SASEとは?ゼロトラストを「どこで実現するか」の答え【2026年版】

デジタル庁の適用方針で確認(2026年8月時点)

SASEとは?ゼロトラストを「どこで実現するか」の答え

考え方がゼロトラストなら、SASEはその置き場所です。5つの部品に分けて説明します。

30秒でわかる「SASE」

  1. ネットワークとセキュリティの機能をまとめてクラウド側に置き、どこから働いても同じ経路で守るという構成です。読み方は「サシー」。
  2. 社員も業務システムもクラウドにあるのに、通信だけ本社を経由させるという形が限界に来たことが背景です。
  3. デジタル庁の「ゼロトラストアーキテクチャ適用方針」でも、SASEは全業務デバイスへの導入が考えられる施策として言及されています。
  4. 誤解:「SASEという製品を買う」。実際は複数の機能の組み合わせ方の名前で、段階導入が普通です。
  5. 今日やること:社外から社内へ入る経路がVPN一本になっていないか確認する。2025年のランサムウェア被害では侵入経路の6割以上がVPN機器でした。

ゼロトラストを調べていくと、必ずSASEという言葉に行き当たります。そして多くの説明は「ネットワークとセキュリティを統合したクラウドサービス」で終わってしまい、結局それは何の集まりなのかが分かりません。

この記事の中心は第3章です。SASEを構成する5つの部品を、1つずつ「何を担うのか」「無いとどうなるのか」で説明します。SASEという言葉の中身は、この5つを知れば分かります。

⚠ この記事の前提

この記事は2026年8月16日時点の内容です。政府の位置づけはデジタル庁『ゼロトラストアーキテクチャ適用方針』(DS-210、2022年6月30日)、統計は警察庁『令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について』およびIPA『情報セキュリティ10大脅威 2026』にもとづき、出典を記事末に記載しています。

SASEは調査会社が2019年に提唱した用語で、NISTのような公的な標準規格の定義文書はありません。各社が独自の範囲で使っており、統一された定義は確認できませんでした。この記事は共通して語られる特徴を整理したものです。

CHAP1

第1章 / 全8章

SASEとは(やさしい定義)

名前を分解すると、意味が見えます

サシー 英:Secure Access Service Edge

これまで本社に置いていたネットワークの機能とセキュリティの機能を、まとめてクラウド側に移し、社内にいても社外にいても同じ経路・同じルールで通信を守る構成のことです。

分類
構成・アーキテクチャの呼び名(公的な標準規格ではありません)
出自
調査会社が2019年に提唱した用語です
名前の意味
Secure(安全な)+ Access(接続)+ Service(サービスとして)+ Edge(利用者の近く)
ゼロトラストとの関係
ゼロトラストが考え方、SASEはそれをどこに置いて実現するかの答えの1つ

名前の最後にある Edge(エッジ) が要点です。「エッジ」とは利用者に近い場所という意味で、ここでは世界中に分散したクラウドの接続拠点を指します。

従来は、社外にいる社員の通信をいったん本社まで引き戻して、本社に置いた機器で検査してからインターネットへ出していました。社員も業務システムも社内にあった時代は、それで合理的でした。

ところが、社員は自宅にいて、使うのはクラウドサービスです。自宅からクラウドへ行くだけなのに、わざわざ本社を往復する——この無駄を解消し、かつ検査は続けるために、機能そのものを利用者の近くへ移したのがSASEです。

💡

「検査場を、本社から街角へ移した」と考える

従来は本社に1つだけあった検査場に全員が並んでいました。SASEは同じ検査を、利用者のすぐ近くにある無数の検査場で行う構成です。検査の内容(ルール)は中央で一括管理され、どこで検査を受けても同じ結果になります。

第1章 おわり — 次は第2章

CHAP2

第2章 / 全8章

なぜ出てきたのか

境界を守る装置が、いちばんの入口になりました

デジタル庁の『ゼロトラストアーキテクチャ適用方針』は、従来の考え方をこう定義しています。

境界型セキュリティ:従来のセキュリティの基本的な考え方であり、境界で内側と外側を遮断して外部からの攻撃や内部からの情報流出の防止を試みる。境界型セキュリティは「信頼できないもの」が内部に入り込まない、また内部には「信頼できるもの」のみが存在することが前提となる。セキュアなネットワークの構築が中心となる。

出典:デジタル庁『ゼロトラストアーキテクチャ適用方針』(DS-210、2022年6月30日)表1-1 用語の定義

ここで書かれている「内部には信頼できるもののみが存在することが前提」という一文が、崩れた前提です。そして統計がそれを裏づけています。

指標数値・順位出典
ランサムウェア被害の侵入経路VPN機器が6割以上警察庁(2025年)
2025年の初期侵入経路1位脆弱性の悪用 32%M-Trends 2026
組織向け脅威 第8位リモートワーク等の環境や仕組みを狙った攻撃(6年連続6回目)IPA 10大脅威 2026

出典:警察庁『令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について』(2026年3月公表)、Google Cloud / Mandiant「M-Trends 2026」、IPA『情報セキュリティ10大脅威 2026』。

VPN機器は、境界を守るために置いた装置です。それが最も多く使われている侵入経路になっている——これが境界型の限界を示す、いちばん短い説明だと思います。

そしてデジタル庁の同文書は、対応策の例としてSASEに触れています。

テレワークを前提とした中でネットワークに対するガバナンスを強化したい場合は、SDN(Software Defined Network)やSASE(Secure Access Service Edge)といったソリューションを全業務デバイスに導入するといった施策が考えられる。

出典:デジタル庁『ゼロトラストアーキテクチャ適用方針』(DS-210、2022年6月30日)

この文書は「守れ」という文書ではありません

デジタル庁の同文書は、自ら「ゼロトラストアーキテクチャへの理解を深める参考文書であり、適用の遵守を求めるものではない」と明記しています。政府情報システムを対象とした参考文書であって、民間企業への義務ではありません。

第2章 おわり — 次は第3章

CHAP3

第3章 / 全8章

5つの部品を1つずつ

SASEの中身は、この組み合わせです

SASEは単一の技術ではなく、複数の機能をクラウド上でまとめたものです。一般に挙げられる構成要素を、ネットワーク側セキュリティ側に分けて整理します。

区分部品何を担うか無いとどうなるか
ネットワークSD-WAN
Software Defined WAN
拠点や社員の通信を、状況に応じて最適な経路へ振り分ける全通信が本社経由のまま。遅く、本社が単一障害点になる
セキュリティSWG
Secure Web Gateway
Webアクセスを検査し、危険なサイトや不適切な通信を遮断するフィッシングサイトや偽サイトへの接続を止められない
セキュリティCASB
Cloud Access Security Broker
クラウドサービスの利用状況を可視化し、制御する誰がどのクラウドに何をアップロードしたか分からない(シャドーITの温床)
セキュリティZTNA
Zero Trust Network Access
アプリ単位で接続を許可する。VPNの置き換えにあたる部分VPNのまま=通ったら社内が全部見える状態が続く
セキュリティFWaaS
Firewall as a Service
ファイアウォールの機能をクラウドで提供する拠点ごとに機器を置き、それぞれ更新し続ける必要がある

一般的に挙げられる構成要素の整理です。SASEは標準規格ではないため、製品によって含まれる範囲は異なります。このほかWAN最適化やQoSがネットワーク側に含まれるとされることもあります。

この表で、SASE導入の効果がいちばん大きいのはZTNAの行です。第2章で見たとおり、いま最も使われている侵入経路はVPN機器です。ZTNAは「VPNを通ったら社内が全部見える」という構造そのものを変えます

SSEという言葉も出てきます

SASEを調べていると、よく似たSSE(Security Service Edge)という言葉が出てきます。これは2021年に、SASEからネットワークの部分を除いてセキュリティ部分だけを取り出した概念として整理されたものです。

SASESSE
含むものネットワーク+セキュリティセキュリティのみ
SD-WAN含む含まない
SWG・CASB・ZTNA含む含む
向いている場面拠点間の通信も含めて作り直したい既存のネットワークは変えずに、守りだけ先に強化したい

一般的な整理です。両者とも標準規格ではなく、製品によって範囲は異なります。

💡

多くの日本企業に現実的なのは、実はSSEのほうです

SASEはネットワーク構成の作り直しを伴うため、大がかりになります。拠点網はそのままで、守りの部分だけクラウドへ移すというSSEの形なら、段階的に始められます。提案を受けたときは「SASE一式なのか、SSEなのか」を確認すると、規模感がつかめます。

第3章 おわり — 次は第4章

CHAP4

第4章 / 全8章

誤解と、似ている用語の整理

階層が違う言葉が、並んで語られています

🚨 いちばん危ない誤解:「SASEという製品を買えば完了する」

SASEは第3章で見たとおり5つ前後の機能の組み合わせ方の名前です。1つの箱を買って終わる話ではありません。

そして「SASE対応」をうたう製品でも、5つすべてを同じ品質で提供しているとは限りません。ZTNAは強いがCASBが弱い、あるいはその逆、という差が実際にあります。

検討するときは「SASEになりますか」ではなく、「SD-WAN・SWG・CASB・ZTNA・FWaaSのうち、どれをどこまで提供しますか」と部品名で聞いてください。答えられない提案は中身がありません。

この分野の言葉は指している階層が違うため、並べて語られると混乱します。整理します。

用語何の名前か関係
ゼロトラスト考え方・方針「場所で信用しない」という設計思想。NISTが7原則で定義
SASE構成・置き場所その考え方をクラウド側にまとめて実現する
SSE構成(SASEの一部)SASEからネットワーク部分を除いたもの
ZTNA部品SASE/SSEの中の1機能。VPNの置き換えにあたる
VPN従来の技術ZTNAが置き換えようとしている対象
EDR・SIEM別レイヤーの製品SASEは通信を守る。EDRは端末、SIEMはログ。重ならず、置き換わりません

一般的な整理です。製品によって範囲は重なります。

覚え方としては、ゼロトラストが「何をしたいか」、SASEが「どこに置くか」、ZTNAが「そのうちの1つの部品」と3階層で分けると混乱しません。

最後に1つ注意点を。SASEを入れてもEDRやSIEMは不要になりません。SASEが見ているのは通信であり、端末の中で起きていることや、機器のログの横断的な調査は担当外です。

第4章 おわり — 次は第5章

CHAP5

第5章 / 全8章

個人・テレワークをしている方へ

導入するものではありませんが、毎日その中で働いています

SASEは組織が導入するもので、個人が契約するものではありません。ただし勤務先が導入していれば、あなたの通信は毎日そこを通っています

気づきやすい変化は次のようなものです。

起きること理由
会社のVPNに接続しなくても、業務システムが使えるようになったZTNAがVPNの役割を置き換えたためです
私用のクラウドサービスに会社のファイルを上げようとすると止められるCASBが働いています
あるWebサイトが会社の端末だけ開けないSWGが遮断しています
端末に常駐アプリが入り、通信が全部そこを経由するようになったSASEのエージェントです。勝手に止めないでください

実際の挙動は導入されている製品・設定によって異なります。

デジタル庁の文書にも、この仕組みの説明があります。SASEなどのデバイス・エージェントはネットワークトラフィックをデバイス上で評価し制御を施行するものもあるとされ、そのポリシーは集中管理機能から配布される、と記されています。

「重いから」とエージェントを止めないでください

そのアプリを停止すると、あなたの端末だけが検査を受けずにインターネットへ出る状態になります。組織全体の防御に穴を開けることになるので、動作に問題がある場合は止める前に情報システム担当へ相談してください。

なお、個人として自宅で同じ発想を取り入れるなら、「どこにいても同じ守り方をする」という部分です。自宅のWi-Fiだから安全、と考えないこと。それがゼロトラストの原則2にあたります。

考え方の元をたどる

SASEが実現しようとしている考え方そのものは ゼロトラストとは?NISTの7原則と、それでも残る7つの脅威 にまとめています。

第5章 おわり — 次は第6章

CHAP6

第6章 / 全8章

会社・組織でやること

一式で入れる必要は、ありません

SASEの提案は「一式」で来ることが多いのですが、5つの部品を同時に導入する必要はありません。効果の大きい順に1つずつでかまいません。

やること効果重さ
0まずVPN機器の更新と多要素認証。SASEを検討する前にこれ侵入経路の6割以上を占める入口を塞ぐ軽い
1ZTNAから入る(VPNの置き換え)最も効果が大きい。通ったら社内が全部見える構造を変える
2SWGを追加する危険なサイトへの接続を止める。テレワーク端末に効く
3CASBを追加する誰がどのクラウドを使っているかが見える(シャドーIT対策)
4FWaaS・SD-WANでネットワークを作り直す拠点網の最適化重い

順序と重さは筆者の評価です。組織の規模・拠点数・既存構成によって適切な進め方は異なります。侵入経路の割合は警察庁資料より。

0番を飛ばさないでください。VPN機器が古いまま放置されている状態でSASEを検討しても、移行が完了するまでの数か月〜1年、その入口は開いたままです。

そして1番のZTNAだけでも、得られる効果の大半は取れます。多くの日本企業にとって現実的なのは、第3章で触れたSSE(セキュリティ部分だけ)の範囲から始める形です。

💡

提案を受けたときの質問リスト

①SD-WAN・SWG・CASB・ZTNA・FWaaSのうち、どれが含まれますか ②既存のVPNといつまで併存しますか ③接続拠点は国内にありますか ④障害時の影響範囲と、そのときの代替手段は何ですか。とくに④は必ず聞いてください(理由は第7章)。

第6章 おわり — 次は第7章

CHAP7

第7章 / 全8章

SASEが止まったときの最初の10分

通信を1か所に集めた結果、そこが単一障害点になります

SASEには、構造そのものが生む固有のリスクがあります。全社員の通信がそのクラウドを経由するため、そこが落ちると全社が止まります。

これはSASEの欠陥ではなく、集約という設計の裏返しです。NIST SP 800-207 も、ゼロトラストアーキテクチャに関連する脅威として「サービス妨害・ネットワーク遮断」を挙げています。アクセスのたびに判断する構造では、判断役に到達できないと誰も仕事ができません。

やることやってはいけないこと理由
1事業者のステータスページを確認する(自社側か事業者側かの切り分け)社内の設定を触り始める事業者側の障害なら、社内で何をしても直りません
2影響範囲を確認する(全社か、特定拠点か、特定サービスのみか)全社停止と決めつける部分障害なら、代替経路で業務を続けられます
3あらかじめ決めておいた代替手段に切り替えるその場で緊急避難的にエージェントを全社停止する検査なしで全端末がインターネットに出る状態になります
4社内へ状況と復旧見込みを周知する問い合わせに個別対応する担当者が対応に忙殺され、切り分けが止まります
5復旧後、停止中に通った通信のログを確認する復旧したら終わりにする検査を外していた時間があるなら、その間の通信を確認すべきです

実務上の一般的な整理です。実際の手順は導入している製品・契約内容によって異なります。

✅ 導入前に決めておくこと

障害は必ず起きます。大事なのは「起きたときにどうするか」を、平常時に決めてあるかだけです。①代替経路をどうするか ②誰が判断するか ③どこまで業務を止めるか——この3つを契約前に決めておけば、当日は手順を実行するだけになります。第6章の質問リストの④が、ここにつながります。

組織としての対応手順

インシデント全般の初動は やられたときの最初の30分、体制づくりは インシデント対応プレイブック完全ガイド にまとめています。

第7章 おわり — 次は第8章

CHAP8

第8章 / 全8章

関連用語と、次に読む記事

この語とセットで覚えると理解が早くなります

ゼロトラスト EDR SIEM WAF ZTNA(準備中) CASB(準備中)
こんな方に次に読む記事
考え方の元をたどりたいゼロトラストとは?NISTの7原則
手を動かして体感したい【ゲーム】機器を配置してネットワークを守れ
VPN機器が狙われる話を知りたい境界機器が狙われる理由とは?
端末側の守りを知りたいEDRとは?XDRとは?
ログの扱いを知りたいSIEMとは?
VPNそのものを知りたいVPN入門

第8章 おわり — 最後にFAQ

FAQ?

よくある質問

SASEについてよく聞かれること

検索でよく見かける疑問から

SASEを入れればVPNは廃止できますか?

SASEに含まれるZTNAが、VPNの役割を置き換える部分にあたります。ただし多くの組織では、移行期間中はVPNと併存させます。すぐに廃止できるわけではないため、その間もVPN機器の更新は必要です。2025年のランサムウェア被害では侵入経路の6割以上がVPN機器でした(警察庁)。

ゼロトラストとの関係は?

ゼロトラストが「場所で信用しない」という考え方、SASEはそれをクラウド側にまとめて実現する構成です。階層が違います。ゼロトラストはSASE以外の方法でも実現できますし、SASEを入れただけでゼロトラストが完成するわけでもありません。

小規模な組織でも導入できますか?

一式で導入する必要はありません。ZTNAだけ、あるいはSWGだけから始められます。ただしその前に、VPN機器の更新と多要素認証の適用を済ませてください。この2つのほうが費用が小さく、効果が確実です。

SASEが障害で止まったら、業務はどうなりますか?

全社員の通信がそのクラウドを経由するため、影響範囲が広くなり得ます。これは集約という設計の裏返しで、NIST SP 800-207 もゼロトラストに関連する脅威として「サービス妨害・ネットワーク遮断」を挙げています。契約前に、障害時の影響範囲と代替手段を必ず確認してください。

出典・参考

最終更新:2026年8月16日/次回見直し予定:2027年4月(各年次資料の公表に合わせて)

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