デジタルフォレンジックとは?証拠保全の現場が「当日の新聞」を撮る理由
目的は原因究明ではありません。あとで「本物だ」と言えるようにすることです。
30秒でわかる「デジタルフォレンジック」
- 機器に残った記録を壊さずに取り出し、あとから「本物だ」と言える形で保存して調べる技術です。医療の「法医学(forensics)」から来た言葉です。
- 手順は収集 → 取得 → 保全 → 分析の4段階。分析はいちばん最後で、その前の3つで結果が決まります。
- ランサムウェア被害組織のうち、ログがすべて保全されていたのは25件、一部が利用できなかったのは64件でした(警察庁)。
- 誤解:「とりあえず電源を切る」。順番を間違えると、メモリ上の証拠が消えます。ただし「絶対に切るな」も正確ではありません(第5章)。
- 今日やること:主要なログの保存期間が何日かを確認する。30日なら、気づいた時にはもう無いかもしれません。
この記事の地図(全8章)
「フォレンジック調査を依頼してください、と言われた」「調査費用の見積もりが想像より高かった」——そういう場面で調べに来られた方が多いと思います。
この記事の中心は第5章です。ネット上には「電源を切るな」と「電源を抜け」の両方が書かれていて、どちらも間違いではありません。順番が違うだけです。ここを取り違えると、費用をかけて調査を頼んでも「分かりませんでした」で終わります。
この記事は2026年8月17日時点の内容です。手順と用語の定義は、特定非営利活動法人デジタル・フォレンジック研究会(IDF)『証拠保全ガイドライン 第10版』(2025年3月15日)と、IETF RFC 3227(2002年2月)にもとづきます。国内の統計は警察庁『令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について』(2026年3月公表)です。
実際の証拠保全は、法的な証拠能力に関わります。この記事は全体像をつかむためのもので、個別の事案での判断は、専門事業者・法務・弁護士にご相談ください。
デジタルフォレンジックとは(やさしい定義)
調べる技術である前に、壊さない技術です
機器やサービスに残った記録(電磁的記録)を元の状態を変えずに取り出し、あとから「これは本物だ」と示せる形で保存したうえで解析する技術と手続きの総称です。日本語では「デジタル鑑識」と訳されることもあります。
IDF『証拠保全ガイドライン 第10版』は、この分野をこう説明しています。
デジタル・フォレンジックは、インシデントに関わるデジタル機器上の電磁的記録を確実かつ正確に(As-is)で、収集(Collection)・取得(Acquisition)し、保全(Preservation)しておくことを基盤として、分析・解析(Analysis)を行い、法的紛争やトラブルにおける適正な立証に資するものである。
NPOデジタル・フォレンジック研究会『証拠保全ガイドライン 第10版』(2025年3月15日)1-2節注目してほしいのは「分析・解析を行い」の前に、3つの動詞が置かれていることです。この分野で費用と時間がかかるのは、実は分析ではなく、その手前の3つです。
| 段階 | 英語 | 何をするか |
|---|---|---|
| 1. 収集 | Collection | 証拠が入っていそうな機器を特定して確保する |
| 2. 取得 | Acquisition | その中身を物理複製・論理複製・イメージ取得する |
| 3. 保全 | Preservation | 毀損・滅失を防ぐため適正に保存し管理する |
| 4. 分析 | Analysis | ようやくここで中身を調べる |
出典:同ガイドライン「2. 用語の定義」の各項目より。日本語の定義文はガイドラインの記述にもとづく要約です。
「調べる」より「触らない」が仕事です
この分野を一言でいうと、証拠に触った回数をできるだけ少なくし、触った事実をすべて記録する仕事です。ファイルを開くだけでアクセス日時が変わります。だから元のディスクは複製し、複製のほうを調べます。RFC 3227も「解析は証拠コピーに対しては行わないこと」と述べています。
第1章 おわり — 次は第2章
なぜ「調べられない」ことが起きるのか
費用ではなく、証拠が無いことが理由です
フォレンジック調査を依頼しても「分かりませんでした」で終わることがあります。理由は技術力ではありません。調べる対象が残っていないからです。
| ログの保全状況 | 件数 | 意味 |
|---|---|---|
| すべて保全されていた | 25件 | 全体像を追える |
| 一部が利用できなかった | 64件 | いちばん多い。途中で追跡が切れる |
| 利用できなかった | 8件 | ほぼ何も分からない |
| そもそも取得していなかった | 5件 | 調査以前の問題 |
出典:警察庁『令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について』(2026年3月公表)。ランサムウェア被害を受けた企業・団体等へのアンケート結果です。
完全に揃っていた組織は4分の1以下です。そして最多は「一部が利用できなかった」——つまり、途中まで追えて、肝心なところで切れる状態です。
もう1つ、時間の問題があります。当サイトで国内の情報漏えい630件を調べたところ、不正アクセスの場合、被害に気づくまでの中央値は442日でした。
| 原因 | 気づくまで(中央値) | ログが残っている可能性 |
|---|---|---|
| 不正アクセス | 442日 | ほぼ残っていない |
| 誤操作・設定ミス | 43日 | 設定次第 |
| 紛失・誤廃棄 | 11日 | そもそも機器が手元にない |
出典:当サイトの分析記事 漏えい630件の日付を発覚と公表に分けた。発覚日が明記されている75件を対象とした集計です。
442日と、多くのログの標準保存期間(30日〜90日)を並べてみてください。気づいた時点で、侵入時のログはとっくに消えています。これがフォレンジックの最大の敵です。
第2章 おわり — 次は第3章
現場は何をしているのか(新聞を撮る理由)
技術より、記録のほうが厳密です
IDFのガイドラインには、PCを保全するときのチェックシートが付いています。その3番目に、こう書かれています。
作業開始の前に、作業場所で、立会人と作業員の写真を撮影(ケース番号、当日の新聞をもって撮影)する。
『証拠保全ガイドライン 第10版』付録A「チェックシート(PCの場合)」項目3当日の新聞です。デジタルの話をしているのに、紙の新聞が出てきます。理由は単純で、「その日に、その場所で、この人たちが作業した」ことを、あとから否定されない形で残すためです。日付は改ざんできますが、当日の新聞紙面は用意できません。
この一項目が、この分野の性格をよく表しています。フォレンジックの厳密さは、技術ではなく手続きの側にあります。
消えやすいものから取る(揮発性の順序)
証拠には「消えやすさ」の順番があります。RFC 3227は「消えやすいものから、消えにくいものへ順に集めるべき」として、次の順を例示しています。
| 順 | 対象 | 消えるタイミング |
|---|---|---|
| 1 | レジスタ、キャッシュ | 一瞬で上書きされる |
| 2 | ルーティングテーブル、ARPキャッシュ、プロセステーブル、メモリ | 電源を切ると消える |
| 3 | 一時ファイルシステム | 再起動で消えることがある |
| 4 | ディスク | 電源を切っても残る |
| 5 | リモートのログ・監視データ | 保存期間の経過で消える |
| 6 | 物理構成、ネットワーク構成 | 機器の入れ替えで失われる |
| 7 | アーカイブ媒体 | 長期に残る |
出典:IETF RFC 3227「Guidelines for Evidence Collection and Archiving」2.1節 Order of Volatility(2002年2月)。日本語は筆者による訳です。
2番に注目してください。メモリの中身は、電源を切った瞬間に消えます。動いているマルウェア、復号された状態のデータ、接続中の通信先——ディスクには残らない情報が、ここにあります。
証拠として認められるための5条件
| 条件 | 意味 |
|---|---|
| Admissible(許容性) | 法廷に出す前提の、法的なルールを満たしていること |
| Authentic(真正性) | その証拠が確かにその事案のものだと結び付けられること |
| Complete(完全性) | 一部の見方ではなく、全体を語るものであること |
| Reliable(信頼性) | 収集と取り扱いの方法に、真正性を疑わせる点がないこと |
| Believable(説得性) | 法廷が容易に理解し、信じられるものであること |
出典:RFC 3227 2.4節 Legal Considerations。日本語訳と括弧内の訳語は筆者によるものです。
4番目が、この記事でいちばん実務的に効きます。技術的に正しく取り出しても、取り扱いの記録が無ければ「信頼できない」と評価され得ます。だから作業ログを残し、ハッシュ値で同一性を検証し、誰が保管したかを記録します。この保管の連鎖をChain of Custody(証拠保全の一貫性)と呼びます。
なお日本では、この考え方は犯罪捜査規範第117条にも表れています。IDFのガイドラインは同条を引き、押収物の出納を明確にしておく必要があると説明しています。
実際の道具と手順を見たい方へ
ツールの全体像は FTK・Autopsy・AXIOM・Volatility・Wireshark、無料で始めるなら Autopsy入門、OS標準コマンドだけで調べる方法は 標準搭載コマンドでのフォレンジック にあります。学習の順路は DFIR完全ロードマップ にまとめています。
第3章 おわり — 次は第4章
よくある誤解と、似ている用語
DFIR・ログ調査・eディスカバリを整理します
| 用語 | 何を指すか | この語との関係 |
|---|---|---|
| デジタルフォレンジック | 証拠として使える形で保全し、解析する技術 | この記事の主題 |
| インシデントレスポンス | 事故を止めて復旧させる一連の対応 | 止めるのがIR、調べるのがフォレンジック |
| DFIR | 上の2つをまとめた呼び方 | 実務では分けずに動くため |
| ログ調査 | ログを読んで事実を追う作業 | フォレンジックの一部。証拠能力までは問わないことが多い |
| ファスト・フォレンジック | 必要な証拠だけを素早く抜き出す手法 | 完全複製を待たずに範囲を把握したいとき |
| eディスカバリ | 訴訟のための電子情報の開示手続き | 目的が訴訟対応。技術は重なる |
| マルウェア解析 | 検体そのものの挙動を調べる | 調べる対象が、環境ではなくプログラム |
ファスト・フォレンジックは『証拠保全ガイドライン 第10版』7-7節に項目があります。それ以外の対比は筆者による整理です。
よくある3つの誤解
| 誤解 | 実際は |
|---|---|
| 「削除したファイルは復元できる」 | できる場合もありますが、上書きされれば戻りません。SSDでは削除後にTRIMで実際に消去されることが多く、HDDより復元は困難です |
| 「調べれば犯人が分かる」 | 分かるのは多くの場合「どこから、いつ、何をされたか」までです。攻撃元は踏み台であることがほとんどで、人物の特定は捜査機関の仕事です |
| 「社内で調べてから外部に頼めばいい」 | 順序が逆です。社内で操作した時点で、証拠の一部は失われます。調べる前に、まず保全してください |
3行目が、実際にいちばん多い損失です
「まず自分たちで見てみよう」は自然な反応ですが、ファイルを開けばアクセス日時が変わり、再起動すればメモリの内容は消えます。善意の初動が、あとから「取り扱いが信頼できない」という評価につながることがあります。触る前に、記録を残してください。次章がその話です。
第4章 おわり — 次は第5章
「電源を切るな」が正しい場面と、正しくない場面
この章がこの記事の中心です
この分野を調べると、正反対に見える指示が出てきます。
| 出どころ | 書かれていること |
|---|---|
| 警察庁 | 「慌てて電源をオフにすると、ログ等の侵入の痕跡が失われてしまい、その後のフォレンジック調査が困難になる可能性がある」 |
| RFC 3227 | 「証拠の収集が完了するまでシャットダウンしてはならない」 |
| IDF 証拠保全ガイドライン | 「電源をOFFにする。Windowsの場合は、電源プラグを抜いて強制的に電源をOFFにする」 |
出典:警察庁『令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について』、RFC 3227 2.2節(日本語は筆者訳)、『証拠保全ガイドライン 第10版』付録A項目8。
3行目だけを読むと矛盾しているように見えます。矛盾ではありません。順番が違うだけです。
| 順 | やること | なぜ |
|---|---|---|
| 1 | ネットワークから隔離する(LANケーブルを抜く/無線を切る) | 被害の拡大を止める。電源は入れたまま |
| 2 | 画面の表示、時刻、状態を写真で記録する | あとから再現できない情報が画面に出ています |
| 3 | 必要ならメモリなどの揮発性情報を保存する | ここを飛ばすと、以降は二度と取れません |
| 4 | ここで初めて電源プラグを抜く(正規のシャットダウンをしない) | 終了処理でファイルが書き換わるのを防ぐため |
| 5 | ディスクを取り外し、書き込み防止装置を介して複製する | 原本に一切書き込まないため |
『証拠保全ガイドライン 第10版』付録Aのチェックシートの流れを、実務向けに筆者が要約したものです。実際の手順はガイドライン本文をご確認ください。
「電源を切るな」は1〜3の話、「プラグを抜け」は4の話です。そして4で正規のシャットダウンをしない理由は、RFC 3227が明快に書いています——攻撃者が終了処理のスクリプトを書き換えて、証拠を消すようにしている場合があるからです。
メモリの保存には専用ツールと知識が要ります。手順を誤ると、それ自体が証拠を汚します。専門事業者に連絡できる状況なら、1と2をやったうえで「電源を入れたまま、触らずに」待つのが最も安全です。
RFC 3227はもう1つ警告しています。ネットワークから切り離したことを検知して、証拠を消す仕掛け(デッドマンスイッチ)が仕込まれている場合がある——1番の隔離ですら、無条件に安全ではありません。だからこそ、判断できる人に早くつなぐことが優先されます。
時計を合わせる、という地味な項目
同じチェックシートの2番は「使用する機材の時計を日本標準時刻に合わせる」、5番は「OSのシステム時刻を記録する」です。複数の機器のログを突き合わせるとき、時計がずれていると順序が逆に見えます。「AのあとにBが起きた」が崩れると、原因の特定そのものが成立しません。地味ですが、決定的な項目です。
第5章 おわり — 次は第6章
クラウドでは何が変わるか
ディスクを取り外せない世界の話です
証拠保全ガイドラインは第10版(2025年3月)で「9. クラウドサービス」の章を新設しました。オンプレミスとは前提が違うためです。
| 論点 | オンプレミス | クラウド |
|---|---|---|
| 物理的な確保 | ディスクを取り外せる | 取り外せない。スナップショットやエクスポートで代替する |
| 取れる範囲 | すべて自社 | 事業者(CSP)の管理領域からは直接取得できない |
| ログの既定設定 | 自社の設計次第 | 認証とコントロールプレーン操作は標準で取れるが、データプレーン操作は明示的な設定が必要 |
| 保存期間 | 自社で決める | 既定で30日などに固定されている場合がある |
| 停止・再起動 | プラグを抜く判断 | リソース削除やサービス終了で揮発性データが破棄されるものがある |
| 使える機能 | — | バージョニング、リーガルホールド(書き込み・消去を禁止した長期保管) |
出典:『証拠保全ガイドライン 第10版』9章。IaaS/PaaS/SaaSの別により、CSP(提供者)とCSC(利用者)の管理領域は変わります。
3行目が、実務でいちばん見落とされます。「ログは取れているはず」と思っている操作が、既定では記録されていないことがあります。誰がいつ設定を変えたか(コントロールプレーン)は残っていても、誰がどのファイルを持ち出したか(データプレーン)は残っていない、という状態が起こり得ます。
そして4行目。ガイドラインはこう述べています——保持期間を経過したログデータの回復は極めて困難であるため、インシデント対応の初期の段階でログデータの外部保管を行う必要がある。第2章の442日を思い出してください。
クラウドのログを実際に追う
AWS・Azure・GCPそれぞれのログ調査の実際は クラウドフォレンジックとログ解析 に、ログの正規表現検索は 正規表現によるログ解析 にまとめています。
第6章 おわり — 次は第7章
事故に気づいた最初の10分で、証拠を守る
専門知識がなくてもできることだけを並べます
専門事業者が到着するまでに、証拠を守るためにできることがあります。いずれも技術を必要としません。
| # | やること | やってはいけないこと |
|---|---|---|
| 1 | LANケーブルを抜く/無線を切る(電源は入れたまま) | 電源ボタンで終了する、再起動する |
| 2 | 画面をスマートフォンで撮影する | 警告画面を閉じる |
| 3 | 気づいた時刻と、気づいたきっかけを書き留める | 記憶に頼る |
| 4 | 誰が何を操作したかを、時刻つきで記録する | 「念のため」で色々試す |
| 5 | 対象の機器に触らないよう周知する(貼り紙でも可) | 元に戻そうとする、初期化する |
| 6 | クラウドを使っているならログの外部保管を始める | 保存期間の確認を後回しにする |
| 7 | 判断できる人と、外部の相談先に連絡する | 社内だけで解決しようとする |
『証拠保全ガイドライン 第10版』4-1節(初動対応が未実施の場合に把握・記録すべき事項)を、専門知識のない担当者向けに筆者が整理したものです。
3番と4番が意外に重要です。ガイドラインは、検知・発覚から報告・対処依頼までの時間、その間に何をしたか、その事実を知る人物と人数を記録するよう求めています。これは調査のためだけでなく、あとで「対応が適切だった」と説明するための材料にもなります。
「事故に気づいた人が、最初にこの紙を見る」状態を作っておけば、初動で失うものが大きく減ります。いちばん安く、いちばん効果が確実な対策です。体制の作り方は CSIRTとは?、ケース別の初動は やられたときの最初の30分 にまとめています。
第7章 おわり — 次は第8章
関連用語と、次に読む記事
この語とセットで覚えると理解が早くなります
| こんな方に | 次に読む記事 |
|---|---|
| 学ぶ順番を知りたい | DFIR・デジタルフォレンジック完全ロードマップ |
| 無料ツールで手を動かしたい | Autopsy入門 |
| Windowsの痕跡を追いたい | LNK・ジャンプリスト・ETWの解析 |
| 素早く証拠だけ集めたい | KAPE/gKAPE実践ガイド |
| Linuxを調べたい | Linuxフォレンジック |
| ログ調査を練習したい | ログ調査官(ゲーム) |
| いま被害に遭っている | 最初の10分でやること(状況別) |
| 用語を一覧で見たい | セキュリティ用語辞典 |
第8章 おわり — 最後にFAQ
デジタルフォレンジックについてよく聞かれること
検索でよく見かける疑問から
自社で調べることはできますか?
目的によります。原因を知るための社内調査なら、ログを読む範囲でできることはあります。ただし法的な証拠として使う可能性があるなら、社内での操作はおすすめしません。第4章のとおり、触った時点で証拠の一部が失われ、取り扱いの信頼性も問われます。訴訟・懲戒・報告義務が絡む可能性が少しでもあるなら、保全を先に、専門事業者へ。手を動かして学びたい方は DFIRロードマップ をご覧ください。
費用はどれくらいかかりますか?
対象機器の台数、データ量、調査範囲、緊急度で大きく変わるため、金額の目安は書きません。代わりに、費用を左右する要因をお伝えします——①保全すべき機器の数 ②ログが残っているか ③クラウドが絡むか ④報告書の形式(社内向けか、法廷を想定するか)。とくに②で費用対効果が決まります。ログが無ければ、費用をかけても分からないためです。
警察に相談すれば調べてもらえますか?
被害届・相談は受け付けられ、捜査の一環として解析が行われることはあります。ただし捜査は「犯人を特定して立件する」ことが目的で、自社の「どこまで漏れたか」「いつ復旧できるか」を明らかにする作業とは目的が違います。報告義務や取引先への説明のためには、自社側の調査が別途必要になるのが通常です。両方を並行して進めてください。
ログは何日残せばいいですか?
一律の正解はありませんが、判断材料は第2章にあります。国内の不正アクセスは気づくまでの中央値が442日でした。既定の30日では、まず足りません。現実的には認証ログとネットワーク境界のログを優先して、可能な限り長く——最低でも1年を目標に検討してください。全部を長期保存するとコストが跳ねるので、種類ごとに期間を変える設計が現実的です。ログ管理の課題 で詳しく扱っています。
出典・参考
- 特定非営利活動法人デジタル・フォレンジック研究会(IDF)『証拠保全ガイドライン 第10版』(2025年3月15日) https://digitalforensic.jp/home/act/products/df-guideline-10th/
- IETF RFC 3227「Guidelines for Evidence Collection and Archiving」(2002年2月) https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc3227.txt
- 警察庁サイバー警察局『令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について』(2026年3月公表) https://www.npa.go.jp/publications/statistics/cybersecurity/data/R7/R07_cyber_jousei.pdf
- NIST SP 800-86「Guide to Integrating Forensic Techniques into Incident Response」 https://nvlpubs.nist.gov/nistpubs/Legacy/SP/nistspecialpublication800-86.pdf
- 当サイト『漏えい630件の日付を発覚と公表に分けた』(2026年8月9日) https://yasashii-cybersecurity.com/japan-breach-detection-vs-disclosure-2026/
最終更新:2026年8月17日/次回見直し予定:2027年3月(警察庁の年次資料および証拠保全ガイドラインの改訂に合わせて)


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