
ゼロトラストとは?NISTの7原則と、それでも残る7つの脅威
買って実現するものではありません。何を決めるかの話です。原典に何が書いてあるか確認しました。
30秒でわかる「ゼロトラスト」
- 社内ネットワークの内側だからといって信用せず、アクセスのたびに確認するという設計の考え方です。製品の名前ではありません。
- 社員が社外から働き、データがクラウドにある以上、「社内/社外」という境界線がもう引けなくなったことが背景にあります。
- 2025年のランサムウェア被害では侵入経路の6割以上がVPN機器(警察庁)。境界を守る装置そのものが入口になっています。
- 誤解:「ゼロトラスト製品を買えば実現する」。実際はNISTが7つの基本原則として定義した方針で、段階的にしか進みません。
- 今日やること:VPNさえ通れば社内が全部見える状態になっていないか確認する。ここが最初の一歩です。
この記事の地図(全8章)
「ゼロトラスト」は、説明を読んでも実感が湧きにくい言葉の代表だと思います。「何も信頼しない」と言われても、では具体的に何をするのかが見えません。
この記事は、原典に何が書かれているかを確認するところから始めます。ゼロトラストにはNISTが2020年8月に公開した SP 800-207「Zero Trust Architecture」 という定義文書があり、そこに7つの基本原則が明記されています。第3章でその全項目を扱います。
そして第4章では、同じ文書がゼロトラストにしても残ると認めている7つの脅威を紹介します。推進側の資料ではまず語られない部分です。
この記事は2026年8月16日時点の内容です。定義と原則はNIST SP 800-207(2020年8月公開)の原文、実装ガイドはNIST SP 1800-35(2025年6月10日 最終版公開)、統計は警察庁『令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について』およびIPA『情報セキュリティ10大脅威 2026』にもとづき、出典を記事末に記載しています。
原文は英語です。日本語訳は筆者によるもので、公式訳ではありません。正確な文言は必ず原典をご確認ください。
ゼロトラストとは(やさしい定義)
「信じない」ではなく「場所で信じない」です
「社内ネットワークの内側にいる」というだけでは信用せず、資源へのアクセスのたびに、誰が・どの端末で・どんな状態かを確認して許可を判断する、という設計の考え方です。
まず、いちばん誤解されやすい点から。ゼロトラストは「誰も信用しない」という話ではありません。信用しないのは「場所」です。
NIST SP 800-207 のアブストラクトには、こう書かれています。
Zero trust assumes there is no implicit trust granted to assets or user accounts based solely on their physical or network location…or based on asset ownership.
(ゼロトラストは、資産やユーザーアカウントに対して、物理的な場所やネットワーク上の位置だけを根拠に、あるいは資産の所有者が誰かという理由だけで、暗黙の信頼を与えないという前提に立つ。訳は筆者)
出典:NIST SP 800-207「Zero Trust Architecture」(2020年8月)Abstractここで否定されているのは「暗黙の信頼」です。従来は「社内LANにつながっている=信用してよい」「会社支給のパソコン=信用してよい」という前提がありました。その前提を外そう、というのがゼロトラストです。
同文書はさらに、ZTAはネットワークの区画ではなく資源そのものを守ることに焦点を当てるとしています。守る単位が「社内ネットワーク」から「データやサービス1つ1つ」へ移った、と考えると分かりやすいと思います。
建物と部屋の比喩
従来の守り方は「入口の警備を固めて、中に入った人は自由に歩ける建物」でした。ゼロトラストは「部屋ごとに鍵があり、入るたびに本人確認をする建物」です。玄関を突破されても、そこから先へ簡単には進めません。
第1章 おわり — 次は第2章
なぜ境界型の守りが破られたのか
玄関を固めたら、玄関そのものが入口になりました
ゼロトラストが必要とされる理由は、理屈ではなく統計に出ています。
| 指標 | 数値・順位 | 出典 |
|---|---|---|
| ランサムウェア被害の侵入経路 | VPN機器が6割以上 | 警察庁(2025年) |
| 同・標的型攻撃メールの添付 | 少なくなっている | 警察庁(2025年) |
| 2025年の初期侵入経路1位 | 脆弱性の悪用 32% | M-Trends 2026 |
| 組織向け脅威の第8位 | リモートワーク等の環境や仕組みを狙った攻撃(6年連続6回目) | IPA 10大脅威 2026 |
出典:警察庁『令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について』(2026年3月公表)、Google Cloud / Mandiant「M-Trends 2026」、IPA『情報セキュリティ10大脅威 2026』。
1行目が、境界型防御の限界をそのまま示しています。VPN機器とは、社内と社外の境界を守るために置いた装置です。その装置が、いま最も多く使われている侵入経路になっています。
そしてVPNの構造上の問題は、いったん通ってしまえば社内の広い範囲にアクセスできてしまうことです。玄関の鍵を1つ突破されると、建物全体を歩き回れます。
| 攻撃者が認証情報を盗んだあと | 境界型(VPN) | ゼロトラスト型 |
|---|---|---|
| 社内ネットワークへの接続 | できる | できるが、それだけでは何も見えない |
| ファイルサーバーへのアクセス | そのままアクセスできる | 資源ごとに再度の認証・認可が必要 |
| 他の端末への横展開 | 同一ネットワーク内を探索できる | 通信が制限され、探索しにくい |
| 気づけるか | 正規のVPNログインに見える | 端末の状態や振る舞いから異常を検知し得る |
両者の違いを筆者が整理したものです。実際の効果は実装によって大きく異なります。
ゼロトラストは「侵入されない」ではありません
上の表でも、1行目は「できる」のままです。ゼロトラストが変えるのは侵入されたあとに攻撃者が動ける範囲であって、侵入そのものを止めるわけではありません。VPN機器の更新は、ゼロトラストを進めても引き続き必要です。
第2章 おわり — 次は第3章
NISTが定めた7つの基本原則
「ゼロトラストとは何か」の答えは、ここにあります
NIST SP 800-207 は、ゼロトラストを「除外するもの」ではなく「備えるべき基本原則」で定義するという方針を取り、7つの原則を挙げています。同文書はこれを理想の目標であり、すべてが純粋な形で実装されるとは限らないとも明記しています。
| # | 原則(筆者訳) | 実務では何をすることか |
|---|---|---|
| 1 | すべてのデータソースとコンピューティングサービスを「資源」とみなす All data sources and computing services are considered resources. | 守る対象の一覧を作る。私物端末も、社内資源にアクセスするなら資源として扱い得る |
| 2 | ネットワーク上の位置に関係なく、すべての通信を保護する All communication is secured regardless of network location. | これが核心。社内ネットワークからの要求も、社外からの要求と同じ基準で審査する |
| 3 | 個々の資源へのアクセスは、セッション単位で許可する Access to individual enterprise resources is granted on a per-session basis. | 1つの資源に入れたからといって、別の資源に自動で入れてはいけない。最小権限で渡す |
| 4 | アクセスの可否は動的なポリシーで決める Access to resources is determined by dynamic policy. | 利用者の属性だけでなく、端末の状態・時刻・場所・普段と違う振る舞いなども判断材料にする |
| 5 | 保有・関連するすべての資産の状態を継続的に測定する The enterprise monitors and measures the integrity and security posture of all owned and associated assets. | 本質的に信頼できる資産は存在しない。更新されていない端末は扱いを変える(接続拒否も含む) |
| 6 | 認証と認可は動的に、アクセス許可の前に厳格に実施する All resource authentication and authorization are dynamic and strictly enforced before access is allowed. | 多要素認証を含む。通信の途中でも再認証・再認可が起こり得る |
| 7 | 資産・ネットワーク・通信の現状について可能な限り情報を集め、防御の改善に使う The enterprise collects as much information as possible … and uses it to improve its security posture. | ログの取得と活用。集めた情報をポリシーの改善に回す |
出典:NIST SP 800-207「Zero Trust Architecture」2.1 Tenets of Zero Trust。英文は原文からの引用(見出し文のみ)、日本語は筆者訳で公式訳ではありません。右列は筆者による補足です。
この7つを眺めて気づくのは、どれも「製品を買う」という話ではないということです。
1番は資産の棚卸し。3番はアクセス権の設計。5番は端末の更新状況の管理。7番はログの取得。製品が必要なものもありますが、出発点はどれも「決めること」と「把握すること」です。
2番だけ覚えて帰ってもいい
7つのうち1つだけ選ぶなら、2番「ネットワーク上の位置に関係なく、すべての通信を保護する」です。原文は「ネットワーク上の位置だけでは信頼を意味しない」「社内ネットワーク上の資産からのアクセス要求も、他と同じセキュリティ要件を満たさなければならない」と述べています。ゼロトラストという言葉の中身は、ほぼこの1文に集約されます。
第3章 おわり — 次は第4章
誤解と、NIST自身が挙げる7つの脅威
推進側の資料では、まず語られない部分です
第3章の7原則を見てのとおり、ゼロトラストは設計方針であって製品カテゴリではありません。「ゼロトラスト対応」をうたう製品は、7原則のどれか一部を助けるものです。
NIST SP 800-207 自身も、7原則を「理想の目標であり、ある戦略においてすべての原則が純粋な形で完全に実装されるとは限らない」と述べています。つまり「ゼロトラストが完成した状態」というゴールは、文書の側も想定していません。
製品を検討するときは、「ゼロトラストになりますか」ではなく「7原則のどれを、どこまで満たしますか」と聞いてください。答えられない提案は、中身がありません。
もう1つ、ほとんど語られないことがあります。NIST SP 800-207 には「ゼロトラストアーキテクチャに関連する脅威」という章があり、ZTAにしても残る問題が7つ挙げられています。そのまま紹介します。
| # | NISTが挙げる脅威(筆者訳) | どういうことか |
|---|---|---|
| 1 | ZTAの意思決定プロセスの破壊 Subversion of ZTA Decision Process | 許可を判断する仕組み自体が乗っ取られたら、すべてが崩れます。集中させたぶん、そこが標的になります |
| 2 | サービス妨害・ネットワーク遮断 Denial-of-Service or Network Disruption | アクセスのたびに判断する構造上、判断役に到達できないと誰も仕事ができなくなります |
| 3 | 認証情報の窃取・内部不正 Stolen Credentials/Insider Threat | 正規の利用者として振る舞われると、ゼロトラストでも見抜けません |
| 4 | ネットワークの可視性 Visibility on the Network | 通信を暗号化するほど、中身の検査が難しくなります |
| 5 | システム・ネットワーク情報の保管 Storage of System and Network Information | 判断のために集めたログ自体が、攻撃者にとって価値の高い情報になります |
| 6 | 独自形式・独自製品への依存 Reliance on Proprietary Data Formats or Solutions | 特定ベンダーに固定され、乗り換えられなくなります |
| 7 | 管理における非人間主体(NPE)の利用 Use of Non-person Entities (NPE) in ZTA Administration | 自動化された主体(AIやスクリプト)に管理を任せる際の、誤判定や悪用のリスク |
出典:NIST SP 800-207「Zero Trust Architecture」5章 Threats Associated with Zero Trust Architecture の見出し。日本語訳と右列の説明は筆者によるもので、公式訳ではありません。
とくに3番に注目してください。盗まれた認証情報で正規の利用者として入られた場合、ゼロトラストでも防ぎきれないとNIST自身が認めています。だからこそ、フィッシング耐性のある認証(パスキーなど)と、振る舞いの監視が併せて必要になります。
そして1番と2番は、ゼロトラストの構造そのものが生む新しいリスクです。判断を1か所に集めれば、そこが単一障害点になります。ゼロトラストは万能の解決ではなく、リスクの形を変える選択だということです。
第4章 おわり — 次は第5章
個人・テレワークをしている方へ
導入するものではありませんが、影響は受けます
ゼロトラストは組織の設計方針なので、個人が導入するものではありません。ただしテレワークをしている方は、その影響を直接受けます。「以前は社内にいれば見えていた資料が、認証を求められるようになった」といった変化がそれです。
また、7原則のうちいくつかは個人の行動にそのまま置き換えられます。
| NISTの原則 | 個人に置き換えると | やること |
|---|---|---|
| 原則2:場所で信頼しない | 「自宅のWi-Fiだから安全」と考えない | 自宅でも会社と同じ手順で接続する。公衆Wi-Fiでは特に |
| 原則5:資産の状態を測る | 自分の端末を最新に保つ | OSとアプリの自動更新を有効にする。更新していない端末は接続を拒否される場合があります |
| 原則6:認証を厳格に | 多要素認証・パスキーを使う | NISTの原則6は多要素認証の利用を明記しています |
| 原則3:セッション単位で許可 | こまめにログアウトする | 共有端末や離席時。開きっぱなしのセッションは狙われます |
NIST SP 800-207 の原則を個人の行動に置き換えた、筆者による整理です。
「認証が増えて面倒」には理由があります
ゼロトラストが進むと、社内にいても認証を求められる場面が増えます。面倒に見えますが、それは第2章の表の2行目・3行目を止めるためのものです。認証情報を盗まれても、そこから先へ進めなくする——その手間を、全員で少しずつ負担している形になります。
【ゲーム】機器を正しい場所に配置して、攻撃からネットワークを守れ
ゼロトラストは「どこに何を置くか」の話でもあります。ネットワーク図の上で機器を配置し、攻撃を防いでみると、境界型との違いが体感できます。
無料であそぶ第5章 おわり — 次は第6章
会社・組織でやる対策(移行7ステップ)
NISTが示した順番が、そのまま使えます
NIST SP 800-207 には「境界型のネットワークにゼロトラストを導入する手順」という節があり、7つのステップが示されています。何から始めればよいか分からない、という場合はこの順番が答えになります。
| 順 | NISTのステップ(筆者訳) | 実際にやること | 費用 |
|---|---|---|---|
| 1 | 組織内の主体を洗い出す Identify Actors on the Enterprise | 誰が、どのアカウントで、何にアクセスしているかを把握する | 無料 |
| 2 | 組織が保有する資産を洗い出す Identify Assets Owned by the Enterprise | 端末・サーバー・クラウド・私物端末まで。ここで必ず想定外が出ます | 無料 |
| 3 | 主要な業務プロセスとリスクを評価する Identify Key Processes and Evaluate Risks | 止まると困る業務から着手する。いきなり全社に広げない | 無料 |
| 4 | 対象範囲のポリシーを策定する Formulating Policies for the ZTA Candidate | 誰が・どの条件で・何にアクセスしてよいかを文章にする | 無料 |
| 5 | 候補となるソリューションを選ぶ Identifying Candidate Solutions | 製品の検討はここで初めて出てきます(5番目です) | — |
| 6 | まず導入し、監視する Initial Deployment and Monitoring | 小さく始めて、影響を見る | 中 |
| 7 | 適用範囲を広げる Expanding the ZTA | 1つ動いてから次へ。段階的にしか進みません | 中〜 |
出典:NIST SP 800-207「Zero Trust Architecture」7.3 Steps to Introducing ZTA to a Perimeter-Based Architected Network の見出し。日本語訳と右2列は筆者によるものです。
この表でいちばん伝えたいのは、製品の検討が5番目にあるということです。1〜4は費用がかからず、しかも飛ばすと5番以降が機能しません。
とくに2番の資産の洗い出しは、実施すると必ず何かが見つかります。退職者が立てた検証環境、部署が独自に契約したクラウド、解約し忘れたサービス。把握できていない資産は、ゼロトラストのポリシーの外側にあります。
中小企業が最初にやる1歩は「多要素認証の全社適用」です
7ステップは正論ですが、専任者のいない組織には重い工程です。現実的な出発点を1つ挙げるなら、原則6にあたる多要素認証を全社員・全システムに適用することです。費用が小さく、盗まれた認証情報での侵入を直接止められます。そのうえで、2番の資産の洗い出しに進んでください。
なお、実装の具体例を知りたい場合は、NISTがSP 1800-35「Implementing a Zero Trust Architecture」を2025年6月に最終版として公開しています。24社のベンダーと連携し、市販製品で19通りの実装を構築・検証した結果がまとめられています。
第6章 おわり — 次は第7章
それでも起きたときの最初の10分
ゼロトラストでも、第4章の3番は防げません
NIST自身が挙げているとおり、盗まれた認証情報で正規の利用者として入られるケースは、ゼロトラストでも防ぎきれません。起きた場合の初動を書きます。
| 順 | やること | やってはいけないこと | 理由 |
|---|---|---|---|
| 1 | 該当アカウントを無効化し、全セッションを失効させる | パスワード変更だけで終える | セッションが生きていれば、変更後も入り続けられます |
| 2 | そのアカウントがどの資源にアクセスしたかをログで洗い出す | 端末だけ調べる | ゼロトラストの利点はここ。資源ごとに記録が残っています |
| 3 | 関係する端末をネットワークから隔離する | 電源を切る | 電源を切るとメモリ上の痕跡が失われ、調査が困難になります |
| 4 | 判断を下す仕組み側(ポリシーエンジン等)が改ざんされていないか確認する | 利用者側だけ疑う | 第4章の脅威1番。ここが乗っ取られていたら全体が崩れます |
| 5 | ログを保全し、判断できる人・委託先・警察へ連絡する | 一人で切り分けを続ける | 初動の目的は解決ではなく、被害拡大の防止と記録の保全です |
電源に関する注意は警察庁『令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について』の「ランサムウェア被害後の対応策」にもとづきます。その他は実務上の一般的な整理です。
相談先(公的機関)
- 都道府県警察のサイバー犯罪相談窓口(緊急性が高い場合は110番)
- IPA 情報セキュリティ安心相談窓口
- JPCERT/CC(組織としてのインシデント報告)
- 個人データが関わる場合:個人情報保護委員会
侵入を許しても、攻撃者が触れた資源の範囲が限定されており、その範囲をログで説明できる状態です。「どこまでやられたか分かりません」ではなく「この3つの資源にアクセスされました」と言える。これがゼロトラストの実利で、境界型ではこの答えが出せません。
第7章 おわり — 次は第8章
関連用語と、次に読む記事
この語とセットで覚えると理解が早くなります
| こんな方に | 次に読む記事 |
|---|---|
| 手を動かして体感したい | 【ゲーム】機器を配置してネットワークを守れ |
| 侵入後に気づく仕組みを知りたい | EDRとは?/XDRとは? |
| 原則7(ログ)を実務で進めたい | SIEMとは?/なぜ「ログは取っているのに守れない」のか? |
| VPN機器が狙われる話を知りたい | 境界機器が狙われる理由とは? |
| 何から守るのかを知りたい | ランサムウェアとは? |
| 認証の強化から始めたい | 多要素認証とパスキーの選び方 |
第8章 おわり — 最後にFAQ
ゼロトラストについてよく聞かれること
検索でよく見かける疑問から
VPNは廃止すべきですか?
ゼロトラストへ移行しても、多くの組織はしばらく併存させます。NIST SP 800-207 自身も、純粋なゼロトラストと境界型のハイブリッドな状態が続くことを想定した節を設けています。廃止よりも先に、VPNを通ったあとに社内が全部見える状態を狭めることが実際の効果につながります。
何から始めればいいですか?
NISTの手順では、①主体(誰が)の洗い出し ②資産の洗い出し ③重要業務とリスクの評価 ④ポリシー策定、と続き、製品の検討は5番目です。専任者がいない組織であれば、まず多要素認証の全社適用(原則6に相当)から着手し、並行して資産の洗い出しを進めるのが現実的です。
個人にも関係ありますか?
個人が導入するものではありませんが、テレワークをしていれば影響を受けます。また7原則のうち「場所で信頼しない」「端末を最新に保つ」「多要素認証を使う」の3つは、個人の行動にそのまま置き換えられます。第5章にまとめました。
ゼロトラストにすれば侵入されなくなりますか?
なりません。ゼロトラストが変えるのは侵入されたあとに攻撃者が動ける範囲です。さらにNIST SP 800-207 自身が、ZTAでも残る脅威として認証情報の窃取・内部不正や判断を下す仕組み自体の乗っ取りなどを挙げています。万能の解決ではなく、リスクの形を変える選択だとお考えください。
出典・参考
- NIST SP 800-207「Zero Trust Architecture」(2020年8月公開) https://csrc.nist.gov/pubs/sp/800/207/final
- NIST SP 1800-35「Implementing a Zero Trust Architecture」(2025年6月10日 最終版公開) https://csrc.nist.gov/pubs/sp/1800/35/final
- 警察庁サイバー警察局『令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について』(2026年3月公表) https://www.npa.go.jp/publications/statistics/cybersecurity/data/R7/R07_cyber_jousei.pdf
- Google Cloud / Mandiant「M-Trends 2026」(2026年3月公表) https://cloud.google.com/blog/topics/threat-intelligence/m-trends-2026/
- IPA 独立行政法人情報処理推進機構『情報セキュリティ10大脅威 2026』(2026年1月29日公表) https://www.ipa.go.jp/security/10threats/10threats2026.html
最終更新:2026年8月16日/次回見直し予定:2027年4月(NISTの改訂と各年次資料の公表に合わせて)



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