ハクティビズムとは?攻撃の目的・見分け方・対策を完全解説

2026年版・一次情報で確認

ハクティビズムとは?その旗を掲げた集団の一部は、国家が作っていた

意味、日本で実際に起きたこと、攻撃の5段階、「参加した側」が問われる罪、そして障害が起きたときの最初の10分まで。公的機関の資料だけで確認してまとめました。

30秒でわかる「ハクティビズム」

  1. 金銭ではなく政治的・社会的な主張のために行うサイバー攻撃のこと。手口の名前ではなく動機の名前です
  2. 主な形はDDoS攻撃・ウェブサイトの改ざん・盗んだ情報の公開。高度な技術より人数と話題性で成り立ちます
  3. 日本でも実害が出ています。2024年12月下旬から2025年1月上旬にかけ、空港の手荷物自動チェックイン機やネットバンキングに障害(警察庁)
  4. 「草の根の抗議」とは限りません。米欧など20機関の共同アドバイザリ(2025年12月9日)は、主要グループの一部を国家の関与のもとで作られたものと評価しています
  5. 今日やること:自社サイトならオリジンサーバのIPアドレスが外から見えていないかを確認する。個人なら、主張に賛同しても配られたツールを起動しない

「ハクティビストとみられるアカウントが犯行をほのめかす投稿をしていた」。ニュースでこの一文を読んで、意味を確かめにきた方へ。あるいは、自社のサイトが急に開かなくなり、SNSで「攻撃した」と名指しされているのを見つけて、いま何が起きているのかを調べている方へ。

意味だけを書いた説明はたくさんあります。この記事はそこから3歩踏み込んで、日本で実際に何が止まったのか攻撃はどの段階までなら自力で止められるのか、そして「正しいことをしている」と思って参加した人が日本の法律で何に問われるのかまで書きます。すべて官公庁と国際機関の公表資料から取りました。

⚠ この記事の前提

この記事は2026年8月20日時点の内容です。数字と事実は、警察庁・米国CISAなどの共同アドバイザリ・欧州司法機構(Eurojust)・防衛研究所・e-Gov法令検索から直接引用し、出典と公表日を記事末に記載しています。

なお、日本で起きた個々の障害について「どの集団がやったか」を公的に断定した資料はありません。警察庁の資料も「ハクティビストのものと思われるアカウント」「犯行をほのめかす投稿」という書き方にとどめています。この記事も、その線を越えて断定はしません。

CHAP1

第1章 / 全8章

ハクティビズムとは(やさしい定義)

手口ではなく「なぜやるか」で分類された言葉です

はくてぃびずむ 英:hacktivism

政治的・社会的な主張を通すために行われるサイバー攻撃の総称。ハッキング(hack)と行動主義(activism)を合わせた造語で、攻撃を行う人を「ハクティビスト」と呼びます。

分類
攻撃の動機による分類。手口の分類ではありません
ひとことで
「デモのネット版」と説明されがちですが、日本では業務妨害罪にあたる犯罪です
よく混同される語
サイバーテロ/国家を背景とする攻撃/内部告発/DDoS攻撃(第4章で扱います)
関係する立場
官公庁・自治体・重要インフラ・報道された企業/個人は「巻き込まれる側」と「参加してしまう側」の両方

ランサムウェアやフィッシングが「何をするか」で名付けられた言葉なのに対して、ハクティビズムは「なぜやるか」で名付けられた言葉です。ここが理解のいちばんの入口になります。だから「ハクティビズムという攻撃を受けた」という言い方は、厳密には成立しません。受けたのはDDoS攻撃やウェブサイトの改ざんであって、ハクティビズムはその背景にある動機の説明です。

この違いは対策にそのまま効いてきます。動機が主張である以上、標的に選ばれる理由は自社のセキュリティの弱さではありません。国の政策、報道された発言、開催するイベント、取引先の国。自社では動かせない事情で順番が回ってきます。「うちは狙われるほどの会社ではない」という感覚が、この攻撃にだけは当てはまらないのはそのためです。

観点ハクティビズム金銭目的の犯罪組織国家を背景とする攻撃
目的主張を広めること・注目を集めること金銭(身代金・不正送金)情報窃取、機能停止、外貨獲得
標的の選び方政治的な出来事に反応して決まる。弱いかどうかは二の次払える相手・侵入しやすい相手分野で狙う(情報通信・先端技術・学術研究など)
成功の基準話題になること。被害の大小より見え方入金されること気づかれずに続くこと
攻撃が終わる条件世の中の関心が移るまで。交渉相手がいない支払うか、支払わないと決めるか目的を達するまで(長期)
被害の見え方サイトが開かない・画面が書き換わる・情報が公開されるファイルが暗号化される・金が消える見えない。数年気づかないこともある

筆者による整理(2026年8月20日)。区分は警察庁『令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について』の分類(国家の関与が疑われる攻撃/犯罪組織等による攻撃)を参考にしていますが、公式な格付けではありません。

もうひとつ、言葉として押さえておきたいのが「何を指さないか」です。ハクティビズムという言葉は日常のニュースでかなり広く使われ、そのぶん輪郭がぼやけています。

この言葉が指すもの指さないもの
主張のために行うサイバー攻撃(DDoS・改ざん・情報の公開など)主張のための合法なネット活動(署名、投稿、ボイコットの呼びかけ)
攻撃を実行した集団の動機攻撃の手口そのもの(手口の名前はDDoS攻撃、改ざん、情報漏えい)
自称を含む、主張を掲げた攻撃の全体攻撃者の身元が確定したという意味
個人の集まりから、国家が関与した組織まで「国家とは無関係」という意味(第2章で見ます)

動機の面をもう少し。防衛研究所のブリーフィング・メモ(2020年7月号)は、ハクティビストを「社会に影響を与えることを目的にネットワーク上で不正侵入やサイバー攻撃を行う集団」と説明したうえで、報酬以外の動機の比重が大きい点を指摘しています。自己顕示、達成感、そして正義感。報酬を用意しなくても人が集まる仕組みが、この攻撃の人数を支えています。同メモは、代表例として2006年に生まれたウィキリークスや、緩やかに集まる「アノニマス」を挙げ、報酬目的のサイバー攻撃代行とは動機の面で異なると整理しています。

「賛同しやすい大義のもとに、そのつど集まる」という性質は、裏を返せば長期的・計画的な攻撃には向いていないということでもあります。手口が単純なDDoS攻撃に偏るのも、参加者を集めやすく、指揮を執る側の調整の手間が軽いからです。

第1章 おわり — 次は第2章

CHAP2

第2章 / 全8章

なぜ今これが問題なのか

日本ですでに実害が出ていて、集団の性格が変わってきています

この言葉が2026年の日本で重みを持つ理由は2つあります。ひとつは、すでに国内で生活に届く被害が出たこと。もうひとつは、「有志の集まり」という前提が崩れたことです。順に見ます。

日本で確認されたこと

警察庁が2026年3月に公表した『令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について』には、ハクティビストへの言及が3か所あります。いずれもDDoS攻撃に関する記述です。

時期対象実際に起きたこと資料での表現
2024年12月下旬
— 2025年1月上旬
交通機関、金融機関等の重要インフラ事業者等空港で手荷物の自動チェックイン機が使えない障害。インターネットバンキングにログインしづらい状況「DDoS攻撃によるとみられる被害」
2025年3月
— 4月
政府要人の個人ウェブサイト閲覧障害が複数発生「ハクティビストのものと思われるアカウント」から「犯行をほのめかす投稿」
2025年6月政府機関、自治体、民間事業者等の複数のウェブサイト閲覧障害が複数発生同上(同じ書き方で記載)

出典:警察庁サイバー警察局『令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について』(2026年3月)。表現の列は資料の言い回しをそのまま要約したものです。

注目してほしいのは4列目です。公的な資料は、誰がやったのかを断定していません。「思われる」「ほのめかす」で止めています。同じ資料の別の章では、この慎重さの理由がはっきり書かれています。サイバー攻撃は、その性質上、事案が起きた時点では攻撃主体や目的をすぐには判断できない、と。

攻撃の中身についても、警察庁は具体的に書いています。ひとつの手口ではなく複数の手口が確認され、事業者が遮断措置をとっても状況に応じて手口を変えて攻撃を続ける事例があったこと。そして、負荷を分散するCDNを迂回して、ウェブサイトの元データが置かれているオリジンサーバをIPアドレス指定で直接叩く攻撃が複数の事案で確認されたことです。「CDNを入れてあるから大丈夫」が通じなかった、ということになります。

「有志の集まり」という前提が崩れた

2025年12月9日、米国のFBI・CISA・NSAを含む20を超える機関が、親ロシア派ハクティビストに関する共同アドバイザリ(AA25-343A)を公表しました。欧州刑事警察機構(Europol)のEC3やEurojust、英国NCSC、ドイツBSI、カナダ、豪州、ニュージーランドなども共同署名しています。この文書が示した評価は、ハクティビズムの一般的なイメージを大きく崩すものでした。

グループ登場共同アドバイザリの評価
CARR(Cyber Army of Russia Reborn)2022年2月末〜3月頃ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)の部隊74455が創設を支援した可能性が高い。少なくとも2024年9月まで、DDoS攻撃に使うツールの資金を出していたとみられる
NoName057(16)2022年3月から活動クレムリンの意向で設立された組織(CISM)内の秘密のプロジェクトとして作られたと評価。同組織の幹部・職員がDDoSツール「DDoSia」を開発し、インフラの費用を払い、Telegramチャンネルの管理者を務め、標的を選定していた
Z-Pentest2024年9月CARRの管理者がGRUからの支援に不満を持ち、NoName057(16)の管理者とともに新設。DDoSをほとんど行わず、制御システムへの侵入と改ざん・情報公開で注目を集める方針
Sector162025年1月Z-Pentestとの協働から生まれた新興グループ。特定の作戦の見返りに、ロシア政府から間接的な支援を受けた可能性がある

出典:FBI・CISA・NSAほか『Pro-Russia Hacktivists Conduct Opportunistic Attacks Against US and Global Critical Infrastructure』(AA25-343A、2025年12月9日)。同アドバイザリは、これらの集団の多くは政府と直接の結びつきを持たない個人の集まりだとしたうえで、一部については国家の直接・間接の支援との関連を指摘しています。

同アドバイザリは、こうした集団を国家が使う理由も添えています。「否認できる層」を1枚はさむためです。攻撃したのは国ではなく、賛同した個人たちだ、という説明が成り立つ形にしておく。ハクティビズムという言葉自体が、その説明の材料として使われている構図です。

参加者の規模と、摘発

では、そこに集まる人はどれくらいいるのか。2025年7月、Eurojustと12か国が参加した合同作戦の結果が公表され、規模がある程度見えるようになりました。

項目数字補足
作戦の実施日2025年7月15日12か国+EurojustとEuropolが参加
停止させたサーバ100台超世界各地に分散していた
逮捕状7件うち6件はドイツ。2人は中心的な扇動者とされる
動員されていた支持者約4,000人1,100人の支持者と17人の管理者に、措置の内容が通知された
ドイツでの被害14回・約230組織兵器工場、電力事業者、行政機関などが含まれる

出典:Eurojust『Hacktivist group responsible for cyberattacks on critical infrastructure in Europe taken down』(2025年7月)。対象はNoName057(16)。

この発表でもうひとつ重要なのが、参加者の集め方です。支持者はメッセージアプリで勧誘され、DDoS攻撃に参加するためのソフトウェアを自分でダウンロードして動かしていました。侵入されて踏み台にされたのではなく、自分の意思で自分の回線を差し出していた。だからこそ、参加した側も捜査の対象になります。ここは第5章でもう一度扱います。

数字と犯行声明の読み方

SNSに出る「攻撃した」という投稿は、自称です。共同アドバイザリは、これらの集団が自分の攻撃について虚偽または誇張した主張を繰り返すと明記し、軽微な侵入を重大な侵害のように見せる、被害者を取り違えることも頻繁にある、と指摘しています。名指しされた側が慌てて認めてしまうと、起きていない被害まで自社の事実として広がります。

第2章 おわり — 次は第3章

CHAP3

第3章 / 全8章

実際にどう起きるのか

5つの段階と、どこまでなら自力で止められるか

ハクティビズムの攻撃は、技術の話が始まる前から動いています。標的が決まるところから順に並べると、自社に打てる手がどこにあるのかがはっきりします。

段階攻撃側がすることこの時点で気づけるサイン自力で止められるか
1
標的が決まる
政治的な出来事、報道、声明、国際イベントに反応して標的を選ぶ。分野ごとまとめて選ばれることもある自社の外の出来事。気づきようがない止められない。選ばれる理由を自社では動かせない
2
標的が公開される
メッセージアプリやSNSのチャンネルで標的リストと日時を共有し、参加者を募る公開された時点で外から見える。名指しの投稿が出る攻撃自体は止められないが、ここで知れば準備の時間が作れる
3
下調べ
参加者がツールを起動する。制御機器を狙う場合は、インターネットに出ている遠隔操作用の口を機械的に探すスキャンは日常的にあり、区別しにくいここが最後の分岐。露出している口を減らせば「見つからない」で終わる
4
攻撃
DDoS攻撃で止める/画面を書き換える/盗んだ情報を公開する/制御機器の設定を操作する利用者から「開かない」と言われて気づくことが多い軽減はできる。ただし遮断すると手口を変えてくる
5
誇示
スクリーンショットや録画をSNSに投稿し、成果として広める。しばしば誇張される投稿は見える止められない。事実確認と説明の準備でしか対応できない

段階1・2・5は警察庁およびEurojustの公表内容、段階3・4はAA25-343Aの記述をもとに筆者が整理(2026年8月20日)。「自力で止められるか」の評価は筆者の判断です。

この表でいちばん伝えたいのは、止められる場所が段階3しかないということです。標的に選ばれるかどうかは自社の外で決まり、攻撃が始まってからできるのは軽減で、終わったあとの誇示も止められません。逆に言えば、日ごろの投資は「段階3で見つからない状態」に効くものへ寄せるのが合理的だ、という結論になります。

攻撃の4つの型

やること実際に起きる被害復旧の重さ
DDoS攻撃大量のアクセスを送ってサービスを止めるサイトが開かない、アプリにログインできない、窓口の機械が使えない攻撃が止まれば戻る。ただし継続する間は続く
ウェブサイトの改ざん表示内容を主張入りの画面に書き換える訪問者に誤った内容が見える。信用の毀損中。原因の特定と再発防止まで含めると時間がかかる
ハック&リーク侵入して盗んだ情報を公開する個人情報や内部文書の公開。取り消せない重い。公開後は元に戻せない
制御機器の操作インターネットに出ている画面操作端末に入り、設定値を変える・警報を止める現場の表示が見えなくなる(loss of view)。人が現地で復旧するまで戻らない重い。制御機器の技術者を呼ぶ費用と停止時間が発生する

4つ目の記述はAA25-343A(2025年12月9日)にもとづきます。日本国内でハクティビストによる制御機器の操作が公的に確認された記録は、2026年8月20日時点で見当たりません。

技術は高くない。それでも実害が出る

制御機器を狙う型について、共同アドバイザリはかなり率直に書いています。これらの集団の技術力は限られており、自分が止めようとしている工程そのものを理解していないことが多い。だから、意図した影響を正確に予測できないまま操作する、と。

侵入の手順も高度ではありません。インターネット上のスキャン用ツールで、遠隔画面操作(VNC)が見えている機器を探す。標準のポート5900やその近く(5901〜5910)を見る。見つけたら、初期設定のままのパスワードや弱いパスワードを試す。入れたら画面をそのまま操作して、パラメータを変え、警報を止め、機器を再起動する。その様子を録画してSNSに上げる。技術ではなく、開いたままの口の多さが成立条件になっています。

被害として最も多く報告されたのは、「loss of view」だと同アドバイザリは書いています。現場の画面から状況が見えなくなり、人が手作業で管理せざるを得なくなる状態のことです。負傷者が出た例はまだ確認されていない一方で、稼働中の工場や地域の施設が狙われている点について、人の安全への配慮が欠けていると評価されています。

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CHAP4

第4章 / 全8章

よくある誤解と、間違えやすい似た用語

「動機の名前」であることを忘れると、全部ずれます

🚨 いちばん危ない誤解

「技術力が低い集団なのだから、被害も軽いはずだ」— これは半分だけ正しく、結論だけが間違っています。20機関の共同アドバイザリは、彼らの技術は限定的で、自分が止めようとしている工程を理解していないことが多いと評価しています。しかしその同じ文書が、物理的な被害を含む実害が現に生じていると書いています。工程を分かっていないから設定を戻せない、という形で被害が出るのです。技術の高さと被害の大きさは、この攻撃では比例しません。

似ている用語どう違うか使い分けの目安
DDoS攻撃こちらは手口の名前。ハクティビズムは動機の名前「何をされたか」を言うならDDoS攻撃。「なぜされたか」を言うならハクティビズム
サイバーテロ重要インフラの基幹システムを機能不全にし、社会を麻痺させることを狙うもの。警察庁は国家の関与が疑われる攻撃の文脈で挙げている狙いが「社会機能の麻痺」ならサイバーテロ、「注目と主張」ならハクティビズム
国家を背景とする攻撃情報窃取や外貨獲得が目的で、気づかれないことを重視する誇示するかどうかが分かれ目。ただし第2章のとおり、両者は重なりうる
内部告発組織の中の人が、正規の権限で知った事実を明かすこと。侵入や攻撃を伴わない不正アクセスや業務妨害を伴えば、動機が告発でも別の話になる
内部不正与えられた権限を使って情報を持ち出すこと。動機は金銭や不満が多い外から来るか、中から出るか
よくある思い込み実際は
ハクティビズムという攻撃手法がある手法ではありません。DDoS攻撃や改ざんという手法に、主張という動機が付いた状態を指します
「アノニマス」という組織がやっているアノニマスは会員名簿のある組織ではなく、賛同した人がそのつど集まる呼び名です。誰でも名乗れます
ハクティビストは国家とは無関係だ無関係な集団も多い一方で、主要グループの一部は国家の関与のもとで作られたと評価されています(AA25-343A)
SNSで「攻撃した」と書かれたら、その通りに起きている誇張・虚偽・被害者の取り違えが頻繁にある、と共同アドバイザリが明記しています
サイトが落ちたのだから、情報も漏れているDDoS攻撃は「止める」攻撃で、それ自体は情報を取り出しません。ただし同時に別の侵入が行われる例が報告されているため、確認は必要です
主張が正しければ、参加しても罪にはならない動機は罪の成否を左右しません。第5章で条文を見ます

第4章 おわり — 次は第5章

CHAP5

第5章 / 全8章

個人・家庭でやる対策

巻き込まれる側と、参加してしまう側の両方があります

個人にとってのハクティビズムは、「使っているサービスが突然止まる」形でやってきます。全部やる必要はありません。上から順に効果が高いものを並べました。

優先やることかかる時間費用これで防げる範囲
1支払い手段を2つ持っておく(ネットバンキングが使えない日に備える)10分無料障害そのものは防げないが、生活が止まらない
2サービスが開かないとき、検索結果の「復旧」「代替サイト」を安易に開かない。公式アプリと公式SNSで確認するその場で無料障害に便乗した偽サイト・フィッシング
3自宅のルーターやネットにつながる家電の初期パスワードを変え、更新を入れる30分無料自分の機器が攻撃の踏み台にされること
4「攻撃された企業リスト」や犯行声明をそのまま拡散しないその場で無料誇張された被害情報の増幅に加担しないこと

「参加する側」になってしまう危険

ここが、他の攻撃と決定的に違うところです。ランサムウェアに一般の人が加担することはまずありません。しかしハクティビズムは、賛同者を募って人数を集めることが攻撃の中身そのものです。第2章で見たとおり、摘発された事例では約4,000人の支持者が動員され、参加者はメッセージアプリで勧誘されてツールを自分でダウンロードしていました。

「デモに参加するようなもの」と説明されることがありますが、日本の法律ではまったく別の扱いになります。条文を見ます。

行為あてはまりうる条文条文が定める刑
大量のアクセスを送り、相手のシステムを本来の動作をさせずに業務を妨害する刑法第234条の2(電子計算機損壊等業務妨害)5年以下の拘禁刑 又は 100万円以下の罰金。未遂も罰せられます
他人のID・パスワードなどを使って、権限のないシステムを使える状態にする不正アクセス禁止法 第3条(禁止)/第11条(罰則)3年以下の拘禁刑 又は 100万円以下の罰金

条文はe-Gov法令検索で2026年8月20日に確認。実際にどの罪にあたるかは個別の事実関係により、捜査機関と裁判所が判断します。この表は条文の内容を示すもので、特定の事案の評価ではありません。

動機が「正しいと信じたこと」であっても、条文には動機による例外がありません。ツールを起動した時点で、自分の回線と自分のIPアドレスが攻撃に使われます。匿名だと思っていたものが、実際には最も追跡しやすい記録として残ります。

もっと詳しく

止められる側の仕組みはDDoS攻撃とは?空港のチェックイン機が止まった日に、何が起きていたかで、自分の機器が知らないうちに使われる仕組みはボットネットとは?不正送金被害の44%に、家庭の機器が使われていたで詳しく説明しています。

第5章 おわり — 次は第6章

CHAP6

第6章 / 全8章

会社・組織でやる対策

専任の情報システム担当がいない会社を想定して書きます

ハクティビズム対策という商品はありません。やることは、DDoS攻撃への備え外から見えている口を減らすこと、そして名指しされたときの説明の準備の3つに分かれます。まずDDoS攻撃への備えから。警察庁が令和7年の資料で挙げた対策が、そのまま実務の一覧になります。

対策何を防ぐか導入の重さ根拠
オリジンサーバへの、CDNを経由しないアクセスを遮断するCDNを迂回して元サーバを直接叩く手口軽い(設定)警察庁(2026年3月)
オリジンサーバのIPアドレスが外部に露見しないよう、DNS設定を見直すそもそも元サーバの居場所を知られること軽い(設定)警察庁(同上)
海外に割り当てられたIPアドレスからの通信を遮断する国外からの大量アクセス中(業務影響の確認が必要)警察庁(同上)
攻撃を検知・遮断する装置やサービスを導入する攻撃中の軽減中(費用が発生)警察庁(同上)
サーバ・端末・通信回線を冗長化する止まっても業務が続くこと重い警察庁(同上)
インターネットに出ている遠隔操作の口を減らす制御機器への侵入(第3章の段階3)中(棚卸しが要る)AA25-343A(2025年12月)
資産の一覧とデータの流れ・接続点を把握する知らないうちに外に出ている機器AA25-343A(同上)
初期設定のままのパスワードを潰す総当たりでの侵入軽いAA25-343A(同上)

上5行は警察庁『令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について』、下3行はAA25-343Aの推奨事項の要約です。「導入の重さ」は筆者の目安です。

サイバー攻撃は、その性質上、事案発生時点では、その攻撃主体や目的等を即座に判断できるものではない。

出典:警察庁サイバー警察局『令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について』(2026年3月)

この一文は、広報の準備にそのまま使えます。障害の最中に「ハクティビストにやられました」と発表してしまうと、後から違ったときに訂正が必要になります。公的機関ですら即断していないという事実は、慎重な公表文を書く根拠になります。

「自社は主張の材料になるか」を先に棚卸しする

ハクティビズムは、セキュリティの弱さではなく目立ち方で標的が決まります。だから、順番が回ってきそうな時期はある程度読めます。下の項目に当てはまる組織は、その時期の前に監視と連絡体制を厚くしておく価値があります。

きっかけになりうること備えを厚くする時期
国の政策・制度に関わる事業をしている制度の決定・施行が報道される前後
国際的な争点に関係する国と取引があるその争点が大きく報じられた直後
国際会議・式典・大型イベントを主催、または協賛する開催の数日前から会期中
経営者や役員が公の場で発言する予定がある発言の報道直後
官公庁や業界団体のサイトと、同じ事業者に運用を委ねている同業がまとめて狙われた日

警察庁が記録した事案(政府要人の個人サイト、政府機関・自治体・民間の複数サイト)の並び方から筆者が整理したものです。公式な指標ではありません。

外から見えている口を数える

「インターネットに出ている遠隔操作の口を減らす」は、自社の資産が外からどう見えているかを知らないと着手できません。その考え方はASM/EASMとは?見つけたあとは、ツールの仕事ではありませんにまとめています。重要インフラに指定された分野かどうかは重要インフラとは?基幹インフラとどちらも16分野、なのに中身が違うで確認できます。

第6章 おわり — 次は第7章

CHAP7

第7章 / 全8章

もし起きたら:最初の10分

サイトが開かず、SNSで名指しされている状態から

この章は、自社のサイトやサービスが急に開かなくなり、同じ頃にSNSで「攻撃した」という投稿を見つけた場面を想定しています。順番に書きます。慌てて公表することと、慌ててサーバを作り直すことが、あとで最も高くつきます。

やることやってはいけないこと理由
1アクセスの量と経路を見て、自社都合の障害か、外からの大量アクセスかを切り分ける見る前に「攻撃されました」と社内外に言う公的機関ですら即断していません。訂正のほうが傷が深くなります
2影響範囲を確認する(公開サイトだけか、社内の業務システムや窓口の機械まで及んでいるか)サイトだけを見て終わりにする2024年末の事例では、窓口の機械やアプリの利用に影響が出ました
3サーバやネットワーク機器のログを確保する(保存期間の設定も確認)とりあえず再起動する・作り直すあとから何が起きたかを調べる材料が消えます
4CDN・ホスティング・回線の事業者へ連絡し、上流での対応を依頼する自社の設定だけで押し返そうとし続ける遮断すると手口を変えて続ける事例が確認されています
5別の侵入が同時に起きていないかを確認する(管理画面へのログイン、公開サーバの改ざん)「止められただけ」と決めつける大量アクセスと並行して侵入が行われた例が報告されています
6公表するなら「確認中」の事実だけを書く(いつから/どのサービスが/代替手段)犯行声明の内容をそのまま引用して発表するその主張は自称で、誇張や取り違えが多いと指摘されています
7警察とJPCERT/CCへ連絡する。重要インフラなら所管省庁の窓口もSNS上のやり取りに反応する反応は注目という成果になり、攻撃を長引かせます

証拠を消さないことが最優先です。電源を切るか切らないかは状況で判断が分かれるため、可能なら連絡と並行して、切る前にログの保全だけ済ませてください。

相談先(公的機関)

  • 都道府県警察のサイバー犯罪相談窓口/警察相談専用電話 #9110
  • IPA 情報セキュリティ安心相談窓口(個人・中小企業)
  • JPCERT/CC インシデント報告(組織)
  • 重要インフラ事業者は、所管省庁および国家サイバー統括室(NCO)の連絡系統
  • CDN・ホスティング・回線事業者のサポート窓口(契約書に緊急連絡先が書かれています)
✅ ここまでできたら

ログが保全され、上流の事業者が動いていて、別経路の侵入が無いことを確認できていれば、被害の拡大は止まっています。攻撃自体は関心が移るまで続くことがありますが、あなたの側でやるべきことは、この時点でいったん終わっています。残りは、いつ再発してもいいように監視と連絡体制を保つことです。

第7章 おわり — 次は第8章

CHAP8

第8章 / 全8章

関連用語と、次に読む記事

動機の言葉なので、手口の言葉とセットで覚えます

この用語とセットで覚えると理解が早くなる語です。

こんな人に次に読む記事
何をされたのか、手口のほうを知りたいDDoS攻撃とは?空港のチェックイン機が止まった日に、何が起きていたか
自宅の機器が使われていないか心配ボットネットとは?不正送金被害の44%に、家庭の機器が使われていた
外から見えている自社の口を数えたいASM/EASMとは?見つけたあとは、ツールの仕事ではありません
国の対応がどう変わるのかを知りたい能動的サイバー防御とは?2026年10月1日から何が始まるのか
止まったときに動ける体制を作りたい机上演習とは?うまくいった演習ほど、価値がありません

第8章 おわり — 最後にFAQ

FAQ?

よくある質問

ハクティビズムについてよく聞かれること

実際に検索されている疑問から

ハクティビズムとハクティビストは何が違いますか?

ハクティビズムは考え方・行為のほう、ハクティビストはそれを行う人・集団を指します。ニュースで「ハクティビストとみられるアカウント」と書かれるのは、人や集団の側を指しているためです。なお、名乗るのは自由なので、名乗った人が本当にその集団の一員かどうかは別問題です。

主張のためでも、日本では罪になりますか?

条文に動機による例外はありません。大量アクセスで相手のシステムを本来の動作をさせずに業務を妨害すれば刑法第234条の2(電子計算機損壊等業務妨害、5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、未遂も処罰)、他人のIDやパスワードを使って権限のないシステムに入れば不正アクセス禁止法(3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)の問題になります。実際の適用は個別の事実関係によります。

うちのような中小企業も狙われますか?

この攻撃だけは「規模が小さいから対象外」が成り立ちません。標的は主張の材料になるかどうかで選ばれるため、官公庁や業界団体と同じ運用事業者を使っている、国際的な争点に関わる国と取引がある、といった理由でまとめて巻き込まれることがあります。第6章の棚卸し表で自社を確認してみてください。

SNSで自社が「攻撃した」と名指しされました。すぐ公表すべきですか?

まず事実確認が先です。20機関の共同アドバイザリは、これらの集団が虚偽や誇張の主張を繰り返し、被害者を取り違えることも頻繁にあると明記しています。実際には何も起きていない、あるいは軽微な事象だったという可能性が十分あります。公表するなら「いつから、どのサービスが、代替手段は何か」という確認済みの事実だけにとどめてください。

出典・参考

最終更新:2026年8月20日/次回見直し予定:2027年3月(警察庁の年次資料の公表に合わせて)

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