PSIRTとは?連絡が取れない会社は、社名が公表されます【2026年版】

FIRSTの公式日本語版とIPAの届出統計から

PSIRTとは?連絡が取れない会社は、社名が公表されます

CSIRTが守るのは社内。PSIRTが守るのは、出荷した先です。

30秒でわかる「PSIRT」

  1. 自社が開発・販売する製品やサービスの脆弱性に対応する、組織内の中核となるチームです。読みは「ピーサート」。
  2. FIRSTは「PSIRTはCSIRTとはまったく異なるサービスを提供する」として、文書そのものを別に作りました(第2章)。
  3. 日本には情報セキュリティ早期警戒パートナーシップという制度があり、脆弱性の届出は累計20,315件(2026年6月末)。
  4. 誤解:「ソフト会社だけの話」。IoT機器・アプリ・APIを提供していれば該当します。
  5. 今日やること:自社サイトに脆弱性の報告先が書いてあるか確認する。無いと何が起きるかは第6章です。

PSIRTは、必要な会社とそうでない会社がはっきり分かれる珍しい語です。だからこの記事は、まず「うちに要るのか」に答えます。

中心は第6章です。脆弱性の報告窓口を用意していない会社に、日本の制度が何をするか——これは想像より厳しく、そして公開情報として誰でも確認できます。

⚠ この記事の前提

この記事は2026年8月19日時点の内容です。PSIRTの定義と枠組みは、FIRST『PSIRT Services Framework Version 1.1 日本語版』(Software ISACとJPCERT/CCによる翻訳)にもとづきます。

日本の制度は『情報セキュリティ早期警戒パートナーシップガイドライン 2024年版』(2024年6月18日公開)と、IPA『ソフトウェア等の脆弱性関連情報に関する届出状況[2026年第2四半期]』の数値によります。制度の運用や統計は四半期ごとに更新されます。

CHAP1

第1章 / 全8章

PSIRTとは(やさしい定義)

Pは Product(製品)の P です

PSIRTは Product Security Incident Response Team の略で、「ピーサート」と読みます。FIRST(Forum of Incident Response and Security Teams)の公式文書は、こう定義しています。

製品セキュリティインシデント対応チーム(PSIRT)は、組織が開発・販売する製品、ソリューション、コンポーネント、サービスなどの、脆弱性リスクの特定や評価、対処に焦点を当てた組織内の中核となるエンティティである。

FIRST『PSIRT Services Framework Version 1.1 日本語版』はじめに

ここで大事なのは「組織が開発・販売する」という部分です。自社が世に出したものが対象——だから、出していない会社には要りません。逆に言えば、出しているなら業種を問わず該当します。

こういう会社はPSIRTが要るか
ソフトウェアを販売している要ります
IoT機器・組込み機器を作っている要ります(自動車、複合機、カメラ、産業機器など)
スマホアプリを配布している要ります(無料でも)
APIやSaaSを外部に提供している要ります
自社サイトだけを運営しているPSIRTではなくウェブサイト運営者として制度の対象(第5章)
買ったものを使っているだけ要りません。必要なのは CSIRT のほうです

整理は筆者によるものです。「有償か無償か」「主力事業かどうか」は関係ありません。利用者がいる限り、脆弱性が出れば連絡する相手がいます。

PSIRTは「独立した特殊部隊」ではありません

名前の響きから、専門家を集めた別動隊を想像しがちです。FIRSTはそれを明確に否定しています。

適切に設置されたPSIRTは、製品開発から切り離された独立したグループではなく、むしろ、組織におけるセキュアなエンジニアリングを推進する幅広い活動の一部として存在するものである。このような構成をとることによって、セキュリティ品質保証に関する活動を「セキュア開発ライフサイクル(SDL)」のなかに統合することができる。

同 はじめに
💡

「出荷後の保守」だけではありません

FIRSTは、製品のセキュリティインシデント対応がSDLの保守フェーズに位置づけられることが多い——理由は「製品の脆弱性の多くが、製品やサービスが市場にリリースされた後に報告されるから」——としつつ、こう続けます。「しかしPSIRTの活動は、製品のアーキテクチャ、設計、計画、リスクモデリングの各フェーズの早期の要件収集にも働きかけることができる。」設計段階から関わるほうが、直す量は減ります。

第1章 おわり — 次は第2章

CHAP2

第2章 / 全8章

CSIRTと何が違うのか

FIRSTは、文書ごと分けました

この違いは、FIRST自身の経緯がいちばん雄弁です。

CSIRT Services Frameworkを作成する過程で、PSIRTはCSIRTとはまったく異なるサービスを提供し、多くの場合まったく異なる環境で活動することが明らかになった。このため、PSIRTを対象とするドキュメントを別に作成することが決定された。

FIRST『PSIRT Services Framework Version 1.1 日本語版』目的

1つの文書で書こうとしたら、書けなかった——それくらい別物だということです。違いの核心も明記されています。

PSIRTが組織内CSIRT等と異なる点は、その活動の中心が製品のセキュリティである、ということである。一般に組織内CSIRTの活動は、組織のインフラを構成するコンピュータシステムやネットワークのセキュリティに重きを置いている。

同 PSIRTとCSIRTの違い

当サイトで扱ってきた3つの体制を並べると、こうなります。

 SOCCSIRTPSIRT
守る対象自社のシステム自社の組織出荷した製品・サービス
誰のために動くか運用部門経営層・社内・関係機関製品の利用者・下流のベンダ
主な相手アラート、ログ社内各部門、外部の関係機関脆弱性の発見者、顧客、調整機関
時間軸秒〜分(検知)時間〜日(対応)週〜月(修正版の開発と公表調整)
失敗すると気づけない対応が止まる利用者が直せないまま放置される

整理は筆者によるものです。詳しくは SOCとは?CSIRTとは? をご覧ください。

4行目の時間軸が、実務ではいちばん効きます。CSIRTの仕事は「今起きている事故を止める」ことなので、時間との勝負です。PSIRTの仕事は、報告を受けて、再現して、修正版を作って、テストして、利用者に配って、公表を調整する——数週間から数か月かかります。同じ人が兼任すると、火事のたびに製品対応が止まります。

💡

ただし、切り離すのも間違いです

FIRSTは「組織内CSIRTとPSIRTには重要な違いがあるが、両者の間の相乗効果を認識しておくことも重要である。PSIRTは組織の他の部分から独立して機能するものではない」としています。自社製品の脆弱性が、自社の運用でも使われている——ということは普通に起こります。兼任してもよいが、役割としては分けて書いておくのが現実的な落としどころです。

第2章 おわり — 次は第3章

CHAP3

第3章 / 全8章

6つのサービスエリア

全部やる必要はありません

FIRSTのフレームワークは「サービスエリア → サービス → 機能 → サブ機能」という4階層で書かれています。いちばん上の6つが、PSIRTの仕事の全体像です。

 サービスエリアひとことで言うと
1ステークホルダエコシステムマネジメント誰に、何を、どう伝えるかを決めておく
2脆弱性の発見自社製品の問題を、様々な情報源から拾う
3脆弱性情報のトリアージと分析本当か、どれくらい深刻かを見極める
4対策修正版を作り、利用者と下流のベンダに届ける
5脆弱性の開示いつ、何を、公に説明するか
6トレーニングと教育開発側も含めて、継続的に学ぶ

FIRST『PSIRT Services Framework Version 1.1 日本語版』のサービスエリア構成より。日本語版はSoftware ISAC(一般社団法人コンピュータソフトウェア協会)とJPCERT/CCが翻訳し、KONICA MINOLTA PSIRT・Mitsubishi Electric PSIRT・Panasonic PSIRTがレビューしています。

この6つを見て、「うちには無理だ」と思わないでください。フレームワークは「ガイドであり、さまざまな組織モデル、機能、サービス、達成すべき成果を提示している」もので、「チームは自由に独自のモデルを実装し、ステークホルダ固有のニーズを満たす機能を構築できる」と明記されています。

そして注目すべきは1番と5番です。技術的な作業(2〜4番)ではなく、「誰に伝えるか」と「いつ公表するか」がフレームワークの両端を占めています。これは、CSIRTの記事で見た「技術力よりコミュニケーション能力」という話と同じ構図です。

サービスエリア1に、いちばん見落とされる要求があります

フレームワークのサブ機能1.4.1.1は、こう書いています。「ステークホルダがセキュリティ脆弱性の改修や製品のサポート期間に関して何を期待できるかを、組織は明確かつ公的に述べる必要がある。」——「いつまでサポートするか」を公に書いていない製品は、利用者が判断できません。脆弱性が出ても直らないのか、直るのか、それすら分からないからです。

第3章 おわり — 次は第4章

CHAP4

第4章 / 全8章

3つの組織モデルと、その弱点

ここでも「唯一の正解」は否定されています

CSIRTの記事で、JPCERT/CCが「CSIRTに『規格』はないのです」と書いていることを紹介しました。PSIRTでも、FIRSTがまったく同じことを言っています。

PSIRTの組織構造は、守る製品が多種多様であるのと同じように様々な形がある。(中略)結果として、どんな組織にも適用できる単一の製品セキュリティインシデント対応戦略やチームテンプレートは存在しない。ただし、現在構築・運用されているPSIRTのほとんどは、分散モデル、集中モデル、ハイブリッドモデルという3つのモデルのいずれかにあてはまるだろう。

FIRST『PSIRT Services Framework Version 1.1 日本語版』PSIRTの組織構造
モデル向いている組織課題
分散モデルPSIRT自体はごく小規模。製品開発チームの代表者と協力して脆弱性に対処する規模が大きく、多様な製品ポートフォリオを持つ組織(コストが分散される)トリアージや修正を行う担当者がPSIRTの直接の管理下になく、PSIRTに報告を行わない可能性がある
集中モデル各部門から選抜されたスタッフが、製品セキュリティ担当の上級幹部に報告するより小さい組織や同種の製品ポートフォリオを持つ組織。人材を1か所に集めて高度化できる拡張性に乏しく、製品ポートフォリオが拡大・多様化するとチーム維持にコストがかかる
ハイブリッドモデル両方の特性を選んで実装する組織構造と規模などを考慮して組み合わせたい場合どこを集中させ、どこを任せるかの線引きが必要

同 PSIRTの組織構造 より。分散モデルの課題として挙げられている「PSIRTに報告を行わない可能性がある」は、実務でよく見られる問題です。

分散モデルのPSIRTが担う役割として挙げられているものが、PSIRTの本質をよく表しています。

小規模なPSIRTでも担う役割
トリアージ・分析・対策作成・コミュニケーションに関するポリシー・プロセス手順・ガイドラインを作成する
組織全体を通して、製品セキュリティエンジニアリング担当者のマトリクスを確立する
製品の脆弱性対応と潜在的なビジネスリスクについて、リーダーシップを発揮したり、助言したりする
組織のなかで外部から寄せられる脆弱性情報の集中管理を行う部署として機能することで、スケールメリットをもたらす
新しい脆弱性を製品オーナーや管理者、セキュリティエンジニアに通知し、修正対応などの計画作成を支援する

同 分散モデル より抜粋。「自分で直す」役割が1つも入っていないことに注目してください。

💡

PSIRTは、直す人ではなく「受け止めて回す人」です

5つの役割はすべてポリシーを作る・人を結ぶ・助言する・集中管理する・通知して支援する——つまり調整です。修正コードを書くのは開発チームです。だから「セキュリティに詳しい人がいないからPSIRTは作れない」は、正しくありません。必要なのはまず、外から来た報告が確実に届いて、確実に誰かに渡る道です。

第4章 おわり — 次は第5章

CHAP5

第5章 / 全8章

日本の制度:早期警戒パートナーシップ

脆弱性の報告は、国の枠組みを通って来ます

日本では、脆弱性の発見者がいきなり製品開発者に連絡するとは限りません。公的な取扱制度があります。

項目内容
制度名情報セキュリティ早期警戒パートナーシップ
根拠経済産業省告示「ソフトウエア製品等の脆弱性関連情報に関する取扱規程」(平成29年経済産業省告示第19号、最終改正 令和6年経済産業省告示第93号)
指針『情報セキュリティ早期警戒パートナーシップガイドライン 2024年版』(2024年6月18日公開)
策定IPA、JPCERT/CC、JEITA、SAJ、JISA、JNSA
受付機関IPA(届出の受付)
調整機関JPCERT/CC(製品開発者との調整、公表日の調整)
公表先JVN(Japan Vulnerability Notes)

IPA『情報セキュリティ早期警戒パートナーシップガイドライン』のページおよびIPA四半期報告より。

制度が動いている規模は、四半期ごとに公表されています。2026年第2四半期(4〜6月)時点の数字です。

 当四半期累計(2004年7月8日〜2026年6月30日)
届出件数(合計)247件20,315件
うちソフトウェア製品182件6,716件
うちウェブサイト65件13,599件
修正完了(合計)72件12,192件
うちソフトウェア製品(JVN公表)54件3,236件
1就業日あたりの届出3.80件/日

IPA『ソフトウェア等の脆弱性関連情報に関する届出状況[2026年第2四半期]』より。累計は2026年第1四半期に2万件を超えました。

この表から読み取れることが2つあります。

読み取れること意味
毎日およそ4件、届いています脆弱性の報告は特別な出来事ではなく、継続的に流れてくるものです。だから「その都度考える」では回りません
届出20,315件に対して修正完了12,192件差の多くは「取扱い中」です。2026年第2四半期末時点で、ソフトウェア製品の取扱い中は2,649件あります

「取扱い中」は、IPA・JPCERT/CCが内容確認中のもの、または製品開発者が調査・対応中のものを指します。

そしてもう1つ、PSIRTを持つ側にとって重い数字があります。

🚨 届出から公表まで、45日以内は3割です

2026年第2四半期にJVN公表されたソフトウェア製品54件のうち、届出を受理してからJVN公表までの日数が45日以内だったものは16件(30%)でした。7割は45日を超えています。

修正版を作り、テストし、公表日を調整するには、それだけ時間がかかるということです。そして、その間ずっと利用者は脆弱なまま使い続けます。悪用が先に始まる可能性については ゼロデイとは? をご覧ください。

💡

自分から届け出ることもできます

同四半期のJVN公表54件のうち、11件は製品開発者による自社製品の脆弱性の届出でした。IPAの報告書も「製品開発者自身が自社製品の脆弱性関連情報を発見した場合も、対策情報を利用者へ周知するためにJVNを活用することができます」としています。自社で見つけた問題を、公式な形で利用者に届ける道があるということです。

第5章 おわり — 次は第6章

CHAP6

第6章 / 全8章

窓口が無いと、何が起きるか

この記事の核です

脆弱性が見つかった。調整機関が製品開発者に連絡しようとした。ところが、連絡が取れない。

このとき、制度は止まりません。制度は前に進みます。IPAの四半期報告が、その手順を明記しています。

本制度では、調整機関から連絡が取れない製品開発者を「連絡不能開発者」と呼び、連絡の糸口を得るため、当該製品開発者名等を公表して情報提供を求めています。製品開発者名を公表後、3ヶ月経過しても製品開発者から応答が得られない場合は、製品情報(対象製品の具体的な名称およびバージョン)を公表します。それでも応答が得られない場合は、情報提供の期限を追記します。情報提供の期限までに製品開発者から応答がない場合は、当該脆弱性情報の公表に向け、「情報セキュリティ早期警戒パートナーシップガイドライン」に定められた条件を満たしているかを公表判定委員会で判定します。

IPA『ソフトウェア等の脆弱性関連情報に関する届出状況[2026年第2四半期]』1-3. 連絡不能案件の取扱状況

段階を分けて読むと、こうなります。

段階公表されるもの次に進む条件
第1段階製品開発者名(=社名)連絡が取れないとき
第2段階製品の具体的な名称とバージョン社名公表から3ヶ月応答が無いとき
第3段階情報提供の期限を追記それでも応答が無いとき
第4段階脆弱性情報そのもの(公表判定委員会の判定を経てJVNへ)期限までに応答が無いとき

同資料の記述を段階に整理したものです。公表判定委員会は「法律、サイバーセキュリティ、当該ソフトウェア製品分野の専門的な知識や経験を有する専門家、かつ、当該案件と利害関係のない者」で構成されるとされています。

🚨 「気づかなかった」では止まりません

この手順の怖いところは、会社が何もしなくても進むことです。連絡が取れないという事実だけで第1段階が始まり、応答が無いというだけで次に進みます。最終的には、修正版が無いまま脆弱性情報が公表され得ます。

そして「連絡が取れない」の原因は、多くの場合とても素朴です。問い合わせフォームが営業窓口しかない。担当者が退職してメールアドレスが宛先不明になっている。代表番号にかけても取り次ぎ先が分からない。——技術力の問題ではありません。

実際にどれくらい起きているのか。数字が公表されています。

項目件数
連絡不能開発者としての累計公表件数251件
2026年第2四半期末時点で「連絡不能開発者一覧」に公表中198件
当四半期に新たに公表された製品開発者名0件

同資料 1-3 および 2-1-5 より。一覧はJVNのサイトで誰でも閲覧できます(jvn.jp/reply/)。当四半期の新規公表が0件だったことは、制度が落ち着いてきていることを示しますが、198件が現在も「連絡が取れない状態」で公表され続けているという事実は変わりません。

窓口が無いと起きる、もう1つのこと

制度の外でも問題が起きます。発見者が、報告する先を見つけられないときの行動です。

起きること結果
報告をあきらめる脆弱性は残ったまま。知らないうちに悪用される
SNSやブログで公開する修正版が無い状態で手口が広まる。会社は報道で知ることになる
営業窓口に送るスパム扱いで消える、あるいは技術部門に届かない
調整機関(IPA・JPCERT/CC)に届け出るこれが制度の想定する形。ただし会社に連絡が付かなければ第6章の手順へ

整理は筆者によるものです。2行目を防ぐことが、窓口を置く最大の理由です。

「脆弱性ではない」と判断する権利も、窓口があってこそです

累計で、製品開発者により「脆弱性ではない」と判断されたものが154件あります。仕様どおりの動作だった、影響が無かった——そうした判断は正当ですし、制度もそれを記録します。ただし、それは連絡が取れて、内容を検討できた場合の話です。窓口が無ければ、反論する機会そのものがありません。

第6章 おわり — 次は第7章

CHAP7

第7章 / 全8章

最小構成で始める

専任者ゼロでも、置けるものがあります

第3章の6つのサービスエリアを全部やろうとすると、動き出せません。順番があります。いちばん外側——外から来た報告が届く道——から作ります。

やることこれで防げること
1自社サイトに脆弱性の報告先を明記する(専用のメールアドレスと、日本語・英語の受付表示)連絡不能開発者としての公表(第6章)
2そのアドレスを、個人ではなくグループ宛にする担当者の退職・異動で宛先不明になること
3受け取ったときの一次対応を1枚に書く(誰が受領連絡を返し、誰に渡すか、何日以内か)社内で止まること
4公表するかどうかの判断者を決めておく報告を受けてから決裁ルートを探すこと
5JPCERT/CCの「製品開発者リスト」に登録する調整機関からの連絡を確実に受け取れる
6製品のサポート期間を公に書く利用者が判断できないこと(第3章のサブ機能1.4.1.1)

順序は筆者によるものです。5について、IPAの報告書は「JPCERT/CCは、ソフトウェア製品の脆弱性関連情報を『製品開発者リスト』に基づき、一般公表日の調整等を行います。迅速な調整が進められるよう、『製品開発者リスト』に登録してください」と案内しています。

1〜2は今日できます。費用もかかりません。そして、この2つだけで第6章の4段階に入るリスクの大部分が消えます。

✅ 今日からできる4つ

自社サイトを開いて「脆弱性 報告」で探してみる——見つからなければ、発見者にも見つかりません。
報告受付用のグループメールアドレスを1つ作る——security@ など。個人宛にはしないでください。
JPCERT/CCの製品開発者リストへの登録を検討する——調整機関からの連絡が確実に届きます。
自社製品のサポート終了日が公開されているか確認する——書いていなければ、利用者は直るかどうかも分かりません。

売る側の責任は、制度の側でも重くなっています

この分野は、いま動いています。2026年7月31日に決定された『重要インフラのサイバーセキュリティ対策のための統一基準』(2026年10月1日施行)は、システムベンダー、セキュリティベンダー、プラットフォームベンダー、クラウド事業者を「サイバー空間関連事業者」として位置づけ、責任ある行動を求めています。

また『重要インフラのサイバーセキュリティに係る行動計画』は「セキュリティ・バイ・デザイン」の推進を掲げ、「サイバーセキュリティを業務、製品・サービス等のシステムの企画・設計段階から確保する『セキュリティ・バイ・デザイン』の実装が必須となっている」としています。

これは第1章で見たFIRSTの考え方——PSIRTはSDLに統合されるもの——と、まったく同じ方向です。製品を出す側は、出したあとだけでなく、作る前から問われるようになっています。ソフトウェアの中身を管理する仕組みは SBOM、優先度の付け方は CVSSKEVカタログ にまとめています。

第7章 おわり — 次は第8章

CHAP8

第8章 / 全8章

関連用語と、次に読む記事

この語とセットで覚えると理解が早くなります

CSIRT SOC SBOM CVSS ゼロデイ 机上演習(準備中) 脆弱性開示ポリシー(準備中)
こんな方に次に読む記事
社内向けの体制と比べたいCSIRTとは?
監視体制の話も知りたいSOCとは?
自社製品の部品を把握したいSBOMとは?
直す順番を決めたいCVSSとは?KEVカタログ
修正前に悪用される話を知りたいゼロデイとは?
実際に製品の脆弱性が狙われた例を見たいSharePointの脆弱性
取引先経由のリスクが気になるサプライチェーン攻撃とは?
用語を一覧で見たいセキュリティ用語辞典

第8章 おわり — 最後にFAQ

FAQ?

よくある質問

PSIRTについてよく聞かれること

検索でよく見かける疑問から

ソフトウェアを売っていなくても必要ですか?

「開発・販売する製品、ソリューション、コンポーネント、サービス」があれば該当します(FIRSTの定義)。ソフトウェアを商品として売っていなくても、IoT機器や組込み機器を製造している、スマホアプリを配布している、APIやSaaSを外部に提供している——これらはすべて対象です。無償で配っているものも含みます。利用者がいる以上、脆弱性が出れば知らせる相手がいるからです。逆に、買ったソフトを社内で使っているだけなら必要なのは CSIRT のほうです。

報告を無視したら、どうなりますか?

制度が先に進みます。日本の情報セキュリティ早期警戒パートナーシップでは、調整機関から連絡が取れない場合、①製品開発者名の公表 → ②3ヶ月後に製品名とバージョンの公表 → ③情報提供の期限を追記 → ④公表判定委員会の判定を経て脆弱性情報そのものをJVNに公表——という段階を踏みます。連絡不能開発者としての累計公表件数は251件、2026年第2四半期末時点で198件が一覧に公表されています。詳しくは第6章をご覧ください。

CSIRTと兼任してもいいですか?

兼任は可能ですが、役割としては分けて書いてください。FIRSTは「PSIRTはCSIRTとはまったく異なるサービスを提供し、多くの場合まったく異なる環境で活動する」としつつ、同時に「PSIRTは組織の他の部分から独立して機能するものではない」とも書いています。実務上の注意は時間軸の違いです。CSIRTは今日の事故を止める仕事、PSIRTは数週間〜数か月かけて修正版を出す仕事——兼任すると、社内で火事が起きるたびに製品対応が止まります。小さく始めるなら、まず「窓口だけ分ける」のが現実的です。

報奨金(バグバウンティ)は必要ですか?

必須ではありません。FIRSTのフレームワークは6つのサービスエリアを示していますが、報奨金制度はその一部の選択肢にすぎず、「どんな組織にも適用できる単一の製品セキュリティインシデント対応戦略やチームテンプレートは存在しない」とされています。先にやるべきなのは、報奨金より窓口です。報奨金があっても報告先が機能していなければ意味がなく、逆に窓口が機能していれば、日本にはIPAへの届出という無償の公的ルートが既にあります(累計20,315件が実際にそこを通っています)。

出典・参考

最終更新:2026年8月19日/次回見直し予定:2027年3月(IPAの四半期報告と早期警戒パートナーシップガイドラインの改訂状況に合わせて)

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