脆弱性診断とは?「異常は検出されなかった」は、安全宣言ではありません
国が定めた3種類の定義、公的リストに載っている183のサービス、IPAが無料で公開している13項目の診断仕様、そして結果の読み方まで。基準の条文と診断仕様書で確認してまとめました。
30秒でわかる「脆弱性診断」
- システムに既知の弱点が残っていないかを、網羅的に調べること。国の基準に定義があります
- 公的にはWebアプリ/プラットフォーム/スマホアプリの3種類。ペネトレーションテストはこの中のオプションという位置づけです
- IPAは診断項目の仕様を無料で公開しています。基本の13項目です
- その仕様書の表紙に「安全宣言には繋がりません」と書いてあります。異常なし=安全ではありません
- 今日やること:自社サイトが13項目のどれを確認済みか、1つでいいので答えてみる
この記事の地図(全8章)
脆弱性診断は、見積書に出てくる言葉としてはよく知られています。ところが「何をどこまで見るのか」「終わったあと何を保証してくれるのか」を説明できる人は多くありません。営業資料の説明は会社ごとに違いますし、公的な定義があることもあまり知られていません。
先に結論を書きます。脆弱性診断は「既知の弱点が残っていないか」を網羅的に確かめる作業で、安全を証明するものではありません。これは筆者の意見ではなく、IPAが公開している診断仕様書の表紙に書いてあることです。この記事は、国の基準と公開仕様だけを使って、その中身を開きます。
この記事は2026年8月22日時点の内容です。定義と審査の要件は経済産業省『情報セキュリティサービス基準』第4.1版(令和7年3月31日)、サービスの登録数はIPA『情報セキュリティサービス基準適合サービスリスト』(2026年6月11日掲載)を数えたもの、診断項目はIPA『安全なウェブサイトの作り方』別冊『ウェブ健康診断仕様』(2012年12月)から直接引用しています。
他人が管理するシステムを、許可なく診断してはいけません。診断は攻撃と同じ通信を送る行為です。自社のシステムであっても、サーバやデータセンターの管理者の許可を事前に得るようIPAが明記しています(第6章で扱います)。
脆弱性診断とは(やさしい定義)
国の基準に、はっきり書いてあります
システムやソフトウェアに既知の弱点が残っていないかを、網羅的に調べること。国の基準では、対象によって3種類に分けられています。
まず、公的な定義です。経済産業省の『情報セキュリティサービス基準』に、審査対象のサービスとして定義が置かれています。
システムやソフトウェア等の脆弱性に関する一定の知見を有する者が、システムやソフトウェア等に対して行う次に掲げるいずれか又は全てのサービスをいう。
出典:経済産業省『情報セキュリティサービス基準』第4.1版(令和7年3月31日)1(3)脆弱性診断サービスこの「次に掲げる」が3つあります。見積もりを取るときに、まずここを合わせる必要があります。
| 種類 | 何を見るか | 典型的な指摘 |
|---|---|---|
| Webアプリケーション脆弱性診断 | 自分たちで作った画面や処理の作り込み | 入力欄から命令文を差し込める、他人のデータが見えてしまう |
| プラットフォーム脆弱性診断 | OS、ミドルウェア、ネットワーク機器などの土台 | 更新されていない製品、不要な入口が開いている、初期設定のまま |
| スマートフォン/タブレット端末アプリケーション脆弱性診断 | 配布しているアプリそのもの | 端末内に大事な情報を平文で置いている、通信の検証が甘い |
出典:同基準1(3)ア〜ウ。「脆弱性診断をお願いします」だけでは、この3つのどれを指すのか決まりません。見積もりが会社によって大きく違う理由の多くは、ここの範囲が揃っていないことにあります。
そして、この記事でいちばん誤解されている点がここです。ペネトレーションテストは、同じ基準で別のサービスとして定義されていますが、その書き出しはこうなっています。
脆弱性診断のサービスの定義を満たすサービスのうち、攻撃者が実際に侵入等を行うために用いる手法と同様の手法により、アプリケーション、システム、又はネットワークのセキュリティ機能を回避して攻撃の目的を達成できるかの観点から試験を行い、その結果をもとに助言を行うサービスをいう。
出典:同基準1(4)ペネトレーションテスト(侵入試験)サービス「脆弱性診断のサービスの定義を満たすサービスのうち」と書かれています。制度上、ペネトレーションテストは脆弱性診断の外側にある別物ではなく、その中の一区分です。IPAの公表リストでも、ペネトレーションテストは脆弱性診断サービスのオプションサービスとして扱われ、リストのペネトレ欄に星印で示されます。
第1章 おわり — 次は第2章
なぜ今これが問題なのか
選ぶ側に、品質を見分ける材料がありません
経済産業省は、この基準を作った理由をはっきり書いています。多くのサービスが提供されている一方で、専門知識を持たない利用者が、選定時にそのサービスの品質を判断することは容易ではないから、というものです。そこで第三者が客観的に判断し、結果を台帳として公開する仕組みが作られました。
その台帳が、IPAが公開している適合サービスリストです。実際に数えると、こうなります。
| リスト | 掲載されているサービス数 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 脆弱性診断サービス | 183 | 本体 |
| ペネトレーションテスト(侵入試験)サービス | 44 | 脆弱性診断サービスのオプション |
出典:IPA『情報セキュリティサービス基準適合サービスリスト』(いずれも2026年6月11日掲載)のPDFを2026年8月22日に取得し、登録年月日と有効期限の対を数えた実数です。審査・判定は特定非営利活動法人日本セキュリティ監査協会(JASA)が運営しています。掲載はIPAによる保証を意味するものではないと、IPAが明記しています。
数字の意味は、比率のほうにあります。登録された脆弱性診断サービスのうち、侵入まで試すサービスは4分の1弱です。「診断」と名の付くものの多くは、侵入の可否ではなく弱点の洗い出しをするものだ、ということです。
では、リストに載っているサービスは何を満たしているのか。基準は技術要件と品質管理要件に分けて定めています。発注側にとっては、これがそのまま見分けの観点になります。
| 区分 | 基準が求めていること | 発注側の確認の仕方 |
|---|---|---|
| 技術要件:専門性を有する者の在籍 | 資格、専門家コミュニティでの講師・リーダー経験、過去3年で5件以上の実績、所定の研修修了のいずれかを満たす者を技術責任者として従事させ、人数を明らかにすること | 「誰が技術責任者か」と「その根拠」を聞く |
| 技術要件:サービス仕様の明示 | 定められた基準に従って診断が行われること、および診断結果の取扱いを明らかにしていること | 診断項目の一覧と、報告書の扱い(保管期間・破棄)を先に見せてもらう |
| 品質管理要件:品質管理者の割当 | サービス品質の管理担当者を割り当てていること(専属である必要はない) | 担当者の有無を聞く |
| 品質管理要件:マニュアルの整備 | サービス提供プロセスの管理と、アウトプットの管理を含むマニュアルがあること | 手順が人に依存していないかを確認する |
| 品質管理要件:第三者レビュー | 案件に従事した者以外の者が検査実施報告書のレビューを行っていること | 報告書を誰がチェックしているか聞く |
出典:同基準2-1(1)(2)。最下段が実務では効きます。診断は人の手が入る作業なので、担当者が1人で完結していると見落としが表に出ません。第三者レビューの有無は、価格に表れにくい品質差です。
IPAは2022年4月、中小企業が運営するECサイト向けの無償診断を募集した際、その説明の中で「通常100万円以上の費用がかかる専門家によるECサイトの脆弱性診断」と書いています。公的機関が診断の相場に触れた、数少ない記述です。
ただしこれは2022年時点の、ECサイトを対象とした記述です。対象の種類・画面数・手動か自動かで金額は大きく変わるため、そのまま自社の見積もりの基準にはできません。なお、この無償診断の募集は2022年4月20日で締め切られています。現在申し込めるものではありません。
第2章 おわり — 次は第3章
実際に何を、どこまで見るのか
IPAが診断項目を無料で公開しています
診断の中身は各社の企業秘密だと思われがちですが、基本的な部分は公開されています。IPAの『ウェブ健康診断仕様』です。もとは地方自治情報センター(LASDEC)が2008年から2010年まで地方公共団体向けに実施した事業の仕様で、2012年にIPAへ移管されました。
診断項目は13です。記号(A)から(M)が振られています。
| 記号 | 診断項目(脆弱性名) | 危険度 | 攻撃の型 |
|---|---|---|---|
| A | SQLインジェクション | 高 | 能動的 |
| B | クロスサイト・スクリプティング | 中 | 受動的 |
| C | CSRF(クロスサイト・リクエスト・フォージェリ) | 中 | 受動的 |
| D | OSコマンド・インジェクション | 高 | 能動的 |
| E | ディレクトリ・リスティング | 低〜高 | 能動的 |
| F | メールヘッダ・インジェクション | 中 | 能動的 |
| G | パス名パラメータの未チェック/ディレクトリ・トラバーサル | 高 | 能動的 |
| H | 意図しないリダイレクト | 中 | 受動的 |
| I | HTTPヘッダ・インジェクション | 中 | 受動的 |
| J | 認証 | 低〜中 | 能動的 |
| K | セッション管理の不備 | 低〜高 | 能動的/受動的 |
| L | 認可制御の不備、欠落 | 高 | 能動的 |
| M | クローラへの耐性 | 低〜中 | 能動的 |
出典:IPA『安全なウェブサイトの作り方』別冊『ウェブ健康診断仕様』(2012年12月)2.1。選定の理由も明記されており、危険性が高いもの、過去の診断事業で検出数が多かったもの、届出の多いもの、そして社会問題にまで発展した事案の原因となったもの(クローラへの耐性)が挙げられています。
危険度の「高」「中」「低」にも定義があります。感覚ではなく、被害者の関与が要るかどうかで切られています。
| 危険度 | 定義 | 読み替えると |
|---|---|---|
| 高 | 被害者ユーザの関与がなくても攻撃者が直接アプリケーションに対して攻撃可能な能動的な脆弱性。大量の情報漏洩や改ざんの被害を生じる可能性がある | 放っておくと、勝手にやられます |
| 中 | 攻撃成功には被害者ユーザの関与(罠のリンクをクリックする等)が必要な受動的な脆弱性。または能動的でも大量の漏洩・改ざんにつながりにくいもの | 誰かが引っかかると成立します |
| 低 | 攻撃成功の確率が低い、若しくは成功しても被害が軽微と考えられる脆弱性。ただし確率は低いものの被害に遭う可能性はある | すぐではないが、放置はしない |
出典:同仕様2.2。「高」の判定基準は被害の大きさではなく、人の関与が要らないことです。そのため、報告書で「高」が付いた項目は、社内の運用ルールでは打ち消せません。
そして結果の判定です。健康診断のたとえが、そのまま所見の名前になっています。
| 総合判定所見 | どういう状態か | 基準 |
|---|---|---|
| 要治療・精密検査 | 明らかに危険な脆弱性が検出された。改修等の措置が必要で、指摘箇所以外にも危険な脆弱性が発見される可能性が高い | 13項目のうち1つでも、下の「差し支えない」に当たらない脆弱性が見つかった場合 |
| 差し支えない | 危険度が低い脆弱性のみ。すぐ実被害に及ぶ可能性は低いが、注意が必要で放置しない方がよい | (E)(J)(K)(M)のみが検出された場合。ただし各項目に例外条件があり、当たると要治療・精密検査になる |
| 異常は検出されなかった | この診断の範囲では見つからなかった | 上記のいずれにも当たらない場合 |
出典:同仕様2.3。「要治療・精密検査」の説明にある「指摘箇所以外にも危険な脆弱性が発見される可能性が高い」という一文が重要です。1つ見つかったら、それは1つだけの話ではない、という前提で書かれています。
これは筆者の注意書きではありません。この仕様書は、表紙・目次直後・本文の3か所に同じ趣旨を書いています。
「ウェブ健康診断仕様」で脆弱性が検出されなかった場合でも、検査パターンを絞り込んでいることから、安全宣言には繋がりません。
出典:同仕様 注意事項理由は2つあります。ひとつは、できるだけ低いコストで実施できるよう必要かつ最小限の項目・パターンに絞っていること。もうひとつは、全ページを見るものではなく、基本は抜き取り調査であることです。IPA自身が「人間ドックに比べると精密ではありません」と書いています。
第3章 おわり — 次は第4章
よくある誤解と、間違えやすい似た用語
「網羅」か「到達」かで分かれます
いちばん多い混同から整理します。並べる軸は、弱点を漏れなく挙げたいのか、目的地に到達できるか試したいのかです。
| 用語 | 問い | 結果として出るもの | この記事との関係 |
|---|---|---|---|
| 脆弱性診断 | 既知の弱点が残っていないか | 見つかった弱点の一覧と危険度 | 本記事の主題 |
| ペネトレーションテスト | 決めた目標に到達できるか | 到達できた経路と、途中で気づかれたかどうか | 制度上は脆弱性診断のオプション |
| TLPT(脅威ベースのペネトレーションテスト) | 実在の攻撃者を模したとき、組織として検知・対応できるか | 組織の検知力・対応力の評価 | ペネトレーションテストの上位 |
| ASM/EASM | そもそも外から見える資産が何件あるか | 把握できていなかった資産の一覧 | 診断の前段。対象を決めるための作業 |
| 脆弱性管理 | 見つけたあと、直したか | 対応状況の記録 | 診断の後段。診断には含まれません |
金融庁が2025年6月に公表した資料も、個別システムの技術的な脆弱性を評価したい場合は脆弱性診断やペネトレーションテストの活用が適している、として3つを区別しています。上から順に、範囲が狭くなり深さが増します。予算が限られているなら、下から手を付けるより上から順に固めるほうが失敗しません。
誤解も並べておきます。
| よくある誤解 | 実際はどうか |
|---|---|
| 診断で異常なしなら、安全だと言える | 言えません。検査パターンを絞り込んだ抜き取り調査です。IPAが仕様書に3回明記しています |
| 脆弱性が検出されたなら、必ず直さないといけない | まず確認が要ります。IPAは注意事項で「脆弱性が検出された場合でも、実際には脆弱性ではない可能性があります」としています |
| ペネトレーションテストのほうが上位互換だ | 目的が違います。ペネトレは1本の経路を通せるかを見るので、網羅性では脆弱性診断に及びません |
| ツールを回せば診断になる | 基準は技術責任者の要件と第三者レビューを求めています。ツールの実行そのものは要件になっていません |
2つ目は誤検知(実際には問題ないのに検出されること)の話です。報告書を受け取ったあと、自社の作りに照らして本当に成立するのかを確認する工程が必ず要ります。この確認を診断業者に含めてもらうかどうかは、発注時に決める項目です。
もっと詳しく
侵入を試す側についてはペネトレーションテストとは?金融庁が示した不十分な事例5選に、診断する対象そのものを洗い出す作業はASM/EASMとは?見つけたあとは、ツールの仕事ではありませんにまとめています。
第4章 おわり — 次は第5章
個人・小さな事業者にできること
予算ゼロでも、読むほうは今日からできます
診断を外部に頼む前に、自分で確かめられることがあります。材料はすべて無料で公開されています。
| やること | 使う資料 | 分かること |
|---|---|---|
| 基本の13項目を読む | IPA『ウェブ健康診断仕様』 | 診断とは何を見る作業なのか。見積書の項目が薄いかどうかの判断がつく |
| 作り方の側から確認する | IPA『安全なウェブサイトの作り方』改訂第7版 | 13項目それぞれの直し方。根本的解決と保険的対策が分けて書かれています |
| 頼む先を絞る | IPA『情報セキュリティサービス基準適合サービスリスト』 | 国の基準に適合していると審査された183のサービス。所在地や対象業種も載っています |
3番目のリストには対象地域や主たる顧客業種も書かれているため、近くの事業者に絞って探せます。ただしIPAは、掲載がIPAによる保証を意味するものではないと明記しています。あくまで候補を絞る材料です。
診断は、攻撃と同じ通信を送る行為です。自分が管理していないサイトに対して行えば、法的な問題になり得ます。「調べてあげよう」という善意でも同じです。
自社のサイトであっても、IPAはサーバやデータセンター等のインフラ管理者の許可を事前に得るよう明記しています。理由は次章で扱います。停止の影響が自社だけにとどまらないことがあるためです。
第5章 おわり — 次は第6章
会社・組織で頼むときに決めること
先に決めないと、見積もりが比べられません
脆弱性診断の見積もりが会社ごとに何倍も違うのは、多くの場合、前提が揃っていないからです。次の6つを先に決めて全社に同じ条件で出すと、比較できるようになります。
| 決めること | 決めないと起きること |
|---|---|
| 3種類のどれを頼むのか(Webアプリ/プラットフォーム/スマホアプリ) | 片方だけの見積もりと両方の見積もりが並び、安いほうが良く見える |
| 対象の範囲(画面数、機能数、対象IP数) | 会社ごとに数え方が変わり、単価も総額も比較できない |
| 手動をどこまで入れるか | ツールだけの結果と、人が確認した結果が同じ値段に見える |
| 本番環境かテスト環境か | 実施直前に決まらず、日程が押す。本番なら停止時の手順も要る |
| 誤検知の確認と、直したあとの再診断を含めるか | 報告書を受け取ったあとの作業が丸ごと自社に残る |
| 報告書の粒度と、報告書自体の取扱い | 再現手順のない報告書が届き、開発側が着手できない |
5番目と6番目は基準にも対応があります。経済産業省の基準は技術要件として診断結果の取扱いを明らかにしていることを求めています。報告書は脆弱性の在りかが書かれた文書なので、保管期間と破棄の扱いを契約時に確認してください。
もうひとつ、実施の前に必ず通す手続きがあります。IPAが診断仕様の注意事項として挙げているもので、実務での事故はここに集中します。
| IPAの注意事項 | 実務でやること |
|---|---|
| 診断により、対象のウェブサイトが停止したり、意図しないデータが登録される可能性がある | 実施時間帯を決め、停止したときの連絡先と中止の判断者を事前に決める |
| 停止の影響は対象サイトだけにとどまらず、インフラを共有している別のサイトにも及ぶ可能性がある | 同居しているサービスの有無を確認する。共用サーバなら特に重要 |
| 診断を行う際は必ず、サーバやデータセンター等のインフラ管理者の許可を事前に得ること | クラウドや共用ホスティングでは、事業者側の手続きも確認する |
出典:IPA『ウェブ健康診断仕様』1.3 注意事項。2番目は自社だけの問題では済まない項目です。共用の環境で許可を取らずに診断を始めると、無関係の他社のサイトを止めてしまうことがあります。
全部を一度に見られないなら、インターネットに公開されていて、かつ個人情報を扱う画面から始めてください。第3章の危険度「高」は、被害者の関与なしに攻撃が成立するものを指します。公開されていれば、その条件が最初から揃っています。
逆に後回しにできるのは、社内からしか到達できず、扱う情報も限られている画面です。範囲を狭めるのは負けではありません。やってはいけないのは、範囲を広く取ったまま診断の中身を薄くすることです。
第6章 おわり — 次は第7章
「要治療・精密検査」が出たら:最初の10分
全部直そうとすると、いちばん危ないものが後回しになります
報告書が届いて、危険度「高」が並んでいる。ここからの動き方です。順番を間違えると、直しやすいものから片付いて、危ないものが残ります。
| 時間 | やること | やってはいけないこと |
|---|---|---|
| 0〜3分 | 危険度「高」の項目だけを抜き出す | 件数の多さに驚いて、全件の一覧を作り始める |
| 3〜6分 | そのうち「インターネットに公開されている」かつ「個人情報や決済に関わる」ものに印を付ける | 指摘の順番どおりに上から着手する |
| 6〜8分 | 印の付いたものについて、実際に成立するかを開発側と確認する | 誤検知の可能性を検討せずに緊急改修に入る |
| 8〜10分 | すぐ直せないものに、暫定の手当て(機能の一時停止、経路の遮断など)を決める | 「次のリリースで対応」とだけ決めて、期間中の手当てを空白にする |
3番目の工程を飛ばさないでください。IPAは注意事項で「脆弱性が検出された場合でも、実際には脆弱性ではない可能性があります」としています。逆に、成立が確認できたものは優先度が一段上がります。
あわせて頭に入れておきたいのが、判定の定義に書かれていた一文です。「要治療・精密検査」の説明には、指摘箇所以外にも危険な脆弱性が発見される可能性が高いとあります。1件見つかった時点で、それは同じ作り方をした他の画面にも同じ問題がある可能性を示しています。
相談先と、次に読む資料
- IPA 情報セキュリティ安心相談窓口/サイバーセキュリティ相談窓口(企業組織向け)
- IPA『安全なウェブサイトの作り方』改訂第7版(13項目それぞれの直し方が載っています)
- IPA『情報セキュリティサービス基準適合サービスリスト』(詳細な診断を頼む先を探すとき)
- IPA 脆弱性関連情報の届出受付(自社以外の製品やサイトに問題を見つけた場合は、こちらへ)
- システムの開発・運用を委託している事業者(改修の可否と期間の確認)
第7章 おわり — 次は第8章
関連用語と、次に読む記事
対象を決める・調べる・直す・測る
この用語とセットで覚えると理解が早くなる語です。
| こんな人に | 次に読む記事 |
|---|---|
| 侵入まで試すほうを知りたい | ペネトレーションテストとは?金融庁が示した不十分な事例5選 |
| そもそも診断する対象が分からない | ASM/EASMとは?見つけたあとは、ツールの仕事ではありません |
| 13項目の1つ目を詳しく知りたい | SQLインジェクションとは?仕組み・例・対策を初心者向けに完全解説 |
| 指摘の危険度の読み方を知りたい | CVSSとは?「深刻度9.8」の読み方と、2026年に変わった前提 |
| 直すまでの時間をどうしのぐか知りたい | WAFとは?脆弱性を直さなくてよくなる道具ではありません |
第8章 おわり — 最後にFAQ
脆弱性診断についてよく聞かれること
実際に検索されている疑問から
脆弱性診断とペネトレーションテストは、どちらを頼めばいいですか?
目的で決めます。既知の弱点を漏れなく知りたいなら脆弱性診断、決めた目標に到達できるかを試したいならペネトレーションテストです。なお制度上は別物ではありません。経済産業省の『情報セキュリティサービス基準』は、ペネトレーションテストを「脆弱性診断のサービスの定義を満たすサービスのうち」侵入の手法で試験するもの、と定義しています。IPAの公表リストでも、ペネトレーションテストは脆弱性診断サービスのオプションサービスとして扱われています。
診断で「異常なし」なら、安全と言っていいですか?
言えません。IPAの『ウェブ健康診断仕様』は、脆弱性が検出されなかった場合でも検査パターンを絞り込んでいることから安全宣言には繋がらないと、表紙を含む3か所に明記しています。理由は、できるだけ低コストで実施できるよう必要かつ最小限の項目に絞っていること、そして全ページではなく基本は抜き取り調査であることの2つです。
自分のサイトを、自分で診断してもいいですか?
自社が管理しているものであれば可能ですが、条件があります。IPAは注意事項で、診断によりサイトが停止したり意図しないデータが登録される可能性があり、その影響はインフラを共有している別のサイトにも及ぶ可能性があるとして、サーバやデータセンター等のインフラ管理者の許可を事前に得るよう求めています。他人が管理するサイトを許可なく診断してはいけません。攻撃と同じ通信を送る行為です。
診断業者は、どう選べばいいですか?
まずIPAの『情報セキュリティサービス基準適合サービスリスト』で候補を絞る方法があります。2026年6月11日掲載の版には、脆弱性診断サービスが183、そのオプションであるペネトレーションテストサービスが44、掲載されています。そのうえで、基準が求めている技術責任者が誰か、診断項目の一覧、報告書の取扱い、そして案件に従事した者以外による報告書のレビューを確認してください。ただしIPAは、掲載が同機構による保証を意味するものではないと明記しています。
出典・参考
- 経済産業省『情報セキュリティサービス基準』第4.1版(令和7年3月31日)https://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/shinsatouroku/zyouhoukizyun4_1.pdf
- 経済産業省『情報セキュリティサービス審査登録制度』https://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/shinsatouroku/touroku.html
- IPA『情報セキュリティサービス基準適合サービスリスト』(2026年6月11日掲載)https://www.ipa.go.jp/security/service_list.html
- IPA『安全なウェブサイトの作り方』別冊『ウェブ健康診断仕様』(2012年12月)https://www.ipa.go.jp/security/vuln/websecurity/ug65p900000196e2-att/000017319.pdf
- IPA『安全なウェブサイトの作り方』改訂第7版https://www.ipa.go.jp/security/vuln/websecurity/about.html
- IPA『中小企業が運営するECサイト向け無償脆弱性診断の募集』(2022年4月12日/募集は終了)https://www.ipa.go.jp/security/reports/vuln/ec-site2022.html
最終更新:2026年8月22日/次回見直し予定:2027年6月(IPAの適合サービスリストが年に複数回更新されるため、掲載数を数え直します)


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