「全額補償」はどんなときに対象外?|銀行とカードの”保証書”に書かれた5つの但し書き

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「全額補償」は、どんなときに対象外?銀行とカードの”保証書”に書かれた5つの但し書き

「不正に使われても、銀行やカード会社が補償してくれる」。
半分は本当です。でも、規定には「補償しない場合」もはっきり書いてあります。

🧭 結論:補償は「他人に勝手に使われた人」を守るしくみ。5つの但し書きに当たると減るか、なくなる

  1. 届け出が遅い。銀行はおおむね「知らせた日の30日前」まで、クレジットカードは「60日前」までの被害が対象です。明細を見ていないと、それより前の分は戻りません。
  2. 家族や同居人が使った。カード会社の規約では、家族・親族が使った場合はあなたに落ち度がなくても対象外です。
  3. 暗証番号やパスワードを教えた・書いた・入力した。キャッシュカードは「重大な過失」で0円、「過失」で4分の3に。ネットバンキングは事情を聞いて個別に決めます。
  4. 自分で振り込んだ・買った。だまされても、自分の操作で払ったお金は「不正利用」ではありません。補償とは別の道(救済法など)になります。
  5. 警察への届け出や説明が足りない。キャッシュカードを「落とした」場合も、法律の補償の対象は「盗まれた・偽造された」カードです。

金融庁の統計では、盗難キャッシュカードの被害で「全額」戻ったのは100件に4件(令和7年度)。半分は4分の3など一部だけ、残りの45件は補償なしでした。

STEP1

まずこの1枚

「全額補償」の保証書には、裏に5つの但し書きがある

銀行やカード会社の規定は、だいたい同じ形をしています。表に「不正に使われたら補償します」、裏に「ただし、次の場合は補償しません(または減らします)」。その裏側を1枚にまとめると、こうなります。

図:銀行・カードの補償で「対象外・減額」になる5つの但し書き

保 証 書 他人に勝手に使われたら、補償します(銀行・カード) ただし、次の場合は「対象外」または「減額」 1 期限 知らせるのが遅い 銀行はおおむね「知らせた日の30日前」、カードは「60日前」より前の被害は対象外 2 身内 家族・親族・同居人が使った カード会社の規約では、あなたに落ち度がなくても対象外 3 鍵 暗証番号・パスワードを教えた・書いた・入れた キャッシュカードは重大な過失で0円・過失で4分の3。ネットバンキングは個別に判断 4 自分 自分で振り込んだ・自分で買った だまされても「不正利用」ではない → 補償とは別の道(救済法・返金交渉) 5 手続き 警察に届けない・説明にうそ・調査に協力しない キャッシュカードは「落とした」場合も、法律の補償の対象外(盗難・偽造が対象) 但し書き を読む

5つのうち、①と⑤は「手続き」、②〜④は「誰が使ったか・どう使われたか」の話です。①と⑤は今日から防げます。②〜④は、知っていれば避けられるものがほとんどです。

※条件は銀行・カード会社ごとに違います。この記事では、全国銀行協会の申し合わせと、いくつかの銀行・カード会社の規定を例に説明します。あなたの銀行・カードの規定(「補償規定」「会員規約」)も確かめてください。

STEP2

たとえると

家電の「保証期間中は無料修理」と同じつくり

家電の保証書を思い出してください。「保証期間中は無料で修理します」と書いてあっても、裏には「次の場合は有料です」が並んでいます。銀行やカードの補償も、まったく同じつくりです。

  • 期間家電:保証期間が過ぎたら有料。→ お金:気づいて知らせるのが遅いと、古い被害は対象外(但し書き①)。
  • 身内家電:家族がうっかり落とした故障は、メーカーのせいではない。→ お金:家族や同居人が使ったお金は、他人の不正利用ではない(但し書き②)。
  • 使い方家電:取扱説明書を無視した使い方で壊れたら有料。→ お金:暗証番号を人に教えた、カードに書いていた(但し書き③)。
  • 故障ではない家電:自分で選んで買った品が気に入らなくても、それは故障ではない。→ お金:だまされて自分で振り込んだお金は、不正利用ではない(但し書き④)。
  • 保証書家電:保証書や購入日の証明がないと受け付けてもらえない。→ お金:警察への届け出・事情の説明・書類が要る(但し書き⑤)。

※厳密には、銀行の補償は法律(預金者保護法)や業界の申し合わせ、カードの補償は会員規約にもとづくもので、家電の保証とは仕組みが違います。最初の理解として「保証書と但し書き」と考えてください。

✖ よくある思い込み

  • 不正に使われたら、いつでも全額戻る
  • 家族が勝手に使っても「不正利用」として補償される
  • だまされて振り込んだお金も、銀行が補償してくれる
  • 警察に届けなくても、銀行やカード会社に言えば足りる

✔ 実際

  • 期限があり、遅れた分は戻らない
  • 家族・同居人が使った分は対象外(カードは落ち度がなくても)
  • 自分で振り込んだお金は不正利用ではない
  • 多くの規定が、警察への届け出や相談を条件にしている
DATA!

数字で見る

「全額」戻った人は、思ったより少ない

金融庁は、銀行などから報告を受けて、不正な払い戻しの被害と補償したかどうかを公表しています。2026年6月30日に出た最新の数字(令和8年3月末時点)を見てみましょう。

4件盗難キャッシュカードで
「全額」戻った(100件あたり)
51件4分の3など
「一部」だけ戻った
45件補償されなかった

※令和7年度(2025年4月〜2026年3月)に起きた盗難キャッシュカードの被害のうち、銀行が扱いを決めた4,835件で計算(全額206件・75%または一部2,451件・補償しない2,178件)。「100件あたり」は当サイトの換算です。

グラフ:補償の内訳(銀行が扱いを決めた件数に占める割合)

全額一部(75%など)補償しない

盗難キャッシュカード

平成17年度6,141件
54%13%33%
平成27年度2,930件
20%26%54%
令和2年度11,448件
7%54%39%
令和7年度4,835件
51%45%

インターネットバンキング(個人と法人の合計)

令和6年度11,772件
76%21%
令和7年度3,649件
29%68%

出典:金融庁「預貯金の不正送金被害等の発生状況(令和8年3月末)について」別紙2・別紙4-1から当サイトで割合を計算。令和8年4月末までの報告分で、あとから変わる可能性があります(金融庁の注記)。

数字から分かること

  • 盗難キャッシュカードで「全額」は、20年で半分以上から4%ほどに減りました。今は「4分の3」などの一部補償がいちばん多くなっています。
  • 盗難キャッシュカードで補償しなかった主な理由(平成17年以降の合計)は、「落とした(遺失)などによる払い戻し」15,878件、「重大な過失」13,964件、「補償の請求の取り下げなど」12,476件でした。
  • 金融庁は、最近のキャッシュカードの被害の多くが、警察官などを名乗って家に来た人にカードをだまし取られたり、すり替えられたりする手口だと注意を呼びかけています。
  • インターネットバンキングは、令和6年度は約4分の3が全額補償でしたが、令和7年度は全額補償が約3割まで下がりました。とくに令和7年度の下半期は、扱いが決まった1,341件のうち全額補償は57件でした。金融庁の表には理由の内訳が載っていないため、なぜ下がったかはこの数字だけでは分かりません。

「原則補償」と「全額戻る」は、別のこと

補償のルールは「原則として補償する」です。そのあとに「ただし〜の場合は減額・対象外」が続きます。「補償された」には、4分の3だけ戻った人も含まれます。次の章から、5つの但し書きを1つずつ見ていきます。

但し書き1

期限

届け出が遅いと、古い被害から順に戻らなくなる

補償には「さかのぼれる日数」があります。被害に気づいて知らせた日から数えて、それより前の被害は対象外です。毎月の明細を見ていない人ほど、ここで損をします。

道具補償の対象になる被害ほかの期限
キャッシュカード(盗難)銀行に知らせた日の30日前の日以降の引き出し盗まれた日から2年を過ぎて知らせた場合は対象外(三菱UFJ銀行など)
インターネットバンキング銀行に知らせた日の30日前の日以降の払い戻し全銀協の基準では、被害の日から30日後までに知らせなかった場合は補償しない
クレジットカード(カードを落とした・盗まれた)カード会社に知らせた日の60日前以降の利用警察署への届け出も条件(JCB・三井住友カード)
クレジットカード(番号だけ盗まれた)JCBの規約では、明細のメールか明細書が届いた日(早いほう)から60日以内に知らせた利用カード会社によって数え方が違う
デビットカード(例:楽天銀行)知らせた日の30日前から、知らせた日の60日後までの91日間1口座で年間100万円までという上限あり

※2026年10月3日に各社の規定・公式ページで確認。入院などで知らせることができなかった「やむを得ない事情」を証明できれば、その期間を足して数える規定もあります(全銀協の預金規定の参考例)。

⚠ 少額の不正利用は、気づかれにくい

不正利用は、最初に数百円〜数千円の「試し打ち」から始まることがあります。カードの明細を3か月見なかったら、最初の1か月分はもう60日を過ぎているかもしれません。利用のたびにスマホに通知が届く設定にしておけば、その日のうちに気づけます。

但し書き2

身内

家族や同居人が使ったお金は、「他人の不正利用」ではない

補償は「見ず知らずの他人に使われた」ときのためのものです。家族や同居人が使った場合は、規定で対象外になっています。

道具対象外になる「身内」あなたの落ち度は?
キャッシュカード・ネットバンキング(三菱UFJ銀行・横浜銀行など)配偶者、二親等内の親族、同居の親族、その他の同居人、家事使用人銀行側に落ち度がない場合に対象外
クレジットカード(JCB)家族・親族(一緒に住んでいるかどうかを問わない)、同居人、法定代理人、留守人、身の回りの世話をする人など落ち度があってもなくても対象外と明記
クレジットカード(三井住友カード)家族・同居人・カードを代わりに受け取った人落ち度は問わない
ネットバンキング(ソニー銀行)お金の送り先が、本人・配偶者・二親等内の親族の名義の口座だった場合も対象外—

よくあるのは「子どものゲーム課金」

子どもが親のカードを勝手に使った場合、カード会社の規約上は「会員関係者が使った」に当たり、不正利用の補償は受けられません。ゲーム会社やアプリストアへの返金の相談、未成年の契約の取り消しなどは別の話になります。カードを家族と共有しない、スマホやアプリストアの購入にパスワードや承認をかけることが、いちばんの予防です。

但し書き3

鍵

暗証番号・パスワードを教えた、書いた、入力した

銀行もカード会社も、いちばん細かく書いているのがここです。お金の「鍵」の管理に落ち度があったとされると、補償が減ったり、なくなったりします。

キャッシュカード:「重大な過失」は0円、「過失」は4分の3

区分例(全銀協の申し合わせ・各行の案内)補償
落ち度なしカードも暗証番号もふつうに管理していたのに盗まれた全額
過失暗証番号をメモに書き、カードと一緒に持ち歩いていた/銀行から何度も変更をお願いされたのに、生年月日・住所・電話番号・車のナンバーを暗証番号にしていて、それが分かる免許証などと一緒に持っていた4分の3
重大な過失他人に暗証番号を教えた/暗証番号をカードに書いていた/他人にカードを渡したなし

※病気で介護ヘルパーなどにカードと暗証番号を預けた場合など、やむを得ない事情があるときは、この限りではないとされています(全銀協・ゆうちょ銀行)。

🚨 「警察です。カードを預かります」は、全部ウソ

全国銀行協会は、盗んだカードの持ち主に銀行員や警察官を名乗って暗証番号を聞き出す手口があると注意しています。警察官や銀行員、役所の職員が、暗証番号を聞いたりカードを預かったりすることはありません。教えたり渡したりすると、規定上は「重大な過失」に当たりうるので、補償も期待できなくなります。

ネットバンキング:「個別に判断」の中身

全銀協の基準では、ネットバンキングは落ち度がなければ全額、落ち度があれば「個別対応」です。手口が日々変わり、銀行ごとに守りの仕組みも違うため、型にはめた割合を決めていません。その代わり、各行が「減額・対象外になりうる例」を公開しています。横浜銀行とソニー銀行の例をまとめると、次のとおりです。

  • 銀行が何度も注意を呼びかけていた手口にだまされて、ID・パスワード・ワンタイムパスワードなどを入力した
  • 警察や銀行を名乗る人に、安易にパスワードを答えた/ワンタイムパスワードの機械(トークン)を渡した
  • パスワードを手帳やスマホに保存していて、その手帳やスマホが不注意で盗まれた
  • 身に覚えのない残高の変化や、パソコンのウイルス感染に気づいていたのに、銀行に知らせずにいた間の被害
  • パスワードが生年月日などの推測しやすいもの、ほかのサービスと同じもの(ソニー銀行)
  • パスワードをメールやクラウドに保存していて、そのメールやクラウドが乗っ取られた(ソニー銀行)

とくに1つ目は、フィッシング(偽サイト)に入力した場合にも関わります。「銀行の通知は受け取らない設定にしている」と、注意を呼びかけられていたことにも気づけません。横浜銀行は、注意喚起の配信や通知を受け取らない設定にしないよう求めています。

クレジットカード:暗証番号やパスワードが使われた利用は、原則対象外

JCBも三井住友カードも、暗証番号が使われた利用は補償しないと規約に書いています。JCBは暗証番号のほかに「その他の認証情報(各種のパスワード等)」も含めています。ただし、どちらも「暗証番号などの管理にあなたの落ち度がなかった場合は除く」としています。つまり、きちんと管理していたのに盗み見られたなら対象になりうる一方、カードの裏に暗証番号を書いていたら対象外、ということです。

※カード番号の漏れ方や、不正利用を止める手順はクレジットカード情報が漏れた時の対処法で説明しています。

但し書き4

自分

だまされて自分で払ったお金は、「不正利用」ではない

ここがいちばん誤解されやすいところです。補償の規定は、他人があなたのカードや口座を使った場合のためのものです。投資詐欺やニセ通販、サポート詐欺で、あなた自身が振り込んだ・カードで払ったお金は、だまされたとしても「不正利用」には当たりません。

補償の対象になりうる(他人が使った)

  • 盗まれたキャッシュカードでATMから引き出された
  • 偽サイトで盗まれたIDで、犯人がネットバンキングから送金した
  • 漏れたカード番号で、犯人が海外の通販で買い物をした

補償の対象外(自分で払った)

  • SNSの投資話を信じて、自分で指定の口座に振り込んだ
  • ニセ通販サイトで、自分でカード払いをした
  • 「ウイルス駆除代」と言われ、自分で電子マネーを買って番号を伝えた

自分で振り込んだお金は、振り込め詐欺救済法で、犯人の口座に残っているお金の中から被害額に応じて分けて返してもらえることがあります。ただし、口座にお金が残っていなければ戻りません。支払い方法ごとの取り戻し方は、偽の通販サイトで買ってしまったときにやることにまとめています。

「自分名義の口座」への送金も対象外になることがある

ソニー銀行は、犯人がネットバンキングを乗っ取っても、送り先があなた名義の証券会社や暗号資産交換業者の口座だった場合は対象外としています。お金は銀行から見れば「本人の口座に移っただけ」になるからです。そこから先の被害は、送り先の会社の補償の話になります。

但し書き5

手続き

警察への届け出・正直な説明・調査への協力がそろって、はじめて補償

補償を受けるには、銀行やカード会社に知らせるだけでなく、いくつかの手続きが要ります。全銀協の基準でも、速やかな通知・十分な説明・警察への説明の3つが補償の条件です。

👮 警察への届け出・相談

キャッシュカードやネットバンキングは、警察への被害届の提出や相談が前提(三菱UFJ銀行・横浜銀行・ソニー銀行など)。

受理番号や相談した警察署名を控えておくカードを落とした・盗まれた場合は、カード会社も警察署への届け出を条件にしている(カード番号だけの被害は、カード会社への通知で足りるとする規約もある)

🗣 正直な説明

どこで、いつ、何をしたか。不利に思えることも含めて話す。

記憶があいまいなところは「分からない」と言ってよい説明にうそがあると対象外(銀行・カード会社の共通の項目)

📄 書類と調査への協力

カード会社から届く届出書や、聞き取りへの回答。

三井住友カードは、求められたら損害を知った日から30日以内に書類を出すと定めている書類を出さない・調査に協力しないと対象外(JCB・三井住友カード)

👛 「落とした」と「盗まれた」

キャッシュカードの法律(預金者保護法)の対象は、偽造されたカードと盗まれたカードです。

クレジットカードは、紛失(落とした)も補償の対象キャッシュカードは「落とした」が補償しない理由の最多(金融庁の統計)。盗まれた心当たりがあれば、正直に警察へ

※このほか、戦争や地震などで社会が大きく混乱しているときの被害も、銀行・カード会社とも対象外としています。また、全銀協の「原則補償」の申し合わせは個人のお客さまが対象で、法人の口座は別の扱いです。

比較3

1枚の表で

キャッシュカード・ネットバンキング・クレジットカードの違い

くらべるところキャッシュカード(盗難・偽造)ネットバンキングクレジットカード
ルールのもと法律(預金者保護法)全銀協の申し合わせ(2008年)と各行の規定各社の会員規約
さかのぼれる日数知らせた日の30日前まで知らせた日の30日前まで知らせた日の60日前まで(数え方は会社で違う)
落ち度があると過失なら4分の3、重大な過失なら0個別に判断(減額・対象外)暗証番号などが使われた利用は原則対象外
家族・同居人が使った対象外対象外対象外(落ち度は問わない)
落とした(紛失)法律の対象外(盗難・偽造が対象)—対象(警察への届け出が条件)
自分で払った対象外対象外対象外
警察への届け出必要届け出か相談が必要カードの紛失・盗難は必要

※代表的な規定をもとにした当サイトの整理です。細かい条件は銀行・カード会社ごとに違います。銀行ごとの守りの強さはネット銀行・メガバンク8行のセキュリティ比較、カード会社ごとはクレジットカード10社を7つの壁で採点、QR決済・電子マネーはQR決済・電子マネー10サービスの補償されない条件で比べています。

QUIZ?

この人は補償される?

4つの例で、但し書きを当てはめてみる

※以下は説明のための架空の例です。実際の判断は、銀行・カード会社が事情を聞いて決めます。タップ(クリック)すると答えが開きます。

例1 Aさんは財布ごと盗まれた。キャッシュカードの裏に暗証番号のシールを貼っていた。

答え:キャッシュカードは補償されない可能性が高い。「暗証番号をカードに書いていた」は、全銀協が挙げる「重大な過失」の典型例です。同じ財布のクレジットカードも、暗証番号を使ったお店での支払いは対象外になりえます(但し書き③)。一方、暗証番号を使わないネット通販での不正利用は、警察とカード会社にすぐ届け出れば補償の対象になりえます。

例2 Bさんは「口座の確認が必要です」というSMSから偽サイトに入り、IDとパスワード、ワンタイムパスワードを入力した。翌日、50万円が知らない口座に送金されていた。

答え:補償されることもあるが、減額・対象外もありうる。犯人が送金しているので「不正利用」には当たります。ただし、ネットバンキングは落ち度があると個別に判断され、銀行が何度も注意していた手口なら減額・対象外になりうる、と規定に書いている銀行があります(但し書き③)。すぐ銀行に知らせ、警察に届け出ることが最低条件です(但し書き①⑤)。入力してしまったときの順番は怪しいメールを開いてしまった。どこまでなら大丈夫?で確認できます。

例3 Cさんのクレジットカードで、高校生の子どもが黙ってゲームに5万円課金していた。

答え:不正利用の補償は受けられない。JCBの規約では、家族・親族が使った場合は、会員に落ち度があってもなくても補償しません(但し書き②)。ゲーム会社やアプリストアに返金の相談をすることはできますが、それは補償とは別の手続きです。

例4 Dさんは明細を4か月見ていなかった。見てみると、4か月前から毎月3,000円の見覚えのない請求があった。

答え:古い分は戻らないかもしれない。カードの補償は、知らせた日の60日前(会社によっては明細が届いた日から60日以内)までが目安です。4か月前と3か月前の分は、期限を過ぎている可能性があります(但し書き①)。少額の請求が続くケースは身に覚えのない請求が来た!も参考にしてください。

CHECK6

あなたは大丈夫?

あなたの補償は、但し書きに引っかからない?

✅ 当てはまるものを数えてください

  • カードの利用や口座の入出金があると、スマホに通知が届く設定にしている
  • キャッシュカードの暗証番号は、生年月日・電話番号・車のナンバーではない
  • 暗証番号やパスワードを、カードや財布の中のメモに書いていない
  • 家族に自分のカードを使わせたり、暗証番号を教えたりしていない
  • 銀行・カード会社からの注意喚起のメールや通知を、受け取る設定にしている
  • カード会社・銀行の24時間の連絡先を、スマホ以外の場所(紙・手帳)にも控えている
  • 5〜6個但し書きに当たりにくい使い方です。この習慣を続けましょう。
  • 3〜4個もう少しです。足りない項目のうち、通知の設定と暗証番号から直しましょう。
  • 1〜2個被害にあったとき、減額や対象外になるおそれがあります。「今やること3つ」を今日のうちに。
  • 0個「全額補償だから大丈夫」は当てはまりません。まず暗証番号の変更から始めましょう。
STEP5

気づいたら

被害に気づいたら、この順番で動く

但し書きの①(期限)と⑤(手続き)は、気づいてからの動き方でほぼ決まります。

  1. 止める:銀行・カード会社の24時間窓口に電話
    カードの利用停止、口座の出金停止、ネットバンキングの利用停止を頼みます。これが「知らせた日」になり、さかのぼりの起点です。
  2. 記録する:明細・画面・日時を残す
    身に覚えのない取引の日時と金額、届いたSMSやメール、入力した偽サイトのURLを、スクリーンショットで保存します。消さないでください。
  3. 届け出る:警察に被害届・相談
    最寄りの警察署へ。届け出た警察署名、日付、受理番号を控えて、銀行・カード会社に伝えます。
  4. 申し出る:補償の手続きと書類
    届く書類は期限内に返します。説明は正直に。不利に思えること(暗証番号を誕生日にしていた、など)も隠さないことが、結果的に「虚偽の説明」で全部失うのを防ぎます。
  5. 入口を閉める:パスワード変更と端末の確認
    ネットバンキングのパスワードを変え、パソコンやスマホのウイルスを確認します。同じパスワードを使っているほかのサービスも変えます。

※電話番号はカードの裏面や、銀行・カード会社の公式サイトで確かめてください。SMSやメールに書かれた番号には電話しないでください。

DO3

今やること

「全額補償」の側にいるために、今日やること3つ

  1. 通知をオンにする。カードの利用通知と、口座の入出金通知をスマホのアプリやメールで受け取る設定に。銀行・カード会社からの注意喚起も、受け取る設定のままにする。(但し書き①③)
  2. 暗証番号を「教えない・書かない・推測されない」ものにする。生年月日や電話番号なら今すぐ変更。メモはカードと別の場所へ。警察官や銀行員を名乗る人にも、絶対に教えない。(但し書き③)
  3. カードは自分だけで使い、連絡先を控える。家族とカードを共有しない。カード会社と銀行の24時間の連絡先を紙にも書いておく。(但し書き②⑤)

補償でカバーされない部分を保険で備える方法は、個人向けのサイバー保険は入るべきかで整理しています。SIMを乗っ取られてネットバンキングから送金される手口は、SIMスワップ詐欺とは?をどうぞ。

FAQ?

よくある質問

「全額補償」と対象外のよくある質問

「4分の3補償」とは、どういうときですか?

盗まれたキャッシュカードや通帳で引き出された場合に、あなたに「過失」(重大な過失ではない落ち度)があると、被害額の4分の3が補償されます。たとえば、暗証番号のメモをカードと一緒に持っていた場合などです。金融庁の統計では、盗難キャッシュカードの被害の約半分が、この「75%または一部」の補償でした。

デビットカードも同じですか?

デビットカードは銀行ごとの規定で決まり、クレジットカードより条件が厳しいことがあります。たとえば楽天銀行は、補償を1口座で年間100万円までとし、「故意もしくは過失」がある場合、家族・同居人が関わった場合、カードに署名がない場合、デビット用の暗証番号が使われた場合を対象外にしています。使っているカードの規定を確かめてください。

補償されないと言われて、納得できません。

まず、どの規定のどの項目に当たるのか、説明を求めましょう。銀行の場合は全国銀行協会相談室に相談できます。消費者ホットライン(188)から、お近くの消費生活センターにつないでもらうこともできます。

フィッシングでパスワードを入れてしまったら、もう補償されない?

必ずしもそうではありません。ネットバンキングは、落ち度があっても「個別に判断」です。金融庁の統計でも、令和6年度までは多くのケースで全額が補償されています。ただし、すぐに知らせ、警察に届け出て、正直に説明することが前提です。気づいたらすぐ「止める」から始めてください。

法人の口座でも同じですか?

違います。全銀協の「原則補償」の申し合わせは、個人のお客さまが対象です。法人のネットバンキングは被害額も大きく(金融庁の統計では令和7年度の平均が約1,430万円)、補償の考え方も別です。法人の場合は、取引銀行の規定を確認してください。法人口座が狙われる手口はボイスフィッシングとは?で説明しています。

QR決済や電子マネーの補償はどうなっていますか?

QR決済や電子マネーは、銀行のような法律や業界の申し合わせではなく、各サービスの規約で決まります。補償の上限や、本人が「送る」機能で送ったお金が対象外になるなどの条件があります。サービスごとの違いはQR決済・電子マネー10サービスの安全性比較で全社の規約を比べています。

MORE+

詳しく知りたい人へ

規定のもとと、統計の読み方

3つのルールのもと

  • 預金者保護法(2006年2月施行):正式には「偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律」。ATMでの偽造・盗難カードによる引き出しが対象。偽造カードは、預金者に故意または重大な過失がなければ補償。盗難カードは、通知・説明・警察への届け出を条件に、通知日の30日前以降の払い戻しを補償し、過失があれば4分の3、重大な過失や親族による払い戻しなどは補償しない。
  • 全国銀行協会の申し合わせ(2008年2月19日):盗難通帳とインターネットバンキングについて、銀行に過失がなくても、お客さま自身の責任によらない被害は補償するとした。対象は個人。ネットバンキングは「無過失=全額、過失・重過失=個別対応」で、通知が被害発生日の30日後まで行われなかった場合、親族等による払い戻し、虚偽の説明、戦争・暴動などの混乱時は補償しない。
  • クレジットカードの会員規約:法律ではなく契約。JCBは第40条(カードの紛失・盗難)と第40条の2(カード番号等の不正利用)で条件を分け、前者は「通知日の60日前以降」、後者は「明細の通知日から60日以内に通知した利用」を免除の対象とする。偽造カードの利用は、会員に故意・過失がなければ会員の負担にならない(第41条)。

金融庁の統計を読むときの注意

  • 「補償」の件数は、銀行が扱いを決めた件数のうち、全額または一部を補償した件数の合計です。決まっていない件は入っていません。
  • 被害の件数・金額には、遺失(落とした)や詐欺による被害も含まれます(別紙の注記)。
  • 金融庁は、配偶者や親族による払い戻しだったと分かったものなどを除いた補償率も示しています。盗難キャッシュカードは、平成17年2月以降の合計で58.0%ですが、除いた場合は76.4%です。インターネットバンキングは74.9%が82.2%になります。
  • 令和7年度の数字は、令和8年4月末までの報告にもとづくもので、あとから変わる可能性があります。
区分(令和7年度)扱いを決めた件数全額一部補償しない
偽造キャッシュカード21件19件(全額と一部の合計)—2件
盗難キャッシュカード4,835件206件2,451件(75%または一部)2,178件
インターネットバンキング(個人+法人)3,649件1,058件126件2,465件

※インターネットバンキングの令和7年度の被害は3,946件で、そのうち個人が3,500件、法人が440件です(別紙4-2・4-3)。補償の内訳は個人と法人に分けて公表されていません。

📚 出典(2026年10月3日に確認)

統計

銀行のルール

クレジットカードのルール

🏦 「全額補償」は、但し書きまで読んで、はじめて安心

補償は、他人に勝手に使われた人を守るしくみです。通知をオンに、暗証番号は教えない・書かない、カードは自分だけで。
この3つで、5つの但し書きのほとんどは避けられます。

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