借りたパソコンに置いた「口座の鍵」が盗まれたFX用クラウドの不正アクセスを、いちばんやさしく
FXの自動売買によく使われるサービスが乗っ取られ、取引口座で勝手に売買されたという報告が出ています。
攻撃者は運営会社にお金を要求しています。2026年10月26日時点で分かっていることをまとめました。
先に結論:鍵を替えるだけでは足りない。「全員退室」までがセット
- 「お名前.com デスクトップクラウド」は、インターネットの向こうにある「借りたWindowsパソコン」です。FXの取引ソフト(MT4/MT5)や自動売買ロボットを24時間動かすのによく使われています。
- このサービスに不正アクセスがあり、利用者がその中に保存していた情報が外に持ち出されました(運営のGMOが10月24日に確認と発表)。取引口座で身に覚えのない売買があったという報告も出ています。
- 攻撃者は「お金を払わなければ、口座の不正操作を続け、情報を公開する」とGMOを脅しています。GMOは応じない方針で、利用者に見舞金5,000円と、不正な取引で出た損の補償を約束しました。
- 使っていた人は、①別の端末(スマホなど)で口座のパスワードを替え、全セッションを切断 ②取引履歴・残高・ポジションを確認 ③自宅のPCをウイルス検査し、犯人や「補償」をうたうメールは開かない。
- 使っていない人も、「パスワードを替えても、すでにログインしている人は追い出せないことがある」という教訓は覚えておいてください。
鍵を替えたら、ログイン中の人を全員退室させる。騒ぎのあとの「補償します」は、まず疑う。
📋 この記事の内容
あなたの家・借りた部屋・FX会社のあいだで起きたこと
この記事の中身は、この1枚に入っています。左があなたの家、真ん中がGMOのビルの中にある「借りた部屋」、右がFX会社です。赤い線が、攻撃者の動きです。
お名前.com デスクトップクラウドで起きたこと(2026年10月26日時点)
※①の侵入経路は、2026年10月26日時点でGMOから公表されていません。④は攻撃者側の主張で、本当かどうかは確認されていません。GMOは「予防的な対応」として、利用者に自分の端末の検査を頼んでいます。
「24時間あいている貸し部屋」に、口座の鍵を置いていた
まず、このサービスが何なのかを、部屋のたとえで説明します。
FXの自動売買をする人は、取引ロボット(EA)というプログラムを動かします。ロボットは、パソコンが動いている間しか働きません。自宅のパソコンを24時間つけっぱなしにするのは大変です。停電やWindowsの更新で止まることもあります。
そこで、大きなビルの一室を借りて、そこでロボットを24時間働かせる。これが「お名前.com デスクトップクラウド」のようなサービスです。部屋の中にはWindowsのパソコンがあり、あなたは自宅から遠隔でその画面を操作します。報道によると、料金は月額2,640円から、契約は累計で20万を超えるそうです。
ロボットが勝手に注文を出すには、FX会社の口座の鍵(ログインIDとパスワード)を部屋の中に置いておく必要があります。取引ソフトのMT4やMT5に「パスワードを保存」して、ずっとログインしたままにしておくのがふつうの使い方です。
今回は、ビルの管理側が破られ、たくさんの部屋に泥棒が入れる状態になりました。部屋の中には、口座の鍵が置いてありました。泥棒はその鍵を持ち出し、FX会社の窓口で、持ち主のふりをして勝手に売買したとみられています。
🏢 ビル = GMOの設備
たくさんの部屋(仮想のパソコン)をまとめて管理しています。部屋の鍵は利用者ごとに別でも、管理側には全部屋に共通する仕組みがあります。
🚪 部屋 = 借りたパソコン
中でロボットが24時間働きます。口座の鍵や、ブラウザに保存したパスワードも置いてあります。
🎫 入館証 = セッション
一度ログインすると、FX会社が「この人は本人」という入館証を渡します。鍵を替えても、渡した入館証がしばらく使えることがあります。
💡 たとえの注意
厳密には、仮想のパソコンは物理的な部屋ではありませんし、「入館証」の正式な名前は「セッション」です。最初の理解として、このたとえで読み進めてください。くわしい仕組みは「専門家向けの詳細」に書きました。
このたとえで分かる、3つのポイント
- ポイント1あなたの家のドアを閉めていても、借りた部屋のビルの管理側が破られれば、部屋の中の物は盗まれます。今回、利用者に大きな落ち度があったわけではありません。
- ポイント2盗まれたのは「部屋に置いてあった鍵」です。だから、部屋に置いていた鍵は全部替える必要があります。FXの口座だけでなく、ブラウザに保存したほかのパスワードも含みます。
- ポイント3鍵を替えても、泥棒がすでに持っている入館証は、FX会社の側で無効にしてもらうまで残ることがあります。これが「全セッションの切断」です。
問い合わせから脅迫まで、7日間の流れ
運営するGMOインターネットは、10月21日から25日までに5回のお知らせと、代表のブログを出しました。数字で見ると、こうなります。
(確認された件数ではない)
主張するFX会社などの数
見舞金(被害の有無を問わず)
案内される期限
時間の流れ
- 10月19日:利用者からの問い合わせ
GMOが調査を始めます。 - 10月20日:不正なプログラムを発見
一部の利用者の部屋に、第三者が置いた不正なプログラムが見つかりました。新規の申し込みと管理画面を止めます。 - 10月21日 午前4時:全部の部屋を止める
被害を広げないため、全プランのサーバーを順に停止。この時点の発表は「閲覧された可能性」「個人情報の漏えいや悪用は確認されていない」でした。 - 10月21日以降:「口座で勝手に売買された」という報告
利用者から、取引口座で身に覚えのない操作があったと報告が届きます。22日に警察へ相談。FX会社のアヴァトレード・ジャパンは23日、一部の口座で不正ログインと不正取引を確認したと発表し、新規注文を止めました。 - 10月24日:情報の持ち出しを確認、そして脅迫
GMOは「システムにセキュリティ上の問題があった」「利用者の情報が外部に持ち出された」と認めました。攻撃者とみられる者から金銭を要求されていることも公表し、見舞金と補償を発表しました。 - 10月25日:代表がブログで説明
社内のホワイトハッカー(守る側の専門家)から事前に課題を指摘されていたのに、対応の深さとスピードが足りなかった、と書いています。
「分かったこと」と「まだ分からないこと」を分ける
ニュースやSNSには、いろいろな情報が混ざっています。誰が言っているのかで、確かさが違います。
| 確かさ | 中身 | 言っている人 |
|---|---|---|
| 確認済み | 不正なプログラムの設置、利用者の情報の外部への持ち出し、全サーバーの停止、警察への相談、攻撃者からの金銭要求 | GMO(公式発表) |
| 確認済み | このサービスでEAを使っていた一部の顧客の口座で、不正ログインと不正取引があった | アヴァトレード・ジャパン(10月23日) |
| 調査中 | 侵入した経路、どの部屋から何が取られたか、被害にあった人の数と金額、利用者の自宅PCへの影響 | GMO(調査中と発表) |
| 攻撃者の主張 | 国内外70を超えるFX会社などの口座を操作できる、利用者のPCの情報を持っている、管理の仕組みに弱点があった。要求額は報道で100万ドルとされる | 攻撃者(GMOの発表・報道で紹介。真偽は未確認) |
| 未確認 | 「55万円なくなった」「600万円失った」などの被害の声 | X(旧Twitter)の投稿(ITmedia NEWSが紹介) |
GMOは、攻撃者が「GMOや利用者の情報」と称するものを公開するおそれがあり、その中には事実と違う内容が含まれるかもしれないと注意しています。脅しの材料として、話を大きく見せることはよくあります。正式な情報は、GMOの公式ページで確かめてください。
盗まれた鍵が、口座の売買に変わるまで
侵入の入り口はまだ公表されていません。ここでは、公表された事実をつないで「鍵が盗まれてから、口座が動かされるまで」を順番に見ます。
- ビルの管理側に入る
攻撃者が、デスクトップクラウドを管理する仕組みのどこかから入ります(くわしい経路は調査中)。 - たくさんの部屋に不正なプログラムを置く
部屋(借りたパソコン)の中で、情報を集めるプログラムが動きます。 - 部屋に置いてあった鍵を持ち出す
取引ソフトに保存された口座のログイン情報や、ブラウザに保存されたパスワードなどが対象になりえます。GMOは「サーバー内に保存されていた情報」が影響範囲だとしています。 - FX会社に、持ち主のふりをしてログイン
正しいIDとパスワードなので、FX会社から見ると本人と区別がつきにくい状態です。 - 勝手に売買して、口座のお金を減らす
GMOの発表では、攻撃者は「不正な注文による口座残高の毀損(減らすこと)」を続けると脅しています。 - 運営会社に「やめてほしければ払え」と要求
口座を動かせることを、脅迫の材料にしています。
なぜ「パスワードを替えたのに」取引されるのか
今回いちばん大事な話がこれです。GMOは第3報から、パスワードを替えたあとも、FX会社のサーバーの仕組みによっては、しばらく前の接続が残り、第三者が取引を続けられる場合があると注意しています。
❌ 鍵を替えただけ
- 泥棒は、もう入館証(セッション)を持っている
- 入館証が切れるまで、中で売買を続けられる
- 「替えたから安心」と思いこむ
⭕ 鍵を替えて、全員退室
- パスワードを替える
- FX会社のマイページで全セッションを切る。できなければ窓口に頼む
- ログイン履歴と取引履歴を見て、止まったか確かめる
ホテルで部屋のカードキーを作り直しても、すでに中にいる人は追い出せません。フロントに「今いる人を全員出して」と頼む必要があります。「全セッションの切断」は、その頼みごとです。セッションの仕組みは「パスキー使っているのに不正送金?Cookie乗っ取りの盲点」でもくわしく説明しています。
GMOもFX会社も、パスワードの変更はFX取引に使っていない端末(スマホや別のパソコン)から行うよう求めています。乗っ取られたかもしれない場所で新しい鍵を作ると、その鍵もまた見られてしまうおそれがあるからです。
自動の損切りも止まっている
もう1つ見落としやすい点があります。GMOは被害を広げないために全部の部屋を止めました。そのため、部屋の中で動いていたロボットも止まっています。アヴァトレード・ジャパンは、ロボットによる自動の決済や損切りが動かない状態なので、持っているポジションは自分で管理するよう呼びかけています。
つまり、泥棒が入らなくても、相場が動けば損が出る状態です。ポジションを持ったままの人は、スマホのアプリなどで今の状態を確かめてください。
「名簿が盗まれた」ではなく「口座が動かされた」
これまでよくあった情報漏えいと比べると、今回の特徴がはっきりします。
| 比べるところ | よくある情報漏えい | 今回のデスクトップクラウド |
|---|---|---|
| 盗まれたもの | 会員名簿(メールアドレス、パスワードなど) | 利用者が借りた部屋に保存していた情報(口座の鍵など) |
| 起きる被害 | 使い回したパスワードで、別のサービスに入られる | 取引口座で勝手に売買され、お金が直接減る |
| 攻撃者のねらい | 名簿を売る、ほかのサイトで試す | 口座の操作を「続ける」と脅し、運営会社にお金を要求 |
| パスワード変更 | 変更が基本の対策 | 変更+全セッションの切断が必要 |
| あなたの家への影響 | ふつうはない | 自宅PCにも届くと攻撃者は主張(未確認)。GMOは予防的に検査を依頼 |
GMOは代表ブログで、今回の手口を「一般の人の取引口座(金融資産)を狙った不正操作」という、前例のないものだと説明しています。
発表は、あとから大きくなる
もう1つの学びは、最初の発表が「いちばん小さく」出ることです。今回の5回のお知らせで、書き方はこう変わりました。
| お知らせ | 日時 | 盗まれたものの書き方 | 新しく出てきたこと |
|---|---|---|---|
| 第1報 | 10月21日 4:00 | 「閲覧された可能性」。個人情報の漏えいや悪用は「確認されていない」 | 全プランの停止、26,739台 |
| 第2報 | 10月22日 16:59 | 口座のログイン情報などが取得され、不正利用された可能性 | 口座の不正操作の報告、警察への相談 |
| 第3報 | 10月23日 16:10 | 同じ。26,739台は「確認された件数ではない」と追記 | セッションが残る注意、別の端末で変更、自宅PCの検査 |
| 第4報 | 10月24日 11:50 | 「外部に持ち出された事実を確認」 | 脅迫、見舞金5,000円、損失の補償、代替サービス |
| 第5報 | 10月24日 | (改めてのお願い) | 端末の検査とバックアップを改めて依頼 |
「確認されていない」は「なかった」という意味ではなく、「その時点ではまだ確かめられていない」という意味です。お詫びの文章の読み方は「『個人情報は漏えいしていません』は、何が漏れたという意味か」で、範囲・確かさ・時点の3つのものさしとして説明しています。
4つのケースで、やることを分ける
自分がどれに当てはまるか、選んでください。
- A.このサービスを使っていない直接やることはありません。ただし、ほかの会社のVPS(借りるパソコン)でFXをしているなら、アヴァトレード・ジャパンも念のためパスワード変更と履歴の確認をすすめています。教訓はSTEP07へ。
- B.使っていた(今も・過去も)。取引はおかしくない今すぐ「今やること3つ」を。過去に使っていた人も、部屋に保存していた鍵は替えてください。アヴァトレード・ジャパンは「過去にご利用のお客様」にもお願いを出しています。
- C.身に覚えのない取引があるまずFX会社・証券会社の窓口に連絡し、全セッションの切断を頼みます。画面を記録してから、補償の準備へ。
- D.犯人を名乗るメール、「補償」をうたう連絡が来たURLやファイルは開かない、返信しない。補償の案内は、GMOの公式ページから自分でたどって確かめます。
クイズ:あなたならどうする?
Q1.スマホからFX口座のパスワードを替えた。これでもう安心?(タップで答え)
答え:まだ半分です。パスワードを替えても、すでにログインしている人(入館証=セッション)がしばらく残ることがあります。FX会社のマイページで全セッションを切るか、窓口に頼んでください。GMOは「すでにパスワードを変更済みの場合も、必ず実施して」と書いています。
Q2.「GMO補償窓口」というメールに「口座のパスワードと暗証番号を入力して」とあった。どうする?
答え:偽物を疑って、入力しない。GMOは、補償の手続きでパスワードや暗証番号を聞くことはないと書いています。例外は、取引の履歴を確かめるための閲覧専用パスワード(MT4/MT5の「見るだけの鍵」)で、提出の手順は別に案内するとしています。メールのリンクからではなく、公式ページから自分でたどってください。
Q3.借りたパソコンが止まって、ロボットも止まった。ポジションはそのままでいい?
答え:いいえ。ロボットの自動の損切りも止まっています。相場が動けば損が出ます。スマホのアプリなどで今のポジションを確かめ、必要なら自分で決済してください。
使っていた人がやること3つ、使っていない人が覚えること3つ
このサービスを使っていた人(今も・過去も)
- 別の端末で鍵を替えて、全員退室させる
スマホや、FX取引に使っていないパソコンから、FX会社のマイページと取引ソフト(MT4/MT5)のパスワードを替えます。続けて全セッションを切断。できなければ窓口に頼みます。2段階認証やパスキーがあれば設定します(FXTFはパスキー登録を案内しています)。 - 口座の中を確かめる
ログイン履歴、取引履歴、残高、持っているポジションを確認します。身に覚えのない取引や出金の申請があれば、まずFX会社・証券会社に連絡。ロボットが止まっているので、ポジションは自分で管理します。 - 自宅のPCを点検し、ほかの鍵も替える
自宅のパソコンとスマホでウイルス対策ソフトのフルスキャンをし、データのバックアップを取ります。借りた部屋に保存していたほかのID・パスワード、同じパスワードを使い回しているサービスも替えます。犯人を名乗るメールや「補償」をうたう連絡は開きません。
- FX会社ごとに、パスワード変更と全セッション切断が済んだ(口座が複数ある人は全部)
- 取引履歴に、自分が出していない注文がないと確かめた
- 持っているポジションの損切りを、自分で考えた
- 自宅のPCとスマホでフルスキャンをした
- 借りた部屋のブラウザに保存していたパスワードを全部替えた
- GMOからの案内(10月30日まで)は、公式ページからたどって確かめると決めた
使っていない人が、この事件から覚えておくこと
🔑 借りた場所には、最小限の鍵だけ
クラウドの中のブラウザに、メールや銀行のパスワードまで保存しない。そこで使う鍵だけを置きます。
🎫 パスワード変更は「全端末ログアウト」とセット
乗っ取りを疑ったら、替えるだけでなく、ログイン中の端末を全部切る。多くのサービスに「すべてのデバイスからログアウト」があります。
📩 騒ぎのあとの「補償します」は疑う
大きな事件のあとは、補償や返金を装う詐欺が出ます。メールのリンクは押さず、公式サイトから自分でたどります。
メールのリンクを押してしまったときの対処は「怪しいメールを開いてしまった。どこまでなら大丈夫?」に、段階ごとにまとめています。FX・証券の口座の守りの強さは「証券11社の比較表」が参考になります。
補償のしくみと、今のうちに残しておく記録
GMOは10月24日の第4報で、3つの特別な対応を発表しました。まだ申請の方法は出ていないので、今は記録を残して待つ段階です。
| 対応 | 中身 | 案内の時期 |
|---|---|---|
| 見舞金 | 今の利用者全員に一律5,000円。お金の被害があってもなくても払う。損失の補償とは別 | 10月30日(金)23:59までに、登録メールアドレスへ |
| 代わりのサービス | 止めた設備はそのまま再開せず、独立した別の設備のサービスへ乗り換え可能。6か月無料。本人の同意なしに移さない | 10月30日(金)23:59までに、メールで |
| 損失の補償 | 不正な取引で実際に出た損(取引の差損・手数料など)。相場の値動きによる損、得られたはずの利益などは対象外 | 申請方法は11月6日(金)までに、公式サイトとメールで |
| FX会社の返金との関係 | FX会社などから返金があれば、その分を引いた残りをGMOが払う。返金がなくても、対象の損はGMOが払う | 同上 |
GMOは、FX会社などにも「第三者の不正アクセスによる取引だ」と説明し、取引の取り消しや返金を相談するよう求めています。補償を二重に受けた場合や、事実と違う申請は、返還を求めることがあるとしています。
今のうちに残しておく記録
📝 消える前に保存しておくもの
- 取引履歴(日時・通貨ペア・数量・損益)の画面の写真、または履歴のファイル
- ログイン履歴(いつ、どこからログインされたか)
- 口座残高の推移が分かる画面
- FX会社から届いた「普段と違う端末からのログイン」などの通知メール
- FX会社・GMOとのやりとり(日時・担当・言われたこと)
- パスワードを替えた日時、セッションを切った日時
🔍 「閲覧専用パスワード」ってなに?
MT4/MT5には、ふつうのパスワードとは別に、口座を見ることはできても注文はできない「見るだけの鍵」があります。GMOは補償の確認で、これの提示をお願いすることがあるとしています。これは正式な手続きの中で、案内に従って出すものです。注文できるパスワードや、出金の暗証番号は、誰に聞かれても教えません。
攻撃者の主張と、仕組みとしての教訓
ここからは、クラウドやリモートデスクトップを運用する人向けです。以下の「主張」は、報道で紹介された攻撃者側の犯行声明によるもので、GMOは侵入経路や悪用された脆弱性(CVE)を公表していません。事実としてではなく、「本当なら何が問題か」を考える材料として読んでください。
| 攻撃者の主張 | 本当なら何が問題か | 一般的な対策 | 状態 |
|---|---|---|---|
| 多数の仮想サーバーをActive Directoryでまとめて管理し、共通の管理者権限で横に移動できた | 1か所の管理者権限で、多くの利用者の環境に入れる | 管理者権限を環境ごとに分ける、ローカル管理者パスワードを個別にする、特権アクセスの管理 | 未検証 |
配布したリモートデスクトップの設定で「ドライブのリダイレクト」が有効だった(\\tsclient\C) | 借りた部屋の中から、接続してきた利用者のPCのファイルが見える | 配布設定で既定を無効にする。利用者側も接続時にドライブ共有を外す | 未検証 |
| 解約した利用者のサーバーが残っていた | 過去の利用者の鍵も盗まれうる | 解約時の確実な消去と、その記録 | 未検証 |
| サポート業務での認証情報の扱いに問題があった | サポート用の共通の鍵が、全体の合鍵になる | 共有パスワードの廃止、作業ごとの一時的な権限 | 未検証 |
※出典:セキュリティ対策Lab(2026年10月25日)が紹介した犯行声明の内容。同記事も、攻撃者が実際の侵入者と同じかどうかや、ログの真正性は検証できていないとしています。
利用者側でできる、リモートデスクトップの設定
Windows標準の「リモートデスクトップ接続」では、接続前の[オプションの表示]→[ローカル リソース]→[詳細]で、接続先から自分のPCのドライブを使えるようにする設定を選べます。借りたパソコンにファイルを渡す必要がないなら、ドライブにはチェックを入れないのが安全です。クリップボードの共有も、必要なときだけにします。これは今回の主張が本当かどうかにかかわらず、リモートで他人の設備につなぐときの基本です。
取引口座の側で効く守り
- 2段階認証・パスキー:パスワードが盗まれても、それだけではログインできなくします。ただし、すでに発行されたセッションには効かないことがあるため、切断とセットです。
- ログイン通知:見慣れない端末からのログインを知らせる通知を受け取れるようにします(アヴァトレード・ジャパンも通知メールの確認を案内)。
- 事業者側の対応:GMOは、主要な取引所・証券会社に、このサービス経由のアクセス遮断、全セッションの強制切断、不正取引の監視を要請しています。
「能動的サイバー防御」の要請について
GMOは第4報で、今回の件を能動的サイバー防御の「発動第1号」事案として、政府に措置を求めたと発表しました。能動的サイバー防御は、国が攻撃に使われているサーバーなどに入り、無害化して被害を防ぐ仕組みです。2025年に関連の法律が成立し、報道によると、攻撃元への「アクセス・無害化措置」は2026年10月1日からできるようになりました。
ただし、使うかどうかを決めるのは政府です。GMOの代表ブログ自身も、GMOは法律でいう「特定社会基盤事業者」ではないこと、政府が主体的に判断するものであることを理解した上で要請した、と書いています。2026年10月26日時点で、政府が今回の件に措置を行ったという発表は見当たりません。
よくある質問
このサービスを使っていなければ、関係ありませんか?
直接の対応はいりません。ただ、ほかの会社のVPSでFXの自動売買をしている人は、念のためパスワード変更と履歴の確認をしておくと安心です。また「パスワードを替えたら全端末ログアウト」「事件のあとの補償メールは疑う」は、どのサービスでも役に立ちます。
パスワードを替えたのに、また取引されました。なぜですか?
前のログイン(セッション)が残っている可能性があります。FX会社のマイページで全セッションを切るか、窓口に切断を頼んでください。ほかに、新しいパスワードを乗っ取られた部屋や、ウイルスに感染した端末で設定していないかも確かめてください。
自宅のパソコンもウイルスに感染していますか?
分かっていません。攻撃者は利用者のPCの情報も持っていると主張していますが、確認されていません。GMOは調査中としたうえで、「予防的な対応」として自分の端末のフルスキャンとバックアップをお願いしています。おかしな動きがあれば、まず検査をしてください。
損した分は戻ってきますか?
GMOは、不正な取引で実際に出た損(差損・手数料など)を補償すると発表しています。相場の値動きによる損や、得られたはずの利益は対象外です。FX会社からの返金があれば、その分を引いた残りが払われます。申請方法は11月6日までに案内される予定です。
見舞金5,000円のメールが来ました。本物ですか?
GMOは、10月30日23:59までに登録メールアドレスへ案内するとしています。本物かどうか迷ったら、メールのリンクは押さず、GMOやお名前.comの公式ページから自分でたどって確かめてください。パスワードや暗証番号を求めてきたら偽物を疑います。
攻撃者にお金を払えば止まるのでは?
GMOは要求に応じない方針です。払っても、盗まれた情報が消される保証も、悪用されない保証もないためです。警察に通信記録などの証拠を提出し、刑事事件として捜査を求めています。
📚 出典(2026年10月26日に確認)
運営会社(GMOインターネット)
- 第1報(2026年10月21日 4:00時点)https://www.onamae.com/news/article/11584
- 第2報(10月22日 16:59時点)https://group.gmo/info/alert/20261022/
- 第3報(10月23日 16:10時点)https://group.gmo/info/alert/20261023/
- 第4報(10月24日 11:50時点)見舞金・補償・脅迫・能動的サイバー防御 https://group.gmo/info/alert/20261024/
- 第5報(10月24日)改めてのお願い https://group.gmo/info/alert/2026102402/
- 代表ブログ公開のお知らせ(10月25日)https://group.gmo/info/alert/20261025//代表ブログ https://www.kumagai.com/?eid=19600
FX会社
- アヴァトレード・ジャパン「お名前.com デスクトップクラウド」への不正アクセスに関する注意喚起(10月23日)https://www.avatrade.co.jp/archives/support/updates/16924
- FXTF(ゴールデンウェイ・ジャパン)のお知らせ(10月22日)https://www.fxtrade.co.jp/2026-10-22/
報道
- Security NEXT(10月23日)https://www.security-next.com/191883
- ITmedia NEWS(10月23日)利用者の被害報告・料金 https://www.itmedia.co.jp/news/article/2610/23/2000002532/
- Impress Watch(10月23日)https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/2150663.html
- セキュリティ対策Lab(10月25日)犯行声明の内容と検証状況 https://rocket-boys.co.jp/security-measures-lab/gmo_onamae_hacker_statement_lab_sources_20261025/
- @IT(2026年10月3日)能動的サイバー防御の始動 https://atmarkit.itmedia.co.jp/ait/articles/2610/03/news001.html
鍵を替えたら、全員退室。
この記事は2026年10月26日時点の公式発表と報道をもとにしています。補償の申請方法(11月6日まで)など、新しい情報が出たら更新します。
相談窓口:お名前.com お問い合わせフォーム https://help.onamae.com/contact/ / 電話 03-5456-2560(24時間)

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