「知能犯」はどこにいるか
なぜわざわざこの統計を使うのか。理由は単純で、都道府県ごとに、しかも何十年分もさかのぼれる公的データが、これしかないからです。
「フィッシングの県別件数」「SMS詐欺の県別件数」といった数字は、実は日本には存在しません。特殊詐欺の県別データは警察庁が公表していますが、こちらは直近の年が中心です。「5年前と比べてどうか」を県ごとに追える公的データは、この知能犯認知件数が事実上ゆいいつの選択肢なのです。
「認知件数」は警察が把握した件数であって、実際に起きた件数ではありません。被害届が出やすい地域、取り締まりに力を入れている県では、数字が大きく出ます。この記事の数字は「被害の実数」ではなく「警察が捕捉した数」だと考えてください。
📈 詐欺が増えている県ランキング TOP10
人口10万人あたりの件数が、2019年度から2023年度で何倍になったか。
まず全国の数字を押さえます。知能犯の認知件数は、人口10万人あたりで2019年度の28.5件から2023年度の40.2件へ、5年で1.41倍になりました。詐欺は全国的に増えています。
そのうえで県ごとの増え方を見ると、差が激しい。全国平均の1.41倍を上回った県が31県ある一方で、ほとんど動かなかった県、そして減った県もあります。増え方の激しかった県を先に見てください。
香川県
2019年度 18位 → 2023年度 1位
人口10万人あたり23.1件から91.9件へ。5年で約4倍という、他県とは次元の違う増え方をしました。2023年度の全国順位は1位で、全国平均40.2件の2.3倍です。
鹿児島県
2019年度 46位 → 2023年度 26位
9.4件から33.2件へ。もともと全国で最も少ない部類だったのが、5年で真ん中まで上がってきました。順位で見ると地味ですが、増え方は全国2位です。
佐賀県
2019年度 32位 → 2023年度 3位
20.1件から65.3件へ。中位から一気にトップ3まで駆け上がりました。人口80万人規模の県でこの伸び方は目立ちます。
長崎県
2019年度 41位 → 2023年度 17位
15.8件から41.0件へ。下位グループから中位へ上がりました。2年後の特殊詐欺でも16位と、順位がほぼそのまま対応しています。
青森県
2019年度 34位 → 2023年度 12位
19.5件から45.2件へ。ただし青森は2年後の特殊詐欺では32位と静かでした。知能犯だけが増えて、特殊詐欺には結びついていないタイプで、後述する「外れる例」のひとつです。
栃木県
2019年度 17位 → 2023年度 40位
47都道府県でただひとつ、減った県。25.8件から22.6件へ。そして2年後の特殊詐欺でも46位と、全国で2番目に少ない県でした。減少は本物でした。
上位は地方が占めた
増え方トップ10は、香川・鹿児島・佐賀・長崎・青森・島根・滋賀・岐阜・和歌山・愛媛。大都市圏は1県も入っていません。「詐欺は都会の話」という感覚は、少なくとも増加の勢いで見るかぎり成り立ちません。
🔢 47都道府県 全ランキング表
増え方の順に全県。いちばん右が「2年後の答え合わせ」です。
増え方(倍率)の高い順に47県すべて並べました。右端の「2年後 SOS47順位」は、警察庁が公表している令和7年の特殊詐欺の県別発生率(人口10万人あたり)の順位です。つまり表の左側が2023年度までのデータ、右側が2年後の現実にあたります。
色を付けた行は、増え方も2年後の特殊詐欺も、どちらも上位10位以内だった県です。
| 増え方順 | 都道府県 | 2019年度 | 2023年度 | 増え方(倍率) | 2023年度の順位 | 2年後 SOS47順位 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 香川県 | 23.1 | 91.9 | 1位 | 1位 | |
| 2 | 鹿児島県 | 9.4 | 33.2 | 26位 | 18位 | |
| 3 | 佐賀県 | 20.1 | 65.3 | 3位 | 4位 | |
| 4 | 長崎県 | 15.8 | 41.0 | 17位 | 16位 | |
| 5 | 青森県 | 19.5 | 45.2 | 12位 | 32位 | |
| 6 | 島根県 | 17.6 | 39.1 | 18位 | 20位 | |
| 7 | 滋賀県 | 28.2 | 60.9 | 5位 | 6位 | |
| 8 | 岐阜県 | 26.9 | 57.8 | 6位 | 14位 | |
| 9 | 和歌山県 | 17.7 | 37.7 | 19位 | 17位 | |
| 10 | 愛媛県 | 21.0 | 42.7 | 15位 | 33位 | |
| 11 | 福岡県 | 20.4 | 41.5 | 16位 | 13位 | |
| 12 | 秋田県 | 16.3 | 32.7 | 29位 | 41位 | |
| 13 | 山口県 | 18.2 | 34.4 | 23位 | 36位 | |
| 14 | 大分県 | 10.9 | 20.4 | 44位 | 26位 | |
| 15 | 宮崎県 | 15.1 | 28.0 | 33位 | 44位 | |
| 16 | 徳島県 | 20.1 | 35.8 | 21位 | 27位 | |
| 17 | 兵庫県 | 37.1 | 66.3 | 2位 | 3位 | |
| 18 | 広島県 | 27.2 | 48.5 | 9位 | 23位 | |
| 19 | 奈良県 | 29.6 | 51.7 | 8位 | 11位 | |
| 20 | 石川県 | 14.8 | 25.3 | 36位 | 15位 | |
| 21 | 鳥取県 | 20.6 | 33.9 | 24位 | 10位 | |
| 22 | 三重県 | 28.4 | 46.1 | 11位 | 7位 | |
| 23 | 愛知県 | 27.6 | 44.8 | 13位 | 9位 | |
| 24 | 熊本県 | 15.7 | 25.4 | 35位 | 34位 | |
| 25 | 茨城県 | 22.8 | 36.6 | 20位 | 37位 | |
| 26 | 岡山県 | 17.9 | 26.9 | 34位 | 21位 | |
| 27 | 宮城県 | 31.7 | 47.3 | 10位 | 22位 | |
| 28 | 新潟県 | 21.4 | 31.1 | 30位 | 28位 | |
| 29 | 山形県 | 14.4 | 21.1 | 43位 | 42位 | |
| 30 | 沖縄県 | 31.1 | 44.6 | 14位 | 24位 | |
| 31 | 大阪府 | 43.0 | 61.5 | 4位 | 2位 | |
| 32 | 長野県 | 20.8 | 28.9 | 32位 | 29位 | |
| 33 | 福井県 | 13.1 | 17.5 | 46位 | 40位 | |
| 34 | 富山県 | 26.8 | 33.1 | 27位 | 30位 | |
| 35 | 静岡県 | 19.5 | 23.9 | 38位 | 35位 | |
| 36 | 山梨県 | 20.4 | 24.6 | 37位 | 43位 | |
| 37 | 岩手県 | 10.0 | 12.0 | 47位 | 31位 | |
| 38 | 北海道 | 16.4 | 19.4 | 45位 | 45位 | |
| 39 | 千葉県 | 29.2 | 33.5 | 25位 | 19位 | |
| 40 | 高知県 | 19.6 | 21.9 | 41位 | 25位 | |
| 41 | 福島県 | 19.9 | 21.7 | 42位 | 38位 | |
| 42 | 東京都 | 48.4 | 52.1 | 7位 | 5位 | |
| 43 | 神奈川県 | 32.9 | 34.6 | 22位 | 8位 | |
| 44 | 埼玉県 | 29.2 | 30.4 | 31位 | 12位 | |
| 45 | 群馬県 | 31.7 | 32.9 | 28位 | 47位 | |
| 46 | 京都府 | 23.0 | 23.0 | 39位 | 39位 | |
| 47 | 栃木県 | 25.8 | 22.6 | 40位 | 46位 |
数値は人口10万人あたりの知能犯認知件数。「増え方」は2023年度÷2019年度。「2年後 SOS47順位」は警察庁の令和7年・都道府県別特殊詐欺(狭義7手口)の人口10万人あたり発生率の順位。
増え方の上位と下位で、2年後がはっきり分かれた
増え方トップ10県の「2年後の特殊詐欺」の平均順位は16.1位。いっぽう増え方ワースト10県は28.4位。SNSを使った投資・恋愛詐欺で見ると差はさらに開き、14.1位 対 36.6位と、ほぼ真っ二つに分かれます。
🎯 香川県で何が起きたのか
2年前のデータが、2年後の1位を言い当てていた話。
この記事でいちばん伝えたいのが香川県です。順を追って見てください。
📐 図2:香川県の5年間と、その2年後
件数で追うと、香川県の知能犯認知件数は221件(2019年度)→ 290 → 303 → 449 → 851件(2023年度)。人口93万人ほどの県で、5年のあいだに約4倍です。2022年度から2023年度にかけては1年で1.90倍に跳ねています。同じ年の全国の伸びは1.21倍、東京にいたっては0.98倍と横ばいでしたから、これは香川だけに起きた現象でした。
ここが大事なところです。知能犯のデータは2023年度が最新で、警察庁の県別特殊詐欺データは令和7年(2025年)。あいだに2年の開きがあります。つまり「2023年度の時点で香川が飛び抜けている」ことは、2年後に香川が1位になることを知らずに言えたはずの話でした。
そして実際、令和7年の警察庁SOS47のデータで香川県は特殊詐欺の発生率(人口10万人あたり41.3件)で全国1位、SNS型投資・ロマンス詐欺(同37.4件)でも全国1位でした。前回の記事①で出した総合危険度ランキングでも香川が1位です。
香川県だけの話ではありません。佐賀県も同じパターンをたどっています。2019年度32位 → 2023年度3位(3.25倍)→ 2年後の特殊詐欺で4位、SNS型でも4位。滋賀県も増え方7位から2年後に6位。増え方の上位に入った県は、高い確率で「その後、実際に詐欺の多い県」になっています。
なぜ2年前の数字で当たるのか。ここからは推測になりますが、知能犯という枠には詐欺が最も多く含まれており、詐欺グループが新しい地域に活動を広げるとき、警察が最初に捕捉するのがこの数字だからだと考えられます。特殊詐欺という細かい分類に整理されて公表されるまでには時間がかかりますが、大分類である知能犯にはもっと早く現れる、という構図です。
もっとも、これは47都道府県という限られたサンプルでの1回きりの照合です。「知能犯が増えれば必ず2年後に詐欺が増える」という法則が確立したわけではありません。2024年度のデータが公表されたら、同じことがもう一度言えるかを確かめる必要があります。
🏙️ 増えていない県の「2つのタイプ」
増えていない=安全、ではありません。
表の下のほうを見ると、東京・神奈川・埼玉・千葉といった首都圏がずらりと並んでいます。増え方でいえば東京42位、神奈川43位、埼玉44位、千葉39位。ほとんど増えていません。
ところが2年後の特殊詐欺の順位を見ると東京5位、神奈川8位、埼玉12位、千葉19位。しっかり上位です。増えていないけれど、多い。
理由は簡単で、首都圏はもともと高かったからです。2019年度の知能犯の順位を見ると、東京は当時すでに全国1位(48.4件)でした。伸びしろがなかっただけで、水準は5年間ずっと高いままなのです。
急上昇タイプ
香川・佐賀・鹿児島・長崎
今まで静かだった地域に、新しく手口が入ってきた
高止まりタイプ
東京・神奈川・埼玉・大阪
増えてはいないが、もとから多い。警戒は続けるべき
減少タイプ
栃木(唯一)
2年後の統計でも実際に少なかった
低位安定タイプ
岩手・北海道・福井
5年間ずっと下位。ただし油断は禁物(後述)
減った県は栃木県ただ1県でした。0.88倍、つまり12%の減少です。2019年度は17位とむしろ中位から上でしたが、2023年度には40位まで下がりました。そしてこの評価も裏づけられていて、令和7年の特殊詐欺で栃木は46位。全国で2番目に少ない県です。
増えた県は2年後に多く、減った県は2年後に少ない。この方向性はきれいに一致しました。「順位が何位か」よりも「増えているか減っているか」のほうが、はるかに読み取りやすいシグナルです。自分の県の数字を見るときも、順位ではなく矢印の向きを見てください。
いちばん静かなのは岩手県です。人口10万人あたり10.0件(2019年度)→ 12.0件(2023年度)で、5年間ずっと46〜47位。東京の5分の1という水準でした。ただし後で述べるとおり、岩手は令和7年の特殊詐欺では31位まで上がっており、この統計だけで「安全」と結論づけるのは危険です。
🔍 この数字でわかること・わからないこと
都合のいい結果だけを見せるのはフェアではないので、外れた県も出します。
ここまで「当たった」話をしてきましたが、当然ながら外れた県もあります。全体としては知能犯と特殊詐欺のあいだにはっきりした関係があるものの(統計的な相関はおよそ0.8)、個別の県では順位が20位近くずれることがあります。
| 都道府県 | 知能犯 2023年度 | SOS47 特殊詐欺 | ずれ | どういうことか |
|---|---|---|---|---|
| 石川県 | 36位 | 15位 | 21位 | 知能犯では下位なのに、特殊詐欺は上位。見落としやすいタイプ |
| 青森県 | 12位 | 32位 | 20位 | 知能犯は増えたが、特殊詐欺には結びついていない |
| 群馬県 | 28位 | 47位 | 19位 | 知能犯は中位なのに特殊詐欺は全国最下位。群馬の知能犯は詐欺以外(偽造など)が主体とみられる |
| 埼玉県 | 31位 | 12位 | 19位 | 特殊詐欺は首都圏に集中するが、知能犯全体では平凡に見えてしまう |
| 岩手県 | 47位 | 31位 | 16位 | 知能犯は全国最下位でも、特殊詐欺は中位。「安全」とは言えない |
| 神奈川県 | 22位 | 8位 | 14位 | 首都圏の高止まりを、知能犯では拾いきれていない |
知能犯は詐欺以外も含む大きなくくりです。群馬のように「知能犯は中位だが特殊詐欺は最下位」という県も、岩手のように「知能犯は最下位だが特殊詐欺は中位」という県もあります。この記事が示せるのは全体の傾向と、増え方という大きな矢印までです。自分の県の詐欺の実数を知りたい場合は、記事①または各県警のページで特殊詐欺の数字を直接ご覧ください。
もうひとつ、正直に書いておくべきことがあります。この分析は最初、失敗しました。
「1年だけの数字はブレるから、5年平均にならして安定させよう」——統計を扱う人なら誰でも考えることです。実際に5年平均を出すと、香川は1位から4位に下がり、鹿児島にいたっては44位まで沈みました。「香川の2023年の跳ねは、たまたま大きな事件があっただけだろう」と、いったんはそう結論づけたのです。
ところが警察庁の実データと突き合わせてみると、答えは逆でした。5年平均よりも2023年の1年だけを使ったほうが、2年後の特殊詐欺をよく言い当てたのです。窓を広げるほど精度は落ち、5年平均は明確に劣化していました。
「平均すれば安定する」が通じない場面がある
平均が有効なのは、対象が動いていないときだけです。詐欺のように構造そのものが年単位で変わっていく現象では、平均化は古い情報を混ぜ込んで最新の実態を薄めてしまいます。香川の急上昇はノイズではなく、本物の警告だったわけです。
🏠 あなたの県はどのタイプか
順位表を眺めて終わりにせず、行動に落とし込みます。
上の表で自分の県を探して、「増え方」の欄を見てください。そのうえで、以下のように読み替えてもらえればと思います。
「新しい手口が入ってきている」
香川・鹿児島・佐賀・長崎・青森・島根・滋賀・岐阜・和歌山・愛媛・福岡・秋田・山口・大分・宮崎。
これまで「うちの田舎は大丈夫」と思われていた地域に、詐欺グループが活動を広げています。今まで来なかった種類の電話やSNSのメッセージが、今年から回ってくると考えてください。
「増えていないが、多い」
東京・神奈川・埼玉・千葉・大阪。
増え方の順位は低いものの、水準は5年間ずっと全国上位です。「最近ニュースを聞かない」は「減った」ではありません。すでに日常になっているだけです。
「今は静かだが、条件は同じ」
栃木・岩手・北海道・福井・山形など。
数字のうえでは落ち着いています。ただし岩手のように、知能犯は最下位でも特殊詐欺は31位という県もあります。SNSやメールを使った手口に県境は関係ありません。
① 知らない番号は出ない。留守番電話を常時オンにするだけで、電話を使った詐欺はほとんど成立しなくなります。
② お金の話が出たら、いったん切って自分からかけ直す。相手が名乗った番号ではなく、通帳や公式サイトに載っている番号へ。
③ SNSで知り合った相手からの投資の誘いは、例外なく詐欺だと考える。令和7年のSNS型投資詐欺は全国で9,523件、ロマンス詐欺は5,645件が認知されています。
📚 データの出どころと作り方
誰でも同じ数字を再現できるように、手順を残しておきます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 知能犯認知件数 | 総務省「社会・人口統計体系(都道府県データ 基礎データ)」K 安全 K420104_知能犯認知件数(e-Stat 統計表ID 0000010111) |
| 人口 | 同「A 人口・世帯」A1101_総人口(e-Stat 統計表ID 0000010101) |
| 対象年度 | 2019〜2023年度(知能犯の都道府県別は2023年度が最新) |
| 特殊詐欺(答え合わせ用) | 警察庁 SOS47「発生状況」より令和7年の都道府県別・手口別データ。狭義の特殊詐欺=手口7種の合計を使用(SOS47の「特殊詐欺」列はSNS型を含む総数のため) |
| 計算方法 | 各年度の認知件数 ÷ 同年度の総人口 × 100,000。増え方=2023年度の率 ÷ 2019年度の率 |
| 検算 | 47都道府県の合計が、5年度すべてで公表されている全国値と完全一致することを確認済み |
統計を扱ううえでの注意点も改めて書いておきます。
1つ目。認知件数は警察が把握した件数であり、実際の被害件数ではありません。県警の取り締まり方針や、被害を届け出やすい風土の違いが混ざります。
2つ目。知能犯には詐欺のほかに横領・偽造・背任・汚職が含まれます。詐欺の代理として使える指標ではありますが、イコールではありません。
3つ目。これは県という集団の傾向であって、そこに住む一人ひとりの被害の遭いやすさではありません。「香川県民は騙されやすい」といった読み方は、統計の誤用(生態学的誤謬といいます)にあたります。
4つ目。全国の水準そのものが5年で1.41倍に増えています。順位の比較には使えますが、「何件だから危ない・安全」という絶対的な線引きには使えません。
次回予告:増えた県ほど「SNS型詐欺」が多いのはなぜか
今回の分析の副産物として、もうひとつ面白いことがわかりました。知能犯の「増えた分」は、従来型の特殊詐欺よりも、SNSを使った投資詐欺・ロマンス詐欺のほうを強く言い当てます。高齢化率やDID(人口集中地区)といった従来の説明よりも、はるかに強い関係です。次回はここを掘り下げます。


コメント