SIMスワップに強い携帯会社は?9社を徹底比較2026

携帯9社横断・公開情報のみで採点/15項目に拡張

SIMスワップに強いのはどこか
携帯9社を「15の壁」で採点2026

ドコモ・au・ソフトバンク・楽天モバイルに、IIJmio・mineo・日本通信SIM・BIGLOBEモバイル・イオンモバイルを加えた9社。SIM再発行だけでなく、アカウント復旧・MNP転出・連絡先変更まで含めて、電話番号を奪われる経路を洗い出しました。

結論:SIMスワップ耐性は「最も強い壁」ではなく「最も弱い壁」で決まる

9社に共通する6つの壁(18点満点)で比べると、日本通信SIMが18点で最高、ドコモが17点。ただし日本通信SIMは新アプリへ移行済みの利用者に限った評価です。

総合点より効くのが最弱リンク。IIJmioは音声eSIMの再発行に本人確認がないと公式FAQに明記があり、楽天モバイルは楽天IDのフィッシング耐性と店頭対策が弱点です。

格安SIM5社は一般消費者向けのキャリア決済を提供していません(mineoは2024年3月31日に終了)。補償が手厚いのではなく、乗っ取られても大量課金される経路がそもそも無い――これがMVNOの隠れた利点です。

SIM再発行だけ固めても足りません。パスワード再設定・MNP転出・登録メールの変更という3つの迂回路があり、ここまで見るとドコモ・mineo・イオンモバイルの評価が上がります。

今日やること — すべての人:契約者マイページにパスキーか認証アプリを設定する。大手4社の人:使っていないキャリア決済を停止するか上限を最小にする。全員:突然圏外になったら故障と決めつけず、別の電話から回線・ID・銀行を止める。

電話番号は、もはや連絡先ではなくあらゆるアカウントの合鍵です。奪われた瞬間、守っていたつもりの二段階認証が攻撃者の側に立ちます。

ある日とつぜんスマホが圏外になる。再起動しても直らない。故障かと思って半日ほうっておく――その間に、銀行口座からお金が消えている。これがSIMスワップ(SIM乗っ取り)です。

攻撃者がやることは単純です。あなたのIDとパスワードをフィッシングで盗み、契約者マイページにログインし、eSIMを再発行して自分の端末に取り込む。それだけで、あなたの電話番号に届くはずのSMSが攻撃者に届くようになります。銀行のワンタイムパスワードも、各種サービスのアカウント復旧コードも、全部です。

この記事では、ネット銀行8行QR決済10サービスクレジットカード10社で使ってきた「7つの壁」を携帯電話向けに組み直し、さらにSIM再発行以外の迂回路8つを足した15項目で、大手4社+格安SIM5社の計9社を採点しました。

⚠ 最初に、この採点の限界をはっきり書きます

評価しているのは公開されている利用者向けの手続きと設定だけです。各社が内部で運用している不正検知システム、審査基準、リスクスコアリングは非公開なので評価対象外にしています。したがってこれは「安全性の格付け」ではなく、「利用者が自分で確認・設定できる防御が、どこまで公開されているか」の比較です。

また、評価は2026年8月22日時点の公式サイト・FAQ・重要事項説明書に基づきます。この分野は動きが速く、2026年4月に非対面契約の本人確認方式が制度ごと変わったばかりです。実際の手続き前に、必ず各社の最新の案内をご確認ください。

格安SIMは大手のサブブランド(ahamo・povo・UQ mobile・LINEMO・Y!mobile)ではなく、独立系MVNO5社を選びました。理由は第8章で説明します。特定の事業者の利用を推奨・非推奨するものではありません。

CHAP1

第1章 / 全8章

結論:9社の総合点と「最弱リンク」

合計点だけでは、乗っ取られる会社と乗っ取られない会社を見分けられません

まず全9社を同じ土俵に載せます。第7の壁(キャリア決済の補償)は格安SIM5社がそもそも提供していないため、9社に共通する壁1〜壁6の18点満点で比べました。A=3点、B=2点、C=1点、D=0点です。

共通6項目・総合スコア(18点満点)

順位事業者18点満点最弱リンクこの事業者の性格
1位日本通信SIM
※アプリ移行済みの場合
18
A(弱点なし) マイナンバーカード由来の電子証明書でログインから契約管理までを統一。実店舗が無いので店員を騙す経路自体がない
2位NTTドコモ
17
B(店頭対策) パスキーとSIM再発行が連動。ID・パスワードを盗まれただけでは再発行できない構造が9社で最も明確
3位au
16
B(ログイン・店頭) 紛失時のオンラインeSIM再発行を止めて店頭に寄せている。復旧時がいちばん堅い
3位mineo
16
B(店頭・パスワード併存) eSIM再発行にSMS認証・ICチップ・公的個人認証のいずれかを要求。MVNOで唯一パスキー対応
3位BIGLOBEモバイル
16
B(ID・メール経路) eSIM再発行に公的個人認証を必須化。ただし2026年6〜7月のメール不正アクセスでID約500万件が流出した経緯あり
3位イオンモバイル
16
B(通常ログインは任意設定) 2025年に実被害。その後eSIM再発行に二段階認証を必須化し、対策の具体性は9社随一
7位ソフトバンク
14
B(ログイン・eSIM再発行) 店頭のなりすまし対策は9社で最も明文化。一方でオンライン側の認証条件の公開が薄い
8位楽天モバイル
12
C(楽天ID・店頭) 回線停止と再発行時のOTPは整備済み。楽天IDのフィッシング耐性と店頭対策の公開度が課題
9位IIJmio
11
C(音声eSIM再発行) 契約時の本人確認は強固。しかし音声eSIMの再発行に本人確認がないと公式FAQに明記

※ 壁1〜壁6(契約時の本人確認/マイページログイン/SIM再発行/eSIM転送・機種変更/店頭なりすまし対策/異常操作の通知と回線停止)の合計。A=3点、B=2点、C=1点、D=0点。2026年8月22日時点の公開情報から筆者が判定。非公開の不正検知システムは評価に含みません。

合計点より、最弱リンクを見てください

セキュリティは足し算ではありません。6つの壁のうち5つが完璧でも、1つが破られれば番号は奪われます。鎖の強さが、いちばん弱い輪の強さで決まるのと同じです。

🔗 最弱リンクという考え方

壁1 契約時 A 壁2 ログイン A 壁3 SIM再発行 C ここが破られる 壁4 機種変更 A 壁5 店頭 A 壁6 通知・停止 A 合計は17点。それでも番号は奪われます 攻撃者は6つ全部を破りません。いちばん安いところを1つ選びます だから「総合点」ではなく「そのサービスの最弱リンクが何か」を見る必要があります

この見方をすると、順位の意味が変わります。ソフトバンクは14点と低めですが、最弱リンクはBどまり――つまり突出した穴がありません。一方楽天モバイルとIIJmioにはCの項目があり、そこが攻撃の入口になります。IIJmioは契約時の本人確認がA評価で強固なのに、再発行の入口が開いている。強い壁と弱い壁が同居しているのが、いちばん危ない形です。

第7の壁:キャリア決済の補償は、大手だけの論点

事業者壁7 キャリア決済の補償意味するところ
NTTドコモA ─ 第三者利用と判断されれば原則全額補償乗っ取られても、決済被害は取り戻せる可能性がある。ただし警察への届出・速やかな申告・書類提出が条件
auA ─ 第三者による不正利用を原則実損補償
ソフトバンクA ─ 認証情報の盗難・フィッシングも調査のうえ原則全額補償
楽天モバイルD ─ 第三者による不正利用を補償する制度を、公開情報から確認できず他3社のような補償の明記がありません。ただし用途はGoogle Playストア内の購入のみ(Android限定)月額の利用上限もあり、被害の上限は構造的に小さめ。使わないならmy 楽天モバイルで「無効」に
格安SIM 5社― キャリア決済の提供を確認できず補償が手厚いのではなく、攻撃経路そのものが存在しない。mineoは2024年3月にGoogle Play向けを終了済み
⚠️

「決済経路がない=安全」ではありません

格安SIMにキャリア決済がないことは、確かに被害の上限を下げます。ただしSMS認証を奪われて銀行・証券・各種サービスのアカウントを取られる危険は、大手とまったく同じです。キャリア決済は数ある出口のひとつにすぎません。むしろ第6章で見るとおり、本命の出口はSMSで通る二段階認証のほうです。

第1章 おわり — 次は、そもそも何が起きるのかへ

CHAP2

第2章 / 全8章

SIMスワップとは何か|数字で見る前提

なぜ電話番号1本を失うだけで、生活が止まるのか

比較に入る前に、攻撃の流れを押さえます。SIMスワップは技術的にすごいことをしているわけではありません。正規の手続きを、あなたになりすまして通すだけです。

🎯 SIMスワップの5ステップ

① 認証情報を盗む 偽サイト・偽SMS 電話でOTPを聞き出す ② マイページに侵入 壁2がここ パスキーなら防げる ③ eSIMを再発行 壁3・壁4がここ あなたの端末は圏外に ④ SMSを受け取る 二段階認証コード アカウント復旧コード ⑤ 出金・課金 銀行・証券・決済 被害者が気づくのは③のあと。「スマホが圏外になった」という形で現れます 故障だと思って半日置くと、その間に④と⑤が終わります 二段階認証をSMSにしている限り、③が成立した時点で防御は無効化される 守っていたはずの仕組みが、そのまま攻撃者の道具になります

ポイントは③が終わった瞬間に、④以降が自動的に成立してしまうことです。銀行のワンタイムパスワードも、フリマアプリの本人確認も、メールのパスワード再設定も、すべて「電話番号に届くSMS」を信頼して作られています。だから電話番号は、もはや連絡先ではなくあらゆるアカウントの合鍵です。

【独自集計】若い世代ほど「電話番号が1本しかない」

ここで、この記事だけの数字を出します。総務省の令和6年全国家計構造調査から、世帯主の年齢階級別に「携帯電話通信料」と「固定電話通信料」の月額を集計しました。電話という連絡手段が、どれだけ携帯1本に集約されているかが見えます。

📊 年齢階級別・携帯電話と固定電話の月額支出(総世帯・2024年)

0円 6,000 12,000 6,295 〜29歳 98.8% 8,167 30代 98.4% 10,865 40代 95.4% 11,612 50代 91.2% 9,562 60代 86.6% 7,136 70代 80.9% 4,828 80歳〜 70.4% 携帯電話通信料 固定電話通信料 下段の%=携帯への集中度

出典:総務省「令和6年全国家計構造調査」政府統計コード0004039780を筆者が集計。総世帯・世帯主の性別平均・購入形態合計、収支項目「携帯電話通信料」「固定電話通信料」の1世帯1か月あたり金額。%は電話通信料合計に占める携帯の割合。

数字がはっきりしています。29歳以下の世帯は、固定電話通信料が月79円――事実上、固定電話を持っていません。電話に関する支出の98.8%が携帯です。30代でも98.4%。一方、80歳以上は70.4%で、固定電話が月2,026円分残っています。

🚨

若い世代ほど、番号を失ったときの「代わりの連絡手段」がない

SIMを奪われると、その番号での通話もSMSも攻撃者側に移ります。そのとき、契約している会社に連絡する電話がありません。固定電話がある世帯なら、そこから緊急停止を依頼できます。ところが29歳以下・30代の世帯には、その退路が事実上ありません。第8章の「別の電話から止める」という手順が、若い世代ほど難しいという構造的な問題です。家族の番号、勤務先の電話、公衆電話の場所――いざというときの代替手段を、いま決めておいてください。

金額の規模も押さえておきます。総世帯平均の携帯電話通信料は月8,637円。2025年国勢調査の全国世帯数57,124,507世帯で換算すると、日本の家計は携帯回線に年間およそ5.9兆円を払っている計算になります。それだけ払っている「回線」が、実は銀行口座の鍵を兼ねている――これがSIMスワップという問題の本質です。

📌

2026年4月、契約時の本人確認が制度ごと変わりました

非対面の携帯契約では、従来の「身分証を撮影して自撮りを送る」方式が2026年4月1日に廃止され、原則としてマイナンバーカード等のICチップ読み取り・公的個人認証を使う方式へ移行しました。偽造した免許証の画像だけで新規回線を作る攻撃は、以前より確実に難しくなっています。だからこそ攻撃側は「新規契約」から「既存契約の乗っ取り」へ移っています。この記事が壁3以降を重く見るのは、そのためです。

第2章 おわり — 大手4社の採点へ

CHAP3

第3章 / 全8章

大手4社を「7つの壁」で採点

キャリア決済まで含めた21点満点で、まず4社を並べます

大手4社はキャリア決済を提供しているので、壁7を含む21点満点で採点できます。

7つの壁ドコモauソフトバンク楽天モバイル
1. 契約時の本人確認AAAA
2. マイページへのログインABBC
3. SIM再発行時の本人確認AABB
4. eSIM転送・機種変更AABB
5. 店頭でのなりすまし対策BBAC
6. 異常操作の通知と回線停止AABA
7. キャリア決済被害の補償AAAD
参考スコア(A=3点)
20
19
17
12

A=強い/B=標準的・利用者の設定に依存/C=公開情報上、不明確または弱点あり/D=重大な制度上の穴。21点満点。2026年8月22日時点。

壁1|契約時の本人確認 ─ 4社ともA、しかも今年変わったばかり

ここは差がつきませんでした。第2章で触れたとおり、2026年4月1日から非対面契約の本人確認が制度ごと切り替わり、原則としてICチップ読み取り・公的個人認証が使われます。ソフトバンクは書類撮影方式の終了を明示し、楽天モバイルもICチップ方式へ変更しています。「4社ともA」は横並びに見えますが、1年前なら全社Bだったところです。

壁2|マイページへのログイン ─ ここが最大の差

4社の評価がいちばん割れたのがログインです。攻撃の第2ステップにあたり、ここを突破されなければSIM再発行にすら到達しません

A ─ パスキー必須化が可能

ドコモ(dアカウント)

「いつもパスキー設定」を有効にすると、パスワードによるログインそのものを止められます。端末の生体認証などが必須になり、偽サイトに誘導されても入力すべきパスワードが存在しません。ログイン通知と緊急アカウントロックも用意されています。

⚠ 注意利用者が設定していなければ、この強さは効きません
B ─ 2段階認証はあるが方式が弱い

au(au ID)

2段階認証は用意されていますが、中心は登録電話番号やメールへのURL・確認コードです。SMSを奪われたあとの防御としては、パスキーより弱くなります。つまりSIMを取られた後の二重防御にはなりにくいという順序の問題があります。

B ─ 基本はID・パスワード

ソフトバンク(My SoftBank)

ID・パスワードが基本で、メニューによってSMSやメールの追加認証が入ります。回線からWi-Fiを切ってアクセスすると自動ログインできる仕組みもあり、利便性は高い一方、認証条件の公開度は他社ほど高くありません。

C ─ 実際に突破された経緯あり

楽天モバイル(楽天ID)

共通の楽天ID・パスワードへの依存が比較的大きく、一般消費者向け楽天IDについて、ドコモのような普遍的なパスキー必須化は公開情報から確認できませんでした。2024年4月には、フィッシングで盗まれた楽天IDからeSIMが再発行された事例を楽天モバイル自身が公表し、2025年1月・3月にも同じ手口への注意喚起を繰り返しています

壁3・壁4|SIM再発行と機種変更 ─ 「旧端末を持っているか」がカギ

ここは4社とも一定の対策を持っていますが、思想が違います。

事業者SIM・eSIM再発行の条件評価の理由
ドコモ2024年8月7日から、SIMカード・eSIMの交換/再発行にパスキー設定が必須。現在使用中の端末以外からオンラインで手続きするには事前登録済みのパスキーが必要A ─ パスキー端末がなければオンライン再発行できない。壁2と壁3が連動している点が9社で最も強固
au物理SIMは原則店頭。通常のeSIM再発行も契約中のau回線からのアクセスを要求。紛失・故障時のオンラインeKYC再発行は現在停止し店頭対応A ─ 復旧経路をあえて店頭に寄せている。利便性を捨てて堅さを取った設計
ソフトバンク物理USIMは店頭再発行。eSIMはMy SoftBankから再発行できるB ─ オンライン取引時の認証条件が、公開ページ上ではドコモほど明確でない
楽天モバイル再発行時に既存回線宛てのSMSワンタイムパスワードを要求。旧端末が使えない場合は専用フォームと本人確認へB ─ 仕組みはある。ただし楽天モバイル自身が「電話でOTPを聞き出す攻撃」を警告しており、利用者がOTPを渡すと突破される

eSIM転送・機種変更では、ドコモとauが旧端末の所持・画面ロック解除・Bluetooth接続などを要求します。Apple経由の転送では同一Apple Accountや2要素認証も関わります。ソフトバンクと楽天モバイルもiPhoneのeSIMクイック転送に対応していますが、Androidでは対象端末や販売元による制限があります。

壁5|店頭でのなりすまし対策 ─ ここだけソフトバンクが抜けている

🏪

ソフトバンクの店頭ルールが、9社で最も明文化されています

現在の携帯電話で電話番号を確認し、端末を提示できない紛失・故障時や代理人手続きでは、「本人確認書類2点」または「本人確認書類+登録済みクレジットカード等」を要求すると公開しています。「今その番号の端末を持っていること」を確認するという発想は、書類だけを見る確認より一段強い考え方です。

ICチップによる本人確認は、auが2025年8月から導入し2026年度中の全店展開を目指す段階、ドコモは2026年8月20日から順次開始したばかりです。この記事の執筆時点では、両社ともまだ移行の途中なのでB評価としました。ここは半年後に評価が変わる可能性が高い項目です。

楽天モバイルは、店頭での再発行手続き自体は確認できるものの、端末所持確認・複数書類・ICチップ必須化といった追加措置を公開情報から確認できませんでした。これは「対策がない」という意味ではなく、公開上の透明性が低いという評価です。

壁6|異常操作の通知と回線停止 ─ 気づいてから止めるまでの速さ

ドコモはログイン通知・緊急アカウントロック・24時間の回線停止を備えます。auは回線に加えてau IDとau PAYまで同時に止められるのが特徴です。楽天モバイルもmy 楽天モバイルから即時停止でき、24時間受付の窓口があり、不審なSIM再発行では電話確認や手続き保留を行う場合があると説明しています。楽天モバイルが壁6でAなのは、この止める仕組みが具体的だからです。ソフトバンクも24時間停止できますが、SIM再発行完了通知などの公開説明は他社より少なめでした。

第3章 おわり — 次は格安SIM5社へ

CHAP4

第4章 / 全8章

格安SIM5社を同じ物差しで採点

大手より弱いだろう、という予想は外れました

比べたのは独立系MVNO5社です。大手のサブブランドを外した理由は第8章で書きます。結果から言うと、「格安SIMはセキュリティが弱い」という一般論は、少なくとも公開情報の上では成り立ちませんでした。

IIJmiomineo日本通信SIMBIGLOBEイオンモバイル
1. 契約時AAAAA
2. ログインBBA ※BB
3. SIM再発行CAA ※AA
4. eSIM・機種変更CAA ※AA
5. 店頭対策BBAAB
6. 通知・停止BAABA
7. 決済補償
18点満点
11
16
18
16
16

※ 日本通信SIMは「日本通信アプリへ移行済みの利用者」を前提とした評価です。旧日本通信IDのままの利用者は、メールOTPを使う従来方式が残るためB相当になります。
―=一般消費者向けの回線料金合算決済(キャリア決済)の提供を、現行の公式公開情報から確認できませんでした。

日本通信SIM ─ 電子証明書という別解(18/18)

🏆

ログインから契約管理までを、マイナンバーカード由来の証明書に統一

日本通信SIMは2026年6月11日提供開始のアプリ新バージョン(アプリ自体の提供開始は2025年6月)で、マイナンバーカードに基づく端末内の電子証明書を使う方式へ移行しました。アプリへのログインは生体認証またはPIN。PCのマイページもアプリでQRコードを読み取らなければログインできません。移行後は旧ID・パスワードではログインできなくなります。

この設計の何が強いかというと、「パスワード」という盗める文字列が、システムから消えている点です。フィッシングサイトを作っても、入力させるものがありません。機種変更時には電子証明書の再発行と認証の再登録が必要で、SIM・eSIMの再発行も同じマイページから行います。

さらに、契約・再発行を扱う実店舗がありません。第3章で見たとおり店頭は攻撃者にとって有力な迂回路ですが、そもそも店員を騙すという経路が存在しないのです。これは弱点の裏返しでもあります(対面サポートを受けられない)が、SIMスワップ耐性という一点では強みになります。

⚠ 二重構造が残っている点に注意

旧日本通信IDからアプリへ未移行の利用者は、メールOTPを使う従来方式が残ります。つまり同じ事業者の中に、強い経路と弱い経路が並んで存在している状態です。攻撃者は当然、弱いほうを狙います。日本通信SIMを使っているなら、アプリへの移行を今日済ませてください。移行していなければ、18点という評価はあなたには当てはまりません。

mineo ─ MVNOで唯一のパスキー対応(16/18)

eoIDはパスキー、SMS・メールによる2段階認証、ログイン通知・履歴に対応しています。eSIMへの変更・再発行には、既存回線へのSMS認証/ICチップ読み取り/公的個人認証のいずれかが必要です。紛失時はマイページまたは電話で24時間緊急停止できます。

ただしパスキーを設定しても、ID・パスワードでのログインが残ります。ドコモの「いつもパスキー設定」のようにパスワード経路を閉じられないため、2段階認証を併用しないと完全なフィッシング耐性にはなりません。壁2がBなのはこの理由です。店頭では再発行時に本人確認書類とeoID・パスワードを求めますが、ソフトバンクのような「現端末の所持確認+複数証明」の公開ルールまでは確認できませんでした。

BIGLOBEモバイル ─ 再発行は強い。IDは要注意(16/18)

eSIM再発行には、2026年4月1日から公的個人認証またはICチップ読み取り+容貌撮影による本人確認が必須化されています。これは携帯電話不正利用防止法の改正(同日施行)への対応で、BIGLOBE独自の上乗せではなく、法定要件を満たしたものです。物理SIMは窓口へ連絡し、登録住所にだけ発送されます。既存契約者のSIM再発行や変更を店頭で扱わないため、店頭なりすましの攻撃面が小さいのも評価点です。

🚨 重要:BIGLOBE IDのパスワード変更は必須と考えてください

BIGLOBE IDはパスワードが基本です。個人情報を扱う特定ページの初回アクセスでは、登録電話から指定番号へ発信する電話認証が必須ですが、毎回ではありません。加えて2026年6月23日に公表されたBIGLOBEメールへの不正アクセスでは、第二報(7月6日)でBIGLOBE ID 5,016,432件・パスワード 4,631,775件の流出が確認されました。原因は第三者製ソフトウェアの脆弱性で、未変更のパスワードは7月1〜9日に強制リセットされています。SIM再発行の手続きがどれだけ強くても、その手前のメールアカウントが復旧経路になっていれば、連鎖的に乗っ取られます。

イオンモバイル ─ 実被害を受けて、大幅に強化(16/18)

2025年10月、フィッシングで盗まれたID・パスワードから第三者がeSIMを再発行する事件が実際に発生しました。イオンモバイルはこれを公表し、その後に次の対策を追加しています。

イオンモバイルが事故後に追加した対策

  • eSIM再発行には2段階認証の設定が必須
  • 再発行の操作時にも、登録メールへの認証コードが必要
  • 音声eSIMの再発行では本人確認書類も必要
  • メールアドレスの変更にも、旧メール宛ての認証コードが必要
  • ログイン通知・eSIM再発行通知を自動送信

特に評価したいのが「メールアドレスの変更に旧メールの認証コードを要求する」点です。第5章で詳しく書きますが、攻撃者はまず通知先を自分のものに書き換えてから本命の操作をします。この順番を潰す対策は、9社を見渡しても明確に公開しているところが少なく、イオンモバイルの強みになっています。2段階認証はGoogle Authenticatorにも対応するため、SMSだけに依存しない設定も可能です。

ただし通常ログイン時の2段階認証は利用者が自分で設定する方式なので、未設定のアカウントはB評価にとどまります。

IIJmio ─ 契約時はAなのに、再発行に穴(11/18)

🚨 この記事で最も注意を要する公開仕様

IIJmioの公式FAQには、物理の音声・SMS対応SIMは再発行時に再度の本人確認が行われる場合があるのに対し、音声eSIMは再発行時の本人確認がないという違いが明記されています。

つまり、mioIDとパスワード、そして登録メールを奪われた場合、再発行を止めるものが利用者側の2段階認証設定しかありません。しかもその2段階認証(2026年6月10日開始のメール認証コード方式)は、既存のmioIDでは任意設定です(同日以降に作成された新規mioIDは初期状態で有効)。

契約時の本人確認は公的個人認証またはICチップ+顔照合に移行しており、9社の中でも強固な部類です。それだけに、入口を固めた一方で再発行の入口が開いているという非対称が際立ちます。加えてeSIMクイック転送に対応しておらず、機種変更は会員ページからの手動再発行になるため、壁4も同じ弱点を共有します。

🔧

IIJmioを使っているなら、今日やるべき2つ

メール認証コードによる2段階認証を必ず有効化する(2026年6月10日より前に作ったmioIDは任意設定なので、放置していれば無効のままです)。②登録しているメールアカウント自体にパスキーまたは認証アプリを設定する。②が抜けていると、①はメールを取られた時点で無意味になります。この2つで、公開仕様上の弱点はかなり埋められます。

第4章 おわり — 7つの壁では足りない理由へ

CHAP5

第5章 / 全8章

7つでは足りない|「15の壁」への拡張

SIM再発行だけ固めても、番号は3つの迂回路から奪えます

ここまでの7項目には、はっきりした偏りがあります。「SIMを再発行される瞬間」に集中しているのです。ところが攻撃者の目的はSIMの再発行ではなく、電話番号を自分の支配下に置くこと。手段は他にもあります。

🚪 電話番号を奪う4つのルート

① SIM・eSIMを再発行する 守るのは 壁3・壁4・壁12 ② パスワードを再設定する 守るのは 壁8・壁11 ③ MNPで番号ごと他社へ移す 守るのは 壁9・壁13 ④ 通知先メールを書き換える 守るのは 壁10・壁14 電話番号の支配 SMSが攻撃者に届く状態 =二段階認証の無効化 従来の「7つの壁」が守っているのは、実質①だけでした どのルートでも、着地点は同じ

とくに④は見落とされがちです。攻撃者はいきなりSIMを再発行しません。まず登録メールアドレスや通知先電話番号を自分のものに書き換え、あなたに通知が届かない状態を作ってから本命の操作をします。第4章でイオンモバイルの「メールアドレス変更にも旧メール宛ての認証コードを要求する」対策を高く評価したのは、この順番を潰しているからです。

追加する「8つの壁」

No.追加する比較項目確認すべきポイント
8アカウント復旧・パスワード再設定メールやSMSだけで復旧できないか。端末紛失時にコールセンターが迂回路にならないか
9MNP転出・番号移行の保護SIMを再発行せず、番号だけ他社に奪う攻撃。MNP予約番号発行時の再認証・SMS通知・保留時間
10メール・住所・支払方法の変更攻撃者が通知先を先に変更できないか。旧メール・旧電話番号への確認通知はあるか
11セッション・登録端末の管理ログイン履歴、信頼済み端末の一覧、全端末ログアウト、パスキー削除の履歴
12重要操作ごとの再認証ログイン済みでも、eSIM発行・MNP・住所変更などでパスキーや本人確認を再要求するか
13クールダウン・回数制限連続するeSIM再発行、連絡先変更直後のMNPなどを一時保留できるか
14侵害発生後の回復力回線・ID・決済の一括停止、電子証明書の失効、24時間窓口、転出処理の緊急保留
15事故公表・補償・責任分界実被害の公表、原因と再発防止策、決済以外の被害、利用者に過失がある場合の補償条件
🎯

この8つのうち、特に重いのは 8・9・10・12・14 です

SIMスワップ対策がどれだけ強くても、パスワード再設定やMNP転出が弱ければ、別ルートから電話番号を奪われます。「うちはeSIM再発行に公的個人認証を必須化しました」という発表を見たときは、MNP転出にも同じ強度がかかっているかを確認してください。同じ番号を動かす手続きなのに、統制の強さが揃っていない事業者が実際にあります。

壁13と壁15は、比較表に入れませんでした

正直に書きます。壁13(クールダウン・回数制限)は、9社すべてについて公開情報から判定できませんでした。「連続してeSIM再発行を試みたら止まるのか」「メールアドレスを変更した直後のMNP転出は保留されるのか」――こうした運用は、公開すると攻撃者にも手の内を明かすことになるため、開示されないのが普通です。

これ自体が発見でした。利用者から見ると、9社のうちどこも「連続操作を止める仕組みがあるかどうか」を確認できません。そして、これは金融機関の記事で見てきた不正検知の非公開性と同じ構造です。非公開だから無いとは言えない。しかし、あると期待して行動することもできない。だから利用者側でできること(第8章)が重要になります。

壁15(事故公表・補償・責任分界)は、表の記号では表せないため第7章で3件の実例として扱います。むしろこの項目は、事故を公表したかどうかで事業者の姿勢がいちばんよく見える部分です。

第5章 おわり — 追加項目で9社を比べ直します

CHAP6

第6章 / 全8章

追加8項目で9社を比べ直す

順位が動きます。とくにmineoとイオンモバイルが上がります

公開されている手続きに基づく暫定評価です。内部審査や不正検知エンジンまでは評価していません。◎=必須かつ比較的強い/○=対策あり。ただし設定・条件依存/△=メール・SMS・パスワードへの依存が大きい/?=公開情報だけでは確認不能

事業者壁8
復旧
壁9
MNP保護
壁10
連絡先変更
壁11
セッション管理
壁12
重要操作の再認証
壁14
緊急復旧
ドコモ
au
ソフトバンク
楽天モバイル
IIJmio
mineo
日本通信SIM
※移行済みの場合
BIGLOBEモバイル
イオンモバイル

※ 日本通信SIMは、マイナンバーカードを使った新アプリへ移行済みの場合の評価です。旧ID・パスワード利用者は全項目で評価が下がります。壁13(クールダウン・回数制限)と壁15(事故公表・補償)は第5章・第7章で別扱いにしています。

この軸で見えてくる、5つの違い

1

🟢 ドコモは「SIM再発行以外の出口」も塞いでいる

MNPの手続きにもパスキーなどの端末認証を求めています。同じ番号を動かす操作に、同じ強度の認証をかけているという一貫性が9社で最も明確です。第5章の図でいえば、①だけでなく③にも同じ鍵をかけている状態です。

2

🟩 auのMNPは、SMSが使えないと店頭に落ちる

MNP予約番号の発行には、au ID・暗証番号・対象回線へのSMSを組み合わせます。SMSを受信できない場合は店頭手続きになるため、番号移行の壁は強めです。壁3でオンライン再発行を止めているのと同じ思想で、「困ったらオンラインで解決させない」という設計が一貫しています。

3

🟨 楽天モバイルのMNPは仕組みはあるが、人を狙われると弱い

MNP時には登録メールまたは現在の回線へのワンタイムパスワードを要求します。仕組みとしては標準的です。ただし楽天モバイル自身が「電話でOTPを聞き出す攻撃」を警告しているとおり、利用者が口頭で番号を伝えてしまえば成立します。壁8(復旧)と壁10(連絡先変更)が△なのは、メール依存が大きいためです。

4

🔴 IIJmioは、同じ「番号移行」でも統制の強さが揃っていない

MNP番号の発行には1〜4日かかり、登録メールにも通知されます。時間がかかること自体が防御で、利用者に気づく余裕を与えます。ところが同じ会社の音声eSIM再発行は、公式FAQに本人確認を実施しないと明記されています。番号を動かすという意味では同じなのに、片方は数日かかり、もう片方は即時。攻撃者がどちらを選ぶかは考えるまでもありません。

5

🟦 mineoとイオンモバイルは、追加項目で評価が上がる

mineoはログイン履歴・信頼済み端末の管理が具体的で、eSIM再発行にSMS認証またはマイナンバーカードによる本人確認を求めます。イオンモバイルは連絡先変更に旧メールの認証コードを要求する唯一の◎。どちらも「ログイン後にもう一度確かめる」設計になっており、7項目だけの比較では見えなかった強さです。

⚠️

統制の非対称 ─ この記事で最も注意すべき考え方

同じ結果(電話番号の移動)をもたらす手続きなのに、経路によって認証の強さが違うことを統制の非対称と呼びます。IIJmioのMNP(数日+メール通知)と音声eSIM再発行(本人確認なし)はその典型です。攻撃者は必ず弱いほうを通ります。だから「うちは◯◯を必須化しました」という発表を見たときは、その◯◯を回避できる別の手続きが残っていないかを必ず確認してください。

セッション管理が「?」の会社が2社あります

ログイン履歴、信頼済み端末の一覧、全端末からのログアウト――これらは侵入されたあとに気づくための唯一の手がかりです。ところがauとソフトバンクは、公開情報からこの機能の有無を確認できませんでした

繰り返しますが、これは「無い」という意味ではありません。ただ、「自分のアカウントに知らない端末がログインしていないか」を利用者が自力で確認できるかどうかは、被害を早期に発見するうえで決定的です。契約している会社のマイページに、この一覧があるかどうかを一度探してみてください。

BIGLOBEの事例が示す、もう一つの連鎖

🚨 SIM手続きが強くても、メールが復旧経路なら意味が薄れる

BIGLOBEでは2026年6〜7月に、BIGLOBEメールへの不正アクセスによりBIGLOBE ID 約500万件・パスワード約463万件の流出が確認されたと公表されています。eSIM再発行には公的個人認証を必須化しているのに、その手前のメールアカウントが破られれば、パスワード再設定(壁8)と連絡先変更(壁10)から入り込めます。これは事業者を責める話ではなく、アカウントの強さは、それを復旧できる経路の強さでしか測れないという一般則です。あなたの携帯契約の登録メールが、無料メールのままになっていないか確認してください。

第6章 おわり — 実際の事故を3件見ます

CHAP7

第7章 / 全8章

実際に起きた3件の事故から学ぶ

壁15(事故公表と再発防止)は、記号では測れません

SIMスワップは理論上の脅威ではありません。日本の事業者で、実際に起きています。ここでは公表されている3件を、「何が破られ、その後どう変わったか」という視点で並べます。

2024〜2025年 ─ 楽天モバイル

楽天IDから eSIM が再発行された

フィッシングで盗まれた楽天IDを使い、第三者がeSIMを再発行した事例を、楽天モバイル自身が公表・注意喚起しました(2024年4月)。2025年1月・3月にも同じ注意喚起が繰り返されています。共通IDの一点突破という、この記事の第1章で指摘した構造がそのまま現実になった形です。

破られた壁壁2(ログイン)→ 壁3(再発行)
その後再発行時のOTP要求、不審手続きの電話確認・保留を整備
2025年10月 ─ イオンモバイル

ID・パスワード窃取からの eSIM 不正再発行

フィッシングで盗まれたID・パスワードから、第三者がeSIMを再発行する事件が発生。イオンモバイルは事実を公表したうえで、再発防止策を具体的に列挙しました。第4章のとおり、対策の中身は9社で最も詳細です。

破られた壁壁2(ログイン)→ 壁3・壁4(再発行)
その後再発行に2段階認証を必須化、旧メールへの変更確認、通知の自動送信
2026年 ─ BIGLOBE

メールへの不正アクセスで ID・PW 約500万件が流出

第三者製ソフトウェアの脆弱性を突かれ、BIGLOBE ID 5,016,432件・パスワード 4,631,775件の流出が確認されました(第一報2026年6月23日、第二報7月6日)。回線手続きそのものではなく、その手前の復旧経路が破られたケースです。

破られた壁壁8(復旧経路)・壁10(連絡先)の土台
その後未変更パスワードを7月1〜9日に強制リセット。利用者側の変更は必須

3件に共通する形

🔁 事故はいつも同じ順番で起きています

フィッシング ID・パスワードが漏れる パスワード認証 それだけで通ってしまう eSIM再発行 再認証がなければ即成立 番号を奪われる SMS認証がすべて無効に 3件とも、途中に「もう一度確かめる」工程がありませんでした 対策の本質は、壁12(重要操作ごとの再認証)を入れること ログインを通しても、再発行のときにもう一度本人確認を要求すれば連鎖は切れます

3件とも「パスワードだけで通れる入口があり、その先に再確認がなかった」という形です。だから対策も共通しています。ログインを強くする(壁2)か、ログイン後の重要操作でもう一度確かめる(壁12)か、そのどちらかです。

この観点で見ると、ドコモの「パスキーがなければオンライン再発行できない」という設計は、2つを同時に満たしています。日本通信SIMの電子証明書方式も同様です。イオンモバイルの「再発行時にも認証コードを要求する」は壁12だけを追加した形で、既存の仕組みを変えずに連鎖を切る現実的な解といえます。

壁15:事故を公表したことは、減点ではなく加点です

📢

「事故を起こした会社=危ない会社」ではありません

この章で名前を挙げた3社は、いずれも自ら事実を公表しています。とくにイオンモバイルは、被害の内容だけでなく再発防止策を項目ごとに列挙しました。公表しない事業者に事故が無いわけではありません。むしろ、公表と改善の記録がある事業者は、次に何かあったときも同じように扱ってくれる可能性が高い。この記事でイオンモバイルの評価が16点まで上がっているのは、事故後の改善が具体的だからです。

逆に、この項目でいちばん評価しにくいのは「公開情報が少ない事業者」です。楽天モバイルの店頭対策を第3章でCとしたのも、対策が無いと判断したからではなく、確認する材料が公開されていないからでした。透明性そのものが、利用者にとってのセキュリティ機能だと考えてください。

第7章 おわり — 最後に、今日の行動へ

CHAP8

第8章 / 全8章

今日やる設定と、次に調べる5社

乗り換えより先に、いまの契約でできることがあります

ここまで9社を比べてきましたが、結論は「点数の高い会社に乗り換えましょう」ではありません。第1章で見たとおり、多くの会社の弱点は「利用者が設定していない機能がある」ことでした。設定さえすれば、評価はそのまま上がります。

今日やる7つの設定(所要20分)

上から順に、効果の大きい順です

  • 契約者マイページにパスキーまたは認証アプリを設定する。ドコモなら「いつもパスキー設定」でパスワード経路そのものを閉じられます。日本通信SIMなら新アプリへの移行を今日済ませてください
  • 登録メールアドレスを確認し、そのメールにもパスキーか認証アプリを設定する。携帯契約の強さは、復旧経路の強さで頭打ちになります(第6章)
  • 使っていないキャリア決済を停止するか、上限を最小にする。楽天モバイルは初期状態で利用可能になる場合があります。使わないなら無効化を
  • 二段階認証をSMSから認証アプリまたはパスキーへ移す。銀行・証券・主要サービスから順に。SIMを奪われた瞬間、SMS認証は攻撃者の道具になります(第2章)
  • マイページのログイン履歴・信頼済み端末の一覧を探して、知らない端末がないか見る。見つからない会社もありますが、あるなら月1回の習慣に
  • 登録している住所・支払方法・通知先が最新か確認する。攻撃者が書き換える前に、正しい状態を把握しておくこと自体が防御です
  • 「圏外になったとき、どの電話から連絡するか」を決めておく。第2章のとおり、29歳以下の世帯には固定電話がほぼありません。家族の番号、勤務先、最寄りの公衆電話を今日確認してください

突然圏外になったら、故障と決めつけない

🚨 最初の30分が勝負です

再起動しても圏外のままなら、SIMスワップを疑ってください。第2章の図のとおり、あなたが圏外になった時点で攻撃はステップ③まで進んでいます。④と⑤はすぐそこです。

1

📞 別の電話から、回線を止める

家族の携帯でも、勤務先の電話でも、公衆電話でも構いません。9社とも24時間受付の停止窓口を持っています。Wi-Fiにつながっていればマイページやアプリから停止できる会社もあります(ドコモ・楽天モバイル・mineo・イオンモバイルなど)。

2

🔒 キャリアIDと決済を止める

回線だけ止めても、アカウントは生きています。auならau IDとau PAY、ドコモならdアカウントの緊急ロック。回線・ID・決済は別々に止める必要があると覚えておいてください。

3

🏦 銀行・証券に連絡する

SMS認証を突破された前提で動きます。出金の停止、パスワードの変更、ログイン履歴の確認。「まだ被害が出ていないから」と待たないでください。攻撃者は数時間単位で動きます。

4

🚓 警察に届け出て、記録を残す

キャリア決済の補償を受けるには、大手3社とも警察への届出・速やかな申告・書類提出が条件になります。いつ圏外になったか、いつ誰に連絡したかを時系列でメモしておいてください。後から思い出しても正確さで負けます。

次に調べるべき5社 ─ サブブランドを別枠にした理由

この記事では独立系MVNO5社を選び、大手のサブブランドを外しました。ただし、次の5つは別途調べる価値が高いと考えています。

📱 ドコモ系

  • ahamo ─ 店頭サポートが有償・限定。dアカウントは共通だが手続き導線が別

📱 au系

  • povo2.0 ─ 完全オンライン専用。アプリ中心の設計
  • UQ mobile ─ 店頭あり。au IDを共有

📱 ソフトバンク系

  • LINEMO ─ オンライン専用
  • Y!mobile ─ 店頭あり。My SoftBankとは別導線
💡

「大手のセキュリティをそのまま継承している」とは限りません

同じネットワークを使っていても、店頭支援の有無、専用アプリ、アカウント復旧の導線、eSIM再発行の手順、MNPの手続きが違います。たとえばオンライン専用ブランドは店頭なりすまし(壁5)の攻撃面がゼロになる一方、紛失時にオンラインでしか復旧できないため壁8の重みが増します。親会社の評価を子ブランドに転用するのは誤りです。

最終的には15項目 × 14社の構成にし、さらに各項目を「必須の仕組み」「利用者が任意で有効化する設定」「非公開・確認不能」に分けて評価するのが正確だと考えています。総合点だけでなく、この記事で使った最弱リンク評価を併記すれば、SIM乗っ取り耐性はもっと正しく見えるはずです。

✅ この記事の要点を3行で

①電話番号は連絡先ではなくあらゆるアカウントの合鍵で、29歳以下の世帯は電話支出の98.8%が携帯=代わりの連絡手段がない。②9社の比較では日本通信SIM18点・ドコモ17点が上位だが、大事なのは総合点ではなく最弱リンク(IIJmioの音声eSIM、楽天モバイルの楽天ID)。③守りの本質は壁2(パスワード経路を閉じる)と壁12(重要操作でもう一度確かめる)の2つに集約される。

第8章 おわり — FAQへ

FAQ?

よくある質問

この記事に寄せられそうな疑問

採点の前提と、読み間違えやすい点について

日本通信SIMが1位ということは、乗り換えたほうがいいですか?

そうとは限りません。18点という評価は「新アプリへ移行済みの利用者」に限った条件付きです。旧ID・パスワードのままならB相当まで落ちます。また、実店舗が無いことはSIMスワップ耐性では強みですが、対面サポートを受けられないという別のコストでもあります。いま使っている会社でパスキーと二段階認証を設定するほうが、乗り換えより確実に効きます。

格安SIMのほうが点数が高いのは意外です。本当ですか?

この採点の対象が「公開されている利用者向けの手続きと設定」だけだからです。大手は不正検知や審査に大きな投資をしていますが、その中身は非公開なので評価に入っていません。逆に言えば、MVNOは公開されている手続きの強さで勝負するしかないため、要件が明文化されやすい面があります。この点数を「実際の安全性ランキング」と読まないでください。

キャリア決済がないMVNOなら、SIMを奪われても被害は小さいですか?

キャリア決済の被害はゼロになりますが、それは出口の一つにすぎません。本命は第2章のとおり、SMSで通る二段階認証です。銀行・証券・フリマ・各種サービスのアカウント復旧が、電話番号を持っている人に開かれてしまう。この危険は大手もMVNOもまったく同じです。MVNOの利点は被害の上限が下がることであって、乗っ取られにくさではありません。

楽天モバイルのDという評価は厳しすぎませんか?

Dをつけたのは壁7(キャリア決済の補償)の1項目だけです。理由は、他3社が明記している「第三者による不正利用の補償」に相当する制度を、公開情報から確認できなかったためです。キャリア決済のFAQも、身に覚えのない請求について「楽天モバイルでは原因の確認ができない」としてGoogle Playストアへの問い合わせを案内するにとどまります。ただし用途はGoogle Playストア内の購入のみ(iPhoneでは利用不可)で、月額の利用上限もあり、被害の上限は構造的に小さめです。また楽天モバイルには「フリー保険」が付帯し、盗難・紛失による楽天ペイ/楽天Edyの不正利用を最大5,000円まで補償します(これはキャリア決済の補償ではありません)。一方、壁6(通知と停止)はAで、24時間受付の停止窓口と不審手続きの保留は具体的に整備されています。会社全体の評価ではなく、項目ごとの評価として読んでください。楽天モバイルを使うなら、まずキャリア決済を無効化するか上限を下げるのが実務的な対応です。

ドコモとauの店頭がBなのは、なぜですか?

移行の途中だからです。ICチップによる店頭本人確認は、auが2025年8月から導入して2026年度中の全店展開を目指す段階、ドコモは2026年8月20日から順次開始したばかりです。すべての店舗で運用が揃うまでは、店舗によって強度が違う可能性があります。この項目は半年後に評価が変わる見込みが高いので、記事の更新時に見直します。

「?」や「―」は、対策していないという意味ですか?

違います。「公式に開示された情報からは確認できなかった」という意味です。壁13(クールダウン・回数制限)にいたっては、9社すべてが「?」でした。こうした運用は公開すると攻撃者に手の内を明かすことになるため、開示されないのが普通です。ただし利用者の立場では、期待して行動することもできないのが実情です。だから第8章の自衛策が重要になります。

eSIMは物理SIMより危険なのでしょうか?

技術そのものが危険なわけではありません。問題は「オンラインだけで完結してしまう」点です。物理SIMは郵送か店頭受け取りが必要で、そこに時間と対面確認が入ります。eSIMは即時発行できるぶん、再発行時の認証が弱いと、そのまま即座に乗っ取りが成立します。IIJmioの物理SIMとeSIMの扱いの差(第4章)が、まさにこの構造を示しています。eSIMを使うなら、その事業者の再発行条件を必ず確認してください。

FAQ おわり — 出典と関連記事へ

出典(2026年8月22日時点)

  • デジタル庁「非対面の本人確認手法の見直し」および携帯電話不正利用防止法に基づく本人確認方法の変更(2026年4月1日施行)
  • 総務省統計局「令和6年全国家計構造調査」政府統計コード0004039780(世帯の種類・世帯主の年齢階級・世帯主の性別・購入形態別1世帯当たり1か月間の支出)= 携帯電話通信料/固定電話通信料を筆者集計
  • 総務省統計局「令和7年国勢調査」政府統計コード0004050417(人口・世帯数)= 全国世帯数57,124,507世帯
  • NTTドコモ「dアカウントのセキュリティ」「いつもパスキー設定」「緊急アカウントロック」、ドコモオンラインショップのSIM/eSIM再発行条件(2024年8月7日〜パスキー必須)、ニュースリリース「全国のドコモショップおよびドコモ取扱店で、本人確認書類のICチップを活用した本人確認を開始」(2026年8月12日発表/8月20日〜順次)
  • KDDI/au「au IDの2段階認証」「物理SIMの再発行」「紛失時のeSIM再発行」「MNP予約番号の発行手続き」、KDDI News Room「店頭契約時のICチップ読取による本人確認強化を開始」(2025年8月1日開始、2026年度末までにau Style・auショップ・UQスポット全店へ展開予定)
  • ソフトバンク「My SoftBankの安全対策」「eSIMの再発行」「本人確認書類(店舗)」(現在の携帯電話での電話番号確認、故障・紛失時の本人確認書類2点または支払先設定済みカードの提示)「携帯電話不正利用防止法に基づく本人確認方法の変更」
  • 楽天モバイル「SIM再発行の手順」「my 楽天モバイルからの利用停止」「楽天モバイルキャリア決済」「重要事項説明書」、eSIM不正再発行に関する注意喚起(2024年4月/2025年1月/2025年3月)
  • IIJmio「IIJmio本人確認手続きの変更のお知らせ」「メールによる二段階認証導入開始について」(2026年6月10日)「SIMカードのサイズ変更・再発行・SIMプロファイル再発行はできますか」「MNP転出手続き」に関する公式FAQ
  • mineo「eoIDのパスキー・2段階認証」「SIM/eSIMの変更・再発行」「緊急停止のお手続き」「店舗でのお手続きに必要なもの」、Google Play向けキャリア決済の提供終了(2024年3月31日)
  • 日本通信「日本通信アプリについて」「利用規約」「機種変更・SIM/eSIM再発行」に関する公式FAQ、および「FPoSに対応した『日本通信アプリ』を提供開始」(2026年6月11日)
  • BIGLOBE「BIGLOBEモバイル Webからのお申し込み時における、新たな本人確認手続きの導入について」(2026年4月1日〜必須化)「SIMカードの再発行」「電話認証」「店舗での取扱範囲」、ビッグローブ「『BIGLOBEメール』への不正アクセス発生のお詫びとご報告」第一報(2026年6月23日)・第二報(2026年7月6日)
  • イオンモバイル「不正なeSIM再発行に関するお知らせと再発防止策」(2025年10月)「回線停止のお手続き」

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