年収が高いほどフィッシング被害は多い?年齢をそろえて数え直した

数え直しシリーズ / 総務省 通信利用動向調査

年収が高いほどフィッシング被害は多い?年齢をそろえて数え直した

3万5千人の回答を、世帯ではなく1人ずつ、年齢をそろえて数え直しました。

フィッシング 世帯年収 年齢調整 迷惑メール 一次データ

先に結論

  1. 世帯で数えると、年収が高いほど被害は増えて見えます。年収200万円未満の世帯は10.0%、600〜800万円の世帯は15.7%でした。
  2. 1人ずつ数えると、ほぼ平坦です。年収2,000万円未満の7つの区分は、すべて8.6〜9.8%に収まりました。
  3. 世帯で見えた差の半分ほどは「年齢」で説明できます。年収の低い世帯ほど世帯主が高齢で、高齢の人はもともと被害の報告が少ないからです。
  4. 迷惑メールは年収が高いほど多く届きますが、被害の率は上がりません。届く量と、だまされる量は別のものでした。
  5. 例外は年収2,000万円以上の人です。年齢から予想される9.4%に対して、実際は17.1%でした。ただし回答者は468人で、理由はこのデータからは分かりません。

フィッシングのニュースを見ると、こんな考えが浮かびませんか。「狙われるのはお金持ちでしょう」「うちは取られるほどのお金がないから大丈夫」「いや、むしろ年収が低い人のほうがだまされやすいのでは」。

どれも、もっともらしく聞こえます。では、実際のデータはどう言っているのでしょうか。

総務省の「通信利用動向調査」には、回答者の世帯年収と、フィッシングなどの被害を受けたかどうかが一緒に記録されています。当サイトでは以前、この調査の世帯単位の表を使って、年収とセキュリティ対策・被害の関係を紹介しました。そこでは「年収が高い世帯ほど、何かしらの被害を経験している」という結果でした。

今回は同じ調査を、1人ずつの表で数え直します。そのうえで、年齢の違いを取り除きます。すると、見え方がかなり変わりました。

⚠ 注意:この記事の「被害」は、本人の申告です

調査の質問は「情報通信機器の利用の際の被害等の状況」で、選択肢の1つが「フィッシング」です。お金を取られたかどうかは聞いていません。偽サイトに誘導された経験も、本人が被害と考えれば含まれる可能性があります。また、総務省が公表しているのは「年収別」と「年齢別」の集計表で、年齢と年収を掛け合わせた表はありません。この記事の年齢調整は、公表表から組み立てた推計です。因果関係ではなく、傾向として読んでください。

CHAP1

第1章 / 全8章

世帯で数えると、年収とともに増える

まず、前回の記事と同じ数え方から始めます。世帯で数えるというのは、家族の誰か1人でもフィッシングの被害を受けていれば、その世帯を「被害あり」と数える方法です。

たとえるなら、家族の誰か1人でも風邪をひいたら、その家を「風邪の家」と数えるようなものです。1人暮らしの家と、ネットをよく使う若い家族が何人もいる家では、「風邪の家」になる確率がそもそも違うかもしれません。この数え方のくせが結果にどう効くかは、あとで確かめます。

世帯年収回答世帯数フィッシング被害あり(世帯)世帯主が70歳以上の割合
200万円未満1,84410.0%51.8%
200〜400万円4,16212.6%45.1%
400〜600万円3,37713.0%24.1%
600〜800万円2,57215.7%15.4%
800〜1,000万円1,70714.2%11.0%
1,000〜1,500万円1,29215.0%8.2%
1,500〜2,000万円28614.6%13.3%
2,000万円以上15626.8%12.2%
全体15,66013.6%―
出典:総務省「令和7年通信利用動向調査」世帯編 世11表(被害の状況)、世5表(世帯主年齢別の年収分布)から当サイト計算。対象は少なくとも1人がインターネットを利用した世帯。

年収200万円未満の10.0%から、600万円台の15.7%まで、はっきり上がっています。前回の記事の結論どおりです。

ただ、右の列を見てください。年収200万円未満の世帯は、半分以上(51.8%)が世帯主70歳以上です。1,000〜1,500万円の世帯では8.2%しかいません。年収の区分は、そのまま年齢の区分にもなっているのです。

ここでの問い

年収が上がると被害が増えるのは、お金があるから狙われるのか。それとも、年収の高い世帯には若い人が多いだけなのか。この2つを分けるには、1人ずつ数えて、年齢をそろえる必要があります。

第1章 おわり
CHAP2

第2章 / 全8章

1人ずつ数えると、ほぼ平坦

通信利用動向調査には、世帯の表とは別に世帯構成員(1人ずつ)の表があります。こちらは「過去1年間にインターネットを利用した人」3万5,794人が対象で、「その人自身がフィッシングの被害を受けたか」を数えています。所属する世帯の年収ごとに並べると、次のようになりました。

世帯年収世帯で数える1人ずつ数える回答者数(1人ずつ)
200万円未満10.0%8.7%2,609
200〜400万円12.6%9.2%7,701
400〜600万円13.0%8.9%7,786
600〜800万円15.7%9.6%6,843
800〜1,000万円14.2%8.6%4,983
1,000〜1,500万円15.0%8.9%3,932
1,500〜2,000万円14.6%9.8%874
2,000万円以上26.8%17.1%468
全体13.6%9.3%35,794
出典:総務省「令和7年通信利用動向調査」世帯編 世11表、世帯構成員編 構21表。

1人ずつ数えると、年収2,000万円未満の7つの区分は8.6%から9.8%のあいだに収まります。いちばん低いのは800〜1,000万円の8.6%で、200万円未満(8.7%)とほとんど同じです。年収とともに上がる、という形は見えません。

どの区分でも、世帯で数えた率のほうが1人ずつの率より高くなります。これは第1章の「風邪の家」の数え方なので、当然です。問題は、その開きが年収の低い区分では小さく(10.0%と8.7%)、600万円台では大きい(15.7%と9.6%)ことです。

この開きの理由として、まず疑うべきなのが年齢です。年収の低い世帯は世帯主が高齢で、高齢の人は被害の報告が少ない。次の章で、年齢の影響を取り除いてみます。

前回の記事とのちがい

前回の「セキュリティ対策はお金次第?」は世帯の表を使っていたので、「年収が高い世帯ほど被害を経験している」という読み方になりました。数字は正しいのですが、「1人あたりの危なさ」とは別の話です。今回の記事は、その続きにあたります。

第2章 おわり
CHAP3

第3章 / 全8章

年齢をそろえる方法

1人ずつ数えても、年齢の違いは残っています。年収の低い区分には高齢の人が多く、高い区分には働き盛りの人が多いからです。そして、フィッシングの被害の報告は年齢でかなり違います。

年齢フィッシング被害あり迷惑メールを受信
6〜12歳1.6%14.0%
13〜19歳4.3%47.1%
20代8.7%67.2%
30代11.5%71.8%
40代12.2%74.7%
50代11.4%75.9%
60代10.3%70.8%
70代6.8%55.8%
80歳以上5.9%40.1%
出典:総務省「令和7年通信利用動向調査」世帯構成員編 構21表。対象は過去1年間にインターネットを利用した人。

いちばん多いのは40代の12.2%、80歳以上は5.9%で、ほぼ半分です。高齢の人は迷惑メールの受信も少なく、以前の記事で見たとおり、この年齢差の多くは「届く量」の差でした。

そこで、間接法と呼ばれる方法で年齢をそろえます。考え方は、学校のテストの平均点にたとえると分かりやすいです。

たとえ:2つの学校の平均点をくらべる

A校は3年生ばかり、B校は1年生ばかりだとします。3年生のほうが点数が高いのは当たり前なので、平均点をそのまま比べても「どちらの教え方がよいか」は分かりません。そこで「もしA校の生徒が、全国の学年ごとの平均点どおりに取ったら何点になるか」を計算し、これをA校の予想点にします。実際の点数が予想点より高ければ、学年構成では説明できない「何か」がA校にある、と考えます。

今回の計算もこれと同じです。手順は3つです。

手順やること使った表
1年齢ごとの被害率を出す(上の表)構21表
2年収の区分ごとに、どの年齢の人が何割いるかを出す構6表+年齢別のネット利用率
31と2を掛け合わせて「年齢構成だけから予想される被害率」を出し、実際の率と比べる当サイト計算

手順2で使う構6表は、ネットを使っていない人も含めた全回答者の年収分布です。被害の表はネットを使った人だけが対象なので、年齢ごとのネット利用率(80歳以上は37.1%、30代は98.6%など)を掛けて、「ネットを使う人」の年齢構成に近づけました。利用率は令和8年版情報通信白書の2025年の値です。

こうして出した各区分の年齢構成を見ると、違いは大きく、年収200万円未満の区分では70歳以上が38.6%、1,000〜1,500万円の区分では4.5%でした。

第3章 おわり
CHAP4

第4章 / 全8章

予想との差は、ほぼゼロ

計算の結果です。「予想」は年齢構成だけから予想される被害率、「差」は実際の率から予想を引いたものです。差がプラスなら、年齢では説明できない分だけ多いことになります。

世帯年収実際(1人ずつ)年齢からの予想差70歳以上の割合
200万円未満8.7%8.8%−0.138.6%
200〜400万円9.2%9.0%+0.231.8%
400〜600万円8.9%9.4%−0.514.8%
600〜800万円9.6%9.4%+0.28.6%
800〜1,000万円8.6%9.3%−0.76.1%
1,000〜1,500万円8.9%9.4%−0.54.5%
1,500〜2,000万円9.8%9.3%+0.55.3%
2,000万円以上17.1%9.4%+7.76.0%
出典:総務省「令和7年通信利用動向調査」世帯構成員編 構21表・構6表、令和8年版情報通信白書(年齢別ネット利用率)から当サイト計算。差の単位はポイント。

年収2,000万円未満の7区分では、予想との差はすべて±0.7ポイント以内でした。年齢構成が分かれば、年収の区分ごとの被害率はほぼ当てられる、ということです。言いかえると、年齢をそろえた後に、年収そのものが被害率を押し上げている形跡は見当たりません。

年齢からの予想そのものも、8.8%から9.4%と幅が小さいのが特徴です。高齢の人が多い区分は予想が少し下がり、働き盛りが多い区分は少し上がる。その程度の違いしかありません。

世帯の表でも同じ計算をしてみました。こちらは世帯主の年齢で調整しています。

世帯年収実際(世帯)世帯主の年齢からの予想差
200万円未満10.0%12.0%−2.0
200〜400万円12.6%12.4%+0.2
400〜600万円13.0%13.6%−0.6
600〜800万円15.7%14.1%+1.6
800〜1,000万円14.2%14.4%−0.2
1,000〜1,500万円15.0%14.5%+0.5
1,500〜2,000万円14.6%14.1%+0.5
2,000万円以上26.8%14.1%+12.7
出典:総務省「令和7年通信利用動向調査」世帯編 世11表・世5表から当サイト計算。

200万円未満と1,000〜1,500万円をくらべると、実際の差は5.0ポイント(10.0%→15.0%)、世帯主の年齢からの予想の差は2.5ポイント(12.0%→14.5%)です。世帯で見えた上がり方の半分ほどは世帯主の年齢で説明でき、残りの半分は説明しきれません。

ここで大事なのは、1人ずつの表では差がほぼゼロになることです。世帯の表に残った差は「1人あたりの危なさ」ではなく、世帯という数え方の側にある何かだと考えられます。ただ、その「何か」が何なのかは、公表表からは突き止められませんでした(第8章で、確かめて外れた候補を紹介します)。

第4章 おわり
CHAP5

第5章 / 全8章

届く量は増えても、被害は増えない

同じ計算を「迷惑メール・架空請求メールを受信」でもやってみました。こちらは結果がまったく違います。

世帯年収迷惑メール受信(実際)年齢からの予想差フィッシング÷迷惑メール
200万円未満55.4%62.2%−6.80.157
200〜400万円61.2%63.4%−2.20.150
400〜600万円64.4%64.9%−0.50.138
600〜800万円64.7%64.1%+0.60.148
800〜1,000万円65.6%63.7%+1.90.131
1,000〜1,500万円68.9%64.5%+4.40.129
1,500〜2,000万円68.1%64.7%+3.40.144
2,000万円以上71.6%64.8%+6.80.239
出典:総務省「令和7年通信利用動向調査」世帯構成員編 構21表・構6表から当サイト計算。右端は「フィッシング被害あり」の率を「迷惑メール受信」の率で割った値(全体は0.145)。

迷惑メールは、年齢をそろえた後でも、年収が上がるほど多く届いています。200万円未満は予想より6.8ポイント少なく、2,000万円以上は6.8ポイント多い。きれいな右上がりです。

ところが、フィッシングの被害は第4章で見たとおり平坦でした。届く量が増えているのに、被害の率は増えていない。右端の列はそれを1つの数字にしたもので、迷惑メールが届く率に対するフィッシング被害の率は、年収が上がるにつれて0.157から0.129へと、むしろ下がっていきます。

なぜ年収が高いと迷惑メールが多く届くのか。仕事用とプライベート用でメールアドレスを複数持っている、ネット通販や会員サービスにたくさん登録している、といった「アドレスが出回る機会の多さ」が考えられます。ただ、これも調査からは確かめられない推測です。

もう1つ考えておくべきなのは、「迷惑メールを受信した」と答えるかどうかも本人の判断だという点です。迷惑メールに気づきやすい人ほど「受信した」と答え、同時に引っかかりにくい、という可能性もあります。どちらの読み方でも、届く量と、だまされる量は同じではないことには変わりません。

あわせて読みたい

年齢でも同じことが起きていました。高齢の人の被害が少ないのは、警戒心が強いからではなく、迷惑メールが届く量が少ないからです。高齢者のフィッシング被害は少ない?年齢差の正体を統計で検証

第5章 おわり
CHAP6

第6章 / 全8章

2,000万円以上だけの例外

ここまでの話に、1つだけ当てはまらない区分があります。世帯年収2,000万円以上です。

数え方実際年齢からの予想差回答数単純計算の幅(95%)
1人ずつ17.1%9.4%+7.7468人13.7〜20.5%
世帯26.8%14.1%+12.7156世帯19.8〜33.8%
出典:総務省「令和7年通信利用動向調査」から当サイト計算。幅は回答数と率だけから出した単純な目安で、調査の重み付けは考慮していません。

1人ずつで見ても、年齢からの予想のほぼ2倍です。回答者は468人と少ないので、数字はかなり揺れます。それでも単純計算の幅の下限(13.7%)は、ほかのどの区分(最大9.8%)よりも上にあります。偶然だけで片づけるのは難しい差です。

しかも、この区分で多いのはフィッシングだけです。

項目(2,000万円以上・1人ずつ)実際年齢からの予想差
フィッシング17.1%9.4%+7.7
迷惑メール受信71.6%64.8%+6.8
ウイルス感染9.2%7.8%+1.4

迷惑メールの差(+6.8)は、予想64.8%に対する割合で見れば1割ほどの上乗せです。フィッシングは予想の約1.8倍。ウイルス感染はほとんど予想どおりです。「この区分の人は何でも多めに答える」というだけなら、ウイルス感染も高くなるはずなので、その説明は当てはまりにくいと言えます。第5章の右端の比率も、この区分だけ0.239と跳ね上がっていました。届く量が少し多いだけでなく、届いたものが被害につながる割合も高いということです。

理由として考えられるものを並べます。どれもこのデータでは確かめられない仮説です。

仮説中身このデータで言えること
金融資産を狙った誘導2025年は証券会社をかたるフィッシングが急増した年。証券口座を持つ人ほど、本物そっくりの誘導に出会う機会が多い証券口座の有無は調査にない
使うサービスの多さカード・銀行・証券・会員サービスが多いほど、「それっぽい」偽メールが当たる確率が上がる利用サービス数は調査にない
気づきやすさ明細や通知をよく見ているため、被害に気づいて申告しやすい申告のしやすさは測れない
たまたま回答者468人の揺れ幅の下限でもほかの区分より高い

1つ目の仮説に関係する2025年の動きは、証券口座フィッシングは1か月で600倍|2025年詐欺レポートで詳しく扱っています。

どの仮説が正しいにせよ、言えることは1つです。「年収が高いほど危ない」のではなく、「年収2,000万円以上の層だけが、別の理由で目立って高い」。この2つは、対策の考え方がまったく違います。

第6章 おわり
CHAP7

第7章 / 全8章

年収は「財布の大きさ」ではない

「うちは年収が低いから、取られるお金もない」。この考えも、データで確かめておきます。使うのは総務省の家計調査(2025年、二人以上の世帯)です。世帯を年収の順に5つのグループ(五分位)に分け、それぞれの貯蓄を比べています。

年収のグループ年収世帯主の年齢普通預金など定期預金など貯蓄の合計負債
いちばん低い268万円71.8歳563万円527万円1,552万円77万円
2番目416万円66.9歳594万円609万円1,917万円241万円
まん中588万円57.1歳646万円541万円2,009万円683万円
4番目809万円52.3歳690万円381万円1,939万円1,037万円
いちばん高い1,324万円52.4歳1,057万円498万円2,878万円1,335万円
出典:総務省「家計調査 貯蓄・負債編」2025年 二人以上の世帯、年間収入五分位階級別(e-Stat 統計表ID 0002210012)。普通預金など=通貨性預貯金、定期預金など=定期性預貯金。

年収がいちばん低いグループの年収は268万円ですが、貯蓄は1,552万円、年収の約5.8倍あります。世帯主の平均年齢は71.8歳で、年金で暮らしながら、それまでの蓄えを持っている世帯が多いと考えられます。

預貯金(普通預金などと定期預金などの合計)で比べると、下から4つのグループは1,071万〜1,203万円で、ほとんど変わりません。年収が3倍違っても、銀行口座に入っているお金はほぼ同じなのです。貯蓄から負債を引いた額では、年収いちばん低いグループ(1,475万円)が4番目のグループ(902万円)を上回っています。

フィッシングで狙われるのは、銀行やカード、証券の口座の中身です。年収ではありません。そして口座の中身は、年収ほどには差がないのです。

🚨 重要:「うちは狙われるほどお金がない」は通用しません

フィッシングの偽メールやSMSは、相手の年収を見て送られてくるわけではありません。大量に送って、引っかかった人の口座から取れるだけ取るのが基本の手口です。家計調査では、年収の低い世帯でも1,000万円を超える預貯金を持っているのが平均的な姿でした。年収が低いこと、年金暮らしであることは、安全の理由になりません。特に高齢の家族がいる場合、届く量が少ないぶん「慣れていない」ことも考えて、家族で声をかけ合ってください。

なお、家計調査は二人以上の世帯が対象で、年収の区切り方も通信利用動向調査とは違います。2つの調査を同じ人で結びつけているわけではない点には注意してください。

第7章 おわり
CHAP8

第8章 / 全8章

この数え方の限界と、やること

この記事の結論は、公表された集計表から組み立てた推計です。弱いところを先に書いておきます。

限界どう効くか
年齢×年収の表がない「同じ年齢なら年収で被害率は変わらない」とは直接は言えない。言えるのは「年齢構成で区分ごとの率がほぼ当たる」まで
ネット利用率で補正している年齢ごとの利用率が年収によって違う場合、予想が少しずれる(補正しない計算でも2,000万円以上の差は+8.0で、結論は変わらない)
本人の申告何を「フィッシング被害」と感じるかは人によって違う。お金の被害の有無は分からない
2,000万円以上の回答数が少ない1人ずつで468人、世帯で156世帯。数字の揺れは大きい
1年分のデータ令和7年調査の1回分だけを見ている。年によって変わる可能性がある

差が出なかったもの

世帯で数えたときの差が「家族が多い家ほど当たりやすいから」ではないかと考え、世帯人員別の被害率も確かめました。結果は、1人暮らし12.5%、2人12.6%、3人16.8%、4人13.1%、5人11.9%で、人数が増えるほど高くなる形にはなっていませんでした。単純な家族の人数では、世帯の表に残った差は説明できません。ネットを使う家族の人数や、家族の年齢の組み合わせが関わっている可能性はありますが、それを確かめる表は公表されていません。

あなたの家はどのタイプ?

こんな人・家データから言えることまず気をつけること
年収は高くないので安心している1人あたりの被害率は年収でほぼ変わらない。預貯金も年収ほど差がない「自分は対象外」と思わないこと
迷惑メールがたくさん届く届く量が多くても、被害の率は上がっていなかった量に慣れて、本物そっくりの1通を見落とさないこと
高齢の家族がいる届く量は少なく、被害の報告も少ない慣れていないぶん、家族で「おかしなメッセージ」を見せ合う
世帯年収2,000万円以上、証券口座がある年齢から予想される率のほぼ2倍。理由は不明証券・銀行のログイン方法と通知を見直す

今日からできるチェックリスト

  • 銀行・カード・証券には、ブックマークか公式アプリからログインしている(メールやSMSのリンクから開かない)
  • ログインや出金の通知メール・アプリ通知をオンにしている
  • パスキーや二段階認証など、パスワードだけでは入れない設定にしている
  • ネットバンキングの振込・送金の上限額を、必要な範囲まで下げている
  • 家族と「こんなメッセージが来た」を見せ合う習慣がある
  • おかしいと思ったら、カード会社・銀行の公式窓口に連絡する方法を知っている(警察の相談窓口は #9110)
✅ まとめ:やることは3つだけ

1. 今日:よく使う銀行・カード・証券のログインを、ブックマークか公式アプリに切り替える。
2. 今週:ログイン通知をオンにし、振込・送金の上限額を見直す。
3. 今月:家族、特に高齢の家族と「怪しいメッセージは開く前に見せ合う」約束をする。
年収の高い・低いで、やることは変わりません。

第8章 おわり
FAQQ

よくある質問

よくある質問

Q. 前回の記事と結論が違うのはなぜですか?

数えているものが違うからです。前回は世帯の表で「家族の誰かが被害を受けた世帯の割合」を見ていました。今回は1人ずつの表で「その人自身が被害を受けた割合」を見ています。世帯の表では年収とともに上がり、1人ずつの表ではほぼ平坦です。どちらの数字も正しく、問いが違います。

Q. 年齢をそろえるとは、具体的に何をしたのですか?

年齢ごとの被害率と、年収の区分ごとの年齢構成を掛け合わせて「年齢構成だけから予想される被害率」を出し、実際の率と比べました。予想と実際がほぼ同じなら、その区分の被害率は年齢構成で説明できる、と考えます。疫学で「間接法による年齢調整」と呼ばれる方法です。

Q. 年収2,000万円以上の人は特に狙われているのですか?

このデータからは「狙われている」とまでは言えません。分かるのは、年齢から予想される率のほぼ2倍の人が被害を申告している、ということだけです。金融資産を狙った誘導、使うサービスの多さ、被害への気づきやすさなどの可能性がありますが、どれも確かめられていません。

Q. 迷惑メールが多く届く人ほど危ないのでは?

年齢で見ても年収で見ても、届く量と被害の率は比例していませんでした。届く量が多い人が特に危ないというより、どの人も一定の割合で被害を受けている、と読むほうがデータに合います。届く量が少ない人も、油断はできません。

Q. 元のデータはどこで見られますか?

総務省「通信利用動向調査」の統計表として公開されています。この記事では令和7年調査の世帯編(世5表・世11表)と世帯構成員編(構6表・構21表)を使いました。出典欄にリンクがあります。

出典・データ

  • 総務省「令和7年通信利用動向調査」世帯構成員編 構21表(情報通信機器の利用の際の被害等の状況)、構6表(年齢別の世帯年収分布)/世帯編 世11表(被害等の状況)、世5表(世帯主年齢別の世帯年収分布) https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/statistics05.html
  • 総務省「令和8年版 情報通信白書」年齢階層別インターネット利用率(2025年) https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/
  • 総務省統計局「家計調査 貯蓄・負債編」2025年 二人以上の世帯 年間収入五分位階級別(e-Stat 統計表ID 0002210012) https://www.e-stat.go.jp/
  • 年齢調整(間接法)、比率、95%の幅は、上記の公表値から当サイトが計算したものです。

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