今週のサイバーセキュリティ注目記事 ベスト5/日本と世界を比較(2026年7月21日〜8月1日)

📡 脅威トレンド分析 / 日本 vs 世界

世界のニュースは、日本の数週間後を映しているか

日本語のセキュリティ報道と、世界50社以上のセキュリティ報道。同じ日に集めた3,000件を突き合わせると、「世界では大騒ぎなのに日本ではまだ誰も書いていない」テーマがはっきり浮かび上がりました。全部、表で見せます。

「海外で流行っている攻撃は、そのうち日本にも来る」──セキュリティの世界では昔から言われてきたことです。ただ、そう言われても「じゃあ今、何が来かけているのか」は誰も具体的に教えてくれません。

そこで、実際に数えてみました。日本語のセキュリティ情報源と、海外のセキュリティ情報源を同じ日に・同じ方法で集めて、テーマごとに件数を突き合わせたのです。すると、想像以上にはっきりした差が出ました。

たとえば「北朝鮮系の攻撃グループ」は、世界のニュースでは9件あるのに、日本語のニュースでは0件でした。「VMware / ESXi を狙う攻撃」も世界6件に対して日本は0件。これは「日本が安全だから」ではありません。単にまだ日本語で報じられていないだけである可能性が高い。そして、そこにこそ先回りする余地があります。

⚠️ この記事の前提(大事です)
ここで数えているのは「報道された件数」であって、「攻撃が起きた件数」ではありません。報道量は、メディアの関心・言語・タイムゾーン・広報の都合に強く左右されます。したがって本記事の数字は「日本語圏でどれだけ話題になっているか」の指標として読んでください。被害の実数や、危険度そのものを表すものではありません。集計は2026年8月1日時点のスナップショットで、日々変動します。

CHAP1

第1章 / 全8章

📊 この記事の元データと数え方

数字の意味がわからないと、表は読めません

まず、何をどう数えたのかを先にお伝えします。ここが曖昧なままだと、この後の表はただの数字の羅列になってしまうからです。

使ったのは、自作の脅威情報収集スクリプトが集めた2種類のデータです。ひとつは日本語圏向け(JPCERT/CC・IPA・JVN といった公的機関、Security NEXT・ScanNetSecurity などの専門メディア、piyolog などの分析ブログを含む25の情報源)。もうひとつは世界向け(CISA・CERT-EU・CERT-FR などの各国機関、BleepingComputer・The Hacker News・Dark Reading・SecurityWeek などの海外メディア、ベンダーの研究ブログを含む51の情報源)です。

項目日本版世界版補足
情報源の数2551公的機関・専門メディア・ベンダー研究ブログ
収集した記事1,500件1,500件直近45日分に絞って集計
集計対象の記事898件1,500件日本版は日本語の記事だけに限定
クラスタ数(=事件数)544940同じ事件の重複報道を1件に統合した後の数
基準日時2026年8月1日 06:48(JST)1回のスナップショット

表1:この記事が使っているデータの全体像

ここで2つ、意図的な工夫をしています。読み飛ばさないでほしいポイントです。

💡

工夫①:同じ事件をまとめて「1件」と数える(クラスタリング)

ある事件が5つのメディアに載れば、単純に数えると「5件」になります。これでは話題の数ではなく、メディアの数を数えていることになってしまう。そこで見出しの特徴語を比べ、同じ事件を報じた記事をひとまとまり(クラスタ)に統合してから数えました。表の「件数」はすべてこのクラスタ数です。

🔍

工夫②:日本側は「日本語で書かれた記事」だけを数える

日本版の収集1,500件には、海外メディアの英語記事も602件混ざっていました。これをそのまま数えると「日本でも報じられている」ことになってしまい、日本語圏での話題量を大幅に過大評価します。そこで日本側は日本語の記事898件だけを母数にしました。この記事の結論は、この一手間の上に立っています。

そしてもうひとつ、比較のために lift(リフト) という指標を使います。難しい言葉ですが、意味はシンプルです。

🧮

lift = 世界でのシェア ÷ 日本でのシェア

母数(544と940)が違うので、件数をそのまま比べるのは不公平です。そこで「全体の何%を占めるか」に直してから割り算します。lift が 1.0 なら日本と世界で同じくらい話題2.0 なら世界のほうが2倍話題0.5 なら日本のほうが2倍話題。この1つの数字で、噛み合っているかどうかが一目でわかります。

第1章 おわり — 次は第2章

CHAP2

第2章 / 全8章

🇯🇵 日本 TOP5 ── 何が話題だったか

日本語のセキュリティ報道で、最も注目された5件

まずは日本側から。544クラスタを「危険度スコア+報じた媒体数+関連記事数」で並べ、解説記事やセミナー告知を除いた実際に起きた事件の上位5件がこちらです。

#事件関連記事媒体数初報から
1Chaosランサムウェアの新バックドア「msaRAT」
Chrome や Edge ブラウザを経由してC2通信(攻撃者との連絡)を中継する手口。ブラウザの正規通信に紛れるため検知が難しい
117.7日
2日本テレネットにランサムウェア攻撃
データが外部に転送された痕跡は検出されず、と発表。国内5媒体が報道し、この期間で最も広く報じられた国内事件
554.9日
3AIモデルが評価中に不正アクセスしていた事案
AI自身が評価環境で想定外のアクセスを行った事例。分析ブログ piyolog がまとめた、収集期間中で最も新しい話題
110.4日
4旭化成セラピューティクス/シミックへの不正アクセス
患者サポートプログラムから個人情報が漏洩。医療・製薬の委託先経由という、典型的なサプライチェーン型
334.9日
5アフラック生命保険に不正アクセス、438万人分が漏洩
規模としては桁違いだが初報から1か月が経過し、報道は沈静化フェーズに入っている
3231.6日

表2:日本語報道での注目事件 TOP5(2026年8月1日時点)

この表を眺めていると、ある共通点に気づきます。5件のうち4件が「日本国内の特定の組織で起きた被害」だということです。日本テレネット、旭化成セラピューティクス、シミック、アフラック。いずれも実名の企業と、その被害の話です。

これは日本のセキュリティ報道の伝統的な形です。「どこの会社がやられたか」を軸に報じる。読者にとってわかりやすく、社会的な意味もある報じ方です。実際、ニチレイへの攻撃(RansomHouse が犯行を主張)や名鉄協商へのランサムウェア攻撃も、この直下の6〜7位に入っていました。

📌

覚えておきたい違和感

日本のTOP5には、「どの製品の、どの脆弱性が悪用されているか」という技術的な話がほとんど出てきません。CVE番号がついている事件は5件中0件でした。この点を頭の片隅に置いて、次の第3章(世界TOP5)を見てください。景色がまったく違います。

第2章 おわり — 次は第3章

CHAP3

第3章 / 全8章

🌐 世界 TOP5 ── 何が話題だったか

同じ日、海外のセキュリティ報道が追いかけていたもの

同じ日、同じ方法で集めた世界側の940クラスタから、上位5件です。

#事件関連記事媒体数CVE
1Arista VeloCloud Orchestrator のゼロデイ
すでに攻撃で悪用された状態でパッチが公開。SD-WAN の管理基盤を狙う、影響範囲の広い事案
54
2Microsoft SharePoint の重大な脆弱性
CERT-EU が勧告 2026-009 を発行。公開PoC の後に活発な悪用が確認されたものを含む
33CVE-2026-32201 ほか計5件
3Cisco FMC のゼロデイが実環境で悪用
ファイアウォール管理製品に静的な認証情報が残存。管理基盤を取られると配下の防御が丸ごと無力化しうる
43CVE-2026-20316
4INC Ransomware が SonicWall SMA のゼロデイを悪用
VPN 装置の未修正の穴が、そのままランサムウェアの侵入口になっている実例
22
5Coca-Cola 子会社 Fairlife がランサムウェア被害
データ窃取を確認し、米国内の生産の大半を復旧。大手食品メーカーの製造停止という点で日本のニチレイと相似形
44

表3:世界の注目事件 TOP5(2026年8月1日時点)/ Cisco FMC は同じ事件が2つのまとまりに分かれていたため統合して掲載

景色がまるで違うことに気づいたでしょうか。5件のうち4件が「製品の脆弱性」の話です。しかも Arista、SharePoint、Cisco FMC、SonicWall と、そのすべてが「ネットワークの境界や管理基盤」に位置する製品でした。

SD-WAN の管理基盤、社内ポータル、ファイアウォールの管理サーバー、VPN 装置。どれも「そこを取られたら、その先が全部見える」場所です。攻撃者が今、どこを重点的に叩いているかが、この5件だけでもはっきり読み取れます。

🚨

2つのTOP5を並べると

日本は「誰がやられたか」、世界は「何が破られたか」を報じています。同じ日の、同じ業界の話とは思えないほど噛み合っていません。そしてこのズレこそが、次章の比較表で数字として現れます。

第3章 おわり — 次は第4章

CHAP4

第4章 / 全8章

⚖️ 噛み合っていない、という発見

この記事の中心になる表です

ここが本題です。あらかじめ用意した56のテーマ(攻撃手法・製品・攻撃グループなど)ごとに、日本と世界の件数を並べ、第1章で説明した lift を計算しました。件数の多い順に並べています。

右端の「状態」は、lift の値から機械的に5段階に分類したものです。🔴未上陸=日本の報道が0件🟠上陸予兆=世界が3倍以上🟡増加傾向=1.5倍以上🟢既に流行=ほぼ同水準🔵日本が先行=日本のほうが多い

テーマ世界日本世界シェア日本シェアlift状態
ランサムウェア70597.45%10.85%0.69🔵 日本が先行
フィッシング6386.70%1.47%4.56🟠 上陸予兆
ゼロデイ2722.87%0.37%7.81🟠 上陸予兆
AIエージェント悪用2442.55%0.74%3.47🟠 上陸予兆
VPN/境界機器2432.55%0.55%4.63🟠 上陸予兆
Microsoft 365/Entra1942.02%0.74%2.75🟡 増加傾向
サプライチェーン攻撃1691.70%1.65%1.03🟢 既に流行
AIサプライチェーン1621.70%0.37%4.63🟠 上陸予兆
GitLab/GitHub/CI1441.49%0.74%2.03🟡 増加傾向
ブラウザ1271.28%1.29%0.99🟢 既に流行
AI悪用/AI攻撃11301.17%5.51%0.21🔵 日本が先行
モバイル(Android/iOS)1121.17%0.37%3.18🟠 上陸予兆
OT/ICS/重要インフラ1131.17%0.55%2.12🟡 増加傾向
ロシア系APT1131.17%0.55%2.12🟡 増加傾向
Windows/クライアント1021.06%0.37%2.89🟡 増加傾向
Cisco930.96%0.55%1.74🟡 増加傾向
Zimbra/メールサーバ910.96%0.18%5.21🟠 上陸予兆
WordPress/CMS950.96%0.92%1.04🟢 既に流行
Lazarus/北朝鮮900.96%0.00%10.42🔴 未上陸
医療機関940.96%0.74%1.30🟢 既に流行
製造/工場830.85%0.55%1.54🟡 増加傾向
金融7150.74%2.76%0.27🔵 日本が先行
VMware/ESXi600.64%0.00%6.94🔴 未上陸
ルーター/家庭用機器480.43%1.47%0.29🔵 日本が先行

表4:テーマ別 日本⇔世界 比較(件数はクラスタ数/2026年8月1日時点)

この表の読みどころは3つあります。

ひとつめ。フィッシングの差が異常です。世界63件に対して日本8件。フィッシング詐欺は日本でも被害が多発している定番の手口ですから、「日本で流行っていない」わけがありません。にもかかわらず報道量が8分の1というのは、世界側で手口が新しい段階に進んでいることを示唆します。実際、世界側の記事を見ると「保険をかたるフィッシングがリアルタイムのアカウント乗っ取りに進化した」「法律事務所を標的にした標的型メールで多段のバックドアを送り込んだ」といった、従来の「偽メールでパスワードを盗む」から一段進んだ内容が並んでいました。

ふたつめ。日本の報道が0件のテーマが2つある。Lazarus/北朝鮮(世界9件)と VMware/ESXi(世界6件)です。これは検索漏れではありません。日本語記事898件を「lazarus」「ラザルス」「北朝鮮」「DPRK」「Kimsuky」「VMware」「ESXi」「vCenter」で全文検索して、本当に0件でした。

みっつめ。日本のほうが多いテーマもある。AI悪用/AI攻撃は日本30件に対して世界11件。金融は15件対7件。ルーター/家庭用機器は8件対4件。日本が一方的に遅れているわけではないのです。これは第6章で詳しく扱います。

⚠️

「未上陸」は「安全」ではありません

この表で最も誤読しやすいのがここです。報道が0件なのは、攻撃が来ていないことの証明にはなりません。むしろ「気づかれていない」「まだ表に出ていない」可能性を含みます。報道の空白は、油断の理由ではなく、準備の時間だと捉えてください。

第4章 おわり — 次は第5章

CHAP5

第5章 / 全8章

🎯 上陸予兆トップ6を1つずつ

「世界で動いている × 日本でまだ薄い」を点数化しました

第4章の lift に、世界側で直近30日にどれだけ集中しているか前回の集計からどれだけ増えたかを加味して、100点満点で点数化したのが次の表です。点数が高いほど「日本でこれから話題になる可能性が高い」と読みます。

点数テーマ世界日本lift段階
84AIサプライチェーン1624.63🟠 報道わずか
80Lazarus/北朝鮮9010.42🔴 未上陸
78フィッシング(新形態)6384.56🟡 上陸進行中
76VPN/境界機器2434.63🟡 上陸進行中
74ゼロデイ全般2727.81🟠 報道わずか
73VMware/ESXi606.94🔴 未上陸

表5:日本上陸の予兆スコア トップ6

🥇 1位:AIサプライチェーン(84点)

世界16件に対し、日本語での報道は2件だけ。世界側の記事には「AIエージェントのスキルマーケットに潜むサプライチェーンの脅威」「AIモデルが JFrog Artifactory のゼロデイを悪用していた」といった見出しが並んでいました。

これは「AIを狙う攻撃」ではなく「AIの部品を汚染する攻撃」です。誰かが作った学習済みモデル、誰かが公開した拡張機能、誰かが書いたエージェントの「スキル」。それらを何気なくダウンロードして使う瞬間が、侵入口になります。日本でも AI の業務導入は急速に進んでいますから、導入が先、リスクの認知が後という最も危ない順番になりかけています。

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🥈 2位:Lazarus/北朝鮮(80点)

世界9件、日本0件。lift は 10.42 と、全56テーマ中で最大の開きです。世界側の見出しを見ると、npm パッケージ(Debug/Chalk など)へのサプライチェーン攻撃を Amazon/AWS が北朝鮮系の攻撃者に帰属させたという報道が中心でした。加えて「Lazarus がランサムウェア集団とツールを共有している」という韓国当局の指摘もあります。

npm は日本のWeb開発現場でも当たり前に使われています。「国家が関与する攻撃」と「普通の開発者が毎日叩くコマンド」が直結しているのがこのテーマの怖さです。日本語で報じられていないのは、単に一次情報が英語圏に集中しているからでしょう。

🥉 3位:フィッシングの新形態(78点)

件数そのものは世界63件と最多。日本でもフィッシングは日常的に報じられていますが、中身の段階が違います。世界側では「リアルタイムのアカウント乗っ取り」、つまり入力されたワンタイムパスワードをその場で本物のサイトに転送して突破するタイプが主流の話題になっていました。

これは「メールをよく見れば偽物とわかる」という従来のアドバイスが効かなくなる変化です。偽サイトの見た目が本物と同じどころか、本物のサイトと通信を中継しているので、URL以外に見分ける手がかりがほとんどありません。

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4位:VPN/境界機器(76点)/ 5位:ゼロデイ全般(74点)

この2つはセットで読むべきテーマです。世界TOP5(第3章)で見たとおり、Arista・Cisco FMC・SonicWall SMA と、境界に置く機器のゼロデイが立て続けに出ています。さらに「CISA が Fortinet の緊急パッチ適用を命令」「Qilin ランサムウェアが PAN-OS の認証バイパスを初期侵入に使った」という報道も確認できました。

共通する筋書きはひとつです。境界機器の未修正の穴 → 侵入 → ランサムウェア。VPN 装置は「守るための機器」ですが、パッチが当たっていなければ社内への最短の一本道になります。

🚨

境界機器がやっかいな理由

パソコンやサーバーと違い、VPN装置やファイアウォールは「入れたら何年も触らない」運用になりがちです。しかも24時間インターネットに露出しています。攻撃者から見れば、これほど都合のいい標的はありません。VPNとは?必要性と危険性もあわせてどうぞ。

6位:VMware/ESXi(73点)

世界6件、日本0件。「GenieLocker という新しいランサムウェアが Windows・ESXi・Linux を同時に攻撃する」という報道が中心でした。ESXi は1台のサーバーの上で仮想マシンを何十台も動かす基盤ですから、そこを暗号化されると業務システムがまとめて止まります。日本の企業でも広く使われている技術です。報道が0件なのは、単に日本語の記事がまだ書かれていないだけと見るのが自然でしょう。

第5章 おわり — 次は第6章

CHAP6

第6章 / 全8章

🔵 逆に「日本が先行」しているもの

日本は一方的に遅れているわけではありません

ここまで「日本が遅れている」話ばかりでしたが、表を逆から読むと違う景色が見えます。日本のほうが明らかに話題になっているテーマを抜き出しました。

テーマ日本世界liftなぜ日本のほうが多いのか
AI悪用/AI攻撃30110.21日本語圏では「AIが悪用されたら」という議論・啓発の記事が非常に多い。事件報道というより関心の高さの表れ
金融1570.27ネットバンキングの不正送金や証券口座の乗っ取りが継続的に報じられている。実被害が身近
教育機関1430.12学校・大学の情報漏洩が丁寧に報じられる文化。世界側では個別には扱われにくい
小売/EC110通販サイトの不正アクセス・カード情報漏洩が定番のニュース枠になっている
ルーター/家庭用機器840.29家庭用ルーターの乗っ取り注意喚起が官民から繰り返し出ている
ランサムウェア59700.69件数では世界が上だが、シェアでは日本のほうが高い。日本の関心の中心

表6:日本語圏のほうが話題になっているテーマ

並べてみると、はっきりした傾向が見えます。日本語圏が強いのは「一般の人・利用者に近い話題」です。ネットバンキング、通販、学校、家庭のルーター。いずれも読者が自分の生活で心当たりを持てるテーマです。

対して世界側が強いのは「組織のインフラを支える技術寄りの話題」。境界機器、仮想化基盤、開発パイプライン、国家背景の攻撃グループ。

🌟

つまり、両方見る意味がある

日本語の情報だけを追うとインフラ側の変化に気づくのが遅れます。逆に海外の情報だけを追うと日本で実際に起きている生活者向けの被害を取りこぼします。どちらが優れているという話ではなく、役割が違うのです。両方を並べて初めて全体像になります。

第6章 おわり — 次は第7章

CHAP7

第7章 / 全8章

🧭 この読み方を自分でやる手順

専用ツールがなくても、考え方は真似できます

ここまでの分析はスクリプトで自動化していますが、考え方そのものは道具がなくても使えます。手順を表にまとめました。

手順やることポイント
1日本語と英語、2つの情報源を決める日本語は JPCERT/CC・IPA・Security NEXT。英語は BleepingComputer・The Hacker News あたりで十分。毎回同じ場所を見るのが肝心
2同じ日に、両方の見出しをざっと眺める記事を読み込む必要はありません。見出しだけ。5分で終わります
3英語側にあって日本語側にない単語を書き出す製品名・攻撃グループ名・手口の名前。これが予兆の候補になります
4その単語で日本語検索してみるほとんど出てこなければ「未上陸」。これで第4章と同じ判定ができます
5自社・自分に関係あるか3秒で判定する使っていない製品の話なら流してよい。使っている製品名が出たら、その日のうちに調べる
6週に1回、同じことを繰り返す1回では意味がありません。差分を見て初めて「増えている」がわかります

表7:日本⇔世界の「ズレ」を自分で見つける6ステップ

手順3が一番のコツです。英語の記事を全部読もうとすると必ず挫折します。読むのではなく、見出しに出てくる固有名詞を拾うだけ。それだけで「世界で名前が挙がっているのに、日本語ではまだ誰も書いていないもの」は驚くほど簡単に見つかります。

🔎

もう一歩踏み込みたい方へ

「自社の機器が外からどう見えているか」を確認したいなら、Censysの使い方が役に立ちます。第5章で挙げた境界機器の話は、まさに「インターネットから見えている自社の資産」の問題です。手を動かして覚えたい方はCensysクエスト100もどうぞ。

📝 今日から使えるチェックリスト

  • 自社で使っているVPN装置・ファイアウォールの型番を紙に書き出せますか
  • その機器のファームウェアを最後に更新したのはいつか答えられますか
  • ベンダーのセキュリティ勧告メールを受け取る設定になっていますか
  • 仮想化基盤(ESXi など)を使っている場合、管理画面がインターネットから見えていないことを確認しましたか
  • AI関連のツールや拡張機能を配布元を確認せずに入れていません
  • 開発で使うパッケージについて、更新時に何が変わったかを誰かが見ていますか
  • ワンタイムパスワードを「サイトに入力する」形で使っていませんか(中継型フィッシングに弱い)
  • 週に1回、海外のセキュリティニュースの見出しを眺める習慣がありますか

第7章 おわり — この先はまとめです

CHAP8

第8章 / 全8章

📋 まとめ ── 最初にやること3つ

読んで終わりにしないために

3,000件を突き合わせてわかったことを、3行に圧縮します。

#わかったことだから何をするか
1日本は「誰がやられたか」、世界は「何が破られたか」を報じている
日本TOP5はCVE番号0件、世界TOP5は5件中4件が製品脆弱性
日本語の報道だけを追っていると、製品の脆弱性情報が抜け落ちる。ベンダーの勧告を直接受け取る経路を作る
2報道が0件のテーマが2つある(北朝鮮系・VMware/ESXi)
検索漏れではなく、日本語記事898件を全文検索して本当に0件
0件は「安全」ではなく「情報がない」状態。該当技術を使っているなら、英語の一次情報を直接見にいく
3境界機器のゼロデイ→ランサムウェア、という筋書きが繰り返されている
Arista・Cisco FMC・SonicWall・Fortinet・PAN-OS が同時期に
「入れたら触らない」機器こそ最優先。まず型番と最終更新日を棚卸しする

表8:この記事の結論と、次の行動

✅ 今日やる3ステップ

ステップ1(10分):家庭でも職場でも、インターネットに直接つながっている機器(ルーター・VPN装置・NAS)の型番を書き出す
ステップ2(10分):その型番でメーカーのサポートページを開き、最新のファームウェアが出ていないか確認する
ステップ3(5分):メーカーのセキュリティ情報の通知を受け取る設定(メール登録・RSS)をする。次からは向こうから教えてくれます。

最後にもう一度だけ。この記事の数字は「報道の量」であって「攻撃の量」ではありません。世界で20件、日本で0件だったからといって、明日日本で事件が起きると予言しているわけではないのです。

それでも、この見方には価値があります。報道は攻撃より遅れて来ますが、日本語の報道は英語の報道よりさらに遅れて来るからです。その時間差の分だけ、私たちは先に準備ができます。報道の空白は、油断の理由ではなく、準備の時間。この記事でいちばん覚えて帰ってほしいのは、この一文です。

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第8章 おわり — お読みいただきありがとうございました

🧭 この分析から生まれた5本の記事

この記事は「どのテーマを追うか」を決めるための分析です。ここで浮かび上がった上位テーマを、それぞれ一次情報まで掘り下げて個別記事にしました。気になった行があれば、そのまま深掘りへ進めます。

📁 データについて

  • 集計日時:2026年8月1日 06:48(日本標準時)のスナップショット
  • 日本版の情報源(25):JPCERT/CC 注意喚起・分析センター、IPA、JVN/JVNDB、Security NEXT、ScanNetSecurity、piyolog、各社PSIRT ほか
  • 世界版の情報源(51):CISA、CERT-EU、CERT-FR、NCSC、BleepingComputer、The Hacker News、Dark Reading、SecurityWeek、Infosecurity Magazine、Sophos X-Ops、Unit 42 ほか
  • 集計方法:見出しの特徴語による重複クラスタリング後、56テーマの正規表現でテーマ判定。日本側は日本語記事のみを母数とする
  • 限界:報道量の指標であり、攻撃の実数・被害額・危険度を表すものではありません。情報源の構成に結果が依存します
  • 次回見直しの目安:2026年9月(月次でスナップショットを取り直し、上陸予兆テーマがどう動いたかを追跡する予定)

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