特殊詐欺対策|年齢・性別で分ける13手口の守り方

🚨 警察庁 特殊詐欺統計 | 令和8年1〜3月・13手口・11,093件

同じ「特殊詐欺」の中に
正反対の犯罪が2つ入っている

預貯金詐欺の被害者は97.0%が65歳以上、うち82.4%が女性。
SNS型ロマンス詐欺は18.0%だけが65歳以上で、70.3%が男性でした。

🏷️ 手口別の被害者像 🏷️ 年齢×性別 🏷️ 1件あたり被害額 🏷️ 令和8年

⚡ 先に結論(5行)

  1. 「特殊詐欺」は13の手口の総称です。被害者に占める65歳以上の割合を手口別に見ると、キャッシュカード詐欺盗99.4%から融資保証金詐欺5.3%まで、まったく別の分布をしています。
  2. 高齢者を狙う手口ほど、被害者に女性が多くなります。預貯金詐欺は65歳以上のうち82.4%が女性。件数200件以上の9手口で、高齢者率と女性比率の相関はr=+0.956でした。
  3. ところが金額は逆です。SNS型投資詐欺の1件あたり被害額は1,343万円。いっぽう預貯金詐欺は97万円、キャッシュカード詐欺盗は109万円。高齢者率と1件あたり金額の相関はr=−0.689です。
  4. SNS型の2手口だけで、件数の42.4%、被害額の63.1%を占めます。1件平均1,258万円。対して古典的な3手口(オレオレ・預貯金・キャッシュカード詐欺盗)は件数12.4%、金額3.9%、1件平均265万円でした。
  5. あなたが読み取るべきこと:「特殊詐欺に気をつけて」という一言では、もう届きません。高齢の親に伝えるべき話と、現役世代の自分が気をつけるべき話は、別の犯罪の話です。

📌 一言でいうと ── 高齢女性から小さく取る犯罪と、現役男性から大きく取る犯罪が、同じ名前で呼ばれています。

01

📖 このデータは何か

あまり見られていない表があります。

📊

手口ごとに、被害者の年齢と性別を数えている

警察庁が公表している特殊詐欺の統計には、「認知件数」「被害総額」といった見出しの数字のほかに、被害者の年齢・性別構成という表が付いています。13の手口それぞれについて、11の年齢層 × 男女で集計された表です。

ニュースで報じられるのはたいてい合計値です。手口ごとに割ってみると、まったく違う景色が出てきます。

📊 令和8年1〜3月の特殊詐欺(13手口・11,093件)

手口認知件数被害総額
SNS型投資詐欺3,397456.1億円
ニセ警察詐欺2,204222.4億円
架空料金請求詐欺1,55643.4億円
SNS型ロマンス詐欺1,308135.9億円
オレオレ詐欺78830.4億円
還付金詐欺63913.6億円
キャッシュカード詐欺盗3563.9億円
その他の特殊詐欺27113.3億円
預貯金詐欺2342.3億円
交際あっせん詐欺1606.0億円
金融商品詐欺919.6億円
融資保証金詐欺770.6億円
ギャンブル詐欺120.5億円
合計11,093937.9億円

※ 令和8年の数値は暫定値です。還付金詐欺のみ「被害総額(既遂のみ)」として集計されています。

わずか3か月で11,093件、937.9億円。ここから、被害者の顔ぶれを見ていきます。

02

👵 高齢者率が99.4%から5.3%まで割れる

まず、年齢から。

📊 被害者に占める65歳以上の割合(手口別)

0% 50% 100% キャッシュカード詐欺盗 99.4 預貯金詐欺 97.0 オレオレ詐欺 93.1 還付金詐欺 71.4 金融商品詐欺(91件) 58.2 ギャンブル詐欺(12件) 50.0 ニセ警察詐欺 39.7 架空料金請求詐欺 30.9 SNS型投資詐欺 26.7 交際あっせん詐欺(160件) 23.1 SNS型ロマンス詐欺 18.0 その他の特殊詐欺 16.9 融資保証金詐欺(77件) 5.3 出典:警察庁 特殊詐欺統計(令和8年1〜3月)より作成/グレーは認知件数200件未満の手口

上の3つは、ほぼ全員が高齢者です。キャッシュカード詐欺盗99.4%、預貯金詐欺97.0%、オレオレ詐欺93.1%。10人中9人以上という水準です。

いっぽう下のほうを見ると、SNS型ロマンス詐欺は18.0%、SNS型投資詐欺は26.7%。高齢者は少数派で、被害者の7割以上が65歳未満です。

⚠ 注意

グレーで示した4手口(金融商品91件、交際あっせん160件、融資保証金77件、ギャンブル12件)は認知件数が少なく、割合が大きく振れます。ギャンブル詐欺の50.0%は12件のうち6件という意味です。以降の分析では、原則として認知件数200件以上の9手口を使います。

03

👩 高齢者を狙う手口ほど、被害者は女性

もうひとつの軸が、きれいに重なります。

この統計は、65歳以上の被害者のうち男女がどれくらいかも出しています。

📊 65歳以上の割合と、そのうちの女性比率(認知件数200件以上の9手口)

手口件数65歳以上うち女性うち男性
キャッシュカード詐欺盗35699.4%80.2%19.8%
預貯金詐欺23497.0%82.4%17.6%
オレオレ詐欺78893.1%76.2%23.8%
還付金詐欺63971.4%53.7%46.3%
ニセ警察詐欺2,20439.7%58.4%41.6%
架空料金請求詐欺1,55630.9%33.0%67.0%
SNS型投資詐欺3,39726.7%33.0%67.0%
SNS型ロマンス詐欺1,30818.0%29.7%70.3%
その他の特殊詐欺27116.9%28.6%71.4%

※「うち女性/うち男性」は、65歳以上の被害者に占める構成比です。

2つの軸が、きれいに連動しています。高齢者率が高い手口ほど女性が多く、低い手口ほど男性が多い。この9手口での相関はr=+0.956です。

👵

預貯金詐欺

65歳以上 97.0%
うち女性 82.4%

💳

キャッシュカード詐欺盗

65歳以上 99.4%
うち女性 80.2%

📈

SNS型投資詐欺

65歳以上 26.7%
うち男性 67.0%

💌

SNS型ロマンス詐欺

65歳以上 18.0%
うち男性 70.3%

年齢層まで細かく開くと、対比はもっと鮮明になります。2つの手口を並べてみます。

📊 被害者の年齢層と性別(構成比・%)

年齢層預貯金詐欺(234件)SNS型ロマンス詐欺(1,308件)
男女計男女計
20〜39歳0.40.40.910.95.015.9
40〜49歳0.40.00.412.210.522.6
50〜59歳0.40.40.920.211.031.2
60〜69歳0.01.31.315.66.522.1
70〜79歳5.112.817.95.02.17.2
80〜89歳8.159.467.50.70.20.8
90〜99歳3.87.311.10.00.00.0

預貯金詐欺の被害者は、80代の女性だけで59.4%を占めます。70代以上をまとめると96.5%。ほぼ「80代の女性を狙う犯罪」と言っていい形です。

いっぽうSNS型ロマンス詐欺は、50代が31.2%、40代が22.6%。40〜50代だけで53.8%です。最も多いのは50代の男性(20.2%)。80代女性59.4%と50代男性20.2%——同じ「特殊詐欺」の中で、これだけ違います。

手口の性質を考えると、納得できる部分もあります。オレオレ詐欺や預貯金詐欺は、自宅の固定電話にかけて、家にいる人を狙います。いっぽうSNS型は、SNSを使っている人にしか届きません。接触の手段が、そのまま被害者層を決めています。

04

💰 ところが、金額は逆だった

ここが、この記事でいちばん意外な部分です。

被害総額を認知件数で割って、1件あたりの被害額を出します。

📊 65歳以上の割合と、1件あたり被害額(200件以上の9手口)

0 500万 1000万 0% 50% 100% 被害者に占める65歳以上の割合 → SNS型投資 1,343万 SNS型ロマンス 1,039万 ニセ警察 1,009万 その他 492万 オレオレ 386万 架空料金請求 279万 還付金 212万 CC詐欺盗 109万 預貯金 97万 高齢者が多い手口ほど、1件が小さい(r = −0.689) 出典:警察庁 特殊詐欺統計(令和8年1〜3月)より筆者算出

📊 1件あたり被害額(多い順・9手口)

手口1件あたり65歳以上
SNS型投資詐欺1,343万円26.7%
SNS型ロマンス詐欺1,039万円18.0%
ニセ警察詐欺1,009万円39.7%
その他の特殊詐欺492万円16.9%
オレオレ詐欺386万円93.1%
架空料金請求詐欺279万円30.9%
還付金詐欺212万円71.4%
キャッシュカード詐欺盗109万円99.4%
預貯金詐欺97万円97.0%
🚨 重要

SNS型投資詐欺の1件あたり1,343万円に対し、預貯金詐欺は97万円。約14倍の開きです。そして高齢者率は逆に、26.7%と97.0%。「高齢者ほど大きな被害に遭っている」というイメージとは、逆の結果になりました。手口の性質を考えれば理由は想像できます。キャッシュカードを受け取ってATMから引き出す方式には、1日の引き出し限度額という上限があります。いっぽう投資名目の振込には、その種の天井がありません。

05

📊 SNS型2手口が、金額の6割

件数と金額を分けて見ると、はっきりします。

📊 2つのグループの比較

SNS型2手口
(投資・ロマンス)
古典3手口
(オレオレ・預貯金・CC詐欺盗)
認知件数4,705件1,378件
件数シェア42.4%12.4%
被害総額592.0億円36.6億円
金額シェア63.1%3.9%
1件あたり1,258万円265万円
65歳以上18.0〜26.7%93.1〜99.4%
65歳以上のうち男性67.0〜70.3%17.6〜23.8%

SNS型の2手口だけで、被害額の63.1%を占めます。件数では42.4%ですから、1件あたりが大きいぶん、金額シェアがさらに膨らんでいます。

いっぽう古典的な3手口は、件数12.4%に対し金額はわずか3.9%。報道でよく取り上げられ、注意喚起の中心にもなってきた手口ですが、金額で見ると全体の25分の1です。

⚖️

どちらを軽く見るという話ではない

誤解のないように書いておくと、金額が小さいから軽い被害だ、という話ではありません。預貯金詐欺の97万円は、年金で暮らす世帯にとって決定的な金額になりえます。失う痛みは、金額の絶対値では測れません。

ここで言いたいのは対策の設計の話です。金額を減らしたいならSNS型、被害者の数を減らしたいなら手口ごとに別の打ち手が要る——目的によって、狙うべき場所が変わります。

06

🏷️ 2つの犯罪を、1つの言葉で呼んでいる

ここまでを整理します。

👵 古典型(オレオレ・預貯金・CC詐欺盗)

  • 被害者の93.1〜99.4%が65歳以上
  • そのうち76.2〜82.4%が女性
  • 1件あたり97〜386万円
  • 接触は電話・訪問
  • 件数12.4% / 金額3.9%

📱 SNS型(投資・ロマンス)

  • 65歳以上は18.0〜26.7%だけ
  • 高齢被害者の67.0〜70.3%が男性
  • 1件あたり1,039〜1,343万円
  • 接触はSNS・マッチングアプリ
  • 件数42.4% / 金額63.1%

被害者の年齢が違い、性別が違い、金額の桁が違い、接触の手段も違う。共通しているのは「対面せずにだまして金を出させる」という定義だけです。

📣

だから「特殊詐欺に気をつけて」は届かない

この言葉を聞いたとき、多くの人はオレオレ詐欺の映像を思い浮かべます。高齢の女性が電話を受け、現金を渡す——あの絵です。その絵を持っている40代の男性は、自分が対象だと思いません。

ですが実際には、SNS型投資詐欺の被害者の73.3%は65歳未満で、1件あたり1,343万円を失っています。注意喚起が届いていない層に、いちばん大きな金額が集まっているという形になっています。

07

🧰 何ができるか

数字からそのまま出てくることを。

1

👵 高齢の家族には「電話とカード」の話をする

オレオレ・預貯金・キャッシュカード詐欺盗は、93.1〜99.4%が65歳以上、うち約8割が女性です。この3つは電話がきっかけで、最後にカードか現金を手渡すという共通点があります。「カードを取りに来る人は全員詐欺」——伝えるならこの一点で足ります。

2

📱 現役世代は「自分が本命」だと知る

SNS型投資詐欺は被害者の73.3%が65歳未満、1件あたり1,343万円。金額の6割超はこちらに集まっています。「詐欺は高齢者の問題」という前提のままでいると、いちばん大きい的が無防備になります。

3

💸 「儲け話」と「恋愛」は、同じ引き出しに入れる

SNS型投資とSNS型ロマンスは、被害者像も金額もよく似ています(1,343万円と1,039万円、男性67.0%と70.3%)。入口が違うだけで、行き着く先は同じ「送金してください」です。片方だけ警戒しても意味がありません。

4

📊 ニュースの「特殊詐欺◯億円」を分けて読む

合計値だけでは、何が起きているか分かりません。手口別に見ると、被害者も金額も別の犯罪です。統計は手口ごとに公表されているので、気になる手口だけを追うことができます。

✅ この記事の持ち帰りポイント

高齢の親に伝えるべきことと、自分が気をつけるべきことは、別の話です。親には「電話とカード」、自分には「SNSで始まる儲け話と恋愛」。同じ「特殊詐欺」という言葉でひとまとめにすると、どちらにも刺さらない注意喚起になります。

08

📝 注意点とまとめ

この数字の限界を、正面から書いておきます。

注意 1

3か月分・暫定値

年齢・性別の表は令和8年1〜3月の集計で、令和8年の数値は暫定値と原典に明記されています。 年間の傾向とは限りません。3か月分を4倍して年換算するようなことも、本記事ではしていません。

注意 2

件数が少ない手口は使っていない

ギャンブル詐欺12件、融資保証金77件、金融商品91件、交際あっせん160件は 割合が大きく振れるため、相関の計算からは除外しています。 本文の相関値は200件以上の9手口によるものです。

注意 3

1件あたり金額は筆者の計算

被害総額÷認知件数で算出したもので、公表値ではありません。 また還付金詐欺だけ「被害総額(既遂のみ)」という別の定義で集計されており、 他の手口と厳密には揃っていません。

注意 4

警察が把握した被害だけ

認知件数は警察に届いた被害です。届け出ていない被害は入りません。 恥ずかしくて言えないという心理が働きやすい手口ほど、 実態より小さく出ている可能性があります。

注意 5

相関は因果ではない

r=+0.956やr=−0.689は9つの手口の間の関係であり、 個人について何かを言うものではありません。 また手口の数が9つと少ないため、1つの手口の位置で値が動きます。

注意 6

「なぜ」は書かれていない

なぜ手口で被害者像が割れるのかは統計に説明がありません。 「接触手段が被害者層を決めている」「引き出し限度額が上限になる」という説明は、 手口の性質からの筆者の推測です。

ここまで見てきたことを、もう一度まとめます。

1

高齢者率は、手口で99.4%から5.3%まで割れる

キャッシュカード詐欺盗99.4%、預貯金詐欺97.0%、オレオレ詐欺93.1%に対し、SNS型ロマンス詐欺は18.0%でした。

2

高齢者を狙う手口ほど、被害者に女性が多い

預貯金詐欺は65歳以上のうち82.4%が女性。9手口での相関はr=+0.956でした。

3

ところが1件あたりの金額は逆

SNS型投資詐欺1,343万円に対し預貯金詐欺97万円。約14倍の差で、相関はr=−0.689です。

4

SNS型2手口が、金額の63.1%

件数では42.4%。古典3手口は件数12.4%・金額3.9%でした。

この表を最初に開いたとき、探していたのは「特殊詐欺の被害者は何歳くらいか」という単純な数字でした。全体では65歳以上が39.9%です。その1行だけを見ていたら、何も分からないままだったと思います。

手口ごとに割った瞬間に、99.4%と18.0%が同じ表に並んでいるのが見えました。平均の39.9%は、ほぼ全員が高齢者の犯罪と、ほとんど高齢者がいない犯罪を足して2で割った数字だったわけです。

平均値は、そこに実在しない被害者像を作ります。65歳以上が39.9%という数字からは、80代の女性も50代の男性も見えてきません。この統計がわざわざ手口別に集計されているのは、たぶんそのためです。

⚠ 最後にひとつだけ

この表は警察庁がふつうに公表しているExcelファイルに入っています。ニュースで報じられるのは合計値ですが、手口別の内訳は誰でも見られます。ご自身や家族に関係のありそうな手口だけを追いかけるほうが、「特殊詐欺全体」の数字を見るよりずっと役に立ちます。

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