
30秒でわかる「ゼロデイ」
- 修正プログラムが用意される前に悪用される脆弱性のことです。防ぐ手段が存在しない状態を指します。
- 「0日」は修正が出てから経過した日数のこと。まだ0日目、つまり直しようがない、という意味です。
- ところが、米国CISAが「実際に悪用された」と認定した1,665件のうち93.4%は、前年以前に公表済みの脆弱性でした(筆者集計)。
- 誤解:「ゼロデイが最大の脅威」。実際に多くの組織が入られているのは、直せるのに直していない脆弱性からです。
- 今日やること:インターネットに面した機器(VPN・ファイアウォール)の更新状況を確認する。ここが最多の入口です。
この記事の地図(全8章)
「ゼロデイ攻撃で被害」というニュースを見て、あるいは経営層から「うちは大丈夫か」と聞かれて、調べに来られた方が多いと思います。
この記事の中心は第2章です。ゼロデイは確かに防げません。しかし実際に悪用が確認されている脆弱性を数えると、その9割以上はゼロデイではありませんでした。怖がる先を間違えると、直せたはずのところが空いたままになります。
この記事は2026年8月17日時点の内容です。第2章の集計は、米国CISAが公開しているKnown Exploited Vulnerabilities Catalog(カタログ版数 2026.08.14)の全1,665件を筆者が集計したものです。集計方法は本文に明記しています。国内の統計は警察庁『令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について』(2026年3月公表)です。
KEVは「悪用が確認されたもの」の一覧であり、悪用されている脆弱性のすべてではありません。数字はこの限界を前提にお読みください。
ゼロデイとは(やさしい定義)
「0日」が何の日数かを知ると、一気に分かります
修正プログラム(パッチ)が用意される前に悪用される脆弱性、およびその攻撃のことです。守る側に打つ手が用意されていない状態を指します。
混乱しやすいのは「0日」が何を数えているかです。攻撃が始まってからの日数ではありません。修正が出てからの日数です。
だから、修正が出た瞬間にゼロデイではなくなります。名前が変わるだけで、弱点そのものは同じです。ここが第3章につながる、この語のいちばん大事な性質です。
「ゼロデイだから仕方がなかった」は、多くの場合あとから覆ります
事故の直後は「未知の脆弱性でした」と説明されることがあります。しかし調査が進むと、実際には数か月前に修正が出ていたと判明する事例が少なくありません。気づいていなかったことと、防げなかったことは別です。この区別が、第2章の数字の意味になります。
第1章 おわり — 次は第2章
93%は、ゼロデイではなかった
実際に悪用されたものだけを数えてみます
米国CISAは、実際に悪用が確認された脆弱性だけを集めたカタログ(KEV)を公開しています。推測ではなく「使われた実績があるもの」の一覧です。
この全件を、CVE番号の発行年で分けてみました。CVE番号は脆弱性が公表された年に付きます。つまり「CVE-2026-…」なら今年公表されたもの、「CVE-2021-…」なら5年前から知られていたものです。
| 区分 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| CVE番号が2025年以前(=前年以前に公表済み) | 1,555件 | 93.4% |
| CVE番号が2026年(=今年公表) | 110件 | 6.6% |
| 合計 | 1,665件 | 100% |
出典:CISA Known Exploited Vulnerabilities Catalog(カタログ版数 2026.08.14)の全件を筆者が集計。CVE発行年は脆弱性が公表された年の目安であり、ゼロデイであったかどうかを直接示すものではありません。
実際に悪用されている脆弱性の9割以上は、前の年までに公表済みでした。つまり、修正も情報も出ていた状態です。
今年追加されたものだけを見ても、同じ傾向です
| 2026年にKEVへ追加された181件の内訳 | 件数 | 意味 |
|---|---|---|
| CVE番号も2026年 | 110件(60.8%) | 公表から悪用まで短かったもの |
| CVE番号は2025年以前 | 71件(39.2%) | 前から知られていた脆弱性が、今になって悪用され始めた |
同カタログより筆者集計。
下の行が重要です。脆弱性は、公表された年に悪用されるとは限りません。何年も放置されていたものが、あるとき攻撃キャンペーンの標的になります。
実際、このカタログに載っている最も古いものは2002年に採番されたCVEです。20年以上前の脆弱性が、いまだに「悪用が確認されている」リストに載っています。直していない機器が、どこかに残っているということです。
そして、5件に1件はランサムウェアに使われています
同じカタログには、その脆弱性がランサムウェア攻撃で使われたことが確認されているかという項目があります。集計すると349件(20.9%)——悪用が確認された脆弱性の5件に1件が、ランサムウェアの入口として実際に使われていました。
そしてその大半は、区間③(第3章)にいる脆弱性です。日本の統計も、同じことを示しています。
被害組織へのアンケート結果によると、侵入経路はVPN(Virtual Private Network)機器が6割以上を占める状況である。
警察庁『令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について』(2026年3月公表)特集ⅡVPN機器の脆弱性は、その多くが公表され、修正も出ているものです。未知の攻撃で入られたのではなく、直せたところから入られています。
「ゼロデイ対策製品」を検討する前に
予算の話をするなら、順序があります。93%の側にまだ穴があるうちに、6.6%の側へ投資しても、入口は閉じません。まず区間③を潰し切る。そのうえで残るリスクが、ゼロデイです。順番を逆にすると、高価な仕組みを入れたのにVPN機器から入られる、という結果になります。
なお、KEVの全体像(登録の条件、ベンダー別の内訳、ランサムウェアでの悪用件数など)は CISA KEVとは? で詳しく扱っています。この記事の集計はゼロデイかどうかという観点に絞ったもので、基準日が異なるため件数がわずかに違います。
第2章 おわり — 次は第3章
ゼロデイ・ワンデイ・Nデイの時間軸
同じ弱点が、時期によって呼び名を変えます
脆弱性は、発見から修正完了までに4つの区間を通ります。弱点そのものは変わらないのに、区間によって呼び名も、打てる手も変わります。
| 区間 | 状態 | 呼び名 | 打てる手 |
|---|---|---|---|
| ① 発見〜公表前 | 開発元も知らない。修正なし | ゼロデイ | 直す手段がない。検知と被害の局限化のみ |
| ② 公表〜修正提供 | 公表されたが修正はまだ | ゼロデイ(広義)/ワンデイ | 回避策(緩和策)、遮断、監視の強化 |
| ③ 修正提供〜適用完了 | 直せるのに、直っていない | Nデイ | 適用するだけ。ここが最大の勝負どころ |
| ④ 適用完了 | その脆弱性については解消 | — | — |
区間の整理と呼び名の対応は筆者によるものです。ワンデイ・Nデイは業界で使われる呼称で、標準化された定義はありません。
第2章の数字を、この表に当てはめてみてください。悪用されている脆弱性の93%は、区間③にいます。直す手段が存在するのに、適用が終わっていない状態です。
そして区間③には、ゼロデイにはない特徴があります。攻撃者にとっても簡単になることです。公表されれば技術的な詳細が出回り、検証用のコード(PoC)が公開されることもあります。公表は、守る側と攻める側の両方にとってスタートの合図です。
区間②で使われる「回避策」についても補足します。修正がまだ出ていない期間でも、打てる手はあります。
| 修正が出るまでの手 | 内容 |
|---|---|
| 公開範囲を狭める | 管理画面をインターネットから見えなくする、接続元IPを限定する |
| 該当機能を止める | 使っていない機能なら、無効化するだけで影響を受けなくなることがあります |
| 前段で止める | WAFで該当する通信を遮断する。直すまでの時間を稼ぐ道具です |
| 監視を強める | その機器のログを重点的に見る。入られた場合に早く気づくため |
実務上の一般的な整理です。実際に有効な回避策は、開発元が公表する情報に従ってください。
「修正が出ていないから何もできない」ではありません。ゼロデイに対して打てる手は、この4つと第5章の多層防御です。
ゼロデイを使えるのは、それを持っている一部の攻撃者だけです。ところが公表後は、誰でも使えるようになります。技術力の低い攻撃者や、自動化されたスキャンにまで対象が広がります。
当サイトの分析では、境界機器の脆弱性が公表されたあと、41時間で30組織が侵入された事案を扱いました。詳しくは 境界機器が狙われる理由 をご覧ください。「週明けに対応しよう」は、間に合わないことがあります。
第3章 おわり — 次は第4章
よくある誤解と、似ている用語
CVE・CVSS・KEV・EPSS・PoCを1枚で整理します
| 用語 | 何の名前か | ゼロデイとの関係 |
|---|---|---|
| ゼロデイ | 修正が無い状態 | この記事の主題。時期を表す言葉 |
| 脆弱性 | 弱点そのもの | ゼロデイは脆弱性の一時期の呼び方 |
| CVE | 個別の脆弱性の識別番号 | 番号が付いた時点で公表済み=狭義のゼロデイではなくなる |
| CVSS | 深刻度のものさし(0.0〜10.0) | スコアが高い=ゼロデイ、ではありません |
| KEV | 実際に悪用されたもののカタログ | 第2章の集計に使いました |
| EPSS | 今後30日以内に悪用される確率の推定 | 「まだ悪用されていないが危ない」を測る指標 |
| PoC | 実際に動く検証コード | これが公開されると、区間③の危険度が跳ね上がります |
| Nデイ | 修正が出てN日経っている脆弱性 | ゼロデイの反対側。被害の大半はこちら |
EPSS・PoCは業界で広く使われる用語です。CVSSとKEVの詳細は各記事にまとめています。
よくある3つの誤解
| 誤解 | 実際は |
|---|---|
| 「ゼロデイが最大の脅威」 | 第2章のとおり、悪用の93%は公表済みの脆弱性です。IPA『情報セキュリティ10大脅威 2026』でも、ゼロデイは単独の項目ではなく、組織向け4位「システムの脆弱性を悪用した攻撃」に含まれています |
| 「ゼロデイは防げないから、対策しても無駄」 | 入口は防げませんが、その後は防げます。侵入後の行動は通常の攻撃と同じ経路をたどるためです(第5章) |
| 「AIでゼロデイが激増する」 | 発見数は増えています。ただし当サイトの分析では、AIが2か月で14,090件の脆弱性を見つけても、悪用率そのものは変わっていません。詳しくは AIが2か月で1万4千件の脆弱性を見つけた話 をご覧ください |
第4章 おわり — 次は第5章
防げないのに、なぜ対策があるのか
攻撃は、入ったあとのほうが長いからです
「ゼロデイは防げない」は正しい表現です。ただし、それは入口の話に限ればです。
攻撃者は、入っただけでは目的を達成できません。そこから権限を上げ、社内を探索し、データを集め、外へ送り出す——この一連の作業が必要です。そしてこの部分は、ゼロデイでも普通の攻撃でも同じです。
| 攻撃の段階 | ゼロデイで防げるか | 効く対策 |
|---|---|---|
| 1. 侵入 | 防げない(修正が無いため) | — |
| 2. 権限の昇格 | 防げる | 最小権限、管理者アカウントの分離 |
| 3. 社内の探索・横移動 | 気づける | EDR、ネットワークの分離、ゼロトラスト |
| 4. データの収集 | 気づける | 監査ログ、異常な大量アクセスの検知 |
| 5. 外部への送信 | 止められる | 外向き通信の制限、宛先の監視 |
| 6. 暗号化・破壊 | 回復できる | オフラインバックアップ |
段階の整理は筆者によるものです。実際の攻撃は必ずしもこの順に進むとは限りません。
1行目しか防げない、ではありません。2〜6行目は防げます。これが「多層防御」と呼ばれる考え方の中身です。
ゼロデイ対策とは、実質「侵入される前提の設計」のことです
「入られない」を目標にすると、ゼロデイの前で計画が破綻します。「入られても、そこから先に進ませない・気づく・戻せる」を目標にすれば、ゼロデイは特別な脅威ではなくなります。入口が1つ余分に増えるだけです。
第5章 おわり — 次は第6章
組織でやること(優先順位つき)
全部の脆弱性は直せません。順番を決めます
脆弱性は毎年数万件公表されます。全部に対応することは不可能です。だから順番が要ります。
| 優先度 | 対象 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | インターネットに面した機器(VPN・ファイアウォール・公開サーバ) | 侵入経路の6割以上(警察庁)。ここだけは即日 |
| 2 | KEVに載っているもの | 実際に悪用が確認されている=仮定ではない |
| 3 | PoCが公開されているもの | 誰でも使える状態になっている |
| 4 | 認証・権限にかかわる機器(ADサーバ等) | ここを取られると全部取られます |
| 5 | CVSSが高いもの | ここが最後です。スコアは自社の環境を考慮していません |
優先順位の整理は筆者によるものです。公的に定められた順序ではありません。侵入経路の割合は警察庁『令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について』より。
5行目に注目してください。CVSSスコアの高い順に直すのは、直感に反して非効率です。理由は CVSSとは? にまとめました——そのスコアは、あなたの環境を考慮していません。
その前に、答えられますか
| 問い | 答えられないと |
|---|---|
| インターネットに面している機器を全部挙げられるか | 直す対象が分からず、優先順位の話が始まりません |
| その機器の型番とファームウェア版数が分かるか | 「自社が該当するか」を毎回調べ直すことになります |
| 使っているソフトの部品(OSS)が分かるか | 部品の脆弱性が出たとき、影響の有無を答えられません(SBOM) |
| 更新の連絡が、誰に届くか決まっているか | 公表を知るのが遅れます |
インターネットに面した機器の一覧を1枚作る。型番・版数・管理者・最終更新日の4列で十分です。これが無い状態では、ゼロデイの報道が出るたびに「うちは関係あるのか」を一から調べることになります。一覧があれば5分、無ければ数日です。
第6章 おわり — 次は第7章
「重大な脆弱性」の報道を見たときの手順
順番に5つ確認すれば、判断できます
| # | 確認すること | やってはいけないこと |
|---|---|---|
| 1 | 自社が該当製品を使っているか(第6章の一覧で照合) | 報道だけで判断する |
| 2 | 該当版数か。製品名が同じでも版数で変わります | 製品名だけで慌てる |
| 3 | その機器がインターネットから届く位置にあるか | 社内限定の機器を最優先にする |
| 4 | 修正が出ているか、回避策があるかを開発元の公式情報で確認 | まとめサイトの情報だけで動く |
| 5 | すでに悪用された痕跡がないかログを確認する | 更新して終わりにする |
実務上の一般的な整理です。
5番が飛ばされがちです。公表前から悪用されていた場合、更新は「これ以上入られない」ようにするだけで、すでに入られている分はそのまま残ります。更新後にログを確認するところまでが1セットです。
ログが残っていなければ、この確認はできません。保存期間の考え方は ログ管理の課題 にまとめています。
痕跡が見つかったら
状況別の初動は やられたときの最初の30分、証拠を壊さずに調べる方法は デジタルフォレンジックとは?、体制の作り方は CSIRTとは? をご覧ください。
第7章 おわり — 次は第8章
関連用語と、次に読む記事
この語とセットで覚えると理解が早くなります
| こんな方に | 次に読む記事 |
|---|---|
| 直す順番を決めたい | CISA KEVとは? |
| スコアの読み方を知りたい | CVSSとは? |
| 境界機器のリスクを知りたい | 境界機器が狙われる理由 |
| AIと脆弱性発見の関係を知りたい | AIが2か月で1万4千件の脆弱性を見つけた話 |
| 製品選びの参考にしたい | セキュリティ製品のKEVランキング |
| 修正までの時間を稼ぎたい | WAFとは? |
| 入られた後の備えを固めたい | EDRとは? |
| 用語を一覧で見たい | セキュリティ用語辞典 |
第8章 おわり — 最後にFAQ
ゼロデイについてよく聞かれること
検索でよく見かける疑問から
個人でできることはありますか?
あります。しかも効果が大きいのはごく普通のことです。①OSとブラウザの自動更新を切らない ②スマホの更新を後回しにしない ③家庭用ルーターのファームウェアを年1回は確認する。とくに③は忘れられがちですが、家庭用ルーターは第6章の1行目にあたる機器です。ゼロデイそのものを個人が防ぐ手段はありませんが、区間③(直せるのに直っていない状態)を作らないことはできます。
ゼロデイは売買されているのですか?
脆弱性情報に報奨金を支払う正規の制度(バグバウンティ)は、多くの企業が運営しています。一方で、修正されないまま高額で取引される市場が存在するとも報じられています。この記事では取引の実態については断定しません。利用者にとって重要なのは、そこではなく「自分の環境が該当するかを即答できるか」です。
AIでゼロデイは増えますか?
発見される脆弱性の数は増えています。ただし当サイトで扱った分析では、発見数が急増しても実際の悪用率は変わっていません。攻撃者にとっても、新しい脆弱性を使うより直っていない古い脆弱性を探すほうが安上がりだからです。第2章の93%が、まさにそれを示しています。守る側の優先順位は、AIの登場後も変わっていません。
自社が該当するか分からないときは?
それが第6章の「その前に、答えられますか」の4問です。分からない状態そのものが課題なので、まず一覧を作ってください。当面の応急処置としては、①開発元の公式サイトでサポート情報を確認する ②保守を委託しているベンダーに問い合わせる ③JPCERT/CCやIPAの注意喚起で対象製品を確認する、の3つです。ベンダーへの問い合わせは、遠慮する必要はありません。それが保守契約の中身です。
出典・参考
- CISA「Known Exploited Vulnerabilities Catalog」(カタログ版数 2026.08.14/本文の集計はこのデータを筆者が処理したもの) https://www.cisa.gov/known-exploited-vulnerabilities-catalog
- 警察庁サイバー警察局『令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について』(2026年3月公表) https://www.npa.go.jp/publications/statistics/cybersecurity/data/R7/R07_cyber_jousei.pdf
- IPA 独立行政法人情報処理推進機構『情報セキュリティ10大脅威 2026』(2026年1月29日公表) https://www.ipa.go.jp/security/10threats/10threats2026.html
- JPCERT コーディネーションセンター(脆弱性情報・注意喚起) https://www.jpcert.or.jp/
- JVN 脆弱性対策情報ポータルサイト https://jvn.jp/
最終更新:2026年8月17日/次回見直し予定:2027年3月(KEVの再集計と、警察庁・IPAの年次資料の公表に合わせて)



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