漏えいの7割は攻撃ではない|国内630件を数え直したら結論が逆転した

国内の漏えい事案630件 独自集計 / 2026年8月8日

漏えいの7割は攻撃ではない。でも、それだけでは答えを間違える

日本で公表された情報漏えい630件を原因別に分けると、7割が「うっかりミス」でした。ところが同じデータを「漏れた人数」で数え直すと、結論がきれいに逆転します。

情報漏えい統計 ヒューマンエラー 地方自治体 委託先リスク ランサムウェア

「情報漏えい」と聞いて、多くの人が思い浮かべるのはハッカーの攻撃でしょう。ニュースになるのはたいていサイバー攻撃ですし、対策として売られている製品も攻撃を防ぐためのものです。

では実際に、日本ではどんな理由で個人情報が漏れているのか。2025年から2026年8月までに国内で公表された漏えい事案630件を1件ずつ原因で分類し、集計してみました。結果は、かなり予想を裏切るものでした。

⚠ 注意:この630件が意味すること・意味しないこと

この数字は、セキュリティ専門メディア「Security NEXT」が2025年1月から2026年8月8日までに報じた漏えい事案を収集し、原因・組織・規模を機械的に抽出したうえで人が確認したものです。日本で起きた漏えいの総件数ではありません。公表されなかった事案、報道されなかった事案は含まれていません。また対象期間が2年に満たないため、「去年より増えた/減った」という比較には使えません。あくまで「報道された範囲で、どんな内訳になっているか」を示すデータとしてお読みください。

先に3問だけ、当ててみてください

答えを見る前に予想すると、この後の数字の意味が変わります。所要1分・採点はありません。

Q1

国内で公表された情報漏えい630件。いちばん多かった原因はどれでしょう。

  • A サイバー攻撃(不正アクセス・ランサムウェア)
  • B 従業員による持ち出し(内部不正)
  • C 誤操作・設定ミス(メールの誤送信など)
  • D 紛失・誤廃棄(USBメモリや書類)
答えを見る

正解は C:誤操作・設定ミス。284件で、全体の45.1%でした。

さらに、CとDを合わせた「人的ミス」は451件・71.6%Aのサイバー攻撃は122件・19.4%しかありません。

ニュースになるのはほとんど攻撃なので、Aを選んだ方が多いはずです。実際に多いのは、メールの誤送信や書類の置き忘れのほうでした。→ 第1章で内訳を見る

Q2

では、同じ630件を「何人分の情報が漏れたか」で数え直すと、1位はどれになるでしょう。

  • A 誤操作・設定ミス(件数1位だったもの)
  • B 不正アクセス
  • C 紛失・誤廃棄
答えを見る

正解は B:不正アクセス件数では13.5%(85件)しかないのに、漏えい人数では約7割を占めます。攻撃全体では72.7%です。

件数で数えるか、人数で数えるかで、答えがきれいに逆転します。どちらか一方だけを見ていると、対策の優先順位を間違えます。→ 第2章で逆転の中身を見る

Q3

1件あたりの漏えい規模(中央値)を比べると、不正アクセスは誤操作の何倍でしょう。

  • A 約3倍
  • B 約10倍
  • C 約100倍
答えを見る

正解は C:約100倍。不正アクセスが1件あたり11,806人なのに対し、誤操作・設定ミスは117人でした。

理由はシンプルです。メールの誤送信で漏れるのは宛先リストに入っていた数十人から数百人。サーバーに侵入されれば、顧客データベースがまるごと持ち出されます。

「起きる頻度」と「一度に失う量」は、まったく別の指標だということです。→ 第2章へ

3問とも当たった方は、この先はおそらく答え合わせになります。1問でも外した方は、その思い込みがどこから来たのかを含めて、この先で確かめてみてください。

CHAP1

第1章 / 全6章

630件を原因で分けたら、7割が攻撃ではなかった

まず、原因別の件数です。

原因件数割合構成
誤操作・設定ミス28445.1%
紛失・誤廃棄16125.6%
不正アクセス8513.5%
内部不正345.4%
ランサムウェア294.6%
不明172.7%
フィッシング71.1%
盗難50.8%

※ このほか「紛失・置き忘れ」「誤公開・設定ミス」など少数の分類が計8件あります。

これを大きく3つにまとめると、輪郭がはっきりします。

分類含まれる原因件数割合
人的ミス誤操作・設定ミス、紛失・誤廃棄、置き忘れ、誤送付など45171.6%
攻撃不正アクセス、ランサムウェア、フィッシング、脆弱性の悪用12219.4%
内部不正従業員・元従業員による持ち出しや不正閲覧345.4%

報道される漏えいの約7割は、外部からの攻撃ではなく組織内部のミス

メールの誤送信、公開設定の間違い、書類の紛失、USBメモリの置き忘れ、廃棄したはずの端末の流出。件数で見ると、これらが圧倒的多数を占めます。

実際の事案を見ると、どれも「よくある光景」であることがわかります。

組織人数何が起きたか
横須賀市145人市税滞納相談者のリストをメールで誤送信
大阪府180人机の中に生徒資料を置き忘れ、複数の生徒が閲覧
東京都68人イベント申込フォームの設定ミスで個人情報が閲覧可能に
柏市84人小学校の連絡システムで個人情報を含む文書を誤送信
兵庫県65人委託先のメール誤送信で補助金申請者のメールアドレスが流出

高度な攻撃技術はどこにも出てきません。宛先を間違える、置き忘れる、公開設定を確認しない。それだけで個人情報は漏れます。

第1章 おわり ― ここで話を終えると、判断を誤ります
CHAP2

第2章 / 全6章

「人数」で数えると結論が逆転する

ここまでの話だけを読むと、「攻撃対策より社員教育のほうが大事だ」という結論に行き着きそうになります。ところが、同じ630件を「何人分の情報が漏れたか」で数え直すと、風景が一変します。

漏えい人数が判明している517件について、原因別に合計した結果です。

原因件数漏えい人数の合計全体に占める割合
不正アクセス6429,608,84369.7%
誤操作・設定ミス26310,684,72725.1%
ランサムウェア141,275,9783.0%
紛失・誤廃棄131348,2520.8%
内部不正20249,0580.6%

件数では19.4%だった「攻撃」が、人数では72.7%を占める

人数が公表されている事案だけを合計すると、人的ミスによる漏えいが約1,120万人分(398件分)、攻撃による漏えいが約3,089万人分(82件分)。人数が判明している件数は攻撃のほうが5分の1しかないのに、被害人数は3倍近いという逆転が起きています。

この差がどこから来るのかは、1件あたりの規模を見ると一目瞭然です。極端な事案に引っ張られないよう、中央値(真ん中の順位の値)で比べます。

原因1件あたりの漏えい人数(中央値)比較
不正アクセス11,806人基準
ランサムウェア8,618人約0.7倍
誤操作・設定ミス117人約100分の1
紛失・誤廃棄87人約135分の1

メールの誤送信で漏れるのは、たいてい宛先リストに入っていた数十人から数百人です。一方、サーバーに侵入されれば、そこに保管されている顧客データベースまるごとが持ち出されます。1件あたりの規模が、およそ100倍違う。これが逆転の正体です。

実際、規模の大きい事案の顔ぶれは攻撃に偏っています。

組織規模原因概要
KDDI1,223万人不正アクセスISP向けメールシステムがゼロデイ脆弱性を突かれた
アフラック生命保険438万人不正アクセス契約者サイトなどから顧客情報が流出
ユニバーサルミュージック310万件不正アクセス複数のECサイトから顧客情報が流出
穴吹ハウジングサービス49.6万人ランサムウェアランサムウェア被害にともなう情報流出
日本医科大学武蔵小杉病院13万人ランサムウェア医療機器保守用VPN経由で侵入、DBを窃取

なお、この「規模ランキング」を読むときには、もうひとつ落とし穴があります。件数が大きくても、中身が同じとは限らないという問題です。

🚨 重要:「〇〇万件」の中身を確認してください

たとえば2026年7月に公表されたLINEヤフーの事案は「のべ約710万件」という規模でしたが、外部に送信されていたのは同社が利用者を識別するための内部識別子(ランダムな文字列)であり、氏名や住所ではありません。LINE IDとも別のものです。
一方、同じ「万件」でも、氏名・住所・電話番号・生年月日がそろって漏れた事案もあります。件数の大小だけで深刻さを比べることはできません。報道を読むときは、必ず「何が漏れたのか」を確認してください。この記事の集計も、件数は機械的に合算しているため、この点は数字に現れていません。

この章の結論:どちらか一方の対策では足りない

「起きる頻度」で見ればヒューマンエラーが圧倒的——だから業務手順の見直しと教育は避けて通れません。
「一度に失う量」で見れば攻撃が圧倒的——だから技術的な防御を削ることもできません。
件数だけを見て「攻撃対策は後回しでいい」と判断するのは、この統計のいちばん危険な読み方です。

第2章 おわり ― 次は「誰が」の話
CHAP3

第3章 / 全6章

自治体が4割を占める理由

次に「どんな組織で起きているか」です。ここにも予想外の偏りがありました。

組織の種類件数割合
地方自治体27243.2%
民間企業(その他)22736.0%
医療・介護386.0%
大学・研究機関304.8%
金融・保険132.1%
中央省庁・独法121.9%
製造111.7%
団体・組合111.7%

地方自治体だけで4割を超えています。ただしこれは「自治体がいちばん危ない」という意味ではありません。自治体には住民の個人情報を扱う立場として公表の責任が強く求められ、小規模な事案でも議会や記者発表を通じて表に出やすいという事情があります。民間企業の小さな誤送信は、そもそも報道されないことが多い。この差が数字を押し上げています。

むしろ注目すべきは、自治体と民間で「原因の構成がまったく違う」ことです。

原因地方自治体(272件)民間企業(227件)
誤操作・設定ミス15372
紛失・誤廃棄9534
不正アクセス564
ランサムウェア021
内部不正1015

自治体の漏えいは、ほぼ全部が「うっかり」

272件のうち248件(91%)が誤操作・紛失です。不正アクセスは5件、ランサムウェアによる漏えいはゼロ。一方、民間企業227件では不正アクセス64件・ランサムウェア21件と、攻撃が主要な原因になっています。

この違いは、両者の置かれた環境の違いをそのまま映していると考えられます。自治体の情報システムは、総務省が示した対策方針にもとづき、マイナンバー利用事務系・LGWAN接続系・インターネット接続系を分離する、いわゆる「三層の対策」がとられてきました。住民情報を扱う領域が、インターネットから切り離されているぶん、残るリスクが「人が紙とメールと媒体を扱う場面」に集中する——この構造が数字に表れている可能性があります。

逆に言えば、民間企業がランサムウェアの主戦場になっているということでもあります。ランサムウェアによる漏えい29件のうち21件が民間企業でした。攻撃者は身代金を払える相手を選んでいます。

ランサムウェアがどのように企業のネットワークへ侵入し、内部へ広がっていくのかについては、境界機器が狙われる理由とは?ESXiランサムウェア攻撃の全体像を解説で攻撃の流れを追っています。

第3章 おわり ― 次は見落とされがちな盲点
CHAP4

第4章 / 全6章

5件に1件は「自社の外」で起きている

630件のうち123件(19.5%)は、委託先や取引先など第三者が関わる事案でした。自社の中でどれだけ気をつけていても、業務を任せた先で起きれば、責任を問われるのは委託した側です。

委託先が関わる事案の原因件数
誤操作・設定ミス55
不正アクセス27
紛失・誤廃棄18
ランサムウェア10
内部不正9

実際の事案を見ると、委託の形はさまざまです。

組織規模何が起きたか
東急リゾーツ&ステイ95,986人顧客情報のCSVファイルを委託先に誤送信
兵庫県65人委託先のメール誤送信で補助金申請者のアドレスが流出
千代田区150人委託先の情報開示手続きの不備で個人情報を誤送付
宜野湾市委託先での誤操作により水道検針データが消失

「渡した先」まで含めて初めて自社の管理範囲

個人データの取扱いを外部に委託する場合、委託元には委託先を監督する義務があります(個人情報保護法第25条)。委託先で起きた漏えいは「うちのせいではない」では済みません。どの業者に、どの範囲のデータを、どんな形で渡しているか。この棚卸しができていない組織は少なくありません。

特に見落とされやすいのが、クラウドサービスの設定です。今回の集計でも、本人確認書類の画像を保存していたクラウドの設定不備で100万人以上の情報が閲覧可能になっていた事案がありました。この事案では、問題の状態が2020年から2026年まで6年以上続いていたとされています。設定は一度確認して終わりではありません。

第4章 おわり ― 次は「何が漏れたか」
CHAP5

第5章 / 全6章

何が漏れて、いつ公表されるのか

漏れている情報の種類

630件で漏れた情報の種類を集計しました(1件で複数該当あり)。

情報の種類該当件数備考
氏名420ほぼすべての事案に含まれる
メールアドレス241誤送信で真っ先に漏れる
住所240
電話番号191
生年月日121本人確認の要素になりやすい
学籍・成績情報110学校関連の事案が多いため
ID・パスワード66使い回しに直結
医療・要配慮個人情報37法律上とくに厳格な扱いが必要
クレジットカード情報29直接の金銭被害につながる
銀行口座情報26同上

氏名・メールアドレス・住所・電話番号という「基本4点」が大半です。単体では被害につながりにくく見えますが、複数の漏えい事案の情報が組み合わされると、本人を特定して狙い撃ちにする材料になります。この仕組みについては個人情報はなぜ売られる?住所・電話・顔写真の流出と身元特定の仕組みで詳しく解説しています。

クレジットカード情報が29件、銀行口座情報が26件という数字も見逃せません。身に覚えのない請求に気づいたときの動き方は、身に覚えのない請求が来た!クレジットカード・QR決済・サブスク不正利用を初心者向けに完全解説にまとめてあります。

公表されるまでの時間

発生日がわかっている事案について、発生から公表までの日数を原因別に集計しました。ここでも中央値を使います(後述のとおり、平均値では実態が見えなくなるためです)。

原因公表までの日数(中央値)
ランサムウェア14日
誤操作・設定ミス25日
紛失・誤廃棄29日
不正アクセス56日

もっとも早く公表されるのはランサムウェアです。理由は明快で、業務が止まるため隠しようがないから。逆にもっとも遅いのが不正アクセスで、中央値で4倍の時間がかかっています。静かに侵入されたものは、そもそも気づくまでに時間がかかり、気づいてからも調査に時間を要します。

公表の速さは「被害の重さ」ではなく「隠せなさ」で決まる

もっとも規模が大きい不正アクセスが、もっとも公表が遅い。つまりあなたの情報が漏れていても、それが公表されるのは数か月先かもしれないということです。「発表がない=安全」ではありません。

さらに極端な例もあります。今回の集計には、2013年に紛失した帳票が2025年に本部保管への移行作業で判明した事案や、2005年に発生したとされる漏えいが2025年に公表された事案が含まれていました。10年以上気づかれないまま経過した事案が現実に存在します。

第5章 おわり ― 最後に実務の話
CHAP6

第6章 / 全6章

では、何をすればいいのか

630件の内訳から導かれる対策を、実際の事案の多い順に並べます。

1. メールの宛先確認を「仕組み」にする(誤操作284件のうち最多パターン)

誤送信は、注意力では防げません。実際に起きているのは、複数の宛先をBCCではなくTOやCCに入れてしまう、添付ファイルを取り違える、リストの作成段階で対象を間違える、というパターンです。個人情報を含む一斉送信は、送信前に第三者が確認する運用にする、あるいは一斉配信システムを使って手作業のメールから切り離すのが確実です。

2. 公開設定を「定期的に」見直す

申込フォーム、共有フォルダ、クラウドストレージ。作ったときは正しくても、後から権限を足した瞬間に穴が空きます。第4章で触れたクラウド設定不備の事案は6年以上気づかれませんでした。年に一度でよいので、公開範囲の棚卸しをする日を決めてください。

3. 持ち出す媒体を減らす(紛失161件への唯一の対策)

USBメモリ、紙の書類、ノートPC。持ち出さなければ紛失しません。どうしても必要な場合は暗号化を必須にします。今回の集計でも、PCを電車内に置き忘れた事案で「データは暗号化されていた」と明記されているものがありました。暗号化してあれば、紛失は事故で済みます。

4. 委託先の棚卸しをする(19.5%への対策)

どの業者に、どのデータを、どんな形で渡しているか。契約書だけでなく、実際のデータの流れを一覧にしてください。第4章のとおり、委託先での事故は委託元の責任として扱われます。

5. 攻撃対策を削らない(人数の72.7%への対策)

件数が少ないからといって、攻撃対策の優先度を下げてはいけません。一度起きたときに失う量が2桁違います。インターネットに面したサーバーや機器の更新、社外からアクセスできる仕組みの見直し、バックアップの確保。ここは技術で守るしかない領域です。

✅ この記事の要点

① 報道された漏えい630件のうち、71.6%は攻撃ではなく人的ミスだった。
② ただし「漏れた人数」で数えると、攻撃が72.7%を占めて逆転する。
③ 1件あたりの規模は、不正アクセスが誤操作の約100倍(中央値11,806人 対 117人)。
④ 地方自治体は272件中248件が人的ミスで、ランサムウェア被害はゼロ。民間は攻撃が主因。
⑤ 5件に1件(19.5%)は委託先など第三者が関わる事案。
⑥ 公表までの中央値は、ランサム14日に対し不正アクセスは56日。発表がないことは安全の証明ではない。

「7割がヒューマンエラー」という数字は、正しく読めば「教育と手順の整備で減らせる事故が大半を占めている」という希望のある話です。しかし同時に、残り2割の攻撃が、被害人数の7割を生んでいるという事実からも目を逸らせません。どちらか一方だけを見て対策を決めると、必ずもう一方で足元をすくわれます。

第6章 おわり ― よくある質問へ
 FAQ

補足

よくある質問

この630件は、日本で起きた漏えいのすべてですか?

いいえ。専門メディアが報じた事案を集計したものです。公表されていない事案、報道されなかった小規模な事案は含まれていません。個人情報保護委員会への報告義務がある事案でも、すべてが報道されるわけではありません。「報道された範囲での内訳」を示すデータとして読んでください。

去年と比べて漏えいは増えていますか?

このデータでは判断できません。2025年242件・2026年388件という数字はありますが、収集の開始時期や対象範囲の違いが影響している可能性が高く、増加の証拠として使うことはできません。経年比較をしたい場合は、個人情報保護委員会の年次報告など、集計基準が一定の統計をご覧ください。

なぜ平均値ではなく中央値を使っているのですか?

平均値が極端な事案に強く引っ張られるためです。たとえば公表までの日数を平均で出すと、不正アクセスは466日になります。しかしこれは10年以上経ってから判明した数件が押し上げた結果で、実態を表していません。中央値では56日です。「典型的にはどうか」を知りたいときは中央値が適切です。

自治体が4割ということは、自治体は民間より危ないのですか?

そうは言えません。自治体は住民の個人情報を預かる立場として公表の責任が強く、小規模な事案でも表に出やすいという事情があります。民間企業の小さな誤送信は報道されないことが多く、この差が件数に現れています。ただし「自治体の漏えいはほぼ人的ミス、民間は攻撃が主因」という原因構成の違いは、報道バイアスでは説明しにくい実態の差だと考えられます。

自分の情報が漏れたかどうかを知る方法はありますか?

漏えいした組織からの個別通知が基本です。ただし第5章のとおり、公表まで数か月かかることがあります。日常的な備えとしては、パスワードをサービスごとに変える(使い回さない)多要素認証を有効にするクレジットカードの利用明細を毎月確認するの3つが、漏えいが起きた後の被害を最小化する現実的な方法です。

「うちは小さい組織だから狙われない」は本当ですか?

攻撃については、規模が小さいほど狙われにくい傾向は確かにあります。しかし本記事の主題である人的ミスは組織の規模とまったく無関係に起きます。件数の7割を占めるのはそちらです。また第4章のとおり、大きな組織の委託先として攻撃の入口にされる例もあります。

出典とデータの限界

  • 集計対象:セキュリティ専門メディア「Security NEXT」が2025年1月〜2026年8月8日に報じた国内の情報漏えい事案630件。https://www.security-next.com/
  • 原因・組織・規模・日付は記事本文から機械的に抽出し、分類結果を目視で検証した(4分類から各14件を抽出した検証では、誤りは主として「誤操作」と「紛失」の間の判別に限られ、人的ミス全体の集計には影響しない範囲だった)。
  • 漏えい人数の集計は、人数が判明している517件のみを対象としている。人数が公表されていない事案は合計に含まれない。
  • 組織名は自動抽出のため、一部に表記のゆれや抽出の誤りが含まれる。本記事で個別に挙げた事案は、いずれも出典記事の見出し・本文と照合したもの。
  • 個人データの取扱いを委託する場合の監督義務は個人情報保護法第25条による。個人情報保護委員会

※ 本記事の数値は「報道された事案の内訳」であり、日本国内で発生した情報漏えいの総数・総人数ではありません。また対象期間が2年未満のため、経年トレンドの根拠としては使用できません。

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