子どもが「AIに相談」する時代に
大人ができること
悩みを抱えた子どもが、家族や先生よりも先に生成 AI に打ち明けるようになっています。
AI の良い面と危うさ、各社の安全機能、家庭で決めておきたいことを、やさしく整理しました。
ひとりで抱え込まず、話を聞いてもらえる場所があります。電話が苦手なら、チャットや LINE の相談もあります。
📞 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(24時間・無料)
📞 #いのちSOS:0120-061-338(24時間・無料)
📞 チャイルドライン(18歳まで):0120-99-7777(毎日16〜21時・無料)
💬 あなたのいばしょ:チャット相談(24時間365日・無料・匿名)
ほかの窓口は、この記事の後半にまとめています。命に危険が迫っているときは、119番または110番に連絡してください。
📋 目次
📰 いま何が起きている?
首相が海外の大手 IT 企業に協力を求めるほど、社会の課題になっています。
2026年10月2日、高市首相は X で、米アップル社のティム・クック氏(現・会長)と、新しく CEO に就いたジョン・ターナス氏から手紙を受け取ったことを明らかにしました。首相は、悩みを抱える子どもが生成 AI に相談するケースが増えていること、海外では生成 AI に相談した若者の自殺が社会問題になった事例があることを伝えました。そのうえで、端末に搭載される生成 AI に、自殺防止に役立つ機能を実装するなどの対策への協力を求めました。
アップル社からは、生成 AI を含め、深刻な悩みを抱える利用者を地域の支援窓口へつなぐ取り組みを進めていること、子ども向けの安全対策を強化していくことが説明されたといいます。この投稿は3.5万件以上の「いいね」と1,500件以上の返信を集め、多くの人の関心を呼びました。
📊 数字で見る子どもと生成 AI
| 指標 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| 小中高生の自殺者数(2025年) | 538人。統計のある1980年以降で最多。全体の自殺者数は減っているなかで増え続けている | 厚生労働省(確定値) |
| 中学生の生成 AI 利用率 | 4割超。前年の約3倍に | NTTドコモ モバイル社会研究所(2025年11月調査) |
| 「死にたい」気持ちが限界のときの相談先 | 2025年8月:生成 AI が26%で最多 2026年2月:生成 AI が50%で最多、身近な大人は14% | NPO法人 自殺対策支援センター ライフリンク |
※ ライフリンクの調査は、同法人のオンラインの相談の場を利用する子ども・若者が対象です。子ども全体の傾向をそのまま表すものではありません。
💬 「死にたい」気持ちが限界になったときの相談先(18歳以下・2025年8月)
半年で「AI に相談」が大きく増えた
同じ団体の調査で、限界のときの相談先に生成 AI を選んだ子どもは、2025年8月の26%から2026年2月には50%に増えました(調査の対象や方法は少しずつ異なります)。一方、家族や先生などの身近な大人は1〜2割にとどまっています。子どもが最初に本音を打ち明ける相手が、人から AI に移りつつあるのです。
💭 子どもはなぜ AI に相談するのか
「AI に頼るなんて」と考える前に、子どもの側から見てみましょう。
AI は「否定しない」「迷惑がらない」
ライフリンクの調査では、子どもたちが AI を選ぶ理由として、「否定されない」「迷惑だと思われない」「変だと思われない」といった声が挙がりました。一方で、大人に相談できない理由には、「否定されたり責められたりしそう」「分かってもらえないと思う」が並びます。子どもが AI を選ぶのは、AI が特別に優れているからというより、人に打ち明けることへの不安が大きいからだと言えます。
いつでも、すぐ話せる
夜中でも休日でも、思い立ったときにすぐ話せます。「話を聞いてもらえた」という感覚で、気持ちが少し落ち着くこともあります。
最初の一歩のハードルが低い
人に話す前に、自分の気持ちを言葉にする練習になります。ライフリンクも、AI を人の支援につながる「入口」として生かすことを提言しています。
相談窓口を教えてくれる
主要な AI サービスの多くは、深刻な悩みを打ち明けられると相談窓口を案内するよう作られています。アップル社も、利用者を地域の支援窓口へつなぐ取り組みを進めているとしています。
⚖️ 相談相手ごとの特徴(筆者の評価)
| 特徴 | 🤖 生成 AI | 👨👩👧 身近な大人 | 📞 専門の相談窓口 |
|---|---|---|---|
| いつでも話せる | |||
| 打ち明けやすさ | |||
| 状況に合わせた助け 会いに行く・環境を変える |
|||
| 危機のときの対応 |
※ スコアは一般的な傾向を示す筆者の目安です。サービスや人によって大きく異なります。
AI と人は「どちらか」ではなく「つなぐ」関係
AI は打ち明けやすい一方で、実際に会いに行く、環境を変える、命を守るために動くといったことはできません。目指したいのは、AI を取り上げることではなく、AI で言葉にできた気持ちを、人の支えにつなげることです。
⚠️ AI への相談に潜む危うさ
便利な相談相手だからこそ、知っておきたい限界があります。
話を合わせすぎる
AI は相手に寄り添うように作られているため、思い込みや否定的な考えにまで同調してしまうことがあります。気持ちを受け止めることと、考えを強めてしまうことは紙一重です。
AI だけに頼るようになる
いつでも優しく応じてくれる AI に慣れると、人と話すことがさらに難しく感じられるようになるおそれがあります。恋人や親友のように振る舞う AI では、強い感情的な結びつきが生まれることもあります。
危機を見逃すことがある
安全のための仕組みはあっても、長い会話の途中や、遠回しな表現では、危険なサインを見逃すことがあります。AI は救急車を呼ぶことも、そばに駆けつけることもできません。
プライバシーの問題
悩みの内容は、とても繊細な個人情報です。会話の記録がどう保存され、何に使われるのかは、サービスや設定によって異なります。
多くの AI サービスは、利用できる年齢を決めています(たとえば ChatGPT は13歳以上で、18歳未満は保護者の同意が必要)。しかし、自己申告の年齢だけでは、実際の年齢を確かめきれません。「年齢制限があるから安心」とは考えず、家庭でも見守る姿勢が大切です。
🛡️ 各社の安全機能と海外の動き
海外での深刻な事例をきっかけに、AI 企業の対策が急速に進んでいます。
米国では、AI チャットボットとの会話が10代の若者の死に関係したとして、遺族が AI 企業を訴える裁判が相次ぎました。こうした流れを受けて、各社は未成年向けの対策を次々に打ち出しています。
🔗 OpenAI が ChatGPT に保護者向け機能を導入
保護者と10代の子どものアカウントを連携し、使える時間帯や機能を管理できるようになりました。
🚫 Character.AI が18歳未満の自由な会話を禁止へ
キャラクターと会話できるサービスの Character.AI が、未成年による自由な会話(チャット)をやめる方針を発表しました。
⚖️ Character.AI と Google が訴訟の和解に合意
10代の心の健康への被害や自殺をめぐる複数の訴訟で、和解に合意したと報じられました(条件は非公開で、責任は認めていない)。
🧑🎓 OpenAI が「ChatGPT for Teens」を開始
13〜17歳と推定された利用者を、安全対策を強めた10代向けの体験に自動で切り替える仕組みです。
🇯🇵 日本の首相がアップル社に協力を要請
端末に搭載される生成 AI での自殺防止対策を求め、アップル社は支援窓口へつなぐ取り組みを説明しました。
🔧 ChatGPT の主な保護機能
アカウントの連携
保護者と子どもの ChatGPT アカウントを連携して使います。連携には子ども本人の同意が必要です。
保護者への知らせ
子どもが深刻な苦しみの中にある兆候が見られた場合、専門の訓練を受けた担当者が確認したうえで、保護者にメールや SMS などで知らせる仕組みです。
ChatGPT for Teens
自傷・暴力・摂食障害・性的な内容や、恋愛のようなロールプレイなどを初期設定で制限します。使いすぎを防ぐ休憩のすすめなども組み込まれています。
機能は国や時期で変わる
ここで紹介した機能の内容や、日本での提供状況は変わることがあります。お子さんが使っているサービスの公式のヘルプページで、最新の内容を確認してください。スマートフォン本体の見守り機能(iPhone の「スクリーンタイム」、Android の「ファミリーリンク」など)と組み合わせると、より安心です。
🏠 家庭で決めておきたいこと
目的は「監視」ではなく、「困ったときに大人を頼れる関係」をつくることです。
🗣️ 「AI に相談してもいいよ」と伝える
頭ごなしに禁止すると、子どもは隠れて使うようになり、かえって見えにくくなります。まずは使っていることを話せる雰囲気をつくりましょう。
🤝 「でも、つらいときは人にも話してね」と約束する
AI は話を聞けても、そばにはいられないことを伝えます。家族以外の相談先(先生、スクールカウンセラー、相談窓口)も一緒に確認しておくと、子どもが選べる道が増えます。
📱 相談窓口をスマホに登録しておく
24時間子供SOSダイヤルなどの番号や、チャット相談のページを、子どものスマホに一緒に登録しておきます。いざというときに探さずに済みます。
⚙️ 年齢に合った設定を一緒に行う
保護者向け機能やスマホの見守り機能は、子どもと話し合って一緒に設定しましょう。こっそり設定すると、信頼を損なうおそれがあります。
🌙 夜の使い方を決める
つらい気持ちは夜に強くなりがちです。寝る前の使用時間や、スマホを置く場所など、睡眠を守るルールも大切です。
👀 気づいてほしい変化のサイン
ライフリンクの調査では、6割以上の子どもが「大人に気づいてほしい」と答えています。子どもが自分から話すのを待つだけでなく、次のような変化に気づいたら、大人のほうから声をかけてみましょう。
🛌 生活の変化
- 眠れない、または寝すぎる
- 食欲が極端に落ちる・増える
- 朝起きられず、学校を休みがち
💬 言葉や態度の変化
- 「消えたい」「いなくなりたい」などの言葉
- 好きだったことに興味を示さなくなる
- イライラする、急に黙り込む
📱 行動の変化
- 夜遅くまで AI やスマホと向き合っている
- 人との会話を避け、画面にばかり向かう
- 大切な物を人にあげる、身の回りを整理する
🫂 「死にたい」と打ち明けられたら
うまく話せなくても大丈夫。大切なのは、逃げずに向き合うことです。
子どもから「死にたい」と打ち明けられたり、AI との会話からつらい気持ちに気づいたりしたとき、大人も動揺するのは自然なことです。自殺予防の現場では、「TALK の原則」という対応の基本がよく紹介されています。
Tell(伝える)
「あなたのことが心配だよ」と言葉にして伝える
Ask(尋ねる)
「死にたいと思っているの?」と率直に聞く
Listen(聴く)
否定や説教をせず、気持ちを最後まで聴く
Keep safe(安全を確保)
ひとりにせず、専門家や相談窓口につなぐ
「死にたい」と聞いても、気持ちを強めることはない
「そんなことを聞いたら、かえって考えさせてしまうのでは」と心配になるかもしれません。しかし、率直に尋ねることは、「この人には話していいんだ」という安心につながるとされています。
| 避けたい言葉 | 代わりにかけたい言葉 |
|---|---|
| 「そんなこと考えちゃだめ」 | 「話してくれてありがとう」 |
| 「もっとつらい人もいるよ」 | 「それだけつらかったんだね」 |
| 「AI なんかに相談して」 | 「AI にも話せてよかった。今度は私にも聞かせて」 |
| 「がんばれば大丈夫」 | 「一緒にどうしたらいいか考えよう」 |
子どもの命に関わる悩みを、保護者だけで受け止めるのは大変なことです。学校、かかりつけ医、地域の精神保健福祉センター、相談窓口など、周りの専門家を頼ってください。保護者自身が相談できる窓口もあります。命に危険が迫っているときは、迷わず119番・110番に連絡してください。
📞 相談窓口一覧
子ども本人も、保護者も使えます。電話が苦手ならチャットや LINE も。
| 窓口 | 連絡先 | 受付時間 | 対象・特徴 |
|---|---|---|---|
| 24時間子供SOSダイヤル | 0120-0-78310 | 24時間 | 子ども・保護者。いじめなどの悩み全般(文部科学省) |
| チャイルドライン | 0120-99-7777 | 毎日16〜21時 | 18歳までの子ども専用。チャット相談もあり |
| #いのちSOS | 0120-061-338 | 24時間 | 「死にたい」などの気持ちを抱える人 |
| よりそいホットライン | 0120-279-338 | 24時間 | 全年代。さまざまな悩み |
| いのちの電話 | 0120-783-556 | 毎日16〜21時 毎月10日は8時〜翌8時 | 全年代 |
| こころの健康相談統一ダイヤル | 0570-064-556 | 都道府県により異なる | 全年代。お住まいの地域の窓口につながる |
| こどもの人権110番 | 0120-007-110 | 平日8時30分〜17時15分 | 子ども・保護者(法務省) |
| あなたのいばしょ | チャット相談 | 24時間365日 | 無料・匿名 |
| 生きづらびっと | LINE(@yorisoi-chat) | サイトで確認 | SNS・チャット相談(ライフリンク) |
※ 2026年10月時点で、厚生労働省の「まもろうよ こころ」などに掲載されている情報をもとに作成しました。受付時間は変わることがあるため、最新情報は各窓口のサイトでご確認ください。
今日、家族で1つだけ登録しよう
全部を覚える必要はありません。まずは「24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)」を、家族みんなのスマホに登録しておきましょう。「なやみいおう」と覚えると忘れにくくなります。
❓ よくある質問
保護者の方から出てきそうな疑問に答えます。
子どもに AI を使わせないほうが安全ですか?
一律に禁止することは、あまりおすすめできません。AI は学校の学習でも使われ始めており、完全に遠ざけるのは現実的ではないからです。禁止すると、隠れて使うようになり、困ったときに大人に話しにくくなるおそれもあります。年齢に合った設定をしたうえで、使い方を話し合うほうが安全です。
子どもと AI の会話を、こっそり見てもいいですか?
命に関わる心配があるときは、安全を最優先にしてかまいません。ただし、日常的にこっそり見ることは、知られたときに信頼を大きく損ない、子どもが本音を話さなくなるおそれがあります。見守りのルールは、子どもと一緒に決めるのが基本です。ChatGPT の保護者向け機能でも、保護者が会話の内容を読めない作りになっています。
子どもが AI と恋人のような会話をしています。大丈夫でしょうか?
キャラクターとの会話を楽しむこと自体は、すぐに問題になるとは限りません。ただ、現実の人間関係を避けるようになる、AI と話せないと落ち着かないといった様子があれば注意が必要です。海外では、こうした使い方が問題視され、未成年向けに制限するサービスも出てきています。
AI が相談窓口を案内してくれるなら、それで十分では?
案内は大切な一歩ですが、実際に電話をかけたり、チャットを始めたりするには、まだ高い壁があります。「番号を教えられても、かける勇気が出ない」という子どもも少なくありません。大人が「一緒にかけてみようか」と寄り添うことで、その壁を越えやすくなります。
🎯 まとめ
AI を「入口」に、人の支えへ。
AI への相談は増えている
限界のときの相談先で AI が最多に
良い面と危うさがある
話しやすいが、そばにはいられない
安全機能は進んでいる
保護者向け機能や10代向けの体験
最後は人のつながり
気づき、声をかけ、つなぐのは大人
① 子どもが使っている AI サービスと、その保護者向け機能を確認する
② 「AI に相談してもいい。でも、つらいときは人にも話してね」と言葉で伝える
③ 24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)を家族のスマホに登録する
④ 夜のスマホの使い方を子どもと一緒に決める
⑤ いつもと違う様子に気づいたら、大人のほうから声をかける
子どもが AI に悩みを打ち明けるのは、誰かに聞いてほしいという気持ちの表れでもあります。その気持ちを否定せず、AI で言葉にできた思いを、家族や先生、専門の相談窓口といった人の支えにつなげていくこと。それが、AI 時代の子どもを守るために、私たち大人にできることです。
📚 参考情報
- 時事ドットコム:高市首相、米アップルに自殺対策要請(2026年10月2日)
- 時事ドットコム:昨年の自殺者、最少1万9188人 小中高生は最多―厚労省確定値
- NTTドコモ モバイル社会研究所:生成AI利用率 中学生は前年比約3倍で4割を超える
- 教育新聞:「死にたい」気持ちの相談先はAIが最多(2025年8月調査)
- NPO法人ライフリンク:こどもの「死にたい」気持ち、限界になった相談先は「生成AI」が最多(2026年2月調査)
- OpenAI:Introducing parental controls
- OpenAI:Introducing ChatGPT for Teens
- CNN:Character.AI and Google agree to settle lawsuits over teen mental health harms
- 厚生労働省:まもろうよ こころ
- 文部科学省:24時間子供SOSダイヤル


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