パスワード管理アプリ9製品を7つの壁で安全性比較2026

9製品横断・公式仕様+査読論文・10軸一覧・事故年表

パスワード管理アプリ9製品
安全性を「7つの壁」で採点2026

1Password・Bitwarden・Proton Pass・Dashlane・NordPass・Keeper・Google・Apple・Microsoft Edge。「運営会社が侵害されても読まれないのか」を、4つの侵害シナリオに分けて検証しました。ゼロ知識は、どんな侵害でも安全という意味ではありません。

結論:「ゼロ知識だから安全」は、4つのうち1つの場面にしか当てはまらない

総務省の家計統計を集計すると、ネットショッピングを使う世帯は10年で25.6%→51.7%へ倍増。買う品目も出前・電子書籍・チケットへ広がりました。アカウントを作る場所が増え続けているのが前提です。

9製品を7項目で採点すると1PasswordとProton Passが15点で同率首位、Bitwarden・Apple 14点。GoogleとEdgeは8点で、鍵管理の公開度が明確に劣ります。

1Passwordが強いのはサーバーに保存されない128ビットのSecret Keyがあるから。暗号化された保管庫を盗まれても、マスターパスワードだけでは総当たりできません。

ただし低評価は「調べられたから」でもあります。2026年の査読論文が調べたのはBitwarden・LastPass・Dashlane・1Passwordの4製品で、4製品すべてに攻撃が見つかりました(12件/7件/6件/6件)。残り5製品の指摘が0件なのは、同じ手法で誰も調べていないからです。

今日やること — Google利用者:「オンデバイス暗号化」を設定しない限り、鍵はGoogleが持っています。全員:回復コード・復旧フレーズは便利なメモではなく保管庫そのものを開ける鍵として保管する。法人利用者:管理者は暗号上の信頼主体だと理解する。

9製品のどれも、クラウド保管庫が破られて利用者のパスワードが一括で平文化された事故は確認できませんでした。それでも安全性が同じではないのは、破られたときに何が残るかが違うからです。

「パスワード管理アプリって、会社がハッキングされたら全部盗まれるんじゃないですか」。これがいちばん多い質問です。答えは「盗まれます。ただし、盗まれるのは暗号文です」

問題はその先にあります。暗号文を盗まれたあと、実際に中身を読まれるかどうかは製品によって違う。そして「読まれるか」は、どういう侵害を想定するかで答えが変わります。サーバーのデータベースが盗まれただけなのか、攻撃者がサーバーを自由に書き換えられるのか、復旧担当者が乗っ取られたのか、それともあなたのパソコンにマルウェアが入っているのか。この4つを混ぜて議論すると、必ず結論を間違えます。

この記事では、9製品の暗号仕様・復旧経路・公開事故を1本にまとめました。ネット銀行8行QR決済10サービスクレジットカード10社携帯9社で使ってきた「7つの壁」をパスワード管理向けに組み直し、各社の公開仕様書と2024年・2026年の査読論文をもとに9製品を採点しました。

⚠ 最初に、この採点の限界をはっきり書きます

評価しているのは公開されている暗号仕様・第三者監査・査読論文だけです。各社が内部で運用している検知やレビュー体制は非公開なので評価に入っていません。したがってこれは「安全性の格付け」ではなく、「設計と、その設計が外部から検証された度合い」の比較です。

「ゼロ知識暗号化」に厳密に統一された技術定義はありません。2026年のUSENIX Security論文も、各社が宣伝上使う「ゼロ知識」と「完全に悪意あるサーバーへの耐性」が一致しないと指摘しています。この記事で「ゼロ知識」という言葉を単独の評価軸にしていないのは、そのためです。

情報は2026年8月22日時点の公式仕様・公開監査・論文に基づきます。特定の製品の利用を推奨・非推奨するものではありません。実際の導入前に、必ず各社の最新の仕様をご確認ください。

CHAP1

第1章 / 全8章

結論:9製品の総合点と「最弱リンク」

点数の低さが弱さとは限りません。理由は第7章で説明します

7つの壁それぞれをA=3点、B=2点、C=1点、D=0点で採点し、21点満点で並べました。「検証」列は、その製品が外部の研究者にどこまで調べられているかです。この列を無視すると、順位を読み違えます。

7つの壁・総合スコア(21点満点)

順位製品総合点最弱リンク検証この製品の性格
1位1Password
15
C サーバーにない128ビットSecret Key。DB窃取への耐性は9製品で頭ひとつ抜けている。一方、2026年の論文では6件の攻撃も報告された
1位Proton Pass
15
B Vault鍵+Item鍵の二段構え、hardened SRP、全クライアント公開。ただしメールエイリアスは暗号化されない
3位Bitwarden
14
D 暗号化範囲・復旧設計・公開性は最上位。一方で唯一、悪意あるサーバーを前提とした攻撃が12件実証されている
3位Apple「パスワード」
14
B 標準状態からE2EE。iCloud自体やApple従業員の侵害まで脅威モデルに含む。製品固有の第三者監査はない
5位Dashlane
13
C 旧暗号方式の4系統は修正済み。共有相手の公開鍵の真正性は構造的に残存
6位NordPass
12
C 個人版はXChaCha20-Poly1305+Argon2idで堅牢。法人版はOwnerが組織暗号鍵を持つ
6位Keeper
12
C レコード単位のAES-256-GCM。法人のCompliance権限者はタイトルとURLを復号できる
8位Google パスワード マネージャー
8
C パスキーは常時E2EE。パスワードは「オンデバイス暗号化」を設定して初めて本人だけが鍵を持つ
8位Microsoft Edge
8
C 端末で暗号化してから同期。個人アカウントの鍵復旧プロトコルが十分に公開されていない

A=3点、B=2点、C=1点、D=0点。「最弱リンク」は壁1〜壁6のうち最も低い評価(壁7は防御そのものではなく検証の厚さを示すメタ指標のため除外)。「検証」は外部の独立検証の厚さ(◎=完全に悪意あるサーバーを前提とした査読研究あり/○=公開された第三者監査あり/△=製品固有の公開暗号監査を確認できず)。2026年8月22日時点の公開情報から筆者が判定。

🚨

この表でいちばん誤読されやすいところ

Bitwardenの「D」は、Bitwardenが危険だという意味ではありません。2026年の査読論文(ETH Zurich/USI)が調べたのはBitwarden・LastPass・Dashlane・1Passwordの4製品で、その4製品すべてに攻撃が見つかっています(Bitwarden 12件、LastPass 7件、Dashlane 6件、1Password 6件、計31件)。同じ手法でNordPassやKeeperやEdgeを調べたら、同じような指摘が出る可能性は十分にあります。「攻撃が報告されていない」は「攻撃が存在しない」ではなく、「まだ誰も調べていない」かもしれない――この違いが、この記事で最も伝えたい点です。第7章で正面から扱います。

合計点より、最弱リンクを見てください

7つの壁のうち6つが完璧でも、1つが破られれば保管庫は開きます。Proton PassとAppleは最弱リンクがBどまりで、突出した穴がありません。ただしこの2つは、悪意あるサーバーを前提とした査読研究を受けていない製品でもあります。逆に1Passwordは総合1位でありながら最弱リンクはC――実際に調べられ、6件の指摘を受けたからです。この非対称をどう読むかが、第7章のテーマです。

⚠️

9製品すべてに共通する、最も現実的なリスク

この記事は「会社が侵害されたら」を軸にしていますが、実際に個人が被害に遭う経路の大半は、あなたの端末側です。2026年8月3日に公表されたUnit 42の研究では、Windows端末に既にマルウェアがある条件で、同期パスキーの端末鍵の悪用や、32バイトのSecurity Domain Secretのメモリ抽出が実証されました。これはGoogleのサーバーが破られた話ではありません。どの製品を選んでも、端末が汚染されていれば守れないという前提は共通です。

第1章 おわり — なぜいま、この話が重いのかへ

CHAP2

第2章 / 全8章

数字で見る前提|守るアカウントが増えている

「パスワードは頭で覚える」が成り立たなくなった10年を、統計で確かめます

製品比較に入る前に、なぜこの道具が必要になったのかを数字で押さえます。ここは他社の記事にない部分です。総務省の家計消費状況調査の生データを集計しました。

【独自集計】ネットショッピングを使う世帯は、10年で倍になった

📈 ネットショッピング利用世帯の割合(総世帯・年次)

0% 25% 50% 25.6% 51.7% 2024年に初めて5割を超えた 2015 2017 2019 2021 2023 2025 10年で +26.2ポイント(2.02倍)|2世帯に1世帯がネットで買う時代へ

出典:総務省「家計消費状況調査」政府統計コード0003168295(インターネットを利用した1世帯当たり1か月間の支出・総世帯)の「インターネットを通じて注文をした世帯」(1万分比)を筆者が集計。年次・平均。

2015年は25.6%、つまり4世帯に1世帯でした。それが2025年には51.7%2024年に初めて5割を超え、いまや2世帯に1世帯がネットで買い物をしています。10年で+26.2ポイント、ちょうど倍です。

利用している世帯だけを取り出すと、1か月あたりの支出は2015年の30,244円から2025年は43,818円へ増えました。使う世帯が倍になり、その世帯の使う額も1.45倍になったということです。

【独自集計】増えたのは金額よりも「買う種類」だった

ここからがパスワード管理の話につながります。同じ調査を22品目に分解して、2015年と2025年を比べました。

📊 ネット通販の品目別・10年間の伸び(2015年→2025年)

1倍 4倍 8倍 12倍 出前 13.28倍 電子書籍 6.60倍 飲料 4.33倍 食料品 4.32倍 音楽・映像・アプリ(DL) 3.73倍 チケット 3.05倍 【22品目 合計】 2.93倍 音楽・映像ソフト(物理) 1.35倍 伸びが大きい品目ほど「専用アカウントを作らないと買えない」ものが並ぶ

出典:同上(政府統計コード0003168295)。総世帯・平均・年次の品目別支出額から筆者が算出。「音楽・映像ソフト(物理)」は音楽・映像ソフト、パソコン用ソフト、ゲーム。

🔑

この並び順が、そのまま「アカウントが増えた理由」です

伸びの上位を見てください。出前13.28倍、電子書籍6.60倍、ダウンロード版の音楽・映像・アプリ3.73倍、チケット3.05倍。いずれも会員登録してアカウントを作らないと買えないサービスです。一方、いちばん伸びていないのは物理の音楽・映像ソフト(1.35倍)。「店で買って終わり」から「アカウントを作って継続的に使う」へ、消費の形が入れ替わったのがこの10年でした。

金額全体は2.93倍ですが、注目すべきはその内訳が特定の品目に集中していないことです。食料も飲料も出前も衣類も医薬品も旅行もチケットも、すべてが2倍から13倍で伸びました。つまりひとつの巨大なサイトに集約されたのではなく、生活のあらゆる場面にアカウントが増えた。人間が頭で覚えられる限界を、統計のほうが先に超えていたわけです。

💡

だから「使い回し」が最大の脆弱性になる

アカウントが数十個に増えれば、覚えられる人はいません。結果として起きるのがパスワードの使い回しです。どこか1社が漏えいすれば、同じ組み合わせで他のサービスに次々ログインされる――これがリスト型攻撃です。パスワード管理アプリの本当の価値は「暗号が強いこと」ではなく、「全部違うパスワードにできること」にあります。この記事は暗号の比較ですが、大前提はそこです。

第2章 おわり — 採点の物差しへ

CHAP3

第3章 / 全8章

採点方法「7つの壁」と4段階の脅威モデル

「侵害されたら読まれるか」は、侵害の種類を決めないと答えられません

この記事の設計でいちばん重要な部分です。「会社がハッキングされたら読まれるか」という問いは、そのままでは答えられません。攻撃者に何ができるかで、答えが完全に変わるからです。少なくとも次の4段階に分ける必要があります。

🎯 4段階の脅威モデル(下にいくほど攻撃者の能力が高い)

攻撃者の能力 ① サーバーのDB・バックアップだけが盗まれた 暗号文の塊が外に出る。攻撃者はそれをオフラインで解析するしかない 守るのは 壁1・壁2 ② 攻撃者が同期サーバーを自由に書き換えられる 偽の公開鍵を配る、暗号方式を弱いものに戻す、偽のアイテムを送り込む 守るのは 壁3 ③ 復旧担当者・法人管理者・メール管理者が侵害された 暗号を破らずに「正規の復旧手続き」で保管庫を開けられてしまう 守るのは 壁4・壁5 ④ あなたの端末・ブラウザが侵害された 保管庫を開けた瞬間の平文がそこにある。どの製品でも構造的に守りきれない 守るのは 壁6 「ゼロ知識」という言葉が保証しているのは、多くの場合 ① だけです

各社が「ゼロ知識」と呼んでいるのは、ほとんどの場合①のシナリオ――保管庫の暗号文を持っていても運営会社は中身を読めない、という意味です。それは事実ですが、②③④まで保証しているとは限りません。2026年のUSENIX Security論文が指摘したのも、まさにこのズレでした。

採点する「7つの壁」

何を見るかA(3点)をつけた基準
壁1
鍵の強さ
マスターパスワード以外に、サーバーが持たない秘密があるか。KDFの強度サーバーに保存されない高エントロピーの追加鍵がある
壁2
暗号化範囲
何が暗号化されないか。URL・タイトル・メタデータ・添付保管庫内のほぼ全項目を暗号化し、例外が公開されている
壁3
悪意あるサーバー
サーバーが敵に回っても安全か。鍵配布・KDFダウングレード・アイテム注入同モデルでの独立検証を経て、重大な指摘が残っていない
壁4
復旧経路
パスワードを忘れたときに開ける道が、どれだけ強く守られているかそもそも運営側から開ける経路が存在しない
壁5
信頼境界
法人管理者・共有相手・復旧権限者が、暗号上どこまで信頼主体になるか管理者が平文にも識別情報にも到達できない設計
壁6
端末・拡張
ブラウザ拡張の脆弱性、端末マルウェア、自動入力の副作用端末侵害を明示的に脅威モデルに入れ、緩和策を公開
壁7
検証可能性
第三者が実際に検証できるか。公開監査・オープンソース暗号実装の公開監査があり、クライアントのソースが公開
📌

SOC 2 や ISO 27001 は、この表のどこも保証しません

各社が並べるSOC 2 TypeⅡやISO 27001は、組織の運用統制に関する監査です。「従業員の権限管理が適切に運用されているか」は見ますが、「悪意あるサーバーでも暗号鍵を取得できないか」は証明しません。この記事が壁7で見ているのは、暗号実装そのものへの独立した技術検証です。混同されやすいので、ここははっきり分けています。

⚠ 壁3の採点には、構造的な不公平があります

壁3で高い点を取るには「独立検証を経て、重大な指摘が残っていない」ことが必要です。ところが2026年時点で、完全に悪意あるサーバーを前提とした査読研究の対象になったのはBitwarden・LastPass・Dashlane・1Passwordの4製品だけで、その4製品すべてに攻撃が見つかりました調べられていない5製品は、良いのか悪いのか分からないまま中間評価(C)になります。この歪みを隠すと読者を誤解させるので、総合表に「検証」列を設け、第7章を丸ごとこの問題に充てました。

第3章 おわり — ここから実際の9製品比較へ

CHAP4

第4章 / 全8章

壁1〜3:鍵・暗号化範囲・悪意あるサーバー

暗号そのものの強さを見る3項目です

製品壁1 鍵の強さ壁2 暗号化範囲壁3 悪意あるサーバー小計
1PasswordA 3A 3C 17
Apple「パスワード」B 2A 3B 27
Proton PassB 2B 2B 26
DashlaneB 2A 3C 16
NordPassB 2A 3C 16
BitwardenB 2A 3D 05
KeeperB 2B 2C 15
GoogleC 1B 2C 14
Microsoft EdgeC 1B 2C 14

壁3のC(1点)は多くの場合「悪意あるサーバーを前提とした独立検証が確認できない」という意味で、脆弱性が見つかったという意味ではありません。第7章参照。

壁1|鍵の強さ ― 1Passwordだけが構造的に違う

ほとんどの製品は、マスターパスワードから鍵を導出します。だからマスターパスワードが弱ければ、盗まれた保管庫はオフラインで総当たりされます。KDFの強度(Bitwardenは2026.2.1でPBKDF2の最低値を60万回へ引き上げ、Keeperは100万回、NordPassとBitwardenはArgon2idに対応)は、その総当たりを遅くするための工夫です。

1Passwordだけは考え方が違います。サーバーが保存していない128ビットのSecret Keyをマスターパスワードと組み合わせる方式(two-secret key derivation)のため、保管庫の暗号文を盗んでも、そこに128ビット分の未知数が残ります。1Passwordがサーバー側で受け取るのはSecret Keyの先頭8文字だけで、これはアカウントの識別にのみ使われます。

🔐 なぜ1PasswordはDB窃取に強いのか

一般的な構成(8製品) マスターパスワード あなたが覚えている KDF Argon2id等 保管庫の鍵 暗号化された保管庫 ← 盗まれるのはここ 盗んだ保管庫に対して、マスターパスワードを推測するだけで解析を始められる(弱いパスワードほど危険) 1Password の構成 マスターパスワード Secret Key(128bit) サーバーに存在しない 鍵の導出 保管庫の鍵 暗号化された保管庫 ← 盗まれても鍵の材料が足りない 保管庫を盗んでも、Secret Keyを知らなければ128ビット分の未知数が残る。マスターパスワードの推測だけでは進めない ※ ただしSecret Keyは端末や回復コードの中にある。端末が侵害されれば(脅威モデル④)この優位は消えます

GoogleとEdgeをCにしたのは、そもそもマスターパスワードという概念が標準では存在しないためです。Googleは標準設定だとGoogleが復号鍵を保管しており、「オンデバイス暗号化」を設定して初めて本人だけが鍵を持つ構成になります。Microsoftは独自のCustom Primary Passwordを2026年3月5日に新規提供を停止し、6月4日に完全廃止して、Windows HelloやmacOSのTouch IDなどOS認証へ統合しました。

壁2|暗号化範囲 ― 「何が暗号化されないか」で差がつく

保管庫が暗号化されているのは全製品共通です。差が出るのは周辺情報のほう。パスワード本体だけを暗号化して、URLやタイトルは平文、という設計もあり得るからです。

製品暗号化される範囲暗号化されない・例外となるもの
BitwardenURL・項目名・フォルダ名を含む全項目メールアドレス、認証ハッシュ(アカウント情報)
1Password保管庫内すべてアカウント・契約情報
NordPassタイトル・URL・カード情報を含むNord Accountの情報
Dashlaneドメインを含む保管庫契約・アカウント情報
Appleパスワード・パスキー・TOTP・Wi-Fiアカウント・端末情報
Proton Passパスワード・ユーザー名・URL・ノート・メタデータメールエイリアスは転送機能のため暗号化されない
Keeperレコード本文・添付を含む全レコード法人でCompliance Reporting有効時、タイトル・URL・レコード種別が管理者に復号可能
Googleパスワード・パスキーパスキーは常時E2EE。パスワードはオンデバイス暗号化を設定した場合のみ
Microsoft Edgeパスワード等を端末側で暗号化して同期鍵・復旧設計の公開情報が乏しく、範囲を確定できない
📧

Proton Passのメールエイリアスは、仕組み上どうしても平文になります

エイリアスは受信したメールを本来のアドレスへ転送する機能なので、転送先を知らないと転送できません。パスワード本体はE2EEでも、「どのサービスにどのエイリアスで登録したか」は保護対象外です。プライバシー重視でProton Passを選ぶ人ほど、この例外は知っておくべきです。設計の欠陥ではなく、機能とのトレードオフです。

暗号化されても、「利用者の存在」までは消えません

もう一つ、暗号化の議論から抜け落ちがちな話をします。保管庫がゼロ知識でも、サービスを運営するには必ず必要な情報があります。

🕵️

運営に必要で、暗号化の外側に残るもの

メールアドレス、契約プラン、支払情報、IPアドレス、端末、ログイン時刻、組織名、共有関係。これらは請求・認証・サポートに不可欠なので、暗号化の対象外に置かれるのが普通です。

つまり「保管庫がゼロ知識」であっても、誰がそのサービスを使っているか、どの企業テナントに属しているかまでゼロ知識とは限りません。中身は守れても、使っているという事実は残る。取材源の保護や内部通報のように「使っていること自体を知られたくない」場面では、この差が効いてきます。

壁3|悪意あるサーバー ― ここが2026年最大の論点

脅威モデル②です。攻撃者がサーバーを掌握し、正しくないデータを積極的に送りつけてくる状況で、クライアントが守れるか。2026年のUSENIX Security論文はここを突きました。

B

🔴 Bitwarden ─ 12種類の攻撃が報告された

鍵交換、法人への自動登録、KDFのダウングレード、組織鍵・ユーザー鍵の置換などで、組織の全保管庫の侵害に至るものも含まれます。Bitwardenの回答は同一ページ内で「すべて対処済み」と「7件は解決または対応中、残り3件は意図した設計として受容」が併記されており、現在どの攻撃が完全に無効化されたのかを公開情報だけでは確定できません。加えて、Organization内のCollectionは別々の暗号鍵で分離されておらず、権限分離は暗号ではなくサーバー側の認可に依存します。

D

🟠 Dashlane ─ 6件中4系統は修正、2件は構造的に残存

「全部修正済み」は誤りです。Item Injection、KDF除去、CBCダウングレードなど旧暗号方式の互換性に関わる4系統は拡張機能6.2544.1で修正されました。一方、悪意あるサーバーが共有相手の公開鍵を差し替えて、新たに共有されたアイテムを取得する問題は構造的に残存。トランザクションの再送・並べ替え・削除による不整合も、設計上のトレードオフとして受容されています。

P

🟢 Proton Pass ─ 設計上の備えは厚いが、同モデルでの検証は未確認

32バイトのVault Key、アイテムごとの32バイトItem Key、AES-256-GCM、共有招待の署名検証。さらにhardened SRPにより、悪意ある認証サーバーでもログイン1回につきパスワード候補を1回しか検証できない設計が公開されています。2026年1〜4月にRecurity Labsがデスクトップ・モバイルアプリ、Chrome/Firefox/Safari拡張、CLIを監査し、全体評価を「well above par(水準を大きく上回る)」としました。57ページの報告書では、リモートから悪用できる脆弱性も暗号化の回避も見つからず、指摘の大半は軽微、中程度はAndroidのデータ削除に関する1件のみで再テスト時に修正済みです。ただしこの監査が同じ「完全に悪意あるサーバー」モデルを試験したとは確認できません

1

🟦 1Password ─ 総合1位でも、6件の攻撃が報告されている

2026年の論文は1Passwordに対しても6件の攻撃を報告しています。Dashlaneと同数で、「Secret Keyがあるから悪意あるサーバーにも安全」ではないということです。Secret Keyが効くのは脅威モデル①(DB窃取)であって、②ではありません。公開鍵の真正性という同じ論点について、1PasswordはAutomated ProvisioningでAccount Trust Logによる改善を導入しましたが、公式資料がこれを「公開鍵を検証する最初の1Passwordサービス」と説明しているため、通常の共有機能全体まで同じ保証が及んでいるとは確認できません。壁3はDashlaneと同じCとしました。

第4章 おわり — 暗号を破らずに開ける道へ

CHAP5

第5章 / 全8章

壁4〜5:復旧経路と、法人・共有の信頼境界

暗号を破らなくても、正規の手続きで開く道があります

脅威モデル③です。ここが実務上いちばん軽視されています。どんなに強い暗号でも、「パスワードを忘れた人を助ける仕組み」が必ず穴になります。

製品壁4 復旧経路壁5 信頼境界復旧の実体緊急アクセス
BitwardenA 3C 1個人は原則リセット不可=運営側から開ける道がない有料。閲覧/引継ぎ・待機式
1PasswordB 2B 2Recovery Code(256ビット)+メール確認、Family管理者専用の待機式機能なし
Proton PassB 2B 212単語の復旧フレーズ(既存データも復号できる)有料。最大5人、0〜30日待機
AppleB 2B 2信頼済み端末、端末パスコード、回復連絡先、HSMなし。Legacy Contactもパスワードは対象外
DashlaneB 2C 1Account Recovery Key+メール/2FA専用機能なし
NordPassB 2C 1回復コードまたは生体認証有料。7日後に自動付与
KeeperB 2C 124語の回復フレーズ+メール+2FA最大5人・待機式
GoogleC 1C 1Googleアカウントのパスワード、画面ロック、同期済み端末専用機能なし
Microsoft EdgeC 1C 1Microsoftアカウント・同期済み端末・OS認証専用機能なし

逆説:復旧できないことが、最も強い

🔒

Bitwardenが壁4でAなのは「助けてくれないから」です

個人アカウントのマスターパスワードは原則としてリセットできません。忘れたら保管庫は永久に開きません。利用者にとっては最悪の体験ですが、攻撃者にとっても最悪です。運営会社を騙して復旧手続きを通す、という攻撃経路がそもそも存在しないからです。利便性と安全性が正面から衝突する典型例で、この記事では安全性の側で評価しています。

逆に、GoogleとEdgeをCにしたのは復旧が「アカウントの復旧」と一体になっているためです。Googleアカウントを取り戻せる人は、パスワード保管庫にも到達します。便利ですが、保管庫の安全性がアカウント全体の安全性以上にはならないということでもあります。

🚨 回復コード・復旧フレーズは「メモ」ではなく「鍵そのもの」です

Proton Passの12単語フレーズは、パスワードのリセットだけでなく既存データの復号にも使えます。Keeperの24語フレーズ、1PasswordのRecovery Code(256ビット)も同様に、保管庫へ至る独立した経路です。

つまりこれらは「忘れたとき用の便利なメモ」ではなく、マスターパスワードと同格の鍵です。メールの下書きやクラウドメモに保存していれば、そのメールアカウントが破られた時点で保管庫も破られます。紙に書いて物理的に保管するのが、いまでも最も安全です。

なお1PasswordのRecovery Codeは256ビットの別鍵として中間鍵をラップする方式で、高エントロピーなのでDB窃取への耐性そのものは下げません。ただし「Recovery Code+メール確認」という別の復号経路が1本増えることは事実で、そこが壁4をAではなくBにした理由です。

復旧・緊急アクセス・注意点を、9製品で並べる

製品緊急アクセス個人アカウントの復旧安全上の注意
1Password専用の待機式なし。Emergency Kit、Family回復事前の回復コード+メール確認、またはFamily organizer回復コードとメールを同じ場所に置かない
Bitwarden有料。閲覧/引継ぎ、待機時間つき原則リセット不可。既存端末、ログイン用パスキー、緊急アクセス等法人のAccount Recoveryを登録すると、管理者経路が1本増える
Proton Pass有料。最大5人、0〜30日の待機復旧フレーズ、旧パスワード、信頼済み端末、復旧ファイル等メール/SMSでのリセットだけでは、既存の暗号データは読めない
Dashlane専用機能なし。暗号化したDASH書き出しを別途共有Account Recovery Key+メールコード/2FAARKがないと、保管庫の消去を伴うリセットになり得る
NordPass有料。閲覧のみ、7日後に自動付与回復コード、または有効化済みの生体認証両方なければ、保管庫データの削除を伴うアカウントリセット
Keeper個人/Family。最大5人、待機式24語の回復フレーズ+メール確認+2FA回復フレーズは保管庫と別の物理的な場所に保管する
Google専用なし。Inactive Account Managerも対象データが限られるGoogleアカウント、Googleパスワード、画面ロック、同期済み端末オンデバイス暗号化では、回復手段をすべて失うとデータも失う
Appleなし。Legacy Contactもキーチェーンは対象外信頼済み端末、端末パスコード、回復連絡先、HSMエスクロー回復連絡先は単独では読めない。HSMは試行回数を制限
Microsoft Edge専用なしMicrosoftアカウントと同期済み端末/OS認証専用製品ほど、復旧と暗号鍵の関係が公開されていない

回復素材の置き方だけで、安全性は変わります

✅ 安全な置き方

  • 紙、または暗号化したオフライン媒体で保管する
  • 保管庫・メール・クラウドストレージとは別の場所に置く
  • 家族には「存在」と「使う条件」だけ共有する
  • 年1回、読めるか・最新かを確認する

🚫 危険な置き方

  • 回復コードを、同じパスワード保管庫の中だけに保存する
  • スクリーンショットを撮り、写真クラウドへ自動同期する
  • 多要素認証の回復コードも、同じメールだけに依存する
  • 法人管理者の復旧権限を棚卸ししない

壁5|法人管理者は、暗号上の「信頼される第三者」になる

個人利用ではあまり関係ありませんが、会社で導入する場合は評価が一変します。退職者のデータをどう引き継ぐかという要件があるかぎり、管理者は必ず暗号のどこかに入り込むからです。

製品法人管理者ができること評価上の意味
KeeperCompliance Reportingを有効にすると、レコードのタイトル・URL・レコード種別がEnterprise Public Keyでも暗号化され、権限を持つ管理者がAdmin Consoleで復号できるパスワード本体は対象外。ただし「URLも会社から見えない」は誤り
NordPassOwnerが組織暗号鍵を保持し、組織内アイテム・復旧・退職者データ移管を管理。法人ユーザーはRecovery Codeがなくても、Ownerが4桁コードを照合して承認すれば新しいマスターパスワードで旧データにアクセスできる個人版と法人版で信頼モデルが別物
1PasswordBusinessでは復旧権限者とメール管理者が同一または共謀すると、従業員アカウントを回復して保管庫を取得できる1Password自身が両権限の分離を公式に警告している
Bitwarden法人は管理者復旧あり。加えてOrganization内のCollectionが暗号鍵で分離されていない(同一Organization Keyを使用)Collection間の権限分離は暗号ではなく認可レベルとBitwarden自身が回答
Dashlane共有相手の公開鍵の真正性を保証しきれないため、悪意あるサーバー下では共有アイテムが漏れうる共有機能を多用する組織ほど影響が大きい
Apple法人管理者による保管庫復旧の枠組みを持たない信頼主体が増えない。ただし業務利用には向かない
🏢

法人導入では「ゼロ知識」の意味が変わります

個人版の「運営会社も読めません」は本当でも、法人版ではあなたの会社の管理者が読める(あるいは復旧できる)ことが多い。これは製品の欠陥ではなく、退職者対応という業務要件から論理的に出てくる帰結です。問題は、それが導入時に説明されないことです。会社でパスワード管理アプリを配られたら、「管理者は何を見られるのか」を必ず確認してください。少なくともKeeperのタイトル・URLは見られます。

KeeperのVault Transferも、事前のユーザー同意と鍵交換が済んでいれば退職時に保管庫を別ユーザーへ移管できます。管理者がその場で平文を見る仕組みではありませんが、移管先アカウントから最終的に内容へ到達できることは押さえておくべきです。

第5章 おわり — 端末側の話へ

CHAP6

第6章 / 全8章

壁6〜7:端末側のリスクと検証可能性

暗号の外側にある2つの弱点です

製品壁6 端末・拡張壁7 検証可能性オープンソース公開されている独立検証
BitwardenB 2A 3クライアント・サーバーとも公開多数の公開監査+USENIX 2024/2026
Proton PassB 2A 3全Passアプリを公開Cure53、Recurity Labs(2026年
1PasswordB 2B 2中核は非公開複数監査。近年の一部はTrust Center経由
KeeperB 2B 2中核は非公開、SDK等は公開NCC Group等によるフルソーステストを公表
DashlaneB 2B 2主要クライアントを公開USENIX 2026研究、年次テスト、SOC 2
AppleB 2C 1非公開Platform Security資料は詳細だが、製品固有の第三者監査ではない
NordPassB 2C 1非公開Cure53監査。ただし詳細な公開製品監査は2020〜2021年中心
GoogleC 1C 1Chromiumは公開、GPMサービスは非公開製品固有の公開暗号監査を確認できず
Microsoft EdgeC 1C 1Chromium部分のみ公開製品固有の公開暗号監査を確認できず

壁6|端末が汚染されていれば、どの製品でも守れない

不都合な真実から書きます。保管庫を開いた瞬間、平文はあなたの端末のメモリにあります。そこにマルウェアがいれば、暗号の強さは関係ありません。9製品すべてに共通する構造的な限界です。

2026年8月3日に公表されたUnit 42の研究は、これを具体的に示しました。Windows端末にマルウェアが既に存在する条件で、3つの攻撃経路が実証されています。Pass-ta-keyはChromeの端末識別鍵をディスクから盗み、Windowsのシステム機能を通じて生体認証もPINも求められないまま正規の署名を作ります。さらに深刻なのがGolden Pass-ta-keyで、Chromeのメモリから32バイトのSecurity Domain Secretを抜き取り、そのアカウントの同期パスキーをすべて復号できます。しかもGoogleはこの値を入れ替える手段を用意していません。

これはGoogleのサーバーが破られた話ではありません。パスキーの暗号自体も壊れていません。壊れているのは「端末は信頼できる」という前提のほうです。GoogleとEdgeを壁6でCにしたのは、ログオン中の端末で自動的に復号される設計が既定になっているためです。

【見落とされがちな横断リスク】共有アイテムを注入して中身を推測する攻撃

2024年のUSENIX Security研究に、あまり知られていない指摘があります。攻撃者が保管庫にアイテムを共有(注入)し、その副作用を観測することで、中身を推測するという手法です。

1

🖼 サイトアイコンの取得から「どこに登録しているか」を推測

保管庫はURLに応じてサービスのアイコンを取りにいきます。この通信を観測すれば、「この人はあのサイトにアカウントを持っている」と分かってしまう。研究では1Password、Dashlane、NordPass、Proton Passなどが対象になりました。

2

📊 パスワード健全性スコアから、候補パスワードを絞り込む

「重複しているパスワードが何件あるか」という健全性指標に、攻撃者が既知のパスワードを注入して差分を見る。重複件数が増えたなら、その候補が保管庫内に存在すると分かります。Dashlane、NordPass、Keeperなどで指摘されました。

3

⚪ Bitwardenは、この研究の比較対象から外れた

理由は皮肉なものです。Collection間が暗号的に分離されていないため、そもそもこの比較の枠組みに乗らなかった――第4章で壁3をDにした同じ設計上の性質が、ここでは「調査対象外」という形で現れています。

この攻撃には、利用者側で打てる手があります

調査は2024年時点のもので、各社の修正状況は一部しか追えていません。ただしリッチアイコン/サイトアイコンの取得を無効化するだけで、1つ目の経路はふさげます。1Password、Proton Pass、Dashlane、NordPassには設定項目があります。見た目が少し寂しくなる代わりに、「どこに登録しているか」の露出が減ります。これは第8章のチェックリストにも入れています。

10の軸で、9製品を一覧にする

7つの壁は評価軸ですが、実際に申し込む前に確認したいのはもう少し細かい事実でしょう。公式資料から拾えた範囲で一覧にしました。

製品ゼロ知識暗号化範囲パスキー多要素認証第三者監査オープンソース
1Password○+Secret Key保管庫内すべて保存・利用・共有TOTP、FIDO/U2F鍵SOC 2 Type II、ISO群、定期ペンテスト中核アプリは非公開。SDK・CLI等は一部公開
BitwardenURL・項目名・フォルダ名を含む全保管庫保存・利用・ログインTOTP、メール、FIDO2 WebAuthn等年次監査、SOC 2/3、ISO 27001クライアント・サーバー公開
Proton PassURL・ユーザー名・ノート等。メールエイリアスは処理上の例外全端末TOTP、U2F/FIDO2鍵、回復コードCure53、Recurity Labs。報告書を公開全Passアプリ公開
Dashlaneドメインを含む保管庫TOTP。物理鍵は2FAとしては使えない年次SOC 2 Type II、ISO 27001、ペンテスト主要クライアントのコード公開
NordPassタイトル・URL・カード情報を含む保管庫Nord AccountでTOTP・物理鍵Cure53、法人向けISO 27001・SOC 2 Type II中核アプリ非公開
Keeperログイン、URL、TOTP、添付等をレコード単位で暗号化TOTP、SMS、Duo、RSA、FIDO2等四半期ペンテスト、SOC 2 Type II、ISO 27001中核は非公開。Commander/SDKは公開
Google標準×/端末内○パスワード・パスキー。鍵の所在は設定で変わるプロンプト、TOTP、パスキー、物理鍵等Google全体の認証はあるが、製品固有の公開監査報告は確認できずChromiumは公開、管理サービスは非公開
Apple用語は使わないが同等パスワード、パスキー、TOTP、Wi-Fi等のキーチェーンApple Accountの2FA必須、物理鍵も可詳細なPlatform Security文書。製品固有の第三者報告は確認できず非公開
Microsoft Edge同等の端末鍵設計を説明パスワード等を端末で追加暗号化して同期v142以降で同期対応Microsoftアカウントのパスキー、Authenticator等Microsoft全体の認証はあるが、製品固有の公開監査報告は確認できずChromiumは公開、同期サービスは非公開

※ 各社の公式資料から筆者が整理。「確認できず」は存在しないという意味ではありません。

⚠ Googleの公式資料には、パスキー暗号化の説明に差があります

2022年のAndroid向け技術ブログは「Google Password Managerのパスキーは常にE2EE」と説明しています。一方、2026年現在の一般ヘルプは、パスワードとパスキーをまとめて「標準暗号化/オンデバイス暗号化」に分類しています。対象OSや世代の違いを公式資料だけでは解消できませんでした。この記事は現在の一般ヘルプを優先し、オンデバイス暗号化が確認できない環境を最高評価にはしていません。

壁7|検証可能性 ― オープンソースは「安全」ではなく「確かめられる」

誤解を避けるために書いておくと、ソースが公開されていることと安全であることは、別のことです。公開されていても誰も読まなければ意味がありません。この記事で壁7を設けたのは、「第三者が実際に検証した記録があるか」を見るためです。

その意味でBitwardenとProton Passは抜けています。Bitwardenはクライアントもサーバーも公開されており、しかも査読論文の対象になりました。Proton Passは全クライアントを公開し、2026年にRecurity Labsの監査を公開しています。逆にApple、Google、Edgeは、製品固有の公開された暗号監査を確認できませんでした。Appleのプラットフォームセキュリティ資料は非常に詳細ですが、それは自社文書であって、第三者による検証ではありません

💡

Appleが壁7でCなのに総合3位なのは、なぜか

Appleの評価が割れるのはここです。設計は9製品でも屈指――Apple Accountの侵害、iCloudへの外部攻撃、iCloud従業員による侵害、第三者によるアカウントアクセス。これらすべてを脅威モデルに明記したうえでE2EEを提供し、しかもAdvanced Data Protectionを有効にしなくても標準状態から適用されます。その設計を外部が検証した記録が公開されていないというだけで、設計自体は高く評価しています。弱点を挙げるなら、6桁の端末パスコードが復旧と端末アクセスの高価値情報になっている点。1PasswordのSecret Keyのような、独立した長いランダム鍵ではありません。

📄

「第三者監査あり」の中身も、揃っていません

SOC 2やISO 27001は組織の統制を確認するもので、暗号方式そのものを証明する監査とは限りません。BitwardenやProtonのようにクライアントと暗号実装の報告書を公開している製品と、認証ロゴだけを示す製品は、同じ「監査あり」でも意味が違います。この記事の壁7では、両者を分けて評価しました。

第6章 おわり — この記事で最も重要な章へ

CHAP7

第7章 / 全8章

「調べられた製品ほど傷が見つかる」問題

この記事でいちばん伝えたいことです

第1章で「Bitwardenの壁3はD」と書きました。数字だけ見れば最下位です。しかし、ここには比較そのものを歪める構造があります。

⚖ 「指摘がない」は「問題がない」ではありません

調べられた製品 Bitwarden・LastPass・Dashlane・1Password 4製品すべてで計31件が公表される 「危険そう」に見える 調べられていない製品 Proton Pass・NordPass・Keeper・Google・Apple・Edge 指摘は0件のまま 「安全そう」に見える しかし、実際にどちらが安全かは分かっていない 同じ手法で調べれば、後者からも指摘が出る可能性は十分にある

2026年のUSENIX Security論文(ETH Zurich/Università della Svizzera italiana)が対象にしたのはBitwarden・LastPass・Dashlane・1Passwordの4製品です。この4製品は合わせて6,000万人以上の利用者と約23%の市場シェアを持ちます。結果はBitwarden 12件、LastPass 7件、Dashlane 6件、1Password 6件の計31件。論文は「攻撃の大半はパスワードの復元を許す」と述べています。

ここで重要なのは、調べられた4製品すべてから攻撃が見つかったという事実です。Proton PassもNordPassもKeeperもGoogleもAppleもEdgeも、同じ「完全に悪意あるサーバー」モデルでは誰も検証していません。だから指摘が0件なのは当然です。

🚨 この記事の順位を、そのまま「安全ランキング」と読まないでください

「1Passwordが絶対安全」「Bitwardenは危険」という単純な結論にはなりません。正確に言えるのは次の2つだけです。①保管庫のDBを盗まれる場面(脅威モデル①)では、Secret Keyを持つ1Passwordが構造的に明確に強い。②完全に悪意あるサーバー(脅威モデル②)では、調べられた4製品すべてに攻撃が見つかっており、1Passwordも例外ではない。残る5製品は同条件で調査されていないため、未報告を安全の証拠にはできません。

むしろ調査を受け入れ、結果を公表し、対応を説明している製品のほうが、長期的には信頼できるという見方もできます。Bitwardenがオープンソースだからこそ研究者に調べられ、Dashlaneが主要クライアントを公開しているからこそ論文の対象になった。透明性が、短期的には評価を下げる方向に働く――このねじれを理解しないと、比較記事は必ず読者を誤導します。

研究チームは90日間の調整開示を経て公表し、各社とも修正に着手しています。ETH Zurich側は「大半のベンダーは協力的だったが、修正の速度は一様ではなかった」「利用者がパスワードへのアクセスを失うことを恐れて、システム更新に慎重になる」という開発現場の事情も報告しています。互換性の維持と安全性が正面から衝突するのが、この分野の難しさです。

年表で見ると、攻撃面がどこに移ってきたか分かります

対象出来事確認された影響この比較での意味
2017Keeperブラウザ拡張の脆弱性を研究者が報告、24時間以内に修正実被害・データ損失の報告はなしと説明サーバー暗号よりクライアント面が現実の攻撃面になり得る
20231PasswordOktaサポートシステムの侵害に関連し、従業員向けOkta環境で不審な活動ユーザーデータ、機密システム、Google環境への侵害なし運営会社のID基盤に到達しても、利用者保管庫の流出とは限らない
2024MicrosoftMidnight BlizzardによるMicrosoftの企業メール環境の侵害顧客向けホストシステム侵害の証拠はなしと説明大企業の侵害履歴とEdge保管庫への実害を混同しない
2025Proton PassDEF CONで、11製品に共通するDOMベースの拡張clickjackingが報告Proton Pass 1.31.6で修正。実証は自己環境で、中央保管庫の侵害ではないE2EEでもブラウザ上で見えている平文はUI攻撃を受ける
2025/26Dashlane完全に悪意あるサーバーが旧暗号を注入できるという研究結果2025年11月5日に拡張6.2544.1で修正、2026年に公開。悪用の証拠なしゼロ知識でも完全侵害下の「整合性」攻撃を検証する必要
2026Bitwarden侵害されたnpmの公開トークンから、CLIパッケージ 2026.4.0 に悪性コードが混入約1時間半のあいだ公開。生産環境の保管庫への侵害証拠なし公開コードでもパッケージ配信の権限は別に守る必要
20264製品悪意あるサーバーを前提とした査読研究で、Bitwarden 12件・LastPass 7件・Dashlane 6件・1Password 6件の攻撃を実証学術研究上の実証であり、実被害の報告ではない調べられた4製品すべてに指摘が出た。未調査=安全ではない

公開されている事故・脆弱性のFACTチェック

今回確認できた公式発表・一次研究の範囲では、9製品のクラウド保管庫が侵害され、利用者の復号済みパスワードが一括で流出した事例は確認できませんでした。ただし「過去に一度も侵害されていない」ことを外部から証明することはできません。

製品時期何が起きたか中央保管庫への影響
1Password2023年Okta のサポートシステム侵害を経由して、従業員向けOkta環境へ不審アクセス公式調査では利用者データへのアクセスなし
Bitwarden2026年4月22日npmパッケージ @bitwarden/cli の 2026.4.0 が改ざんされ、約1時間半だけ公開された(Checkmarx関連の供給網攻撃)。狙われたのは開発者端末・CI/CD・クラウド認証情報利用者の保管庫データへのアクセス証拠なし
Bitwarden2026年悪意あるサーバーを前提とした12種類の攻撃が査読論文で実証学術研究上の実証であり、実被害の報告ではない
1Password2026年同じ査読論文で6種類の攻撃が実証学術研究上の実証であり、実被害の報告ではない
Dashlane2026年同じ査読論文で6種類の攻撃が実証(LastPassは7件)同上
Proton Pass2025年ブラウザ拡張のclickjackingを修正中央保管庫の侵害ではない
Dashlane2025年11月5日悪意あるサーバーによる旧暗号方式の注入問題を、ブラウザ拡張6.2544.1で修正(旧暗号方式のサポートを削除)悪用の証拠なしと公表
Keeper2017年ブラウザ拡張の脆弱性を24時間以内に修正公式には顧客データの損失なし
Google2026年8月3日Unit 42が3つの攻撃経路(Pass-ta-key/Silver/Golden)を公表。Goldenは32バイトのSecurity Domain Secretをメモリから抽出し、そのアカウントの同期パスキーをすべて復号できるWindows端末にマルウェアが存在する前提。Googleサーバーの侵害ではない
Microsoft2024年企業メール環境の侵害Edgeのパスワード保管庫への影響は確認されていない
NordPass・Apple公開資料上、中央保管庫から一般利用者のパスワードが大量に平文化された事故は確認できず未報告=安全の証明ではない
⚠️

よくある誤りの訂正:NordVPNの事案とNordPassは別です

NordVPNが過去に経験したサーバー関連の事案を、NordPassの保管庫侵害として扱っている記事があります。これは誤りです。別のサービスであり、パスワード保管庫が侵害された事実はありません。比較記事を読むときは、「同じ会社の別サービスの事故」を混ぜていないかを確認してください。

第7章 おわり — 選び方と今日の行動へ

CHAP8

第8章 / 全8章

選び方と、今日やる7つの設定

総合点の高い順に選ぶ、という結論にはなりません

ここまで9製品を採点してきましたが、「何を守りたいか」で答えが変わります。用途別に整理します。

🛡 「会社からDBを盗まれる」への耐性が最優先

  • 1Password ─ サーバーにないSecret Keyという構造的優位
  • マスターパスワードが多少弱くても、128ビット分の余裕がある
  • ただし恒久無料版はなく、14日試用のみ

🍎 Apple製品だけで完結する個人

  • Apple「パスワード」 ─ 追加費用ゼロ、標準でE2EE
  • iCloud自体やApple従業員の侵害まで脅威モデルに明記
  • 緊急アクセスがなく、Legacy Contactもパスワードは対象外

🔓 オープンソース・プライバシー・強い無料版

  • Proton Pass ─ 無料で無制限アイテム・端末、パスキー対応
  • Bitwarden ─ 無料で無制限アイテム・端末、セルフホスト可
  • Protonはエイリアスが平文、Bitwardenは悪意あるサーバー耐性に留保

👨‍👩‍👧 家族の死亡・長期入院に備える

  • Keeper(最大5人・待機式)、Proton Pass(0〜30日の待機)
  • NordPassは閲覧のみ、7日後に自動付与
  • 1Password・Dashlane・Apple・Googleには専用の待機式機能がない

🖥 設定せずOS標準で済ませたい

  • Apple「パスワード」(Apple環境で完結するなら追加費用なし)
  • Google必ずオンデバイス暗号化を設定してから使う
  • Edgeは無料・項目数無制限だが、鍵の復旧仕様の公開が薄い

🏢 法人・退職者の引き継ぎが必要

  • Keeper/NordPass/1Password ─ 管理機能は充実
  • ただし管理者を暗号上の信頼主体に加えることになる
  • 1Passwordは復旧権限とメール管理権限の分離が必須

2026年の無料版の実力

製品無料でできること実用性
Bitwarden無制限アイテム・無制限端末。緊急アクセス・内蔵TOTP・添付は有料◎ 個人利用なら無料で完結する
Proton Pass無制限アイテム・端末、2保管庫、10エイリアス、パスキー。緊急アクセス等は有料◎ 無料でパスキーまで使える
GoogleGoogleアカウント/Chromeに付属、実質無制限◎ ただしオンデバイス暗号化の設定が前提
Apple対応Apple OSに付属◎ Apple環境内なら追加費用なし
Microsoft EdgeEdge/Microsoftアカウントに付属、項目数の制限なし◎ ただし鍵管理の透明性に留保
NordPassアイテムは同期できるが、同時にアクティブにできる端末は1台△ スマホとPCの併用が事実上できない
Keeper1モバイル端末・最大10レコード。同期・バックアップ・共有・エクスポート不可× 試用の域を出ない
1Password恒久無料版なし。14日試用×
Dashlane無料版は廃止。14日試用後は購入またはエクスポートのみ×
💡

第2章の統計と、この表を重ねてください

ネットショッピングを使う世帯は2世帯に1世帯まで増え、買う品目も出前から電子書籍まで広がりました。つまり誰もが数十個のアカウントを持つ時代です。そこでNordPassの「同時1端末」やKeeperの「10レコード」という無料版の制限は、実用に耐えません。スマホとPCの両方で使えて、アイテム数に制限がないのは、無料ではBitwarden・Proton Pass・Google・Apple・Edgeです。

今日やる7つの設定(所要20分)

7つの壁に、それぞれ1つずつ対応しています

  • 壁1:マスターパスワードを、他のどこでも使っていない長いフレーズに変える。追加鍵のない製品ほど、ここが唯一の防壁になります
  • 壁1:KDF設定を確認する。BitwardenならArgon2idに切り替える(PBKDF2のままなら最低60万回に)
  • 壁2Googleを使っているなら「オンデバイス暗号化」を設定する。これをしない限り、鍵はGoogleが持っています
  • 壁4:回復コード・復旧フレーズを紙に書いて物理的に保管する。メールやクラウドメモに置かない(それは鍵そのものです)
  • 壁5:会社で配られたものなら、「管理者は何を見られるのか」を確認する。私物のパスワードは会社の保管庫に入れない
  • 壁6リッチアイコン/サイトアイコンの取得を無効化する(第6章の注入攻撃の1経路をふさげます)
  • 壁6:保管庫のロック時間を短くし、端末側のOSとブラウザを最新に保つ。端末が汚染されていれば、どの製品でも守れません
✅ この記事の要点を3行で

①ネットショッピング利用世帯は10年で25.6%→51.7%へ倍増し、伸びた品目はどれもアカウント登録が必要なサービスだった。②9製品のうちDB窃取への耐性で明確に強いのは1Password(サーバーにないSecret Key)、Googleはオンデバイス暗号化を設定した場合のみ本人だけが鍵を持つ。③「指摘がない=安全」ではない。厳しい研究結果があるのは、調べられた製品だけ。

第8章 おわり — FAQへ

FAQ?

よくある質問

この記事に寄せられそうな疑問

採点の前提と、読み間違えやすい点について

結局、パスワード管理アプリは使ったほうがいいのですか?

使ったほうがいいです。この記事は製品間の細かい差を扱っていますが、いちばん大きな差は「使うか、使い回すか」です。第2章のとおりアカウントは数十個に増えており、人間が全部違うパスワードを覚えるのは不可能です。使い回せば、どこか1社の漏えいが全サービスに波及します。9製品のどれを選んでも、使い回しよりは確実に安全です。

ブラウザ内蔵(Google・Edge)ではダメですか?

ダメではありません。使い回しをやめられるなら、それだけで大きな前進です。ただし2つ注意があります。①Googleは「オンデバイス暗号化」を設定しない限り、Googleが復号鍵を保管しています。②どちらも保管庫の安全性がアカウント全体の安全性以上にはなりません。銀行や証券のパスワードなど、失うと痛いものだけ専用製品に移す、という使い分けは合理的です。

Bitwardenは危険ということですか?

違います。第7章のとおり、Bitwardenの厳しい評価は「オープンソースで、研究者に徹底的に調べられたから」出てきたものです。同じ論文は1Passwordにも6件、LastPassにも7件、Dashlaneにも6件の攻撃を報告しており、調べられた4製品すべてに指摘があります。同じ手法で他製品を調べれば同種の指摘が出る可能性は十分にあります。加えてBitwardenは、暗号化範囲(全項目)と復旧設計(個人は原則リセット不可)では9製品で最上位です。通常のDB窃取に対しては、強いマスターパスワードとArgon2idを使えば十分に堅牢です。

「ゼロ知識」と書いてあれば安心ではないのですか?

安心の根拠にはなりません。ゼロ知識暗号化という言葉に、業界で統一された技術定義はないからです。2026年のUSENIX Security論文も、各社が宣伝上使う「ゼロ知識」と「完全に悪意あるサーバーへの耐性」が一致しないと指摘しています。多くの場合、それが保証しているのは第3章の脅威モデル①(DBを盗まれただけ)です。②③④まで保証しているとは限りません。

SOC 2 や ISO 27001 を取得していれば安全では?

それらは組織の運用統制に関する監査で、暗号実装の証明ではありません。「従業員の権限管理が適切に運用されているか」は見ますが、「悪意あるサーバーでも暗号鍵を取得できないか」は証明しません。この記事の壁7が見ているのは、暗号実装そのものに対する独立した技術検証です。両者は別のものとして読んでください。

マスターパスワードを忘れたらどうなりますか?

製品によります。Bitwardenの個人アカウントは原則リセット不可で、忘れたら保管庫は永久に開きません。他の多くは回復コードや復旧フレーズで開けます。ただし第5章のとおり、それらは「メモ」ではなく「鍵そのもの」です。Proton Passの12単語フレーズは既存データの復号にも使えます。紙に書いて物理的に保管し、絶対にメールやクラウドメモに置かないでください。

会社で配られたパスワード管理アプリに、個人のパスワードを入れてもいいですか?

やめたほうがいいです。第5章のとおり、法人版では管理者が暗号上の信頼主体になります。Keeperの場合、Compliance Reportingが有効なら管理者はレコードのタイトルとURLを復号できます。パスワード本体は見えませんが、「どのサイトのアカウントを持っているか」は見えるということです。NordPassのOwnerは組織暗号鍵を持ち、1Password Businessでは復旧権限とメール管理権限が揃えば従業員アカウントを回復できます。私物と業務は保管庫を分けてください。

FAQ おわり — 出典と関連記事へ

出典(2026年8月22日時点)

  • 総務省統計局「家計消費状況調査」政府統計コード0003168295(インターネットを利用した1世帯当たり1か月間の支出・世帯主の年齢階級別・総世帯/2015〜2025年)= 利用世帯割合・品目別支出を筆者集計
  • Matteo Scarlata, Giovanni Torrisi, Matilda Backendal, Kenneth G. Paterson(ETH Zurich/Università della Svizzera italiana)“Zero Knowledge (About) Encryption: A Comparative Security Analysis of Four Cloud-based Password Managers”, USENIX Security 2026(IACR ePrint 2026/058)。対象はBitwarden・LastPass・Dashlane・1Password、攻撃は12件/7件/6件/6件の計31件
  • USENIX Security 2024「パスワードマネージャに対する共有アイテム注入攻撃」(サイトアイコン取得・Vault Health指標による推測)
  • Palo Alto Networks Unit 42 “Pass the Passkey: A Novel Attack Surface in Passwordless Authentication”(2026年8月3日公表。Pass-ta-key/Silver Pass-ta-key/Golden Pass-ta-key の3経路)
  • 1Password「About your Secret Key」「Recovery Codes の技術仕様」「1Password Business のセキュリティ指針」「Automated Provisioning と Account Trust Log」「2023年 Okta 経由の不審アクセスに関する公式報告」
  • Bitwarden「Encryption Key Derivation」(2026.2.1でPBKDF2の最低反復回数を既定値と同じ60万回へ引き上げ/OWASP準拠、Argon2idを選択可)、USENIX 2026研究への公式回答、Collection の権限分離に関する説明、Checkmarx関連の npm 供給網インシデントに関する声明(2026年4月22日、@bitwarden/cli 2026.4.0)
  • Proton「Proton Pass security model」(Vault Key/Item Key/AES-256-GCM/hardened SRP/共有招待の署名検証)、プライバシーポリシー(メールエイリアスの扱い)、復旧フレーズの仕様、Recurity Labs による監査報告(2026年1〜4月実施・57ページ・総合評価「well above par」)
  • Dashlane「Security advisory: Cryptography downgrade issue」(2025年11月5日、ブラウザ拡張6.2544.1で旧暗号方式のサポートを削除。悪用の証拠なし)、USENIX 2026研究への公式回答(残存する共有公開鍵の問題)、暗号・復旧仕様(User Secondary Key)
  • NordPass「セキュリティ仕様」(XChaCha20-Poly1305/Argon2id)、「NordPass Business Whitepaper」(組織暗号鍵とOwner権限)、法人アカウント復旧の手順
  • Keeper「セキュリティアーキテクチャ」(レコード単位AES-256-GCM/PBKDF2 100万回)、「Compliance Reports」(タイトル・URL・レコード種別の復号)、「Vault Transfer」
  • Google「オンデバイス暗号化について」「パスキーの同期と復元」、Chrome のセキュリティ設定に関する説明
  • Apple「Platform Security Guide ─ iCloud Keychain security overview」(Apple Account侵害・iCloudへの外部攻撃・Apple従業員による侵害を含む脅威モデル、HSMによるEscrow Record処理)
  • Microsoft「Edge password manager security」、パスキー同期と Encryption Passkey の仕様、Custom Primary Password の廃止案内(2026年3月5日に新規提供停止/6月4日に完全廃止)、MSRC による2024年の企業メール環境侵害に関する報告
  • 各社公式のサポート文書・セキュリティホワイトペーパー(1Password Emergency Kit/Bitwarden Account Recovery/Proton Pass 復旧フレーズ・復旧ファイル/Dashlane Account Recovery Key/NordPass 回復コード/Keeper 24語回復フレーズ/Google Inactive Account Manager/Apple 回復連絡先・HSMエスクロー/Microsoft アカウント復旧)= 緊急アクセス・復旧経路の比較に使用
  • Google Android Developers Blog「パスキーは常にE2EE」(2022年)と、2026年現在のGoogle一般ヘルプにおけるパスワード/パスキーの暗号化分類の記述差
  • DEF CON 2025 で報告されたブラウザ拡張のDOMベース clickjacking(11製品が対象。Proton Pass は 1.31.6 で修正)

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