守るための製品が、いちばん狙われている|CISA KEV 1,662件を数え直した結果

CISA KEV カタログ独自集計 / 2026年8月8日時点

守るための製品が、いちばん狙われている

実際に悪用された脆弱性1,662件を数え直したら、その16.3%がファイアウォールやEDRなど「セキュリティ製品」でした。しかも是正の猶予は、21日から3日へ短くなっています。

CISA KEV FortiGate / Ivanti / PAN-OS EDR・SIEM・XDR BOD 26-04 EPSS

ファイアウォール、VPN装置、EDR、SIEM。どれも「会社を守るために」買う製品です。ところが近年、攻撃者がいちばん熱心に狙っているのが、まさにこの「守るための製品」そのものだという状況が続いています。

これは印象論ではありません。米国のCISA(サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁)は、実際に悪用が確認された脆弱性だけを集めた「KEVカタログ(Known Exploited Vulnerabilities)」を公開しています。理屈のうえで危険な脆弱性ではなく、現実に攻撃で使われた証拠があるものだけが載る一覧です。

この記事では、そのKEVカタログ全1,662件を機械的に読み込み、「守るための製品」がどれだけ含まれているかを自分で数え直しました。さらに、独自に整備した防御製品78本のデータベース(ファイアウォール25・SIEM 16・EDR 16・MDR 11・XDR 10)と突き合わせ、製品ごとのKEV入り回数、パッチ公開から悪用確認までの日数、そして「その製品固有の穴」と「共通部品のとばっちり」の区別まで踏み込んでいます。

⚠ 注意:この記事の数字の出どころと限界

KEVカタログの数値は、CISAが公開している機械可読データ(catalogVersion 2026.08.07・全1,662件)を2026年8月8日に取得して集計したものです。製品別の集計は、当サイトが独自に選定した防御製品78本に対してCPE(製品識別子)で脆弱性を紐づけた結果であり、市場に存在するすべてのセキュリティ製品を網羅した順位ではありません。選定に含まれない製品は、当然ながらこの表には出てきません。「この表の下位=安全」ではない点にご注意ください。

CHAP1

第1章 / 全6章

実際に悪用された1,662件を数え直す

まず全体像です。KEVカタログには2026年8月7日版の時点で1,662件が登録されています。これを開発元(ベンダー)ごとに分類すると、上位はこうなります。

順位ベンダーKEV件数主な製品の性格
1Microsoft382OS・オフィス製品
2Cisco95ネットワーク機器・セキュリティ製品
3Apple93OS・端末
4Adobe80文書・制作ソフト
5Google72ブラウザ・OS
6Oracle45DB・業務基盤
7Apache40OSSサーバー
8Ivanti35VPN・資産管理
9Fortinet29ファイアウォール・境界機器
10Linux26OSカーネル
10D-Link26家庭・小規模用機器
10VMware26仮想化基盤
13Citrix22リモートアクセス基盤
14SonicWall17ファイアウォール
15Palo Alto Networks15ファイアウォール

Microsoftが突出しているのは当然で、世界中のパソコンとサーバーに入っている以上、狙われる総量が桁違いだからです。ここは驚くところではありません。

驚くべきなのは、太字にしたベンダーの顔ぶれです。Ivanti、Fortinet、Citrix、SonicWall、Palo Alto Networks。いずれも「会社のネットワークを守る側」に立つ製品を作っている会社が、AdobeやOracleと肩を並べる位置に食い込んでいます。

そこで、セキュリティ製品・ネットワーク境界機器を主力とするベンダーを抜き出して合計してみました。

KEV全1,662件のうち、271件(16.3%)がセキュリティ・境界機器ベンダーの製品

実際に攻撃で使われた脆弱性の、およそ6件に1件。直近365日に限っても、追加された268件のうち52件(19.4%)が同じ顔ぶれです。割合はむしろ増えています。

ただし、この271件という数字はフェアに扱う必要があります。Ciscoの95件には、セキュリティ製品ではないルーターやIOS(ネットワーク機器のOS)の脆弱性も相当数含まれています。Ciscoを除いて厳しめに数え直すと176件・10.6%です。どちらの数え方でも「1割から2割が守る側の製品」という結論は動きません。

もうひとつ、見過ごせない数字があります。KEVカタログには「その脆弱性がランサムウェア攻撃に使われたことが判明しているか」という項目があります。

対象件数ランサムウェアでの使用が判明割合
KEVカタログ全体1,66233820.3%
セキュリティ・境界機器ベンダー2716524.0%

全体の20.3%に対して24.0%。セキュリティ製品の脆弱性は、平均よりもランサムウェアに使われやすいということです。理由を考えれば納得できます。ファイアウォールやVPN装置はインターネットに面していて、社内ネットワークの入口に立っています。ここを破れば、いきなり内側に入れる。ランサムウェアを仕掛ける側にとって、これほど効率のいい入口はありません。

この「境界機器を破ってから内側で暴れる」という流れそのものについては、境界機器が狙われる理由とは?ESXiランサムウェア攻撃の全体像を解説で攻撃の全体像を追っていますので、あわせてご覧ください。

第1章 おわり ― 次は製品ごとの内訳
CHAP2

第2章 / 全6章

KEV入り回数ランキングと「巻き込まれ」の話

ここからは製品単位で見ていきます。当サイトで管理している防御製品78本のうち、KEVカタログに1件以上該当したのは21製品でした。

ただし、単純に件数を並べるだけでは正確になりません。脆弱性には「その製品固有のもの」と「中で使っている共通部品のとばっちり」の2種類があるからです。この記事では前者を「直撃」、後者を「巻き込まれ」と呼んで分けて数えました。

「直撃」と「巻き込まれ」の違い

直撃=その製品自身の作りに欠陥があった場合。例:PAN-OSの認証バイパス。
巻き込まれ=製品が内部で使っているLinuxカーネルやOpenSSLなど、共通部品側の欠陥。例:CVE-2018-14634(Linuxカーネルの整数オーバーフロー)は、F5 BIG-IPにもPAN-OSにも紐づきますが、これは「両社が作り込んだ穴」ではありません。

この区別をしないランキングは、製品の評価としてかなり不正確になります。実際に分けてみると、こうなりました。

製品種別KEV計うち直撃うち巻き込まれ直近365日
FortiGate(FortiOS)FW191903
Ivanti Connect SecureFW141400
PA-Series(PAN-OS)FW141223
Trend Micro Apex OneEDR111012
Cisco Secure FirewallFW10822
Juniper SRX(Junos)FW7700
F5 BIG-IPFW11651
WatchGuard FireboxFW4402
Elastic SecuritySIEM3300
SonicWall(SonicOS)FW3300
Check Point QuantumFW2201
Sophos FirewallFW2200
Microsoft Defender for EndpointEDR2200
LANSCOPE エンドポイントマネージャーEDR1101
Splunk Enterprise SecuritySIEM2111
Microsoft SentinelSIEM4040
IBM QRadar SIEMSIEM2020

合計すると直撃99件・巻き込まれ17件。全体としては「製品自身の穴」が圧倒的多数です。境界機器を売る会社の製品が、自らの作りの問題で繰り返し破られてきたという事実は、この数字からは否定できません。

一方で、表の下のほうを見てください。Microsoft SentinelとIBM QRadar SIEMは、KEV該当がすべて「巻き込まれ」です。製品自身の欠陥で悪用された記録は、この集計範囲ではゼロでした。件数だけを見て「Sentinelは4件、Check Pointは2件だからSentinelのほうが危ない」と読むと、完全に逆の結論になってしまいます。

🚨 重要:ランキングの数字を「製品の優劣」として読まないでください

KEV入りが多い製品は、たいてい世界中で大量に使われていて、攻撃者にとって投資対効果が高い製品です。導入数が少ない製品は、そもそも狙う価値が低いので数字に出ません。この表は「危険な製品の一覧」ではなく、「攻撃者がいま実際に投資している場所の一覧」として読んでください。自社が表の製品を使っているなら、それは製品選定のミスではなく、単に優先してパッチを当てるべき対象だという意味です。

もう一点、日本の読者に関係が深い項目があります。表の中のLANSCOPE エンドポイントマネージャーは、日本のエムオーテックス社の製品です。CVE-2025-61932は2025年10月20日に公表され、その2日後の10月22日にKEV入りしました。「海外製品の話でしょう」と片付けられない実例です。

第2章 おわり ― 次は「猶予は何日あるのか」
CHAP3

第3章 / 全6章

猶予は21日から3日になった

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。

脆弱性が公表されてから、実際に悪用が確認されるまで、どれくらいの時間があるのか。「週末にまとめてパッチを当てよう」が通用するのかどうか、という話です。

防御製品ごとに「脆弱性の公表日」から「KEVカタログに載った日(=悪用が確認された日)」までの日数を計算しました。

製品種別公表からKEV入りまで
FortiGate(FortiOS)FW0日(同日)
Cisco Secure FirewallFW0日(同日)
Ivanti Connect SecureFW0日(同日)
FortiAnalyzerSIEM0日(同日)
Trend Micro Apex OneEDR1日
Check Point QuantumFW1日
LANSCOPE エンドポイントマネージャーEDR2日
PA-Series(PAN-OS)FW3日
F5 BIG-IPFW5日
Sophos FirewallFW6日
Splunk Enterprise SecuritySIEM8日
SonicWall(SonicOS)FW28.5日
WatchGuard FireboxFW33.5日
Juniper SRX(Junos)FW88日
WazuhSIEM120日
Array Networks AGシリーズFW312日

16製品の中央値は4日。そのうち10製品が7日以内です。そして4製品は、脆弱性が公表されたその日のうちに悪用が確認されています。

「パッチが出た日には、もう使われている」

FortiGate、Cisco Secure Firewall、Ivanti Connect Secure、FortiAnalyzer。この4製品は公表当日にKEV入りしています。つまり、情報を知った時点で、すでに攻撃は始まっているということです。

そして2026年、この状況に対する当局側の対応も変わりました。

是正期限そのものが短縮された

KEVカタログの各エントリには「dueDate(是正期限)」が設定されています。これは米国の政府機関に対して「この日までに直しなさい」と命じる期限です。

この期限が、2026年に大きく変わりました。KEVカタログの原本から、追加日と期限の差を月別に集計したものが以下です。

KEV追加月件数設定された是正期限の内訳
2025年10月3121日 × 31
2025年12月207日 × 5/21日 × 15
2026年2月282日 × 2/3日 × 4/21日 × 22
2026年3月263日 × 5/14日 × 14/21日 × 7
2026年4月313日 × 8/14日 × 23(21日が消滅
2026年6月233日 × 17/14日 × 6
2026年7月263日 × 22/14日 × 4
2026年8月(8日時点)63日 × 6

2025年は「21日」がほぼすべてでした。それが2026年3月に「14日」が現れ、4月には「21日」が完全に消え、6月以降は「3日」が主流になっています。期限の中央値は、2026年前半の14日から、6月10日以降は3日へ短縮されました。

この背景にあるのが、2026年6月10日に発出されたBOD 26-04(Prioritizing Security Updates Based on Risk)です。これは従来のBOD 22-01(2021年、KEVカタログを作った指令)とBOD 19-02を廃止して置き換えたもので、一律の期限をやめ、次の4条件でリスクを採点して期限を決める方式に変わりました。

評価される条件決まる是正期限
① 対象機器がインターネットに露出しているか
② KEV掲載=実際に悪用されている証拠があるか
③ 自動化された攻撃コードが出回っているか
④ 成功時にシステムを完全に乗っ取られるか
4条件すべて該当=3日
リスクが高い=14日
露出が低い=60日
最低ランク=次回の定期更新に合わせる

ここで思い出してほしいのが、第1章と第2章の内容です。インターネットに面していて(条件①)、KEVに載っていて(条件②)、乗っ取られたら内側に入られる(条件④)——ファイアウォールやVPN装置は、この採点方式でほぼ自動的に最上位に来る性質を持っています。実際、2026年7月にKEV入りした26件のうち22件が3日期限でした。

⚠ 注意:この期限は日本の民間企業を拘束するものではありません

BOD 26-04が法的に義務を課すのは、米国の連邦民間行政機関(FCEB)とFedRAMP認証を受けたクラウド事業者です。日本の企業や個人に対する法的な強制力はありません。ただし、「米国政府が自分たちの機関に対して3日以内に直せと命じるほど危険だと判断した」というリスクの目安としては、極めて有用です。義務ではなく、シグナルとして使ってください。

第3章 おわり ― 次は数字の落とし穴
CHAP4

第4章 / 全6章

CVEの多さで危険度を測ってはいけない

ここまで「KEV入り回数」を軸に話してきました。なぜ「CVEの総数」を使わなかったのか、その理由を説明します。

同じ78製品について、CVE(脆弱性)の総数を数えると、順位はまるで変わります。

製品CVE総数KEV(直撃)読み取れること
Juniper SRX(Junos)7877CVEは最多だが実際の悪用は少ない
F5 BIG-IP6066同上
FortiGate(FortiOS)28019CVEは3番目だが悪用は最多
Ivanti Connect Secure14714CVEは少なめでも悪用率が高い

Juniper SRXはCVEが787件と最多ですが、実際に悪用された記録は7件です。逆にIvanti Connect Secureは147件のうち14件が悪用されています。比率でいえば約10倍の差があります。

CVEが多い=危ない、ではない理由

CVEの件数は「その製品にどれだけ穴があるか」ではなく、「その製品の開発元がどれだけ真面目に脆弱性を見つけて公表しているか」を強く反映します。社内で監査を回し、研究者からの報告を受け付け、きちんと採番して公開する会社ほど数字が伸びます。逆に、報告を握りつぶす会社のCVEは少なくなります。CVE件数の少なさは、安全の証明ではありません。

CVSSが低くても悪用される

もうひとつ、よくある誤解があります。「深刻度スコア(CVSS)が9以上のものだけ急いで対応すればいい」という考え方です。

今回の集計に出てきた実例を見てください。

脆弱性製品CVSSEPSS結果
CVE-2025-68686FortiOS5.9
(中程度)
1.3%2026年7月27日にKEV入り
(実際に悪用)
CVE-2025-61932LANSCOPE9.32.6%公表2日後にKEV入り
CVE-2026-20253Splunk Enterprise9.896.9%公表8日後にKEV入り

CVE-2025-68686はCVSS 5.9、つまり「中程度」の評価です。EPSS(今後30日以内に悪用される確率の予測値)にいたっては1.3%しかありませんでした。スコアで足切りしていたら、確実に見逃していた脆弱性です。それでも現実には悪用され、KEVに載りました。

LANSCOPEのCVE-2025-61932も同様で、EPSSは2.6%という低さでした。EPSSは統計的な予測モデルであって、予言ではありません。「実際に悪用された」というKEVの事実は、どんな予測スコアよりも強い情報です。

3つの指標の正しい使い分け

CVSS=もし悪用されたらどれくらいまずいか(深刻度の理論値)
EPSS=今後30日以内に悪用される確率の予測(FIRSTが毎日更新)
KEV=すでに悪用されたという事実(予測ではなく実績)
優先順位は「KEVに載っているか」が最優先。次にEPSSで絞り、CVSSは影響範囲の見積もりに使う、という順番が実務的です。

第4章 おわり ― 次は製品カテゴリ別の傾向
CHAP5

第5章 / 全6章

FW・EDR・SIEM・XDRで様子がまるで違う

78製品をカテゴリ別に集計すると、はっきりした傾向が出ました。

カテゴリ登録製品数KEV該当製品数該当CVE数
(カテゴリ内で重複除く)
製品の該当率
FW(ファイアウォール・境界機器)25128748%
EDR(端末の検知・対応)1631419%
SIEM(ログ集約・分析)1661338%
XDR(統合検知・対応)10000%
MDR(監視の外部委託)11000%

3カテゴリ合計114件のうち、87件(76%)をFWカテゴリが占めています。25製品中12製品、つまり約半数が「実際に悪用された」経験を持っています。理由は単純で、ファイアウォールやVPN装置はインターネットに直接面していなければ仕事にならないからです。攻撃者から見れば、常に手が届く場所に置かれた鍵です。

対照的に、XDRとMDRはゼロでした。ただしこれを「XDRは安全」と読むのは早計です。

🚨 重要:「ゼロ件」の正しい読み方

XDR・MDRがゼロなのは、製品が堅牢だからとは限りません。より効いているのは次の3点です。
クラウド型(SaaS)が多く、利用者側にパッチを当てる機器がないため、そもそもCVEとして採番・公開される形になりにくい。
② 比較的新しいカテゴリで、導入台数が境界機器ほど多くない
③ MDRは「監視サービス」であって製品ではないため、CVEの対象になりにくい。
「KEVに載っていない=攻撃されていない」ではなく、「KEVという物差しに乗らない形をしている」と理解するのが正確です。

SIEMについては、第2章で触れた「巻き込まれ」の話がそのまま当てはまります。SIEMのKEV 13件のうち、Microsoft SentinelとIBM QRadarの計6件はすべて共通部品由来でした。SIEMは大量のログを扱うためにJavaやOSSのライブラリを深く使っており、Log4jのような共通部品の事故に巻き込まれる形のリスクが構造的に高いのです。SIEMを守るということは、実質的には「その下で動いている部品を把握しておく」ということでもあります。

なお、EDRの14件のうち11件はTrend Micro Apex One(オンプレミス版)です。EDRのなかでも自社サーバーに設置する型の製品は、管理サーバーが攻撃対象になり得るという点で、クラウド型とは性質が異なります。

第5章 おわり ― 最後に実務の話
CHAP6

第6章 / 全6章

では、何をすればいいのか

ここまでの内容を、明日から手を動かせる形にまとめます。専門部署がない会社でも実行できる順に並べました。

1. 自社の「インターネットに面している機器」を書き出す

最優先はこれです。ファイアウォール、VPN装置、リモートアクセス用のゲートウェイ。製品名・型番・現在のファームウェア版数を一覧にしてください。第1章で見たとおり、攻撃者の投資はここに集中しています。一覧が作れていない状態では、KEVが更新されても自社に関係があるかどうか判断できません。

2. KEVカタログを「自社の製品名で」検索する習慣をつける

CISAのKEVカタログは誰でも無料で閲覧でき、機械可読なJSON形式でも公開されています。週に1回、1で作った一覧の製品名で検索するだけで、「自社の機器がいま実際に狙われているか」がわかります。ニュースを待つ必要はありません。

3. 境界機器のパッチだけは「3日以内」を目標にする

すべての機器を3日以内に更新するのは現実的ではありません。しかし第3章で見たとおり、境界機器については米国政府が自らに3日を課すほどの状況です。対象を「インターネットに面している機器」に絞れば、台数は多くないはずです。その範囲だけでも即応体制を作る価値があります。

4. 管理画面をインターネットに晒さない

今回KEVに載った脆弱性を見ると、PAN-OSのCVE-2024-0012やCVE-2024-9474のように「管理インターフェース」を対象としたものが繰り返し登場します。管理画面へのアクセスを社内ネットワークやVPN経由に限定するだけで、多くの攻撃は届かなくなります。パッチを当てる前の時間稼ぎとしても有効です。

5. サポートが切れた機器を使い続けない

第2章の表に出てきたArray Networks AGシリーズは、公表から312日後にKEV入りしました。古い機器ほど、攻撃者は「まだ直していない組織が残っている」と踏んで後から狙ってきます。サポート終了した境界機器は、脆弱性が見つかっても直す手段がありません。

✅ この記事の要点

① 実際に悪用された脆弱性1,662件のうち、16.3%が「守るための製品」だった。
② ランサムウェアに使われた割合も、全体の20.3%に対し24.0%と高い。
③ 公表からKEV入りまでの中央値は4日。4製品は「公表当日」に悪用が確認された。
④ 米国の是正期限は2026年に21日→3日へ短縮された(BOD 26-04)。日本の企業に法的義務はないが、危険度の目安になる。
⑤ CVE件数の多さは危険度ではない。CVSSが5.9でも悪用された実例がある。
⑥ まず「インターネットに面している機器の一覧」を作ることが、すべての出発点。

セキュリティ製品を買うことは、依然として正しい判断です。この記事は「ファイアウォールをやめよう」という話ではまったくありません。ただ、買って設置した時点で対策が終わるのではなく、その製品自身が最前線の攻撃対象になったという事実を引き受ける必要がある、ということです。

自社で使っている製品の脆弱性情報を実際に確認する手順については、【2026年版】Microsoft SharePointの重大脆弱性とは?今すぐ確認したい緊急対策まとめで、具体的な製品を題材に確認の流れを解説しています。また、身近なツールにも同じ問題が起きる例としてOllama に CVSS 9.1の重大脆弱性もあわせてご覧ください。

第6章 おわり ― よくある質問へ
 FAQ

補足

よくある質問

KEVカタログは日本の企業も見る意味がありますか?

あります。KEVは「米国政府機関がどう対応すべきか」を定めた制度に紐づいていますが、掲載されている情報そのものは、世界中どこでも通用する事実です。「この脆弱性は実際に攻撃で使われている」という情報に国境はありません。無料で、登録も不要で、機械可読な形式でも公開されています。

KEVに載っていない脆弱性は放置していいのですか?

いいえ。KEVは「悪用が確認されたもの」の一覧であり、悪用されうるものすべてではありません。CISAが掲載する条件は「CVE番号がある」「明確な修正方法がある」「実際に悪用された信頼できる証拠がある」の3つです。証拠がまだ集まっていないだけの脆弱性は載りません。KEVは「これだけは絶対に急げ」という下限であって、上限ではありません。

この記事の順位は、製品を選ぶときの参考になりますか?

製品選定の基準としては使わないでください。第2章で述べたとおり、KEV入り件数は「導入台数の多さ」と強く相関します。世界中で使われている製品ほど攻撃者の投資対効果が高く、結果として数字が伸びます。この表はすでに使っている製品の優先順位づけに使うのが正しい用途です。

EPSSが低ければ、後回しにしていいですか?

KEVに載っているものについては、EPSSの値に関係なく最優先です。第4章のCVE-2025-68686はEPSS 1.3%、CVE-2025-61932はEPSS 2.6%でしたが、どちらも現実に悪用されました。EPSSは「まだ悪用が確認されていない大量の脆弱性」に優先順位をつけるための道具であって、すでに悪用が確認されたものを格下げする根拠にはなりません

XDRやMDRに乗り換えれば、この問題は解決しますか?

KEVに載りにくいのは事実ですが、それは第5章で説明したとおり「安全だから」ではなく「CVEという物差しに乗らない形をしているから」です。クラウド型サービスには、事業者側の設定ミスや、連携アプリの権限を悪用される攻撃など、別の形のリスクがあります。製品カテゴリを変えることは、リスクの形を変えることであって、なくすことではありません。

BOD 22-01という指令の名前を見かけましたが、今も有効ですか?

いいえ。BOD 22-01は2021年にKEVカタログを作った指令ですが、2026年6月10日発出のBOD 26-04によって、BOD 19-02とともに廃止されました。現在は一律の期限ではなく、露出度・KEV掲載・自動化された攻撃コードの有無・乗っ取りの範囲という4条件で3日/14日/60日/次回更新時の4段階に振り分けられます。古い解説記事にはBOD 22-01の「2週間ルール」が残っていることがあるためご注意ください。

出典・データの取得方法

  • CISA「Known Exploited Vulnerabilities Catalog」機械可読データ(catalogVersion 2026.08.07、全1,662件)を2026年8月8日に取得し集計。https://www.cisa.gov/known-exploited-vulnerabilities-catalog
  • CISA「BOD 26-04: Prioritizing Security Updates Based on Risk」(2026年6月10日発出、BOD 19-02およびBOD 22-01を廃止)https://www.cisa.gov/news-events/directives/bod-26-04-prioritizing-security-updates-based-risk
  • FIRST「EPSS(Exploit Prediction Scoring System)」— 公表済みCVEが今後30日以内に実環境で悪用される確率を推定する機械学習モデル。https://www.first.org/epss/
  • 製品別のCVE・CVSS・EPSSの紐づけは、当サイトが独自に選定した防御製品78本(FW 25/SIEM 16/EDR 16/MDR 11/XDR 10)に対し、NVDのCPE(製品識別子)で突合したデータベースによる(2026年8月8日スナップショット)。
  • 「直撃/巻き込まれ」の区別は、KEVカタログのベンダー名・製品名欄が当該製品自身を指しているかどうかで判定した。

※ 製品別の集計は上記78製品の範囲内での順位であり、市場全体の網羅的なランキングではありません。集計に含まれない製品が安全であることを意味しません。

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