韓国の銀行を襲った「AIハッキング」の正体

🇰🇷 2026年10月 インシデント解説

韓国の銀行を襲った「AIハッキング」の正体

新韓銀行など7つの金融機関で個人情報が流出。
なぜ「AI侵入テストツールが使われた」と分かったのか、その手がかりを1つずつ読み解きます。

🤖 AIエージェント 🏦 金融機関 🔑 クレデンシャルスタッフィング 🔍 フォレンジック 🛡️ 対策
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この記事を30秒で

2026年9月末〜10月初め、韓国の新韓銀行(約2.5万人)をはじめとする複数の金融機関から顧客や従業員の情報が流出しました。調査の過程で、攻撃に使われたサーバーから中国語圏のオープンソースAI侵入テストツール「ARTEX」の痕跡が見つかり、韓国の金融保安院も「攻撃者がこのAIツールを使った」と説明しています。ただし「AIがひとりでに銀行を襲った」わけではなく、人間のハッカーがAIを道具として使ったというのが当局の見方です。ツールの特定は、①攻撃サーバーの画面タイトル、②攻撃ログに共通して残る特有のデータ、③IPアドレスを変えても変わらない攻撃パターン、という3つの手がかりによるものでした。

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🏦 何が起きたのか:事件の全体像

約1週間のうちに、韓国の大手銀行から貯蓄銀行やキャピタル会社まで被害が広がりました。

📅

最初に気づいたのは新韓銀行でした

攻撃は9月27日〜10月1日ごろに集中していました。報道によると、新韓銀行には9月28日の夕方に侵入され、銀行が異常に気づいたのは翌29日の朝です。最後の接続元を遮断できたのは30日の未明でした。新韓銀行が10月1日に流出を公表し、金融保安院がその攻撃元IPアドレスをほかの金融機関に共有しました。それを受けて各社が自社システムを総点検したところ、KB国民銀行やハナ銀行などでも被害が次々と見つかりました。

🗓️ 事件のタイムライン

9/28 夕方 9/29〜30 10/1 10/2ごろ 10/5(日) 10/7 新韓銀行に 侵入 翌朝に検知し 30日未明に遮断 新韓銀行が公表 IPを他行に共有 他行の被害が判明 ARTEXの痕跡が報じられる 金融委員会が 緊急会議 ネットワーク分離の 規制緩和審査を延期 攻撃が集中した期間:9/27〜10/1ごろ

📊 被害を受けた主な金融機関

報道の時点によって数字が少しずつ違います。下の表は、10月2日ごろのヘラルド経済の報道と、10月5日ごろのKorea Heraldなどの続報をもとにまとめたものです。

機関流出の規模(報道)主な情報狙われたシステム
新韓銀行約2万5,729人氏名、電話番号、年収、借入限度額など融資募集人(ローンの仲介業者)向けのサービス
KB国民銀行119人(続報では153人とも)氏名、連絡先、住民登録番号(暗号化済み)など従業員の業務用システム
ハナ銀行89人氏名、住所、電話番号など従業員の業務用システム
BNK釜山銀行11人(外部委託の開発者)開発担当者の情報従業員の業務用システム
イェガラム貯蓄銀行約4万人氏名、生年月日、連絡先など調査中
ウェルカム貯蓄銀行約2,200件(調査中)法人顧客の情報など調査中
現代キャピタル146人住宅ローン募集人の情報調査中
ウリ銀行・NH農協銀行流出なし(侵入の試みは遮断)——
⚠ 注意:数字の食い違いについて

海外のメディアには「KB国民銀行のカード情報11万9,000件」と書いたものもありますが、韓国の主要メディアはいずれも「119人」と報じています。桁の取り違えとみられます。被害の合計も「約2万6千人」から「6万5千人超」まで報道によって幅があり、調査が進めば変わる可能性があります。

🎯

ネットバンキングではなく「周辺の業務システム」が狙われた

今回狙われたのは、お客さまが使うインターネットバンキングやスマホアプリではありません。融資の仲介業者や従業員、外部の協力会社が使う、インターネットから接続できる業務システムでした。金融保安院は、攻撃者が「入ってきて照会する方法で情報を持ち出した」と説明しています。つまり、システムを壊すのではなく、正規の利用者のふりをしてログインし、画面で情報を検索するようにして盗んでいったのです。

02

🤖 ARTEXとは何か:AI侵入テストツールの仕組み

もともとは「守る側」がセキュリティ診断に使うために作られたツールです。

🧑‍⚕️

「侵入テスト」ってそもそも何?

侵入テスト(ペネトレーションテスト)は、許可を得たうえで、攻撃者と同じ手順で自社のシステムに侵入できるか試す健康診断のようなものです。本来は専門家が何日もかけて、調べる→弱点を探す→試す→結果を確かめる、という作業を手で繰り返します。ARTEXは、この一連の作業をAI(大規模言語モデル)に任せて自動化することを目指したツールです。

ツールの概要

ARTEX

GitHubで公開されているオープンソース(AGPL-3.0)

「AI自主渗透测试系统(AI自律侵入テストシステム)」と名乗る、中国語圏向けのツールです。中国のIT大手・百度(Baidu)が主催した攻防コンテスト「agent+」の優勝作品とされています。誰でもダウンロードでき、英語版のUIを付けた派生版も出回っています。

🧩 構成Goのバックエンド+Webの管理画面+データベース
⭐ 注目度GitHubのスター数は約1,700(執筆時点)
オープンソースLLMマルチエージェント
仕組み①

計画役と作業役の分業

プランナー(計画役)とワーカー(作業役)

計画役のAIが「次に何を調べるか」のやることリストを作り、複数の作業役AIに仕事を割り振ります。作業役が何かを見つけると、それをきっかけに計画役が次の手を考えます。人間のチームが手分けして診断する様子を、AI同士で再現する仕組みです。

自動で計画結果に合わせて修正
仕組み②

2つの「地図」と通信の記録

資産グラフ+探索グラフ、トラフィックプロキシ

見つけたサーバーや画面を「資産の地図」、試した手順を「探索の地図」として記録し、どこまで調べたかを可視化します。さらに、送受信したすべての通信を記録する中継機能(プロキシ)を内蔵しています。管理画面には、AIがどれだけトークン(処理量)を使ったかまで表示されます。

可視化全通信を記録

🔧 ARTEXのような「AI侵入テストツール」の動き方(概念図)

👤 操作する人 目標と対象を指定 🧠 計画役のAI やることリストを作り 仕事を割り振る ① 偵察 公開されている画面を探す ② 弱点探し ツールを実行して試す ③ 検証 成功したかを確かめる 🗺️ 発見の地図 見つけたものを記録 → 計画役が次の手を考える ↻ 新しい発見のたびに繰り返す
🚨 重要:「守るための道具」が、そのまま「攻める道具」になる

ARTEXの説明文には、個人の学習・研究・ローカル環境での検証以外には使わないこと、実在するオンラインのシステムを対象にしないことという注意書きがあります。しかしオープンソースである以上、誰がどう使うかを開発者が止めることはできません。侵入テストツールは、ナイフや合鍵と同じように、使う人によって役割が変わります。今回の事件で、AIで自動化された侵入テストツールも例外ではないことがはっきりしました。

03

🔍 核心:なぜAIツールの使用が分かったのか

「AIで攻撃された」と言われても、どう見分けたのかが一番気になるところです。手がかりは大きく3つありました。

🕵️

攻撃者は「AIを使いました」とは書き残さない

攻撃の通信そのものには、ふつう「この攻撃はAIが行いました」という印は付いていません。では調査する側はどう判断したのか。答えは、道具には道具ならではのクセがあるという点にあります。工具の傷跡から使われた工具が分かるように、ソフトウェアにも固有の名前や画面、通信の形が残ります。今回はそうした痕跡が複数の方向から見つかりました。

🧩 3つの手がかりが「ARTEX」を指した

手がかり① 画面のタイトル 攻撃サーバーのWebページに 「ARTEX-自主渗透测试控制台」 手がかり② 攻撃データの共通点 銀行のログを逆にたどると ARTEX特有のデータが共通して残る 手がかり③ 変わらない手口 IPを替えても、手口と狙う弱点は 7つの機関で同じ 結論 同じ攻撃者が ARTEXを使った ただし AIが単独で 動いたわけではない

🔎 手がかり①:攻撃サーバーに「AI自律侵入テスト管理画面」の表示

最初に注目を集めたのは、韓国のセキュリティ企業Genians(ジニアンズ)のセキュリティセンター長、ムン・ジョンヒョン氏がSNSで公開した分析でした。新韓銀行を狙ったとみられるクレデンシャルスタッフィング攻撃に使われたWebサーバーを調べたところ、そのページのタイトル(ブラウザのタブに出る名前)に次の文字列があったのです。

<title>ARTEX-自主渗透测试控制台</title>
(日本語訳:ARTEX - AI自律侵入テスト コンソール)

「控制台」はコンソール、つまり管理画面のことです。攻撃に関わったサーバーで、ARTEXの管理画面が動いていた(あるいはARTEX関連の環境が使われていた)ことを示す、とても分かりやすい手がかりです。

💡

なぜ管理画面が外から見えたのか(考えられる理由)

ARTEXは、ブラウザで開くWeb型の管理画面を持っています。攻撃者がこの管理画面を、パスワードやアクセス制限なしにインターネット上に開いたまま運用していたのなら、外部の誰でもその画面のタイトルを見られます。インターネット全体を定期的に調べている検索サービス(ShodanやCensysなど)にも記録されます。調査者が攻撃元のIPアドレスを調べたときにこの表示に行き当たった、という流れが考えられます。ただし、具体的にどう見つけたかは公表されていないため、ここは推測です。攻撃者が自分の道具を隠しきれていなかった、とも言えます。

🔎 手がかり②:銀行のログに残った「ARTEXが送る特有のデータ」

手がかり①はあくまで「攻撃に関わったサーバー上にARTEXがあった」という状況証拠です。この段階では、まだ「実際の攻撃にARTEXが使われた」とまでは言えません。決め手になったのは、韓国の金融機関のセキュリティを支える公的機関「金融保安院」による調査です。ヘラルド経済の取材に対し、金融保安院の関係者は次のように説明しています。

1

📂 新韓銀行のアクセスログを集める

いつ・どこから・どの画面に・どんなリクエストが来たか、という銀行側の記録を集めます。

2

🌐 攻撃者のIPアドレスを逆にたどる

不審なアクセス元のIPアドレスを洗い出し、そのサーバーがどんなものかを調べます(手がかり①ともつながります)。

3

🧬 攻撃データを細かく分解する

金融保安院は、攻撃データの中に「ARTEXから送られる特定のデータ」が共通して含まれていたと説明しています。これを使えば攻撃者を特定できるといいます。

4

📢 ほかの金融機関に共有し、同じ痕跡を探す

新韓銀行の分析結果(攻撃元IPなど)をほかの金融機関に知らせ、各社が自社システムを総点検しました。その結果、別の銀行でも同じ攻撃者による被害が見つかりました。

「ARTEXから送られる特定のデータ」が具体的に何なのかは、公表されていません。一般論として、自動化ツールは次のようなクセを通信に残しやすいことが知られています。

🏷️ 名乗り方

  • 通信に付く「どのソフトから来たか」の情報(User-Agentなど)
  • ツール固有の文字列や設定値

📐 リクエストの形

  • 項目の並び順や書き方のクセ
  • 毎回同じ順番で同じ場所を調べる

⏱️ タイミング

  • 人間では無理な速さと間隔
  • 昼夜を問わず一定のペース
⚠ 注意

上の3つは、自動化ツールを見分けるときに一般的に使われる観点の紹介です。金融保安院がこのどれを使ったのかは明らかにされていません。「ARTEXのUser-Agentで特定された」といった情報は、現時点では確認できていません。

🔎 手がかり③:IPアドレスを替えても変わらない「手口」

金融保安院は、攻撃者について「IPアドレスが変わっても、攻撃の手口と狙う弱点は同じ」とも分析しています。攻撃者は、ブロックされるとすぐ別のIPアドレスに切り替えて攻撃を続けていました。それでも、どの画面を狙うか、どんな順番で試すか、どの弱点を突くかは、7つの機関でほぼ共通していたのです。

これは「同じ道具を、同じ設定で、いくつもの標的に向けて回した」と考えると自然に説明できます。人間が1つずつ手作業で攻めるなら、相手ごとにやり方が少しずつ変わるはずです。1週間ほどの間に複数の金融機関へ、同じ型の攻撃が並行して行われていたこと自体が、自動化ツールが使われたことを示す状況証拠になります。

🧭

補足:海外の報道で伝えられている追加の分析

米国のテック系メディアは、セキュリティ企業の分析として、ARTEXの活動に関連するIPアドレスが世界で359件見つかったこと、攻撃基盤の約9割が韓国国外のサーバー(米国、中国、香港など)だったことを報じています。また、別のAI攻撃ツールの痕跡も見つかったとしています。ただし、これらは現時点では1つのメディアが伝えている情報で、韓国当局の正式な発表ではありません。

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⚖️ それぞれの証拠はどこまで確か?

「AIハッキング」という言葉だけが独り歩きしないように、分かっていることとまだ分からないことを分けて整理します。

📊 証拠ごとの確からしさ(筆者による評価)

証拠・主張出どころ確からしさ言えること/言えないこと
攻撃サーバーに「ARTEX」管理画面のタイトル 民間のセキュリティ研究者
70
そのサーバーでARTEXが動いていた可能性は高い。ただし、それだけでは「攻撃に使った」証明にはならない
ログにARTEX特有のデータが共通して残る 金融保安院(公的機関)
85
実際の攻撃通信とツールが結び付いた、最も強い根拠。ただし具体的な中身は非公開
IPを替えても手口が同じ 金融保安院
75
同じ攻撃者・同じ道具による一連の攻撃である可能性が高い
「AIが自律的に銀行を攻撃した」 一部の見出し・SNS
15
金融保安院ははっきり否定。「ハッカーがAIを道具として使った」
「中国(国家)による攻撃」 一部の論評
10
ツールが中国語圏のものでも、誰でも入手できる。攻撃者の国籍や所属は分かっていない

※ スコアは、公開情報の出どころと内容をもとにした筆者の主観的な目安です(2026年10月7日時点)。

✅

確認済み

複数の金融機関から情報が流出した

✅

当局が説明

攻撃者はARTEXを道具として使った

🔶

有力

入口は流出したIDとパスワードの使い回し(クレデンシャルスタッフィング)

❓

不明

攻撃者は誰か、どの国の人か、目的は何か

❓

不明

AIがどの工程をどこまで担ったのか

🚨 重要:「AIが勝手に銀行を襲った」は誤解です

金融保安院の関係者は「AIが攻撃に使われたのは事実だが、AIが人の関与なしに独自に動いたわけではない。ハッカーがAIを道具として使ったものだ」と強調しています。ARTEX自体にも、ツールの実行前に人の承認を求める仕組みや、人と対話する機能があります。誰を狙い、何を盗むかを決めたのは人間です。AIはその作業を速く、大量に、休まずこなす手足として使われた、と理解するのが正確です。

05

⚡ AIは攻撃をどう変えたのか

手口そのものは古典的です。変わったのは「規模」と「速さ」と「必要な技術力」でした。

🔑

入口は「合鍵の総当たり」という昔ながらの手口

入口とみられているクレデンシャルスタッフィングは、どこかで漏れたIDとパスワードの組み合わせを、別のサービスのログイン画面で片っ端から試す攻撃です。ある専門家は、これを「複製した鍵で、同じ鍵が合いそうな別のドアを次々に試すようなもの」とたとえています。パスワードを使い回している人がいる限り、どこかのドアは開いてしまいます。目新しい手口ではありません。

📊 従来の攻撃とAIを使った攻撃の違い(イメージ)

観点👤 人の手作業が中心の攻撃🤖 AIツールを使った攻撃
同時に狙える標的の数
少
多
偵察から侵入までの速さ
遅
速
攻撃者に必要な専門知識
高
低
ブロックされたときの立て直し 人が考え直す IPを替え、結果を見ながら自動で手を変える
痕跡の残り方 人ごとにばらつく ツール特有のクセがそろって残る(今回の特定の決め手)

※ 一般的な傾向を示したイメージで、今回の事件を測定した値ではありません。

変化①

数をこなせる

偵察し、ログイン画面を見つけ、試し、成功したら中を調べる。この流れを自動で回せるので、1人の攻撃者でも複数の金融機関を並行して狙えます。今回、約1週間で7つの機関に被害が出たのは、まさにこの特徴の表れとみられます。

変化②

技術力がなくても攻撃できる

韓国当局者は、AIモデルによって「専門的な技能がなくても簡単にハッキングできる」状況になったことへの懸念を示しています。攻撃の敷居が下がると、攻撃者の数そのものが増えるおそれがあります。

逆の効果

ただし、痕跡もそろって残る

道具に頼るほど、攻撃には道具のクセがそろって残ります。今回、金融保安院が複数の機関にまたがる攻撃を同じ攻撃者のものと結び付けられたのも、このためです。AIによる自動化は、防御側にとって手がかりにもなるのです。

🏛️

政策にも影響:規制緩和の審査を延期

韓国の金融委員会は、10月7日に予定していた「ネットワーク分離」規制緩和の第2次審査を延期しました。ネットワーク分離とは、業務用のネットワークをインターネットから切り離すルールのことです。第1次でセキュリティ体制が十分と評価された会社まで被害に遭ったため、改めて見直す必要があると判断しました。ただし金融委員会は、弱点はネットワーク分離そのものではなく、外部に公開された業務支援システムの「認証とアクセス管理」にあったとして、規制緩和の方針自体は維持しています。また「AIの攻撃はAIで防ぐ」という方針も示しました。

06

🛡️ 日本の企業と個人がいまできること

今回の攻撃は、日本でも同じことが起こりうるものです。逆に言えば、基本の対策がそのまま効きます。

🏢

狙われたのは「みんなが忘れがちな入口」

代理店や仲介業者のポータル、従業員がスマホから使う業務アプリ、協力会社向けの照会画面。こうした本業のシステムほど厳しく守られていない、外部に公開された周辺システムが、今回の入口でした。AIは、こうした入口を見つけるのも、試すのも速くこなします。

🏢 企業のシステム担当者

  • 外部公開している業務用ログイン画面を棚卸しする
  • 代理店・協力会社向けの画面にも多要素認証(MFA)を入れる
  • ログイン失敗の急増や、大量の照会を検知する仕組みを作る
  • 1つのアカウントで照会できる件数に上限を設ける
  • 攻撃元の情報を業界の団体(ISAC)ですぐ共有する

🔬 SOC・セキュリティ分析担当

  • 攻撃元IPを、インターネットを調べる検索サービスで確認する習慣をつける
  • ARTEXのような公開されている攻撃・診断ツールの画面や通信の特徴を把握しておく
  • IPが変わっても同じに見える「振る舞い」でルールを作る
  • AIの判断が入る人間離れした速さ・規則性に注目する

👤 個人の利用者

  • パスワードの使い回しをやめる(これが攻撃の燃料です)
  • パスワード管理アプリと多要素認証を使う
  • 流出した情報を使った「お詫び」「返金」をうたう電話やSMSに注意する
  • 年収や借入額が漏れると、ローン詐欺の口実に使われやすくなる
✅ 対策済み確認チェックリスト(企業向け)

□ 外部に公開しているログイン画面の一覧がある
□ そのすべてに多要素認証が入っている(協力会社用も含む)
□ 同じIPから、または短い時間に大量のログイン失敗があったら警告が出る
□ 1アカウントあたりの照会件数に上限がある
□ 退職者や契約が終わった協力会社のアカウントが残っていない
□ 侵入テスト(AIツールを使うものを含む)を、許可を得て自社に実施している

🔁

守る側もAIを使う時代へ

ARTEXのようなツールは、本来は自社の弱点を攻撃者より先に見つけるためのものです。許可を得て自社に使えば、外から見える入口を素早く洗い出せます。攻撃者がAIで探す前に、自分たちがAIで探しておく。これが今回の事件から得られる、前向きな教訓です。

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📌 まとめと今後の注目点

「AIハッキング」の実態は、昔からの弱点が、AIの速さで大規模に突かれた事件でした。

1

何が起きたか

韓国の7つの金融機関で、外部公開された業務システムから情報が流出しました。入口は流出したIDとパスワードの使い回しとみられます。

2

どうしてAIツールと分かったか

①攻撃サーバーの「ARTEX」管理画面のタイトル、②銀行のログに共通して残っていたARTEX特有のデータ、③IPを替えても変わらない手口。この3つが同じ結論を指しました。

3

誤解してはいけないこと

AIが自律的に暴走したのではなく、人間の攻撃者がAIを道具として使いました。ツールが中国語圏のものでも、攻撃者の国籍は分かっていません。

4

今後の注目点

攻撃者は誰か。被害件数は確定するか。AIが担った工程はどこまでか。韓国の規制緩和は見直されるか。似た攻撃が日本を含むほかの国でも見つかるか。

✅ この記事のポイント

AIは攻撃を「新しく」したのではなく、「速く、大きく、簡単に」しました。そして道具に頼った攻撃には、道具のクセがそろって残ります。パスワードの使い回しをなくすこと、多要素認証、外部公開システムの棚卸し、大量アクセスの検知。こうした基本の対策は、相手がAIを使っていても変わらず効きます。

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