世界では起きているのに、日本語では1件も報じられていない攻撃 2026年7月26日版

2026年7月26日版 / 定点観測

世界では起きているのに、
日本語では1件も報じられていない攻撃

日本語のセキュリティ記事576本と、海外51ソース1,296本を同じ日に集めて突き合わせました。
そこには、はっきりとした「空白」がありました。

Zimbra ゼロクリック The Gentlemen Qilin / PAN-OS AIエージェント攻撃 CISA KEV

「海外のセキュリティニュースまで追う時間はない」「日本語で報じられていないなら、まだ自分には関係ないだろう」「そもそも何を見落としているのかが分からない」——そう感じたことがあるなら、この記事はそのための地図です。

2026年7月26日、日本語のセキュリティ情報と海外のセキュリティ情報を同じ日に、同じ方法で集めて並べてみました。日本語で書かれた記事が576本、海外51ソースからの記事が1,296本。同じ言葉で数え直したところ、日本語の側にだけ、きれいに穴が空いているテーマがいくつも見つかりました。

⚠ 注意:この記事の性質について

これは「日本語圏で報じられていない=日本が危ない」と断定する記事ではありません。収集した特定の日・特定のソース群での観測結果であり、私が見ていない媒体で報じられている可能性は常にあります。あくまで「自分の組織で先に確認しておくべき候補」を洗い出すための材料として読んでください。判断の根拠になる一次情報(CISA・JPCERT・IPA・ベンダー公式)は記事末にすべて挙げています。

CHAP1

第1章 / 全8章

🗺 天気図はあるのに、台風情報がない

今回いちばん驚いたのは「情報が無い」ことではありませんでした

🗺

調べ方(先に手の内を明かします)

2026年7月26日時点で、日本語向けに収集した953本のうち日本語で書かれた記事576本と、海外51ソースから収集した1,296本を対象にしました。同じ用語リスト(日本語表記と英語表記の両方)で機械的に数え、同じ事件を報じた重複記事はまとめてから比較しています。

結果はこうでした。数字は「その言葉を含む記事の本数」です。

テーマ海外1,296本中日本語576本中状態
ゼロデイ/ゼロクリック49本0本完全な空白
Zimbra(メールサーバ)18本0本完全な空白
The Gentlemen(ランサム)7本0本完全な空白
Qilin(ランサム)4本0本完全な空白
Anubis(ランサム)3本0本完全な空白
SonicWall(VPN機器)8本1本脆弱性情報のみ
SharePoint9本1本短報のみ
WordPress(wp2shell)15本6本しっかり報道

ここで注目してほしいのは、いちばん下の2行です。「日本語圏の情報が足りない」という単純な話ではありません。

WordPressの「wp2shell」(CVE-2026-63030/CVE-2026-60137)は、IPAもJPCERT/CCも注意喚起を出し、専門メディアも詳しい解説を書いています。日本語圏はきちんと機能しました。ところがSonicWallは、日本語で見つかった1本がJPCERT/CCのWeekly Reportにある「SonicWallのSMA1000シリーズに複数の脆弱性」という技術情報だけ。海外では同じ機器について「INC Ransomというランサムウェア集団が、公表される数週間前からこの穴を突いて管理者権限を奪っていた」と報じられているのに、その「誰が、何のために使っているか」という部分だけが日本語に渡ってきていないのです。

🌤

この記事を一言でいうと

日本語圏には天気図(脆弱性の技術情報)はきちんと届いている。でも台風情報(いま誰がその穴を使って、どこを襲っているか)が届いていない。気圧配置の数字だけ見せられても、傘を持つ判断はできません。この記事は、その足りない台風情報の部分を埋めるものです。

なぜこうなるのか。理由は単純で、脆弱性情報は公的機関が翻訳して配信する仕組みがあるのに対し、攻撃の実態(どの集団が、どんな手口で、どこを狙っているか)は海外の調査会社のブログや報道でしか流れないからです。前者には配信ルートがあり、後者にはありません。だから同じ製品の話でも、片方だけが日本語に届きます。

📐 日本語圏に届くもの・届かないもの

脆弱性の技術情報 CVE番号・影響製品 深刻度スコア 攻撃の実態 どの集団が使っているか どこを狙っているか IPA / JPCERT 翻訳・注意喚起の仕組み =配信ルートがある 対応する仕組みなし 海外ブログ・報道のみ 日本語で読める 例:wp2shell 空白になる 例:Zimbra・Qilin
▶ 「パッチを1週間遅らせると、リスクは何倍になるのか」を計算する この記事に出てくる脆弱性はすべて是正期限つきです。自分の環境の遅れが何を意味するかを数字で確認できます

第1章 おわり — 次は第2章

CHAP2

第2章 / 全8章

📧 空白1:メールを「開かなくても」盗まれる

Zimbra を狙うロシア国家系のゼロクリック攻撃。日本語記事576本中0本

今回いちばん大きな空白がこれでした。海外では18本の記事が出て、アメリカのCISA・NSA・FBIを含む20を超える関係機関が合同で警告を出しているにもかかわらず、日本語の記事は1本も見つかりませんでした。

狙われているのはZimbra Collaboration Suiteという、企業や大学がよく使うメール・グループウェアの製品です。攻撃しているのは「LAUNDRY BEAR」と名付けられたロシアの国家支援を受けたグループ(Void Blizzard、TA488 とも呼ばれます)。

🚨 重要:この攻撃が怖いのは「開かなくていい」ところ

普通のフィッシングは、リンクを踏むか添付ファイルを開かないと被害が始まりません。だから「怪しいメールは開かない」という教育が成り立ちます。ところがこの攻撃はメールを画面に表示しただけで発動します(ゼロクリック攻撃と呼ばれます)。クリックしていないので、利用者には自分が踏んだ自覚がまったく残りません。

何が盗まれるのか。CISAの合同勧告によれば、メールアドレス・パスワードに加えて二要素認証(2FA)のトークンまで抜かれています。さらに攻撃者は「ZimbraWeb」という名前のアプリ専用パスワードを勝手に作り、IMAPを有効化して二重に居座る仕掛けを残します。つまりパスワードを変えても、2FAを入れていても、そのまま読まれ続ける可能性があるということです。

実際の被害としては、2025年7月以降に10を超える組織が標的にされ、情報が持ち出された(あるいは持ち出されかけた)と報告されています。

項目内容
脆弱性CVE-2025-66376(Zimbra の格納型クロスサイトスクリプティング)
影響する版Zimbra Collaboration 10.0系は 10.0.18 より前 / 10.1系は 10.1.13 より前
修正の提供2025年11月6日にZimbraが修正版を公開済み
悪用の開始修正より前の2025年7月ごろから(つまり当時はゼロデイだった)
公的な警告2026年7月23日、CISA・NSA・FBIほかによる合同勧告 AA26-204A
🔎

正確に言うと「今もゼロデイ」ではありません

修正版は2025年11月に出ています。海外メディアが「ゼロデイ」と書いているのは、修正が出る前から悪用が始まっていたためです。今このリスクを抱えているのは「修正を当てていないサーバ」だけ。逆に言えば、バージョンを確認して上げれば、この件は今日終わらせられます

そしてもうひとつ、見落としやすい点があります。この攻撃は2FAを突破しています。「多要素認証を入れたから大丈夫」という前提が、この手口の前では成立しません。多要素認証は今も非常に有効な対策ですが、「入れたら終わり」ではなく「セッションやトークンが盗まれていないか」まで見る必要がある、という段階に入っています。

▶ 「メールの見分け方」を実際に手を動かして訓練する ビジネスメール詐欺(BEC)見破り訓練 ─ 差出人・Reply-To・本文の危険箇所を10ケースで体験できます

第2章 おわり — 次は第3章

CHAP3

第3章 / 全8章

💀 空白2:ランサムの勢力図が、1年で入れ替わった

「The Gentlemen」も「Qilin」も、日本語記事576本中0本

ランサムウェアという言葉自体は、日本語圏でもよく報じられています。今回の集計でも、日本語記事における「ランサムウェア」の登場密度は海外より高いくらいでした。ニチレイやアフラックの事案が大きく扱われていたことも影響しているでしょう。

ところが、「どの集団が」の部分になると、いきなり数字がゼロになります。

2026年第2四半期、犯行を主張した被害組織の数でトップに立ったのはThe Gentlemenというグループでした。300件です。それまで1年間ずっと首位だったQilinが289件で、初めて順位が入れ替わりました。この2グループだけで、四半期に583件の攻撃を占めています。

The Gentlemen の伸び方は異常です。2025年後半と2026年前半を比べると、犯行主張の件数が6倍を超えています。もともとはQilinの下請け(アフィリエイト)で「ArmCorp」と名乗っていたグループが独立し、攻撃ツール一式をきれいにパッケージ化して新しい実行犯を大量に集めた結果だと分析されています。参入のハードルを下げた側が勝つ、という構図です。

グループ2026年Q2の被害主張特徴日本語での報道
The Gentlemen300件(初の首位)元Qilinの下請けが独立。EDRを無効化する専用ツールを持つ0本
Qilin289件前年は各四半期で首位。VPN機器の穴から侵入0本
INC RansomSonicWall SMA のゼロデイを公表前から悪用1本(解説記事)
AnubisCoca-Cola系Fairlifeの生産停止を引き起こした0本

同じ製品なのに、違うCVEを見ている

ここが今回いちばん実務的に重要な発見でした。

Qilinが侵入口として使っているのは、Palo Alto Networks の PAN-OS にある認証回避の脆弱性 CVE-2026-0257 です。これはCISAのKEV(実際に悪用が確認された脆弱性のリスト)に2026年5月29日付で載り、「ランサムウェアによる悪用が確認済み」と明記されています。米国政府機関の是正期限は2026年6月1日でした。

いっぽう日本語圏では、同じPAN-OSについてJPCERT/CCとIPAが注意喚起を出しています。ただしその対象はCVE-2026-0265 と CVE-2026-0300 という別の番号でした。製品名は同じなのに、いま実際にランサムウェアの入口として使われている番号だけが抜けているのです。

「製品名で覚える」と危ない理由

「PAN-OSの注意喚起は見たから対応済み」と考えると、実際に狙われている穴を素通りしてしまいます。製品名ではなくCVE番号で突き合わせること。そしてCISAのKEVに載っているかどうかは、日本語の注意喚起とは別に確認する価値があります。KEVは「理論上危ない」ではなく「実際に攻撃で使われた実績がある」という意味だからです。

同じ構図の脆弱性を、今回の収集データから拾い出しました。いずれもCISAのKEVに載っている=すでに悪用実績があるのに、日本語圏での追跡が薄いものです。

CVE番号製品KEV登録日悪用確率(EPSS)備考
CVE-2026-0257Palo Alto Networks PAN-OS2026-05-2993.9%ランサム悪用が明記。Qilinの侵入口
CVE-2026-33017Langflow(AI開発基盤)2026-03-2599.8%仮想通貨マイナーを埋め込まれる
CVE-2026-20127Cisco Catalyst SD-WAN2026-02-2588.2%深刻度は最大値のCVSS 10.0
CVE-2023-3519Citrix NetScaler2023-07-1999.7%3年前の穴が今も悪用され続けている
CVE-2026-16232Check Point SmartConsole2026-07-22管理者権限を丸ごと奪われる
⚠ 数字の読み方について

EPSSは「今後30日以内にその脆弱性が実際に悪用される確率」の推定値で、日々変動します。上の数値は2026年7月26日時点のものです。90%を超えているものは「いつか危ない」ではなく「もう来ている」と読むのが実務的です。最新値はFIRSTの公式サイトで確認できます。

第3章 おわり — 次は第4章

CHAP4

第4章 / 全8章

🤖 空白3:AIエージェントが「無人で」攻撃を回す

日本語圏はAIの話題に強い。なのに、この事例だけが抜けていました

面白いことに、AIそのものの話題については日本語圏のほうが海外より熱心でした。「AIの悪用」というテーマの記事密度は、日本語576本のほうが海外1,296本より高く出ています。日本語圏はAIに強い関心を持っています。

それなのに、次の事例は日本語で1本も見つかりませんでした。

2026年7月、タイの財務省への侵入で、攻撃者が「Hermes」というAIエージェントを人間の監視なしで走らせ、侵入後の作業を自動化していたことが報じられました。これまで攻撃者がAIを使うといえば「フィッシングメールの文面を書かせる」程度でした。そうではなく、侵入したあとの探索・権限昇格・情報の持ち出しといった工程そのものをAIに任せる段階に入ったということです。

攻撃の速度が変わります。人間の攻撃者なら、侵入してから重要なデータにたどり着くまで数日から数週間かかることもあります。その間が防御側にとっての勝負どころでした。その時間が縮むということです。

事例何が起きたか日本語報道
Hermes(タイ財務省)AIエージェントを無人稼働させ、侵入後の作業を自動化0本
OpenClaw のスキル市場AIに機能を追加する「スキル」の配布経路が、新しいサプライチェーン攻撃の入口になると警告1本
CVE-2026-65015ワークフロー自動化ツール n8n のAIエージェント機能に権限昇格の穴(2.30.1 より前)0本
CVE-2026-33017AI開発基盤 Langflow への攻撃。悪用確率99.8%でKEV登録済み0本

下2つは、AIを「使う側」にとって直接の話です。業務効率化のために社内でワークフロー自動化ツールやAI開発基盤を立てているなら、それ自体が攻撃対象になっています。AIツールは「便利な道具」であると同時に「インターネットに面したサーバ」でもあるという当たり前のことが、導入の勢いの中で抜けやすい部分です。

🤖

AIエージェントに与えている権限を思い出してください

AIエージェントは便利にするほど強い権限を持ちます。ファイルを読める、メールを送れる、社内システムを操作できる——その権限は、乗っ取られた瞬間にそのまま攻撃者の権限になります。「人間の担当者なら、この権限を渡すか?」という基準で見直すのが、いちばん分かりやすい判断軸です。

▶ AIエージェント・MCPのセキュリティを基礎から整理する 権限設計・信頼境界・よくある設定ミスまで、この記事の前提知識をまとめています

第4章 おわり — 次は第5章

CHAP5

第5章 / 全8章

👤 あなたはどのパターン?

ここまでの話のうち、自分に関係あるのはどれかを先に決めます

全部を気にする必要はありません。立場によって、見るべきものは違います。自分に近いものを1つ選んで、そこだけ読んでください。

あなたの立場今回いちばん効くのは今日やること
① 会社のIT・情シス担当
自社のサーバや機器を管理している
Zimbra/VPN機器の版数確認と、KEVとの突き合わせ 境界に置いている機器を全部書き出し、CVE番号でKEVを引く(第6章)
② 中小企業の経営者・兼任担当
専任のセキュリティ担当がいない
ランサムの勢力図。狙われるのは大企業だけではない 外部に公開しているものが何かを把握し、保守契約の有無を確認する
③ AIツールを社内に入れている人
業務自動化やAIエージェントを運用中
第4章。AI基盤そのものが攻撃対象になっている AIに与えている権限の棚卸しと、ツールのバージョン確認
④ 個人・家庭で使っている人
会社のサーバは管理していない
2FAが突破されうるという事実 主要サービスの「ログイン中の端末」「アプリパスワード」を確認して身に覚えのないものを消す

④の方へ補足します。この記事の中心は企業向けの話ですが、「2FAを入れていても、セッションやトークンを盗まれれば読まれ続ける」という部分は個人にもそのまま当てはまります。多くのサービスには「現在ログイン中の端末一覧」や「アプリ用パスワード」の管理画面があります。そこに知らない項目があれば、それが居座られている痕跡です。

第5章 おわり — 次は第6章

CHAP6

第6章 / 全8章

🔧 今日できる確認

お題 → コマンド → 何を見るか → 注意、の順に4つ

⚠ 実行する前に必ず読んでください

ここで紹介するのはすべて「自分が管理している、または明確に許可された環境」でのみ実行してよい確認作業です。他人のサーバや、許可のない組織のシステムに対して実行すると、日本では不正アクセス禁止法に触れる可能性があります。調べる相手が自分の資産であることを、実行前に必ず確認してください。

お題1:Zimbraを使っているか、版はいくつか

# 自社のZimbraサーバ上で実行する

# インストールされている版を表示する
su - zimbra -c "zmcontrol -v"

# 出力例
# Release 10.0.15_GA_1234.UBUNTU20_64 ...

何を見るか:10.0系なら 10.0.18 以上、10.1系なら 10.1.13 以上かどうか。それより古ければ、CVE-2025-66376 の影響範囲です。

注意:版を上げるだけでは不十分な可能性があります。すでに侵入されていた場合、攻撃者が作った「ZimbraWeb」という名前のアプリ専用パスワードが残っているかもしれません。管理画面でアプリ専用パスワードの一覧を確認し、身に覚えのないものを削除してください。IMAPが勝手に有効化されていないかも合わせて見ます。

お題2:インターネットに面している機器を書き出す

# 自社ネットワークの管理端末から

# 自社が保有するIPレンジに対してのみ実行すること
nmap -sV --open -p 443,8443,10443 203.0.113.0/24

# 結果を「製品名 + バージョン」の一覧として保存する

何を見るか:VPN装置・ファイアウォールの管理画面・グループウェア。今回の記事に出てきた製品(Fortinet/SonicWall/Citrix/Palo Alto/Check Point/Zimbra)が含まれていないか。

注意:上の 203.0.113.0/24 は説明用の予約アドレスです。必ず自社の実レンジに置き換えてください。またクラウド事業者によっては、事前申請なしのスキャンを規約で禁止している場合があります。

お題3:見つけたCVEがKEVに載っているかを引く

# CISA KEV カタログを引く(インターネット接続が必要)

# カタログ全体を取得
curl -s https://www.cisa.gov/sites/default/files/feeds/known_exploited_vulnerabilities.json \
  | jq '.vulnerabilities[] | select(.cveID=="CVE-2026-0257")'

# 見るべき項目: dateAdded / dueDate / knownRansomwareCampaignUse

何を見るか:knownRansomwareCampaignUseKnown なら、そのCVEはランサムウェアの攻撃で実際に使われた実績がありますdueDate は米国政府機関向けの是正期限ですが、民間でも「いつまでに直すべきか」の現実的な目安として使えます。

注意:KEVに載っていない=安全、ではありません。KEVは「悪用が確認できたもの」のリストであり、確認されていないだけの脆弱性は当然あります。優先順位をつけるための道具として使ってください。

お題4:AIエージェントに渡している権限を数える

これはコマンドではなく、紙に書き出す作業です。社内で動かしているAIツール(自動化ツール、社内チャットボット、AI開発基盤)について、次の3つを書き出します。

AI権限の棚卸し

  • そのAIが読めるデータの範囲(どのフォルダ、どのDB、どのメールボックス)
  • そのAIが実行できる操作(送信・削除・外部API呼び出し・コマンド実行)
  • そのAIが動いているサーバのバージョンと、外部に公開されているかどうか

注意:3つ目を忘れがちです。n8n や Langflow のようなツールはそれ自体がWebアプリケーションなので、社内に置いたつもりでも設定次第で外から見えていることがあります。お題2のスキャン結果に、これらの管理画面が出てこないかを確認してください。

第6章 おわり — 次は第7章

CHAP7

第7章 / 全8章

✅ 30分でできるチェックリスト

印刷して、上から順に潰していけるようにしました

✅ 今日ここまでできれば十分です

全部を一度にやる必要はありません。上から3つだけでも、この記事に出てきたリスクの大半は視界に入ります。

1. すぐ確認(10分)

  • Zimbraを使っているか。使っているなら版は 10.0.18/10.1.13 以上か
  • PAN-OS を使っているなら、CVE-2026-0257 の対策が入っているか(日本語の注意喚起とは別の番号)
  • SonicWall SMA 1000 シリーズを使っているか
  • WordPress を運用しているなら wp2shell(CVE-2026-63030/CVE-2026-60137)対応済みか

2. 棚卸し(15分)

  • インターネットに面している機器・サービスの一覧があるか。無ければ作る
  • その一覧に「製品名」だけでなく「バージョン」が書かれているか
  • 各製品のCVEがCISA KEVに載っているかを引いたか
  • 社内のAIツール・自動化ツールが、この一覧に入っているか

3. 侵入済みを前提とした確認(5分)

  • 主要サービスのアプリ専用パスワード一覧に、身に覚えのないものが無いか
  • IMAP/POP など、使っていないはずのプロトコルが有効になっていないか
  • ログイン中のセッション・端末一覧に知らないものが無いか
  • 管理者アカウントが、いつの間にか増えていないか

3つ目のまとまりは、「まだ何も起きていない」と思っている段階でこそ意味があります。今回のZimbraの事例が示しているのは、パスワードを変えても2FAを入れても、居座りの仕掛けを消さなければ読まれ続けるということだからです。

第7章 おわり — 次は第8章

CHAP8

第8章 / 全8章

🏁 まとめ:最初にやること3ステップ

この記事から持ち帰るものを3つに絞りました

ステップ1:自分の資産を、CVE番号まで含めて一覧にする。今回いちばんはっきりしたのは、「製品名で覚えていると、実際に狙われている番号を素通りする」という落とし穴でした。PAN-OSの例がまさにそれです。製品名ではなく番号で管理してください。

ステップ2:その番号がCISA KEVに載っているかを引く。日本語の注意喚起は非常に良質ですが、「いま誰が使っているか」までは扱いません。KEVは「実際に悪用された実績がある」ものだけのリストなので、限られた時間をどこに使うかを決めるのに向いています。第6章のお題3がそのやり方です。

ステップ3:すでに入られている前提で、居座りの痕跡を見る。アプリ専用パスワード、有効になっているプロトコル、ログイン中のセッション、増えている管理者アカウント。この4点だけでも見ておくと、「入られてから気づくまでの時間」が大きく変わります。

🧭

そして、日本語圏が弱いわけではありません

今回の調査で分かったのは「日本語の情報が劣っている」ということではありませんでした。wp2shellのときは、IPAもJPCERT/CCも専門メディアも、海外と同等以上の速さと質で報じています。足りないのは翻訳ではなく、「脆弱性の情報」と「攻撃の情報」を結びつける部分です。だからこそ、その1手間を自分でやる価値があります。

この定点観測は今後も続けます。次回は「前回からどのテーマが増えたか」という差分も出せるようになる予定です。世界で先に動いたものが、どのくらいの時間差で日本に届くのか——それが分かれば、この空白はもっと使える情報になります。

第8章 おわり — 次はよくある質問

FAQ

補足

❓ よくある質問

この記事の読み方について

「日本語で0本」は、本当に誰も報じていないという意味ですか?

いいえ。2026年7月26日に私が収集した日本語記事576本の中に無かった、という意味です。私が収集していない媒体や、会員制のレポート、企業向けの有償サービスでは報じられている可能性が十分にあります。この記事の数字は「日本語圏の全体像」ではなく「一定量のサンプルに現れた偏り」として読んでください。

Zimbraを使っていません。それでも読む意味はありますか?

あります。この記事の要点は個別の製品ではなく、「脆弱性の技術情報は日本語で届くのに、それを誰がどう使っているかは届きにくい」という構造のほうです。あなたが使っている製品でも同じことが起きている可能性があります。第6章のお題3(KEVの引き方)は、どの製品にも使えます。

EPSSの数値が90%を超えていたら、必ず攻撃されるのですか?

いいえ。EPSSは「今後30日以内に、その脆弱性を狙う攻撃活動が観測される確率」の推定値であって、あなたの組織が攻撃される確率ではありません。ただし数値が高いものほど、攻撃コードが出回っていて広く狙われている傾向があります。優先順位づけの材料としては非常に有効です。

多要素認証(2FA)は意味がなくなったのですか?

いいえ、今も非常に有効です。今回の事例は「2FAが破られた」というより「2FAのトークンごと盗まれ、そのセッションが使い回された」というものです。対策としては、フィッシング耐性のある方式(パスキーやFIDO2のセキュリティキー)への移行と、セッションやアプリ専用パスワードを定期的に見直すことが有効です。「2FAをやめる」は完全に逆方向です。

この記事の情報はいつまで有効ですか?

脆弱性の数値(特にEPSS)は日々変わり、ランサムウェアの勢力図も四半期ごとに動きます。CVE番号とKEV登録の事実は変わりませんが、数値と順位は2026年7月26日時点のものとして扱ってください。判断が必要なときは、記事末の一次情報で最新値を確認するのが確実です。

出典・一次情報

  • CISA「Russian State-Supported Cyber Actors Conduct Phishing Campaign Targeting Users of Zimbra Collaboration Suite」合同勧告 AA26-204A(2026年7月23日)— cisa.gov
  • CISA「Known Exploited Vulnerabilities Catalog(KEV)」— cisa.gov
  • FIRST「EPSS(Exploit Prediction Scoring System)」— first.org
  • Australian Signals Directorate「Joint advisory on Russian cyber actors exploiting Zimbra Collaboration Suite」(2026年7月24日)— cyber.gov.au
  • Unit 42「No Manners Here: The Ruthless Rise of The Gentlemen Ransomware」(2026年7月11日)— unit42.paloaltonetworks.com
  • Infosecurity Magazine「The Gentlemen Overtakes Qilin as Most Prolific Ransomware Threat」(2026年7月17日)— infosecurity-magazine.com
  • The Hacker News「Qilin Ransomware Attackers Exploit PAN-OS Authentication Bypass for Initial Access」(2026年7月21日)— thehackernews.com
  • The Hacker News「Hacker Runs Hermes AI Agent Unattended for Post-Exploitation at Thai Finance Ministry」(2026年7月24日)— thehackernews.com
  • Unit 42「OpenClaw’s Skill Marketplace and the Emerging AI Supply Chain Threat」(2026年6月24日)— unit42.paloaltonetworks.com
  • Dark Reading「Inc Ransomware Exploits SonicWall SMA Zero-Days」(2026年7月18日)— darkreading.com
  • IPA「WordPressの脆弱性対策について(CVE-2026-60137、CVE-2026-63030:wp2shell)」— ipa.go.jp
  • JPCERT/CC「Weekly Report」— jpcert.or.jp

記事内の集計値(日本語576本/海外1,296本)は、筆者が2026年7月26日に日本語向け・海外向けの2系統で収集したRSS・APIデータを、同一の用語リストで機械的に数え直したものです。集計方法は第1章に記載しています。

コメント