証券11社の比較表!パスキー対応と補償を全部調べた2026年版

11社横断・一次情報のみで検証

証券口座乗っ取り7,393億円
11社のパスキー対応と補償を全部調べた

野村・大和・SMBC日興・みずほ・三菱UFJモルガン・スタンレー/SBI・楽天・マネックス・松井・三菱UFJ eスマート・GMOクリック。金融庁と日本証券業協会の一次資料、そして11社すべての公式発表を突き合わせたら、直感と正反対の結果が出ました。

2025年、日本のインターネット取引サービスで不正アクセス17,714件、不正取引9,859件が起きました。勝手に売られた株が約3,948億円、その代金で勝手に買われた株が約3,468億円。報道が「7,393億円」と伝えたのはこの2つを足した数字です。

同じ年のクレジットカード不正利用は510.5億円、インターネットバンキングの不正送金は上半期で約42億円でした。桁が違います。日本のサイバー犯罪で金額が最大なのは、もう証券口座です。

この記事では、金融庁が2026年8月10日に更新した被害統計、日本証券業協会のガイドラインと「10社申し合わせ」、そして11社すべての公式発表・利用規約・FAQを突き合わせました。結果、「ネット証券のほうがセキュリティが進んでいる」という思い込みが完全に裏返り、さらに補償のルールが2026年に静かに切り替わっていたことが分かりました。

⚠ 最初に、この記事の性格をはっきり書きます

これは金融庁の格付けでも第三者機関の監査結果でもなく、各社が公式に開示している情報を突き合わせて整理したものです。特定の証券会社の利用を推奨・非推奨するものではありません。

また、認証の対応状況や補償方針は2026年前半に各社が次々と変更しており、今も動いています。この記事は2026年8月15日時点の内容です。実際に手続きをするときは、必ずご自身の証券会社の最新の案内をご確認ください。

「公式に書かれていない」ことは「対策していない」という意味ではありません。確認できなかった項目は、そのように明記しています。

CHAP1

第1章 / 全8章

結論:11社は4つの段階に分かれた

そして大手対面証券が、ネット証券を追い抜いていた

先に結論を出します。順位ではなく「パスキー(フィッシングに耐性のある認証)が、どの操作まで効いているか」で4つの段階に分けました。理由は第5章と第6章で説明します。

段階会社実質的にどういう状態か
A
取引・出金まで
守られている
みずほ証券
SMBC日興証券
野村證券
パスキー以外の方法でログインできても、取引や出金ができない。仮にIDとパスワードを盗まれても、勝手に売買されない
B
弱い認証を
廃止した
三菱UFJモルガン・スタンレー証券
大和証券
マネックス証券
フィッシングに耐性のない方式(メールやSMSのワンタイムパスワード)そのものを止めた。利用者が弱い方を選べない
C
ログインだけ
抜け道あり
SBI証券
楽天証券
松井証券
パスキーを設定しても取引や出金は取引パスワード・暗証番号のまま。IDとパスワードでのログインも引き続きできる
D
必須化が
進行中
三菱UFJ eスマート証券
GMOクリック証券
どちらも2026年6月に必須化の方針を決め、現在は移行の途中です。三菱UFJ eスマート証券は6月18日に「ログイン時の『パスキー認証』を段階的に必須化することといたしました」と公表。GMOクリック証券は6月13日にPCから導入を開始し、秋以降に順次必須化予定で、必須化後は「お取引や出金などの一部機能に利用制限」とされています。この設計は段階Aと同じ方向です

各社の公式お知らせ・FAQ(2026年8月15日時点)より作成。三菱UFJ eスマート証券は旧auカブコム証券です。段階の分け方は筆者によるもので、公式な格付けではありません。

🔄

「ネット証券のほうが進んでいる」は、2026年には成り立ちません

段階AとBに入った6社のうち5社が大手の対面証券です。ネット専業で入ったのはマネックス証券だけでした。手数料が安く、システムに強いイメージのあるネット証券が、認証の実装では追い抜かれていた——これが今回いちばん意外だった結果です。

もうひとつ、この記事で必ず持ち帰ってほしい結論があります。補償のルールが2026年に切り替わりました。

2025年の報道を覚えている方は「証券口座を乗っ取られても、野村なら株を戻してくれる」「SBIや楽天でも半額は返ってくる」と理解しているはずです。それは2025年前半の被害についての話でした。今は違います。詳しくは第7章で、6社の公式文書をそのまま引用します。

第1章 おわり — 次は第2章「クレカ不正の7.7倍という規模」

CHAP2

第2章 / 全8章

クレカ不正の7.7倍という規模

そして報道の「7,393億円」の正体

まず規模を押さえます。同じ時期の他の犯罪と並べると、この問題の大きさが分かります。

犯罪の種類規模期間出典
証券口座の不正取引約3,948億円(勝手に売られた分)
+約3,468億円(勝手に買われた分)
2025年通年金融庁の月次データから筆者が集計
クレジットカード不正利用510.5億円2025年通年日本クレジット協会
ネットバンキング不正送金約42億2,400万円
(2,593件)
2025年上半期警察庁

売られた分だけでクレジットカード不正利用の約7.7倍です。ニュースで「クレカの不正利用が過去最悪」と聞く機会は多いのに、その7倍以上の規模で起きていた証券口座の話は、あまり知られていません。

📏

ただし、この2つは性質の違う数字です

クレジットカードの510.5億円は実際の被害額(損害額)ですが、証券の約3,948億円は勝手に動かされた取引の金額です。次章で見るとおり証券では現金が減らないため、いくら損したかは別に計算する必要があります。「証券の損害はクレカの7.7倍」という意味ではありません。規模の桁を比べるための数字として読んでください。

報道の「7,393億円」は、同じお金を2回数えた数字です

ここは正確に理解しておく価値があります。金融庁は「売却金額」と「買付金額」を別の行で公表しています。犯人の手口は「売った代金でそのまま別の株を買う」なので、この2つはほぼ同じ額になります。

報道の「2025年の不正取引金額は計約7,393億円」は、この2つを足した数字です。実際に動いた資産は約4,000億円規模で、7,393億円は「のべ」の数字だと理解しておくと、他の統計と比べるときに間違えません。金融庁の集計が誤っているという話ではなく、2つの数字をどう合計するかという解釈の問題です。

🗓

「7,393億円」は2026年1月時点の数字です

この統計は発生日ベースの暫定値で、あとから上方修正されます。7,393億円は2026年1月14日の公表時点の値で、当時のデータは不正アクセス17,559件・不正取引9,752件でした。2026年8月10日更新の現行データでは17,714件・9,859件に増えており、売却と買付の合計は約7,416億円になります。本記事の本文はすべて現行データにもとづいており、広く報道された「7,393億円」とは差が出ます。

被害はほぼ収束しました。ただし気になる動きがあります

期間被害が出た
証券会社の数
不正アクセス不正取引売却金額
2025年1月2社144件69件約2億円
2025年3月5社2,321件935件約175億円
2025年4月10社5,490件3,033件約1,625億円
2025年5月16社3,404件2,440件約1,151億円
2025年12月7社382件116件約23億円
2026年2月5社216件171件約115億円
2026年3月8社158件121件約159億円
2026年4月11社331件101件約74億円
2026年5月8社218件106件約14億円
2026年7月1社14件1件約100万円

金融庁「インターネット取引サービスでの不正アクセス・不正取引の被害状況」(2026年8月10日更新)より抜粋。各証券会社等からの報告に基づく発生日ベースの暫定値です。不正取引件数は、不正アクセスのうち実際に取引まで行われた件数。

2025年4月がピークで、そこから急速に減っています。2026年7月は1社・1件・約100万円まで落ちました。各社がパスキーを必須化していった時期とちょうど重なりますが、これだけで因果関係を断定はできません。

📈

「もう終わった」とは言えない理由

表をよく見ると、2026年2月から4月に金額だけ反発しています(115億円→159億円→74億円)。件数は減っているのに金額が増えた月がある——つまり1件あたりの被害が大型化しているということです。件数だけを見て安心すると、この動きを見落とします。

第2章 おわり — 次は第3章「犯人は現金を1円も持ち出さない」

CHAP3

第3章 / 全8章

犯人は現金を1円も持ち出さない

銀行やキャッシュレス決済とは、構造がまるで違う

この手口の異常さは、ここにあります。国民生活センターの解説(弁護士・金融審議会専門委員による)が、構造をきれいに説明しています。

第三者が、フィッシング等により不正に取得したID・パスワードを用いて証券口座にアクセスし、被害口座を勝手に操作して口座内の株式を売却し、その代金で国内外の小型株を高値で買い付けるというものです。当該小型株については相場操縦が疑われており、相場をつり上げ、高値で売り抜けたとみられる第三者に多額の不正な利益が発生し、他方で被害口座側には高値で買った後に下落した小型株の被害が残されます

独立行政法人国民生活センター『国民生活』2025年11月号 特集2

お金の流れ:口座から現金は出ていかない

1 偽サイトでIDとパスワードを盗む 2 持っていた株を勝手に売る 3 その代金で小型株を高値で買う 4 犯人は別の口座で高値売り抜け 残るのは、値下がりした小型株。 現金は1円も出ていない。

銀行の不正送金なら、口座からお金が消えます。キャッシュレス決済なら、残高が減ります。ところが証券口座の乗っ取りでは現金が動きません。口座の中身が「優良株」から「値下がりした小型株」に入れ替わるだけです。

比べる観点銀行QR決済・電子マネー証券口座
犯人が持ち出すもの現金残高・商品何も持ち出さない
被害者に残るもの残高が減る残高が減る値下がりした小型株
(現金は減っていない)
犯人の儲け方送金先で引き出す商品を転売する別の口座で持っていた株を、つり上がった高値で売り抜ける
被害額の数え方送金額そのもの決済額そのもの難しい
何を損害とするかで争いになる

「口座から現金が消えていないのに、資産が半分になっている」。これが証券口座乗っ取りの本質です。そして、だからこそ補償の設計も金額の数え方も揉めることになります。第7章で「原状回復」と「半額補償」という2つの流派が生まれた理由が、ここにあります。

盗まれるのはIDとパスワードだけではありません

入口はフィッシングが主ですが、それだけではありません。ある調査では、被害端末6台のうち5台でフィッシング、残る1台でインフォスティーラー(情報を盗むウイルス)への感染が確認されたと報じられています。パスワードを盗む手段は、偽サイトだけではないということです。

偽サイトを見分ける練習

「本物にしか見えない偽サイト」を、実際に見分けてみる

入口の多くはフィッシングです。そして偽サイトは、知識として読むより実物を見分ける練習をしたほうが記憶に残ります。実際の偽サイトを模した画面から怪しい点を探すゲームと、引っかかった後に何が起きるかを時間軸で追える体験コンテンツを公開しています。

偽サイト鑑定士で腕試しする →

第3章 おわり — 次は第4章「被害者を定型的に救う専用の法律がない」

CHAP4

第4章 / 全8章

被害者を定型的に救う専用の法律がない

あるのは業界の申し合わせと、ガイドラインだけ

ここが第7章の伏線になります。銀行の預金者保護法のように、証券口座の不正アクセス被害者を定型的に救済する専用の法律は、日本にはありません。(民法・商法・消費者契約法にもとづいて救済を求める道は残っています。後述します。)

銀行のATM銀行のネットバンキングQR決済・電子マネー証券口座
救済の専用ルール預金者保護法全国銀行協会の申し合わせ資金決済法なし
民法・商法・消費者契約法による一般的な救済の余地は残る
補償の義務法律で定めがある業界の自主ルール「補償方針を利用者に情報提供せよ」だけ補償を義務づける
専用の規定がない
補償しない線引き法定全銀協が4類型を公表各社が個別に列挙共通の線引きが存在しない
補償実績の公表あり。2021〜2024年度で処理を決めた24,889件のうち補償したもの19,296件=77.5%(不正払戻しでないと判明した分などを除くと86.0%)。しかもほとんどが全額補償なしなし

預金者保護法の正式名称は「偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律」。対象は「機械式預貯金払戻し」=ATMで、インターネットバンキングの不正送金には適用されません(『国民生活』2025年11月号の解説による)。銀行の補償実績は金融庁「偽造キャッシュカード等による被害発生等の状況について」より。

銀行なら、法律か業界の申し合わせがあり、しかも実際に77.5%が補償され、そのほとんどが全額だったという実績が公表されています。証券にはこれに相当する数字がありません。

あるのは「10社申し合わせ」です

2025年5月2日、日本証券業協会が大手証券・ネット証券10社と協議して、次の内容を申し合わせました。

今般のフィッシング詐欺等による証券口座への不正アクセス等により、第三者がお客様の資産を利用して、有価証券等の売買等を行ったことにより発生した被害について、各社の約款等の定めに関わらず、一定の被害補償を行う方針とすることを申し合わせました。

なお、お客様が被った被害の補償については、被害状況を十分に精査し、そのお客様のIDやパスワード等の管理を含む態様やその状況等並びに証券会社における不正アクセス等を防止するための注意喚起等を含む対策等を勘案したうえで、個別の事情に応じて対応することになります。

日本証券業協会「今般のインターネット取引サービスにおけるフィッシング詐欺等による証券口座への不正アクセス等による対応について(10社申し合わせ)」2025年5月2日

「各社の約款等の定めに関わらず」という一文が異例です。約款には補償しないと書いてあっても補償する、と業界が宣言したわけです。裏を返せば約款上は補償する義務がなかったということでもあります。

対象は「2025年1月以降に発生したもの」。参加10社は五十音順で、SMBC日興証券、SBI証券、大和証券、野村證券、松井証券、マネックス証券、みずほ証券、三菱UFJ eスマート証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、楽天証券です。GMOクリック証券はこの10社に含まれていません(個社で方針を公表しています)。

2026年7月に成立した改正法にも、入っていませんでした

では法制化は進んでいるのか。2026年4月に国会へ提出され、同年7月に成立した「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律」について、金融庁が公表した説明資料(全14ページ)を全文検索してみました。

検索した言葉出てきた回数
不正アクセス0
証券口座0
認証0
なりすまし0
フィッシング0

改正の柱は①暗号資産に関する規制の見直し ②企業のサステナビリティ情報の開示・保証 ③スタートアップ企業への資金供給の促進 ④有価証券に関する不公正取引規制等の見直しの4つでした。7,393億円(のべ)の不正取引を招いた問題は、この4つの柱に含まれておらず、説明資料にも記載がありません。

なお「補償」は説明資料に1回だけ登場します(暗号資産の不正流出に備えた責任準備金の積立て/改正金商法第46条の5)。証券口座の不正アクセスに関する補償の規定ではありません。また、ここで確認したのは説明資料(スライド)であり、法律の条文そのものを逐条で確認したわけではありません。「4つの柱に入っていない」という事実として読んでください。

専門家は法制化を求めています。前出の解説は、こう書いています。

事業者の取組みを促す観点からも、セキュリティに関する責任は基本的に事業者が負う制度が望ましいと考えられます(脚注:例えば、預金者保護法と同様の規律が望まれる)。

『国民生活』2025年11月号(筆者は弁護士・金融審議会専門委員)
⚖️

約款の「補償しません」条項そのものが、無効かもしれません

同じ解説はもう一歩踏み込んでいます。「約款に、証券会社の故意または重過失に起因するものでない限り、証券会社は損害賠償責任を負わないという定めがある場合、当該条項は消費者契約法8条1項3号により無効と考えられます」。約款に書いてあるからといって、それが必ず有効とは限らない——被害に遭ったときに知っておく価値のある視点です。

第4章 おわり — 次は第5章「『多要素認証あり』の落とし穴」

CHAP5

第5章 / 全8章

「多要素認証あり」の落とし穴

2025年と2026年で、業界は違う対策を2段階でやっていた

ここを理解しないと、第6章の表が読めません。「多要素認証がある」と「フィッシングに耐性がある」は、まったく別のことです。

第1波(2025年)第2波(2026年
やったことログイン時の多要素認証の設定を必須化フィッシングに耐性のある認証(パスキー)の導入と必須化
認証の方式IDとパスワード+認証アプリのコード/SMS/メール端末の顔認証・指紋・PINで公開鍵暗号を使う
フィッシング耐性なし。偽サイトに入力させたコードを、その場で本物のサイトへ中継されると突破される(リアルタイムフィッシング)ある。偽のドメインでは鍵そのものが使えないため、原理的に中継できない
やった会社の数79社(2025年7月7日時点。日本証券業協会が社名を公表)一部。しかも必須の範囲が会社ごとに違う(第6章)

日本証券業協会「多要素認証の設定必須化を決定した証券会社」(2025年7月7日時点・五十音順)に79社の社名が掲載されています。同じページに載っている多要素認証の説明図は「IDとパスワード+認証アプリのセキュリティコード入力」方式で、これはフィッシングに耐性のある方式ではありません。

つまり2025年の被害は、まさに第1波の方式が突破されて起きました。SMSやメールに届いたコードを偽サイトに入力してしまえば、犯人はそれを本物のサイトへ即座に転送してログインできます。人間の側に落ち度がなくても、仕組みとして防げないのです。

🗣️

「ワンタイムパスワードでは守れない」と、証券会社自身が書きました

みずほ証券がパスキー必須化のお知らせで、こう説明しています。「証券会社のインターネット取引サービスにおいて、2025年の1年間に、判明しているだけでも17,000件超の不正アクセス、7,000億円超の不正売買が発生しており、パスキー以外の認証手段では防衛が困難とされています」。当事者が公式に「従来の方式では無理だ」と認めた一文です。

ですから、「多要素認証を設定したから安全」という理解は2026年には通じません。見るべきは「多要素認証があるか」ではなく「パスキーが、どの操作まで効いているか」です。

まだ設定していない方へ

パスキーの設定は、多くの会社で数分で終わります

「難しそう」で止まっている人がいちばん危ないのが今の状況です。パスキーは新しいアプリを入れる必要がなく、スマホの顔認証や指紋を使うだけです。二段階認証との違い、実際の設定手順、機種変更のときにどうなるかまで、初心者向けにまとめた記事があります。

二段階認証・パスキーの設定方法を見る →

第5章 おわり — 次は第6章「パスキーはどの操作まで効くのか」

CHAP6

第6章 / 全8章

パスキーはどの操作まで効くのか

11社を「ログイン・出金・出金先の変更・取引」の4つで並べる

この章が記事の中心です。同じ「パスキー対応」でも、守られる範囲がまったく違います。

会社ログイン出金出金先の変更取引
(売買注文)
必須化の時期
みずほ証券必須2025年11月導入
2026年2月9日〜必須
SMBC日興証券必須確認できず2026年1月30日導入
2026年4月下旬〜順次
野村證券必須必須確認できず必須2026年6月27日〜
2026年3月28日から登録時にマイナンバーカードが必要
三菱UFJモルガン・
スタンレー証券
必須
2026年6月1日〜
確認できず確認できず2026年2月下旬〜
2026年5月11日で完了
大和証券必須△ 任意設定の
ワンタイムパスワード
確認できず✕ 取引パスワード2026年4月22日〜6月
マネックス証券必須△ 認証アプリ/SMS
対象に設定した場合
◯ 郵送のみ✕ 取引パスワード2026年6月30日
SBI証券原則必須△ 出金時
二要素認証
確認できず✕ 取引パスワード2026年6月30日〜
原則必須
楽天証券順次必須△ SMS認証/音声通知
2025年10月26日から全顧客に必須
確認できず✕ パスキーの対象外2025年10月26日導入
2026年6月〜順次
松井証券必須△ SMS/電話番号△ 認証番号+
取引暗証番号
✕ 取引暗証番号2026年6月〜順次
三菱UFJ eスマート証券段階的に
必須化へ移行中
✕ 対象外✕ 対象外✕ 対象外2026年4月26日導入
2026年6月18日に
段階的必須化を決定

7月1日から未登録者に確認画面。回答がない場合は将来的に取引を制限する可能性
GMOクリック証券導入済み
必須化はこれから
確認できず確認できず確認できず2026年6月13日にPC会員ページ・PCツールへ導入
6月20日以降スマホアプリ順次
2026年秋以降に順次必須化予定
必須化後は「お取引や出金などの一部機能に利用制限」

各社の公式お知らせ・FAQ(2026年8月15日時点)より作成。◯=パスキーで守られている/△=多要素認証はあるがフィッシング耐性のない方式/✕=公式にパスキーの対象外、または静的なパスワード・暗証番号のみ/確認できず=公式情報で確認できなかった(対策がないという意味ではありません)。三菱UFJ eスマート証券は旧auカブコム証券。

いちばん危ない瞬間の認証が、業界ルールでは「任意」でした

なぜ「取引」の列にこれだけ差が出るのか。理由は日本証券業協会のガイドラインにあります。ガイドラインは【スタンダード】(必ずやること)と【ベストプラクティス】(望ましいこと)の2段構えで、フィッシング耐性のある認証の必須化についてこう書いています。

【スタンダード】 ログイン時、出金時、出金先銀行口座の変更時など、重要な操作時におけるフィッシングに耐性のある多要素認証(例:パスキーによる認証、PKI(公開鍵基盤)をベースとした認証)の実装及び必須化(デフォルトとして設定)する。

【ベストプラクティス】 取引時において、フィッシングに耐性のある多要素認証を提供することが望ましい

日本証券業協会「インターネット取引における不正アクセス等防止に向けたガイドライン」(2025年10月15日改正)

「勝手に売られて、勝手に買われる」まさにその瞬間の認証が、「望ましい」止まりなのです。銀行の「振込時の認証」に相当する部分が、証券では必須化されていません。だから野村證券・みずほ証券・SMBC日興証券のように取引まで守る会社と、取引パスワードのままの会社に分かれました。

「必須化」の抜け道は、6社では実質的に閉じられています

各社が「必須化」と言っていますが、原文を読むと対応が6通りに分かれます。閉じ方が5種類あり、開いたままの会社が3社です。

対応会社公式の書きぶり
抜け道を
完全に閉じた
三菱UFJモルガン・
スタンレー証券
「2026年5月11日以降、ワンタイムパスワードでログインできなくなるため、必ずパスキー登録を行う必要があります」
弱い方式を
廃止した
大和証券「ワンタイムパスワードでのログインは(強化以降)ご利用いただけなくなります」/代替の電話認証について「パスキー認証・生体認証と比べてセキュリティ強度が低い」と自ら明記
登録者は
戻れない
マネックス証券「パスキー登録済みのお客様は今後パスキーでのみログインが可能となり、ログインID・パスワードでのログインはご利用いただけなくなります」
入れても
何もできない
みずほ証券
SMBC日興証券
「引き続きワンタイムパスワード認証またはメール認証でログインできますが、お取引・入出金・各種お手続きはご利用いただけません」(みずほ証券)
全操作で
必須化した
野村證券ログイン・取引・出金時にパスキー認証を必須化いたしました」(2026年5月13日)
抜け道が
残っている
SBI証券
松井証券
楽天証券
引き続きユーザーネーム/パスワードでログインは可能ですが、設定いただけるまでの間、継続的に設定を促すご案内を表示、配信させていただく」(SBI証券のFAQ)
移行の
途中
三菱UFJ eスマート証券
GMOクリック証券
三菱UFJ eスマート証券は2026年7月1日から未登録者に確認画面を表示し、「ご回答いただけない場合、将来的にお取引を制限させていただく場合がございます」。GMOクリック証券は秋以降の必須化後に「お取引や出金などの一部機能に利用制限」を予定

これは各社の怠慢ではありません。ガイドライン自身が、パスキーを使えない人への配慮として抜け道を認めているのです。

…やむを得ずかかる多要素認証の設定を解除する場合には、代替的な多要素認証を提供するとともに、解除率の状況をフォローした上で、認証技術や規格の発展も勘案しながら、解除率が低くなるよう多要素認証の方法の見直しを検討・実施する。

同ガイドライン

スマホを持っていない人を切り捨てるわけにはいかないので、この配慮は必要です。ただし攻撃者が狙うのは当然この抜け道です。読者として確認すべきなのは「必須化されたか」ではなく「自分が抜け道側に残っていないか」です。なお、解除率を公表している会社は今回見つかりませんでした。ガイドラインはフォローを求めていますが、公表までは求めていません。

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地味ですが、マネックス証券の「郵送のみ」は強い防御です

マネックス証券は出金先の金融機関の変更を、書類の郵送でしか受け付けていません。オンラインで変えられないので、仮に口座を乗っ取られても、犯人は出金先を自分の口座に書き換えられません。不便さがそのまま防御になっている例で、11社で最も強い出金先の守り方でした。

第6章 おわり — 次は第7章「補償は『あなたが設定していたか』で決まる時代へ」

CHAP7

第7章 / 全8章

補償は「あなたが設定していたか」で決まる時代へ

2025年の記事を読んで安心している人は、前提が変わっています

まず、報道された「原状回復」と「半額補償」が法的にまったく別の理屈だという話から始めます。

原状回復型割合補償型(半額など)
考え方そもそもその売買は顧客の注文ではないので、効果が顧客に帰属しない効果は顧客に帰属する。そのうえで会社が一部を見る
法的な足場株式の売買は、証券会社が商法551条以下の問屋(といや)として自分の名前で行い、その効果を顧客に帰属させる仕組み。だから顧客が頼んでいなければ効果は帰属しないのが原則。証券会社の従業員による無断売買について、最高裁平成4年2月28日判決が参考になります約款の補償規定、または損害賠償の一部を認めるという位置づけ
読み方法的な原則に近い原則から後退した扱いの可能性がある。「50%も補償してくれる」ではなく「本来100%戻るはずの筋を半分にしている」とも読める

個別の事案の結論は事実関係によって変わります。ここでは「法的にはこう整理されている」という考え方の紹介にとどめます。断定的な判断は弁護士等の専門家にご相談ください。

11社の補償方針を、公式の言葉で並べます

会社公式の書きぶり(要旨・一部は原文)
大和証券原状回復「2025年1月より2025年7月5日(当社がログイン追加認証を必須化した前日)までに発生した不正取引については、お客さまに被害の原因となる過失が認められない場合は、全額補償(原状回復)を行うことを取り決め」
SMBC日興証券原状回復
(実施済み)
「ログイン時の二要素認証の必須化以前に…原則原状回復での被害補償を実施致しました」(過去形)
野村證券原状回復2025年1月〜6月28日の被害は「最大で不正取引が行われる前の状態に戻すことを基本」
みずほ証券原状回復を含む「被害状況を十分に精査したうえで、原状回復を含む被害補償を実施しております
三菱UFJモルガン・
スタンレー証券
原状回復を含めて
個別対応
「被害状況等を十分に精査したうえで、個別の事情に応じて原状回復を含めて対応させていただきます」
※報道は「原状回復」と書きますが、公式は断定していません
SBI証券割合(50%)「お客さまが被った被害の補償につき、被害の50%を金銭補償すること等を予定しております」。この補償でSBIホールディングス連結に総額で約80億円の損失を計上する見込みと公表
楽天証券割合(50%)被害額の50%を基本として、金銭にて補償いたします」+被害者に一律10,000円のお見舞金
松井証券割合→個別2025年9月29日より前は「一律に1/2の金銭補償」/9月29日以降は「お客様ごとの個別の事情に応じて決定」
マネックス証券個別10社申し合わせに基づき、パスキー認証の提供開始までに顧客が遭った被害について、お客様ごとの個別の事情に応じた補償
GMOクリック証券免責条件を
明文化
11社で唯一、補償されない条件を具体的に書いています(後述)。10社申し合わせには参加していませんが、開示の具体性はむしろ高いです
三菱UFJ eスマート証券確認できず10社申し合わせには参加していますが、個別の補償方針は公式ページで確認できませんでした
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楽天証券の「50%」には、見落としやすい但し書きがあります

手口は「①持っていた株を売る → ②その代金で小型株を買う」の2段構えでした。ところが楽天証券の補償方針にはこう書かれています。「『お客様が元々保有されていた有価証券』の不正アクセスによる売却については、被害額算定の対象外とさせていただきます」。つまり手口の起点である①がまるごと対象外で、補償されるのは②の買付分の50%が基本です。「被害額の50%」という一言では伝わらない部分です。

そして本題です。6社が「自社が認証を必須化した日」で線を引きました

会社区切りの日
(=自社が必須化した日)
それより前の被害それ以降の被害
SMBC日興証券2025年6月上旬
二要素認証
原則原状回復(実施済み)個別の事情に応じて可否や内容を検討/設定次第で補償できない場合もございます
野村證券2025年6月28日/29日
ワンタイムパスワード
最大で不正取引前の状態に戻す10社申し合わせの方針で個別対応
大和証券2025年7月5日/6日
ログイン追加認証
過失がなければ全額補償ID・パスワードの管理状況やセキュリティ設定等の状況によっては補償できない場合がございます
松井証券2025年9月28日/29日一律に1/2の金銭補償お客様ごとの個別の事情に応じて決定
みずほ証券2026年2月9日〜
パスキー登録
原状回復を含む被害補償パスキー等のセキュリティ設定の状況その他の個別事情等によっては補償の対象外
マネックス証券パスキー認証の提供開始個別の事情に応じた補償公式ページでは確認できず

6社すべてが「自社が手を打った日」を境に、補償を「原状回復」から「個別判断」へ切り替えています。区切りの日付が会社ごとにバラバラなのは、各社が必須化した日が違うからです。

そして4社が「顧客のセキュリティ設定の状況によっては補償できない」と公式に明記しました。うち2社は、何を設定していないと危ないのかまで書いています

みずほ証券 お客さまにおけるパスキー等のセキュリティ設定の状況、その他の個別事情等によっては、補償の対象外とさせていただく場合がございますので、パスキー認証等のセキュリティ対策をお願いいたします。

みずほ証券「今般のフィッシング詐欺等による不正アクセス等への被害補償について」2025年5月15日/2026年2月9日更新

GMOクリック証券 お客様がログイン時の追加認証を未設定のままであった場合、または身に覚えのない追加認証に対して拒否をされなかった場合、またはログイン追加認証方法をメールとしていた場合、第三者の不正アクセスによる取引などの被害が発生しても補償の対象外、もしくは補償が限定的となる可能性がございます

GMOクリック証券「【重要】ログイン追加認証が必須化されます!」2025年9月26日

GMOクリック証券の条件は特に具体的です。ログインの追加認証を「メール」で受け取る設定にしていただけで、補償が薄くなる可能性がある——同社はSMSを推奨しています。ここまで書いている会社は他にありませんでした。

🚨 いま、この記事でいちばん伝えたいこと

2025年の報道を読んで「証券口座を乗っ取られても、株は戻ってくる」「半額は返る」と理解している方は、前提がまるごと変わっています

2025年前半の被害は、各社が対策を提供する前だったので、会社側の責任として原状回復されました。しかし各社が多要素認証やパスキーを必須化した後は、「あなたがその設定をしていたか」が勘案される個別判断に移りました。みずほ証券は「パスキー等の設定状況によっては補償の対象外」、GMOクリック証券は「追加認証をメールにしていた場合は補償が限定的」と、はっきり書いています。

つまり証券口座の補償は「会社が守ってくれる」段階から「あなたが設定していたかで決まる」段階へ移りました。設定は多くの会社で数分です(野村證券はパスキー登録にマイナンバーカードが必要なので、もう少しかかります)。それをやったかどうかで、数百万円の扱いが変わる可能性があるということです。ただし補償は各社の個別判断であり、パスキーを設定すれば必ず補償されるという意味ではありません。

もうひとつ、補償の話そのものが詐欺の餌になっています

大和証券が公式資料の末尾で警告しています。

ご注意!! 当社からの補償の案内を騙る不審な電話があったことを確認しております。心当たりのない電話番号からの電話にはご注意ください。少しでも不安に思われる場合はお取扱い店までご連絡ください。また、証券会社からの補償の案内を騙ったフィッシングメールも発生しております。併せてご注意ください。

大和証券「今般のフィッシング詐欺等による不正アクセス等の被害補償について」2025年7月25日更新

被害に遭った人ほど「補償の案内」を待っています。その心理を突く二次被害です。補償に関する連絡が来ても、その電話番号やメールのリンクからは絶対に手続きしないでください。自分でブックマークした公式サイト、または口座を持っている支店・コールセンターの番号から確認するのが唯一の安全な方法です。

第7章 おわり — 次は第8章「今日やること、被害に気づいたら」

CHAP8

第8章 / 全8章

今日やること、被害に気づいたら

設定は数分。それで補償の扱いが変わります

今日のうちに終わる設定(所要5〜10分)

  • パスキーを登録する。これが最優先です。ログイン画面か「セキュリティ設定」から探してください。会社によって「パスキー認証」「生体認証ログイン」「FIDO2」など呼び方が違います。野村證券は2026年3月28日から、パスキー登録時にマイナンバーカードが必要になっているので、手元に用意してから始めてください
  • すでにパスキーを登録した人も、抜け道が残っていないか確認する。IDとパスワードでもログインできる状態なら、そこが狙われます。設定でパスキー以外を制限できる会社もあります
  • ログイン追加認証を「メール」にしている人は、SMSか認証アプリに変える。GMOクリック証券は、メールのままだと補償が限定的になる可能性を明記しています
  • 出金時・出金先の変更時の認証を有効にする。会社によっては「利用対象」として自分で選ぶ必要があります(マネックス証券など)。オフのままなら意味がありません
  • ログイン通知・取引通知・出金通知をオンにする。気づくのが早ければ、それだけ被害が小さくなります。日証協のガイドラインは全社にこの機能の提供を求めています
  • 証券会社のサイトをブックマークして、そこからしか入らない。メールやSMSのリンクは使わない。フィッシングは今回の手口の主な入口なので、いちばん効果の大きい習慣です(ただしこれだけで防ぎきれるわけではありません)
  • パスワードを他のサービスと使い回していないか確認する。使い回しがあると、他社の漏えいで証券口座まで開かれます
  • ときどき残高と取引履歴を見る。現金が減らない手口なので、残高の数字だけ見ていると気づけません。保有銘柄が変わっていないかを見てください

被害に気づいたときの順番

順番やることなぜ
1証券会社に連絡して口座を止める止めた時刻が補償の起点になることがあります。会社によって不正取引の専用ダイヤルがあります
2警察に届け出る証券の補償は各社の個別判断ですが、銀行やキャッシュレス決済では警察への届出が条件になっています。証券でも調査に必要です
3パスワードを変更し、パスキーを登録する同じ手口で再び入られるのを防ぎます。他社で使い回していたパスワードも全部変えてください
4会社の案内に従って補償を申請するID・パスワードの管理状況を聞かれます。いつ・どんなメールから入力したかを、覚えているうちにメモしておくと有利です
注意「補償の案内」を騙る電話やメールに応じない第7章のとおり、二次被害が実際に発生しています。必ず自分でブックマークした公式サイトか、支店の番号から確認してください

会社を選ぶときに、何を見ればいいか

重く見たいものこの基準で強いのは理由
乗っ取られても売買されないことみずほ証券/SMBC日興証券/野村證券パスキーが取引・出金まで効く。抜け道でログインできても売買・出金ができない
弱い認証を選べないこと三菱UFJモルガン・スタンレー証券/大和証券/マネックス証券ワンタイムパスワードでのログインを廃止した。利用者が弱い方を選ぶ余地がない
出金先を書き換えられないことマネックス証券出金先の金融機関の変更が郵送のみ。オンラインで変えられない
補償の条件が具体的に書いてあることGMOクリック証券/みずほ証券何を設定していないと補償されないかまで明記している。厳しいが事前に分かる
説明の丁寧さ・正直さ大和証券代替手段の電話認証について「パスキー認証・生体認証と比べてセキュリティ強度が低い」と自ら書いている
✅ この記事のまとめ

1. 2025年の証券口座乗っ取りは、勝手に売られた分だけで約3,948億円。クレジットカード不正利用の約7.7倍。報道の「7,393億円」は売却と買付を足した「のべ」の数字です。

2. 犯人は現金を1円も持ち出しません。口座の中身が優良株から値下がりした小型株に入れ替わるだけ。だから被害額の数え方から揉めます。

3. 銀行の預金者保護法のような救済の専用法がありません。2026年7月に成立した改正金商法にも、証券口座の不正アクセスに関する規定は入っていません。あるのは業界の「10社申し合わせ」とガイドラインだけです(民法・商法・消費者契約法で救済を求める道は残っています)。

4. 「多要素認証あり」と「フィッシング耐性あり」は別物。2025年の被害は前者が突破されて起きました。みずほ証券は公式に「パスキー以外の認証手段では防衛が困難」と書いています。

5. 大手対面証券がネット証券を追い抜きました。取引・出金までパスキーで守る段階に到達した6社のうち5社が大手対面です。

6. そして補償は「会社が守ってくれる」段階から「あなたが設定していたかで決まる」段階へ移りました。今日パスキーを設定してください。

第8章 おわり — 次はよくある質問

FAQ?

よくある質問

読者からよく聞かれること

この記事の限界と、実務で迷う点

段階Cや段階Dの証券会社は危ないので、乗り換えるべきですか?

そうは言えません。この記事は各社が公式に開示している情報を整理したもので、実際の防御力そのものを測ったわけではありません。表に「確認できず」と書いた項目も、対策がないという意味ではありません。

とくに段階Dの2社は移行の途中です。三菱UFJ eスマート証券は2026年6月18日に段階的必須化を決め、GMOクリック証券は6月13日に導入して秋以降に必須化する予定で、どちらも必須化後は取引や出金を制限する設計です。数か月後には段階が変わっている可能性が高いので、乗り換えを検討するより、まず自分の口座でパスキーを設定するほうが効果が確実です。

パスキーを設定していれば、絶対に乗っ取られませんか?

「絶対」はありません。パスキーは偽サイトに鍵を渡せない仕組みなのでフィッシングには非常に強いのですが、端末そのものがウイルスに感染していれば別の経路が残ります。実際に、被害端末でインフォスティーラーの感染が確認された例も報じられています。パスキー+端末を清潔に保つ+通知を見る、の3つを合わせてください。

パスキーが使えないスマホなのですが、どうすればいいですか?

各社が代替手段を用意しています。大和証券は電話認証、楽天証券はID・パスワードと絵文字認証、三菱UFJ eスマート証券は従来の二要素認証です。ただし大和証券は代替手段について「パスキー認証・生体認証と比べてセキュリティ強度が低い」と自ら書いています。代替手段で使い続ける場合は、その分だけ通知の確認と残高チェックの頻度を上げてください。

「取引時の認証」が✕でも、ログインが守られていれば十分ではないですか?

ログインを守るのは最重要で、そこは正しいです。ただし抜け道からログインされた場合に、取引まで守られているかどうかで結果が変わります。みずほ証券とSMBC日興証券は「パスキー以外でログインはできるが、取引や出金はできない」という設計で、この差を埋めています。取引が守られていない会社では、ログインを突破された時点で売買まで通ります。

被害に遭ったら、いつまでに申請すればいいですか?

証券には、銀行や決済サービスのような共通の申請期限が存在しません。各社が「個別の事情に応じて」対応すると書いているだけです。だからこそ気づいたらすぐに連絡することが唯一の正解になります。止めた時刻が起点になることがあり、また「速やかに連絡しなかった」ことが補償の判断で不利に働く可能性もあります。

被害はもう終わったのではないですか?

2026年7月は1社・1件・約100万円まで減りました。ただし2026年2月から4月に金額だけ反発しています(115億円→159億円→74億円)。件数が減って金額が増えた月がある=1件あたりの被害が大型化しているということです。件数だけを見て「終わった」と判断するのは早いです。

なぜ証券だけ法律がないのですか?

制度が業種ごとに作られてきた結果です。銀行のATMには預金者保護法があり、キャッシュレス決済には資金決済法で「補償方針を情報提供する義務」があります。証券にはそのどちらもありません。加えて証券には金融商品取引法39条の「損失補てんの禁止」という別の壁もあり、「証券会社が顧客の損失を埋める」ことが原則として禁止されているため、補償の設計自体が難しいという事情も指摘されています(自ら取引していない顧客の救済は場面が異なる、という整理もあります)。この論点は現在も専門家の間で議論中で、結論は出ていません。

FAQ おわり — 出典と関連記事へ

出典(すべて一次情報・2026年8月15日時点)

  • 金融庁「インターネット取引サービスへの不正アクセス・不正取引にご注意ください」/「同 被害状況」(2026年8月10日更新)
  • 金融庁「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」等の一部改正(2025年10月15日適用)
  • 金融庁「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案 説明資料」(2026年4月)
  • 金融庁「偽造キャッシュカード等による被害発生等の状況について」(2025年6月10日)
  • 日本証券業協会「今般のインターネット取引サービスにおけるフィッシング詐欺等による証券口座への不正アクセス等による対応について(10社申し合わせ)」(2025年5月2日)
  • 日本証券業協会「インターネット取引における不正アクセス等防止に向けたガイドライン」(2025年10月15日改正)/「多要素認証の設定必須化を決定した証券会社」(2025年7月7日時点)
  • 独立行政法人国民生活センター『国民生活』2025年11月号 特集2「証券口座への不正アクセス・不正取引による被害の補償について」
  • 一般社団法人日本クレジット協会「クレジットカード不正利用被害の集計結果について」(2026年3月6日)
  • 警察庁サイバー警察局「令和7年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」(2025年9月)
  • 全国銀行協会「預金等の不正な払戻しへの対応について」(2008年2月19日)/「インターネット・バンキングにおける預金等の不正な払戻しについて」
  • 野村證券「今般のフィッシング詐欺による不正取引の被害の補償方針について」(2025年7月29日)/「ログイン・取引・出金時にパスキー認証を必須化いたしました」(2026年5月13日)
  • 大和証券「今般のフィッシング詐欺等による不正アクセス等の被害補償について」(2025年5月7日/7月25日更新)/「オンライントレードのご利用時のログイン認証を強化しています」(2026年3月23日)
  • SMBC日興証券「フィッシング詐欺等による不正アクセス被害への補償対応について」(2025年8月4日)/「4月下旬より、日興イージートレードのログインにパスキー認証が必須となります」(2026年4月17日)
  • みずほ証券「今般のフィッシング詐欺等による不正アクセス等への被害補償について」(2025年5月15日/2026年2月9日更新)/「2026年2月9日から…パスキーによるログインが必須となりました」
  • 三菱UFJモルガン・スタンレー証券「今般のフィッシング詐欺等による不正取引に対する被害補償について」(2025年5月9日/7月28日更新)/「パスキー認証(ログイン時・出金時)のご案内」
  • SBIホールディングス「SBI証券におけるフィッシング詐欺等による不正取引の補償に係る損失の見込みについて」(2025年7月29日)/SBI証券 FAQ「パスキー認証は必須になりますか?」
  • 楽天証券「フィッシング詐欺等による不正アクセス被害に関する補償方針について」(2025年7月25日/2026年2月18日更新)/「パスキー認証(FIDO2)」
  • マネックス証券「ログイン時の『パスキー認証』必須化のお知らせ」/「多要素認証の設定・利用操作ガイド」
  • 松井証券「フィッシング詐欺等による不正取引での被害に関する今後の補償について」(2025年9月26日/11月21日更新)/FAQ「パスキー認証の利用は必須ですか。」
  • 三菱UFJ eスマート証券「パスキー認証導入について(続報)」(2026年4月15日)/「ログイン時の『パスキー認証』の段階的な必須化について」(2026年6月18日)
  • GMOクリック証券「【重要】ログイン追加認証が必須化されます!」(2025年9月26日)/「『パスキー認証』導入予定と動作環境に関するお知らせ」(2026年3月9日)/「『パスキー認証』の導入に関するお知らせ」(2026年6月13日)
  • 楽天証券「2025年10月26日より出金時に追加認証(多要素認証)が必須化されます」(2025年10月22日)
  • 金融庁 国会提出法案等(第221回国会)/衆議院 議案経過(閣法221-57・2026年7月成立)
  • 最高裁判所平成4年2月28日判決(無断売買の効果帰属)

あわせて読みたい

「この会社なら100%補償」

という単純なものではありません。

被害発生時期 × パスキー等の設定状況 × ID・PW管理状況 × 利用者側の過失 × 証券会社側の対策 などによって変わります。

やさい
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私が調べたことなので、サービスを契約する方は、ご自身で公式サイトを調べてください。また間違いがあれば、サイト連絡先までいただければ訂正いたします。

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