防犯カメラは、あなたが見ていないときだけ動く|午前3時17分の海外IPと、Shodanが映す現実

ネットの闇を検証する / 2026年8月版

防犯カメラは、あなたが見ていないときだけ動く―― 午前3時17分の海外IPと、Shodanが映す現実

「ログイン履歴に、身に覚えのない海外IPがあった」「その時間、カメラの向きが変わっていた」。ネットで語られるこの話は、都市伝説として片づけるには証拠が多すぎます。2025年11月には、日本に関係するカメラの映像1,340件が海外サイトで公開され、うち約500件は保育園や工場の内部・民家の敷地内だったことが調査で判明しました。この記事は、その謎解きです。

ネットワークカメラ IoTセキュリティ Shodan Mirai 初期パスワード NOTICE

「うちのカメラ、誰かに見られていないだろうか」
「アプリのログイン履歴に、知らない海外の記録があった」
「そもそも、なぜ世界中の機械の中から、うちが見つかるのか」

この3つは、同じ1つの誤解から生まれています。その誤解とは、「インターネットは広いから、うちなんて見つからないだろう」というものです。

結論から言うと、その前提はもう成り立ちません。インターネット上のすべての住所を1つ残らず確認する作業は、専用のソフトを使えば5分弱で終わります。広さは、もはや隠れ場所ではなくなりました。

この記事では、冒頭の「都市伝説」を3つの現象に分解し、それぞれに答えを出していきます。①午前3時17分の海外IPは誰なのか。②カメラの向きが変わるのは本当に起こりうるのか。③そして、なぜよりによって自分の機械が選ばれたのか。使うのは怪談ではなく、公的機関の観測データと、実際に起訴・処分まで至った事件の記録です。

⚠ 先に、この記事が書かないことを1つ

この記事には、他人のカメラを探し出す具体的な検索文字列や手順は一切書きません。日本では、他人のIDとパスワードを使って機器にログインする行為は不正アクセス禁止法違反にあたり、3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象です(2025年6月1日の刑法改正により、従来の「懲役」は「拘禁刑」へ一本化されました)。パスワードすら設定されていない映像をただ眺める行為も、状況によっては別の罪に問われうるうえ、少なくとも倫理的には完全にアウトです。ここで扱うのは「自分の機械が外からどう見えているかを、自分で確かめる」方法だけです。

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第1章 / 全7章

結論:防犯カメラは「壁に窓を1つ増やす」道具である

この記事全体を貫く比喩を、最初に1つ置きます。

ネットにつながった防犯カメラは、防犯装置であると同時に、家の壁に窓を1つ増やす工事でもあります。

ふつうの窓は、外から中が見えます。だからカーテンを引きます。ところが「スマホからいつでも見られるカメラ」というのは、原理的に言えば世界中のどこからでも覗ける窓を、自分で壁に取り付ける行為です。そこにカーテン(=パスワードと暗号化)を掛け忘れると、窓は開きっぱなしになります。

ここで多くの人がつまずくのが「でも、うちの窓の場所なんて誰も知らないはずだ」という感覚です。この感覚が、そもそもの間違いです。インターネットの住所(IPアドレス)は、住宅街のように名前で探すものではありません。全戸に連番が振られた、巨大な集合住宅だと思ってください。1号室から順にノックしていけば、いつかは必ずあなたの部屋に着きます。しかもその「順にノックする」作業は、人間ではなく機械が、寝ている間にやってくれます。

この前提で、冒頭の3つの現象を先に答え合わせしておきます。詳しい根拠は第2章以降で1つずつ潰していきます。

語られる現象本当に起こるか正体(詳細は該当章へ)
午前3時17分、海外IPからアクセスがあった起こる(毎日)ほぼ全員に起きている。あなたが狙われたのではなく、全部が順にノックされている(第2章)
検索サービスに自分の機器が載っている起こるShodanなどの機器検索エンジンが、応答をそのまま索引化している(第3章)
誰も操作していないのにカメラの向きが変わった条件つきで起こる大半は自動追尾・巡回機能。ただし本物の侵入でも起こりうる(第4章)
知らない相手がスピーカーから話しかけてきた起こる(実例あり)2019年に米国で発生。原因は使い回しパスワード(第5章)
自分の映像が海外サイトで公開されていた起こる(日本でも)2025年の調査で日本関連1,340件を確認。5年間気づかれなかった例も(第5章)
攻撃者は映像を見るのが目的だ半分だけ正しいむしろ攻撃の踏み台にするのが本命。映像は「ついで」のことも多い(第5章)

表の最後の行が、この記事でいちばん伝えたい部分です。「うちには見られて困るものなんて映っていない」という反論は、半分しか的を射ていません。攻撃者にとって、あなたのカメラの価値は「映像」ではなく「常時電源が入っていて、24時間ネットにつながっていて、誰も中身を見ていない小さなコンピュータ」という点にあります。それは、他人を攻撃するための拠点として、極めて優秀な物件なのです。

先に基礎から知りたい方へ

「そもそもIoT機器の乗っ取りって何が起きるの?」という段階の方は、家電全般を扱った入門記事を先にどうぞ。この記事はその「カメラ編・詳細版」にあたります。

IoT機器乗っ取りの真実を読む →
第1章 おわり —— 次は第2章「午前3時17分に来たのは誰か」
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第2章 / 全7章

午前3時17分に来たのは誰か ―― 「狙われた」のではない

まず、いちばん怖がられている現象から解体します。深夜の海外IPアクセスです。

結論を言うと、これはあなたに起きた特別なことではありません。全員に、毎日、何度も起きています。気づいているかどうかの差しかありません。

インターネット全体を「5分」で一周する道具がある

2013年、ミシガン大学の研究チームが ZMap という高速スキャナを発表しました。論文で示された性能はこうです。ギガビット回線1本で、インターネット上のIPv4アドレス空間ぜんぶを、45分以内に1周できる。その後の改良版では10ギガビット回線を使い、4分半で1周、毎秒1,500万回の到達確認を投げられるところまで来ました。

これは攻撃ツールではなく、学術研究のために公開されたオープンソースです。しかし性能は誰が使っても同じです。つまり「インターネットは広いから見つからない」という前提は、2013年の時点で終わっていました。今は、地球上のすべての住所を数分でノックできる時代です。

ここが誤解のいちばん深いところ

攻撃者は「あなたの家」を探していません。「開いている窓」を探しています。順番に全部ノックして、返事があったところだけメモする。だから深夜3時台に来るのは、あなたを狙って忍び寄ったからではなく、機械が黙々と番号順に回ってきて、たまたまその時刻にあなたの番号に到達したからです。

日本の観測データ:1つのIPアドレスに年間250万パケット

感覚の話ではなく、日本の公的機関が実際に数えています。情報通信研究機構(NICT)は、使われていないIPアドレスに届く通信を大規模に観測する NICTER という仕組みを運用しており、その年次レポート(2026年2月公開・2025年分)では次の数字が出ています。

観測項目(2025年・NICTER)数字意味
年間の総観測パケット数約7,010億前年から約2.2%増。減る気配はない
1つのIPアドレスあたり約250万パケット/年1アドレスに毎日およそ7千回ノックが来ている計算
そのうち調査目的のスキャンと推定約55%半分以上が「開いている窓探し」
Telnet(23番ポート)宛て減少傾向代わりに「その他のポート」が増加=標的が多様化
日本宛てのDRDoS攻撃約90万件世界全体では約8,285万件。前年から大幅増

1アドレスあたり年250万パケット。単純に割れば1日あたり約7,000回です。つまりログに海外IPが1件残っていたことに驚くのは、順序が逆で、本当は毎日何千回もノックされている中の、たった1回がたまたま記録に残っただけ、という話なのです。

もう1つ、このレポートで注目すべき指摘があります。Telnetという昔ながらの入り口への通信は減った一方で、「その他のポート」への通信が増えている。そして狙われ続けているのは「家庭用ルータや監視カメラの録画機器など、利用者が感染に気付きにくい機器」だと名指しされています。パソコンなら動作が重くなれば気づきます。カメラは、乗っ取られても今日も同じ映像を映し続けます。気づきにくさそのものが、狙われる理由になっているわけです。

では、そのノックの中身は何か

深夜のアクセスログに残るのは、だいたい次のどれかです。危険度の順に並べます。

ログに見える動き正体危険度
接続だけして即切断(ログイン試行なし)単純な生存確認スキャン。研究機関のものも多い
admin / 12345 などを数回試して去る初期パスワード総当たり。Mirai系の常套手段
同じIDで大量のパスワードを試すブルートフォース。設定が甘いと突破される
正しいIDとパスワードで一発ログイン成功クレデンシャルスタッフィング。他所から漏れたあなたの使い回しパスワードが使われている最高
ログイン画面を通らずに設定が書き換わる脆弱性を突いた侵入。認証を回避されている最高

ログを見るとき、本当に怖いのは「失敗が大量に並んでいる行」ではありません。「1回で成功している行」です。失敗の山は、単に総当たりが弾かれた記録にすぎません。一方で見知らぬ場所からの一発成功は、あなたのパスワードがすでに攻撃者の手元にあることを意味します。

# 危険なのはどちらか(架空のログ例) 2026-08-09 02:41:07 203.0.113.44 login FAILED user=admin 2026-08-09 02:41:08 203.0.113.44 login FAILED user=admin 2026-08-09 02:41:09 203.0.113.44 login FAILED user=root … 同様の失敗が 800 行 … → これは「弾けている」証拠 2026-08-09 03:17:22 198.51.100.7 login SUCCESS user=あなたのID 2026-08-09 03:17:41 198.51.100.7 ptz_preset_call id=3 ← 1行で成功。しかも直後にカメラを操作している。これが本物

※ 上のIPアドレスは、文書内の例示専用としてRFC 5737で予約されている範囲を使った架空の値です。実在の機器とは関係ありません。

「午前3時17分」という時刻自体には意味がない

都市伝説では深夜という時間帯が不気味さを演出しますが、機械にとって時刻は無関係です。ただしあなたにとっては意味があります。深夜は誰も画面を見ていない時間帯であり、だからこそ「気づかれずに済んだ」のです。夜中に来たから怖いのではなく、昼間にも同じことが起きていて、それにも気づいていないことのほうが本質です。

第2章 おわり —— 次は第3章「Shodan ―― インターネットの索引」
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第3章 / 全7章

Shodan ―― 「悪の検索エンジン」ではなく、インターネットの索引

この話題になると必ず名前が挙がるのが Shodan(ショーダン) です。「ハッカーのGoogle」「世界一恐ろしい検索エンジン」と紹介されることが多く、実際その説明は半分は当たっています。ただ、半分は外れています。

Googleとの決定的な違い

Googleが索引にしているのはWebページの中身です。対してShodanが索引にしているのは機器そのものの自己紹介です。

インターネット上の機器は、外から接続されると「私は◯◯というソフトのバージョン△△です」といった短い応答を返します。これをバナーと呼びます。玄関のインターホンに出た人が、聞かれてもいないのに名前と勤務先を答えてしまうようなものです。Shodanは世界中の機器に片端から接続し、このバナーをひたすら集めて検索できるようにしている、それだけのサービスです。

つまりShodanは何も破っていません。鍵を壊すのではなく、玄関先で誰でも聞ける自己紹介を書き留めて回っているだけです。だから合法ですし、実際の主要な利用者はセキュリティ企業や研究者、そして「自社の機器がうっかり外に出ていないか」を点検する情報システム部門です。

問題は「スクリーンショット」機能

ただし、カメラの話に限っては事情が少し重くなります。Shodanは公式に、RDP・Webカメラ・X11・VNC・RTSP といったサービスについて、応答から画面のスクリーンショットを取得して保存していることを明らかにしています。しかもその画像は機械学習でラベル付けされ、画像内の文字が抽出されてバナーに追記されるため、画像の中身まで検索対象になります

ここで鍵になるのが RTSP(Real Time Streaming Protocol、標準は554番ポート)です。ネットワークカメラの映像配信で広く使われるこの仕組みは、認証を設定していなければ、接続しただけで映像が出ます。Shodanのようなスキャナから見ると、それは「1枚静止画を撮って次へ行く」だけの作業になります。

つまり、こういう順番で起きている

①カメラを買って設置する → ②外出先から見たいので、ルータの設定で外から届くようにする → ③パスワードは初期値のまま、あるいはRTSPには認証をかけていない → ④スキャナが数分に一度の全域探索であなたに到達する → ⑤応答があったので記録される → ⑥スクリーンショットが撮られ、索引に載る。ここまでの全工程に、いわゆる「ハッキング」は1回も登場しません。

Shodan・Censys・Insecam・NOTICE ―― 似て見えて全部違う

この分野には紛らわしい名前が並びます。「機器を探す」という表面は同じでも、目的も合法性もまったく別物なので、一度整理しておきます。

名前誰が何のためにやっていること位置づけ
Shodan民間の検索サービス。研究者・防御側が多く利用バナー収集と索引化。一部サービスは画面も取得合法。防御にも使える
Censys同上。証明書やホストの詳細調査に強い全域スキャンと証明書データベース合法。調査用途
Insecam匿名の運営者。「注意喚起」を掲げる初期パスワードのままのカメラ映像を一覧化して公開映像を晒す側。倫理的に問題大
NOTICE総務省・NICT。日本の利用者を守るため脆弱な機器を調べ、プロバイダ経由で本人に注意喚起国の公的取り組み(第6章)
Mirai系ボットネット攻撃者同じ手口で見つけて、そのまま感染させる完全な犯罪

注目してほしいのは、この5者が使っている「探し方」が本質的に同じだという点です。全域を順にノックして、応答を見る。違うのは、応答を見つけたあとに何をするかだけです。索引に載せるか、本人に知らせるか、映像を晒すか、乗っ取るか。技術は中立で、分岐するのは目的のところだけという、この分野の典型的な構図がここにあります。

唯一やっていい使い方:自分のIPを引く

Shodanで検索してよいのは、原則として自分が管理している機器だけです。具体的には、自宅のグローバルIPアドレス(「確認くん」のようなIP確認サイトで分かります)をShodanの検索窓にそのまま入れて、何が出るかを見ます。

出た結果意味やること
「No information available」直近の索引に載っていないひとまず安心。ただし油断はしない
ポート番号がいくつか並ぶ外から届く入り口がある各ポートが何のためのものか確認する
554 / 8000番台などが開いているカメラ関連が外に出ている可能性その公開が本当に必要か見直す
スクリーンショットが表示される認証なしで映像が見えている今すぐ公開を止める。最優先

補足:光回線でも家庭用はIPが変わることがある

一般の家庭回線ではグローバルIPが定期的に変わる場合があるため、「今日は出なかった」が「ずっと安全」を意味するとは限りません。またマンション共用回線や一部の接続方式では、そもそも外から直接届かない構成になっていることもあります。Shodanでの確認は補助的なチェックであり、本命はカメラ側とルータ側の設定そのものです(第7章)。

Shodanの使い方そのものを学びたい方へ

当サイトには、Shodanの検索構文を基礎から扱った解説記事があります。この記事では意図的に検索文字列を載せていないので、自分の資産を点検したい方はそちらへどうぞ。

Shodan完全活用ガイドを読む →
第3章 おわり —— 次は第4章「カメラの向きが変わった、の答え合わせ」
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第4章 / 全7章

「カメラの向きが変わっていた」の答え合わせ

都市伝説のクライマックスがここです。誰も触っていないのに、カメラが動いた。

正直に書きます。この現象には、まったく無実の説明が2つあります。そして、本物の侵入という説明も1つあります。順番に潰していきましょう。怖がる前に切り分けるのが、セキュリティの作法です。

説明①:そもそもカメラは自分で動くように作られている

首振り機能つきのカメラは PTZ(Pan=左右、Tilt=上下、Zoom=拡大)と呼ばれます。そしてPTZカメラの多くには、はじめから次のような自動機能が載っています。

機能名(呼び方は製品ごとに違う)何をするかいつ動くか
自動追尾(オートトラッキング)動くものを検知して、その方向へ首を振り続ける猫・虫・カーテンの揺れ・車のライトでも作動する
プリセット巡回(クルーズ/ツアー)登録した複数の向きを、決めた順に自動で巡回する設定した時刻・間隔で毎日動く
ホームポジション復帰一定時間操作がないと、基準の向きへ自動で戻る誰かが向きを変えた数分後
赤外線ナイトモード切替暗くなるとレンズ前のフィルタが物理的に切り替わる日没後・深夜。「カチッ」という音がする

とくに厄介なのが最後の行です。ナイトモードの切り替えは機械的な動作なので、深夜に小さな作動音が鳴ります。「夜中にカメラから音がした」の相当数は、これです。

説明②:正規の権限を持つ「知っている誰か」

次に多いのが、これです。カメラのアプリは、たいてい複数の端末やアカウントを共有できます。

  • 家族が外出先からアプリを開き、映りを確かめるために向きを変えた
  • 設置業者のアカウントが残ったままで、保守作業として操作された
  • 以前の同居人・元交際相手の端末が、共有設定に残り続けている
  • 中古やレンタル物件で引き継いだ機器に、前の持ち主のアカウントが生きている

3つめは笑い事ではありません。ストーカー被害の相談では、この「共有解除のし忘れ」が繰り返し登場します。侵入されていないのに、正規のログインで覗かれているという、いちばん見つけにくい形です。

説明③:本物の侵入 ―― そして、本当に操作できる

そのうえで、はっきり書いておきます。攻撃者がカメラの向きを変えることは、技術的に十分可能です。

理由は単純で、PTZの操作は、映像を見るのと同じ管理画面から行う機能だからです。管理者としてログインできた相手には、映像を見る権限も、首を振る権限も、録画を消す権限も、設定を書き換える権限も、まとめて渡ってしまいます。「見るだけなら奪えるが、動かすのは無理だろう」という直感は、ここでは成り立ちません。

さらに深刻なのが、ログイン画面すら通らずに入られる場合です。たとえば CVE-2021-36260 は、Hikvision製のIPカメラ・PTZカメラ・録画装置(NVR)などのWebサーバ部分にあったコマンドインジェクションの脆弱性で、認証なしの遠隔から、機器上でroot権限のコマンドを実行できるというものでした。深刻度はCVSSで9.8。この脆弱性は米国CISAの「悪用が確認された脆弱性カタログ」(KEV)に収録されており、実際に攻撃に使われた実績があることが公的に確認されています。

root権限が取られる、とはどういうことか

カメラは小さなLinuxコンピュータです。その最高権限を握られるということは、映像を見られる/向きを変えられるにとどまらず、任意のプログラムを常駐させられることを意味します。ここから先は「覗き」の話ではなく、あなたの家のカメラが、他人を攻撃する道具として使われる話になります(第5章)。

切り分けの手順:この順番で確かめる

手順確認することここが該当したら
1自動追尾・巡回・ホーム復帰の設定がオンになっていないか説明①。動作時刻と一致すればほぼ確定
2アプリの共有アカウント・登録端末の一覧に、心当たりのないものがないか説明②。その場で削除する
3ログイン履歴に、見知らぬIPからの成功が残っていないか説明③。侵入を疑う段階
4ファームウェアの版が最新か。管理者パスワードが初期値のままでないか説明③。突破の理由がこれ
5設定(録画保存先・通知先・ユーザー一覧)が勝手に書き換わっていないか侵入後に居座られている可能性

3以降に該当した場合、いちばんやってはいけないのが「パスワードだけ変えて様子を見る」ことです。機器そのものに侵入されている場合、パスワード変更では追い出せません。正しい手順は、ネットから切り離す → ファームウェアを最新にする → 工場出荷状態に戻す → そのうえで新しいパスワードで初期設定をやり直す、です。順番を守ってください。

第4章 おわり —— 次は第5章「事件ファイル:実際に起きたこと」
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第5章 / 全7章

事件ファイル ―― これは全部、実際に起きたこと

ここからは、都市伝説ではありません。報道され、調査され、裁判や行政処分の記録が残っている事件だけを並べます。読み終わる頃には、冒頭の「怖い話」がむしろおとなしい部類に思えてくるはずです。

File 01|日本・2025年11月 ―― 保育園の映像が、5年間ずっと流れていた

2025年11月4日、読売新聞と情報セキュリティ企業トレンドマイクロの共同調査の結果が報じられました。2025年9月から10月にかけて海外で運営されている7つのサイトを調べたところ、「日本」に該当する映像が計約1,340件公開されていたというものです。内訳は次のとおりです。

撮影場所の区分件数具体例として報じられたもの
屋内約90件保育園、食品加工工場、パン工場の内部
敷地内400件超民家の玄関先など
屋外700件超観光地など(公開目的のものも含まれる)

このうち、明らかに公開を意図していない屋内・敷地内の約500件が問題視されました。とくに衝撃だったのが関西地方の保育園の事例です。園内のネットワークカメラの映像が5年間にわたって流出しており、園児の着替えが映る映像まで、パスワード認証なしで誰でも閲覧できる状態でした。原因はカメラのパスワードが未設定だったこと、そしてソフトウェアの更新が10年以上行われていなかったことだと見られています。

さらに、これらの映像が公開されていたサイトには月300万回規模のアクセスがあり、中には静止画を保存する機能を備えたサイトもあったと報じられています。

5年間、誰も気づかなかった

この事件の本当の恐ろしさは、流出そのものではなく「5年間、誰も気づかなかった」という点にあります。カメラは正常に動いていました。映像も見られました。園の運営に支障はなく、だから誰も疑いませんでした。第2章で触れた「利用者が感染に気付きにくい機器」という指摘が、そのまま現実になった形です。

なお神戸大学の森井昌克教授は、2025年11月の解説記事で、日本国内では依然として400件程度がこうしたサイトで公開され続けていると指摘しています。2016年初頭には6,000件を超えていたことを考えれば減少はしていますが、EU諸国が数十件規模であることと比べると、日本の水準はなお高いという評価です。

File 02|世界・2014年〜 ―― Insecam、「注意喚起」を名乗る展示場

Insecamは2014年に匿名の運営者が立ち上げたサイトで、初期パスワードのままのIPカメラの映像を、国別・機種別に一覧化して公開しています。開設当初は152か国・約73,000台が掲載されていました。

ここで重要なのは手口です。Insecamは何かを破っているわけではなく、「admin」「12345」といった出荷時のIDとパスワードをそのまま試しているだけです。通れば一覧に載る。それだけの仕組みで、7万台以上が集まってしまいました。国際的な批判を受けて運営者は一度すべての配信を削除しましたが、その後「街頭・交通・オフィスなど公共性のあるカメラに限る」というフィルタをつけて再開しています。2025年時点でも、なお2,000を超える配信が閲覧可能とされています。

この種のサイトを「見に行く」のはやめてください

好奇心は分かりますが、これは本人の同意なく撮影された私的空間の映像です。閲覧はプライバシー侵害に加担する行為ですし、日本国内から接続する場合の法的な整理も安全とは言えません。仕組みを理解するのに、実物を見る必要はありません。

File 03|米国・2021年 ―― Verkada、15万台がまとめて

企業向け防犯カメラの大手Verkadaで、2021年3月8日から約36時間にわたり、およそ15万台のカメラのライブ映像と録画が外部から見られる状態になりました。対象には学校、病院の集中治療室、刑務所の房内、取調室、ジム、そして個人宅が含まれていました。

侵入の手口は、悪夢のように単純です。「スーパー管理者」権限を持つアカウントの認証情報が、インターネット上で公開された状態になっていたのです。社内の開発システムが意図せず外部に露出し、暗号化されていないサブドメインにシステムアカウントの資格情報が埋め込まれていました。これを見つけた側は、全顧客の全カメラにアクセスできました。

実行したのは「APT-69420 Arson Cats」を名乗るグループの一員で、その後2021年3月に大陪審によって起訴されています。またVerkada自身も、2024年8月に米連邦取引委員会(FTC)から、映像や個人データの保護を怠ったとして措置を受けました。

教訓:クラウド型は「自分の設定」だけでは守りきれない

この事件で被害に遭った人々は、パスワードを使い回してもいなければ、ファームウェアを放置してもいませんでした。破られたのは、事業者側の一点です。クラウド型カメラを選ぶことは、自分の防御をメーカーに預けることでもあります。だからこそ、事業者の過去の対応履歴を見る価値があります。

File 04|米国・2019年 ―― 「僕はサンタクロースだよ」

2019年12月、ミシシッピ州の家庭で、8歳の女の子が自室で遊んでいると、設置したばかりのRing製カメラのスピーカーから見知らぬ男の声が話しかけてきました。男は自分をサンタクロースだと名乗り、部屋を壊すようそそのかしました。カメラを設置してから、わずか4日後の出来事でした。

手口は、この記事で何度も出てきたクレデンシャルスタッフィングです。まったく別のサービスから漏れたIDとパスワードの組み合わせを、そのままカメラのアカウントに試す。使い回していれば、一発で通ります。第2章のログの話を思い出してください。失敗が800行並ぶより、成功が1行あるほうが怖いというのは、こういうことです。

Ringについては2023年5月、FTCが正式に措置を取りました。認定された事実は次のとおりです。

FTCが認定した内容(2023年5月)規模・時期
従業員と委託先が顧客の私的な映像に自由にアクセスできたウクライナ拠点の委託先を含め数百人規模。寝室や子ども部屋も対象
クレデンシャルスタッフィング等で顧客機器が乗っ取られた55,000件超(2019年1月〜2020年3月)
多要素認証などの基本的な対策の導入が遅れた2017〜2018年に攻撃を受けながら、導入は2019年
制裁金(顧客への返金原資)580万ドル

File 05|米国・2020年 ―― 敵は外にいるとは限らない

ホームセキュリティ大手ADTの技術者だったTelesforo Aviles は、約4年半にわたり、顧客およそ200アカウントに9,600回以上も無断でアクセスしていました。手口は会社の規定に反して、設置作業の際に自分の個人メールアドレスを顧客のアカウントに追加するというものでした。これで、顧客宅の映像をいつでもリアルタイムで見られるようになります。彼は魅力的な女性がいる家を選んで、繰り返しログインしていました。2021年1月に有罪を認め、同年6月に連邦刑務所での52か月の服役を言い渡されています。

この事件が突きつけるのは、「設置してくれた人を信用してよいのか」という、技術では解けない問いです。設置後にアカウント一覧を自分の目で確認する。これだけで防げました。

File 06|米国・2024年 ―― 侵入ゼロでも、映像は漏れる

2024年2月16日、Wyze製カメラで大規模な障害が発生しました。AWS側の問題に起因する停止から復旧する際、約13,000人の利用者のアプリに、他人のカメラのサムネイル画像が表示されたのです。そのうち1,504人が実際にそれをタップし、拡大画像や録画イベントを見てしまいました。

原因は攻撃ではありません。新しく組み込まれたサードパーティのキャッシュ用ライブラリが、全機器が一斉に復帰したことによる想定外の負荷にさらされ、本来切り分けられているはずの利用者どうしのデータが混ざったことによるものでした。

ここが「都市伝説」より怖いところ

この事件には、ハッカーも、初期パスワードも、脆弱性も出てきません。誰も何も破っていないのに、他人の家の中が表示されました。クラウド型カメラを使うということは、自分の映像を他人のサーバに預けるということです。預け先のバグは、こちらの努力ではどうにもなりません。

File 07|世界・進行中 ―― あなたのカメラが「兵隊」にされる

最後が、いちばん規模の大きな話です。第1章で「攻撃者にとっての価値は映像ではない」と書いた、その本体にあたります。

2016年に登場した Mirai は、初期パスワードのままのIoT機器を大量に感染させ、それらを一斉に動かして巨大なDDoS攻撃を行うマルウェアでした。ソースコードが公開されたため、その後は無数の亜種が生まれ、10年近く経った今も現役で稼働し続けています。そしてその主戦場は、まさに監視カメラと録画装置です。

脆弱性対象機器何が起きたか
CVE-2021-36260Hikvision製IPカメラ・PTZ・NVR等認証なしの遠隔からroot権限でコマンド実行(CVSS 9.8)。CISA KEV収録。公開から数年経った現在も悪用が続く
CVE-2024-3721TBK製 DVR-4104 / DVR-4216コマンドインジェクション。Mirai亜種が悪用し、5万台超が感染(Kasperskyのハニーポット解析)
CVE-2024-7029AVTECH製カメラ遠隔からのコード注入で乗っ取り。「Corona」と呼ばれるMirai亜種が拡散
CVE-2025-1316Edimax IC-7100 IPカメラゼロデイとして悪用され、複数のMirai系ボットネットが利用
CVE-2023-52163Digiever DS-2105 Pro(NVR)CGIスクリプトのコマンドインジェクション(CVSS 8.8)。2025年12月22日にCISA KEV追加。すでに販売終了製品で、公式の修正パッチが存在しない

最後の行を、もう一度読んでください。「修正パッチが存在しない」。サポートが終了した機器に、新しい脆弱性が見つかった場合、そこには手の打ちようがありません。残された選択肢は、ネットから外すか、買い替えるかの二択です。

そして警察庁は2025年上半期の情勢報告で、セットトップボックスなどのIoT機器がプロキシとして動作するマルウェアに感染し、これらの機器を経由してアクセス元を偽装する手口を脅威として位置づけ、注意喚起を行っています。つまり、あなたの家のカメラを踏み台にして誰かが犯罪を行った場合、記録に残るのはあなたの家のIPアドレスだということです。

都市伝説の検証つながりで

当サイトでは「ダークウェブの赤い部屋」など、ネットの怖い噂を技術的に検証する記事も出しています。噂の何が本当で、何が誇張なのかを切り分けるのが、いちばんの防御です。

「赤い部屋」は本当に存在するのかを読む →
第5章 おわり —— 次は第6章「日本のルールと『NOTICE』」
CHAP6

第6章 / 全7章

日本のルールと「NOTICE」―― 国はもう動いている

ここまで読むと絶望的に思えるかもしれませんが、日本は手をこまねいていたわけではありません。制度としては、世界的に見てもかなり早い段階で手を打っています。

2020年4月:売る側に義務が課された

電気通信事業法に基づく端末設備等規則の改正が2020年4月1日に施行され、ネットワークに直接つながるIoT機器には、次の3つの機能を備えることが原則として義務づけられました。

義務づけられた機能中身これがあると防げること
アクセス制御機能正規の利用者以外が設定を変更できないよう制限する誰でも設定画面に入れる状態
初期パスワードの変更を促す機能出荷時のままでは使わせない、変更を求める仕組みInsecam型の丸見え、Mirai感染
ソフトウェアの更新機能ファームウェアを更新できるようにする既知の脆弱性の放置

ここまで読んできた事件のほとんどが、この3つのどれかに当てはまることに気づいたでしょうか。制度としては、正しい急所を押さえています。

ただし「2019年以前に買ったもの」には効かない

問題は、この義務がこれから出荷される機器にしか掛からないことです。総務省が2025年6月に情報通信審議会へ提出した資料では、ID・パスワードの脆弱性調査で発見された危険な機器のうち、規則改正前にあたる2019年以前に発売されたものが全体の83〜96%程度を占めることが示されています。

つまり、危険なのはほぼ「古い機器」

逆に言えば、設置してから6年以上経っているカメラが家や職場にあるなら、それは統計的に最も危ない層です。第5章の保育園の事例も、ソフトウェア更新が10年以上行われていませんでした。「壊れていないから使い続ける」が、この分野では最も危険な判断になります。

NOTICE ―― 国があなたに代わって探してくれる仕組み

NOTICE(National Operation Towards IoT Clean Environment)は、総務省とNICTが行っている取り組みです。インターネット上のIoT機器に対して、容易に推測できるIDとパスワードを実際に入力してみるなどして、攻撃に悪用されるおそれのある機器を調べ、その情報をインターネットプロバイダに通知し、プロバイダから利用者本人へ注意喚起してもらうという仕組みです。

そして令和6年度からは新しいNOTICEが始まり、対象が広がりました。

従来のNOTICE新しいNOTICE(令和6年度〜)
ID・パスワードが脆弱な機器対象対象
脆弱なファームウェア等を搭載した機器対象外新たに対象
すでにマルウェアに感染している機器対象外新たに対象

ここで、第3章の表を思い出してください。NOTICEがやっていることは、技術的には Shodan や Insecam や Mirai とほとんど同じです。全域を探索して、通ってしまう機器を見つける。違うのは、見つけたあとに「本人に知らせる」ことだけです。同じ技術が、法律と目的の裏づけを得ると公共サービスになる、という好例と言えます。

あなたの側の法律:見る行為も違法になりうる

最後に、読者自身が加害者にならないための線引きです。

行為法的な評価
自分が管理する機器のIPをShodan等で調べる問題なし。推奨される自己点検
他人のカメラに、他人のID・パスワードでログインする不正アクセス禁止法違反。3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
他人のID・パスワードを無断で取得・保管・提供する不正アクセスを助長する行為。1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
認証のない他人の映像を閲覧・保存・拡散するプライバシー侵害。内容によっては別の罪にも該当しうる

「パスワードが掛かっていなかったのだから見てもいいはずだ」という理屈は通りません。鍵の掛かっていない他人の家に入ってよいことにならないのと同じです。

第6章 おわり —— 次は第7章「あなたはどのパターンか」
CHAP7

第7章 / 全7章

あなたはどのパターンか ―― 今夜できることまで

ここまでを、あなたの状況に落とし込みます。まず自分がどれに当てはまるかを確認してください。やるべきことは、パターンによって違います。

パターンあなたの状況最優先でやること
①クラウド型を使っているスマホアプリで見る一体型カメラ。メーカーのサーバ経由アカウントのパスワードを他で使っていないものに変え、多要素認証を有効化。共有端末・共有アカウントの一覧を確認(File 04・05・06型)
②自分でルータを設定した外から見るためにポート開放やDDNSを自分で設定したその公開設定を今すぐ見直す。ここが最も危険な層。VPN経由に切り替えるのが本筋(File 01・02型)
③店舗・工場・園などで録画装置があるNVR/DVRに複数台のカメラをつないでいる。業者が設置設置業者のアカウントが残っていないか確認。機器の型番でCVEを検索し、EOL(サポート終了)でないか確認(File 07型)
④実家や高齢の家族に設置した自分が設置し、普段は本人が使っている本人は設定を触れない前提で、あなたが定期点検の担当者になる。更新も共有解除もあなたの仕事
⑤引っ越し先や中古で引き継いだ前の住人・前の持ち主の機器がそのまま残っている工場出荷状態に戻してから使う。これ以外に安全にする方法はない

今夜できる7つの確認

所要時間はだいたい20分です。上から順にやってください。

  • 管理者パスワードが初期値・単純な値でないかを確認する。admin / 12345 / password / 機器の型番、はすべて即アウト
  • そのパスワードを他のサービスで使い回していないかを確認する。使い回しはFile 04(サンタ事件)の直接原因
  • 多要素認証があるなら有効にする。Ringが導入を先送りにして55,000件の被害を出した機能がこれ
  • ファームウェアの更新を確認する。自動更新があればオンに。更新が5年以上提供されていない機種は買い替えを検討
  • 共有アカウント・登録端末の一覧を開き、心当たりのないものを削除する。設置業者・元同居人・古い端末が残っていないか
  • 「外から見る」ための公開設定を見直す。ポート開放やUPnPが有効なら、本当に必要か再検討する。可能ならVPN経由に
  • 自宅のグローバルIPをShodanで引いてみる(第3章)。スクリーンショットが出たら最優先で対処する
🚨 このどれか1つでも当てはまるなら、今夜のうちに動いてください

・カメラの設置が2019年以前で、一度も設定を触っていない(危険な機器の83〜96%がこの層)
・ルータでポート開放をして、外から直接カメラを見られるようにしている
・録画装置(NVR/DVR)の型番を把握していない、またはメーカーのサポートが終了している
・カメラのパスワードを、メールやネット通販と同じものにしている
・アプリの共有アカウント一覧を一度も見たことがない
最初の1つでも該当した場合、あなたの機器はすでに索引に載っている可能性があります。第5章の保育園は、5年間気づきませんでした。

そもそも論:本当に「外から見る」必要があるか

最後に、いちばん効く対策を書きます。それは技術ではなく、判断です。

この記事で扱った事故の大半は、「外出先からスマホで見たい」という要望が出発点になっています。その機能を諦めれば、リスクの大部分は消えます。録画だけできれば十分なら、ネットにつながないカメラ(SDカード録画やローカルNVRのみ)という選択肢があります。防犯目的が「あとから確認する」ことなら、それで足ります。

✅ 覚えて帰ってほしい3行

①深夜の海外IPは、あなたが狙われた証拠ではなく「全員に毎日起きていること」の1件です。驚くべきは頻度ではなく、成功が1行でもあるかどうか。
②あなたのカメラの価値は、映像ではなく「24時間つながっていて誰も見ていない小さなコンピュータ」であることです。だから「見られて困らない」は反論になりません。
③やることは3つだけ。パスワードを変える・更新する・外から見る設定を見直す。この記事の事件は、ほぼ全部このどれかで防げました。

第7章 おわり —— 最後によくある質問へ
FAQ?

よくある質問

それでも気になる、細かいところ

Q. カメラのランプが勝手に点いたり消えたりします。覗かれているのでしょうか?

まず、赤外線ナイトモードの切り替えを疑ってください。暗くなるとフィルタが物理的に動き、LEDの状態も変わります。動作音がすることもあります。次に、動体検知が作動した際の通知ランプ。虫や車のライトでも反応します。これらの設定を確認しても説明がつかない場合に、初めてログイン履歴を確認する段階です(第4章の切り分け表)。

Q. パスワードを変えたのに、また不審なアクセスがあります

2つの可能性があります。1つは、そもそも侵入がパスワード経由ではなく脆弱性経由だった場合。この場合パスワード変更では追い出せません。ファームウェアを最新にしたうえで工場出荷状態に戻し、初期設定からやり直す必要があります。もう1つは、単に「毎日来ているノック」を見ているだけの場合です。ログの見分け方は第2章の表を参照してください。失敗の羅列は正常、成功が1行あるのが異常です。

Q. Shodanに自分の機器が載っていました。削除してもらえますか?

順序が逆です。索引から消すことより、載る原因になっている公開状態をやめることが先です。原因が残っている限り、別のスキャナがまた見つけます。第3章のとおり、Shodanは応答を記録しているだけなので、応答しなくなれば自然に載らなくなります。ポート開放をやめる、認証を掛ける、というのが本来の対処です。

Q. 有名メーカーの製品を選べば安全ですか?

残念ながら、それだけでは足りません。第5章で見たとおり、大手企業向けのVerkadaは事業者側の管理不備で15万台が露出し、AmazonのRingは委託先の閲覧とアカウント乗っ取りでFTCの措置を受け、Wyzeは攻撃ではなくバグで他人の映像を表示しました。判断材料にすべきは知名度ではなく、サポート期間の長さ・脆弱性への対応履歴・多要素認証の有無です。とくにサポート終了製品は、第5章のDigieverの例のように「修正パッチが存在しない」状態になります。

Q. 会社や店舗のカメラです。個人向けと何が違いますか?

3点違います。①録画装置(NVR/DVR)が加わるため、攻撃対象が増えます。第5章のMirai亜種は、まさに録画装置を主戦場にしています。②設置業者のアカウントが残りがちです(第5章File 05)。③従業員や顧客が写るため、漏えいした場合は個人情報の問題になります。最低限、機器の型番一覧を作り、それぞれのサポート状況とファームウェア版を管理台帳にするところから始めてください。

Q. うちには見られて困るものがないので、放置でもいいのでは?

この記事でいちばん崩したかった考え方がこれです。攻撃者の目的は、多くの場合あなたの映像ではありません。常時起動していて、誰も中身を見ていない小さなLinuxコンピュータが欲しいのです。乗っ取られた機器は、DDoS攻撃の兵隊にされたり、他人を攻撃する際に発信元を偽装するための中継地点にされたりします(警察庁が2025年上半期の情勢報告で注意喚起している手口です)。その場合、記録に残るのはあなたの家のIPアドレスです。

Q. NOTICEから連絡が来ました。詐欺ではないですか?

NOTICEの注意喚起は、NICTから直接ではなく契約しているインターネットプロバイダ経由で届くのが基本です。プロバイダ名義の通知であれば本物の可能性があります。ただし、この仕組みを騙る詐欺も想定されるため、通知内のリンクは踏まず、プロバイダの公式サイトや会員ページから確認するのが安全です。NOTICEが利用者に金銭やクレジットカード情報を求めることはありません。

Q. 「インターネット全体を5分でスキャンできる」というのは大げさでは?

これは学術論文で公表された実測値です。ZMapは1ギガビット回線で45分以内、10ギガビット回線に最適化した版では約4分半でIPv4アドレス空間の1ポートを走査できると報告されています(USENIX Security 2013/WOOT 2014)。ただし「全ポートを詳細に調べる」のではなく「1つのポートに到達確認を投げる」作業であることには注意してください。それでも、「広いから見つからない」が成り立たないという結論は変わりません。

主な出典(一次情報を優先しています)

※ 日本国内の映像流出件数(約1,340件/うち屋内・敷地内約500件、2025年9〜10月調査)は、読売新聞とトレンドマイクロによる共同調査の報道内容に基づきます。数値は調査時点のものです。

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